(ナレーション)
漆黒の吸物椀
丁寧に下地を重ね仕上げた曇りのない黒
明治時代その卓越した塗りの技術で京うるしの祖と呼ばれた塗師木村表斎の作である
100年以上前のものとは思えない光沢のある黒
ふたを開けるとまばゆいばかりの金で描かれた鶯宿梅の蒔絵
表はそっけなく内は美しい
そのつつましさが特に京で喜ばれたという
近代の京漆器の名品が一堂に集められている
漆黒の塗りに金銀の粉を施す蒔絵や貝殻のかけらをはめ込む螺鈿などさまざまな材料を駆使した多彩な加飾技術
そんな京うるしを代表する職人初代木村表斎
滋賀県高島郡に生まれ東本願寺ゆかりの塗師に師事
丁寧な器の下地作りと高い塗りの技術を身に付けた
明治18年表斎の蒔絵椀が権威ある品評会で最高位に評価される
完璧な塗りに繊細に重ねられた蒔絵
こうして表斎は京うるしの祖と呼ばれ漆芸を志す多くの者がその門下に入った
京都には昔も今も漆職人を育てる下地がある
西陣で店を構える…
漆器は会席料理で使う器の中でも特に重要な器
その出来栄えは料理人の厳しい目にさらされる
漆器は特にやっぱり木の優しさというか…それと重厚感がありますからすごいアクセントになりますね。
特にお吸物のお椀なんかはもちろんお客様にパッと開けていただいたときのね楽しみであったりとかそこから来る香りであったりとか湯気の感じであったり視覚的とか嗅覚的にも楽しんでもらうっていう側面もありますし。
使い手のこだわりに応える
京うるしの祖表斎にもそんな矜持があっただろう
その妥協のない姿勢は門下生たちに受け継がれその系譜や仕事は「表派」と呼ばれるようになった
堀川通に工房を構える…
初代は表斎の直弟子であった
現在三代目の下で修業を続ける息子啓樂さん
(三木さん)表派っていうのは基本的には塗りの一派なので漆仕事…まあ無地の器ですよね。
それを作るのが本業です。
表斎に学んだ弟子たちは「表」の1字をもらい表派の名に恥じない仕事をしてきた
日本の文化を育んだ京都人の審美眼にかなう仕事を日々淡々としている
明治時代に活躍した京うるしの祖木村表斎
その精神を受け継ぐ漆職人三木表悦
そのひ孫の三木啓樂さん
初代から受け継がれる漆器作りにまっすぐ向き合い己を磨いている
薄づくりの木地の上に黒漆を塗る
それを乾燥させ炭で研ぐ
この作業を納得のいくまで繰り返す
塗りと研ぎを丁寧に繰り返すことで耐久性が増し長く使える器になるという
表には出ない職人の仕事が漆器の美を支えている
(三木さん)その…代々の指導者たちが弟子の育て方としてそれぞれの思いとか個性っていうのも大事にされたんだと思うんです。
表斎に学んだ職人たちは時代の求めに応じ自由に漆器を作った
啓樂さんのぐい呑みである
蒔絵に使う螺鈿を底に仕込み酒に浮かぶ月を表現した
「表」という名前というか作り手たちを身近に大事にしてくださる京都の町の人たちっていうのがあったと思います。
育ててくれはる使い手の人たち…見守ってくださったりとかそういう方々が京都は割と普通にまだまだいらっしゃいますしそれが「表」の名前がまだ広がっていく要因だと思いますね。
京都市中京区で明治時代から漆器作りを続ける工房がある
ここにも表派の職人がいる
代々茶道具を手がけてきた
抹茶を入れる棗
優れた茶道具には茶席の空気を変える力があるという
茶の湯を表現するのに欠かせない大事な茶道具
茶人それぞれにこだわりを持つ
季節に合うたもんとかそのお茶席にふさわしい…ストーリーが紡ぎやすいテーマを考えたりはしますけど。
先代はしっかりとした下地の上に白漆そして古典的な図柄の桜や梅を新しいデザインで描いた
更にアクリル地に漆を塗る新しい技法も誕生させた
まあ続けるのが大事かなって…。
続けられるだけ続けてっていうだけかな。
時代のムードを読み使い手の人柄や趣味趣向を考え妥協のない仕事をする
漆職人が京都の文化を支えている
日本はね直接口に食器を付けられるという文化を持ってますから洗練されたものっていうのは結局口に触れるその触感というか口当たりっていうのを重視されていたと思いますけれどね。
木を漆で覆うことで柔らかな口当たりの器になる
唇が器に触れるその瞬間も料理の一部なのか…
そして料理を食べ終えると美しい蒔絵が現れる
漆器の特徴を生かした京料理の演出
先の三木表悦の工房には表派の心を学ぶことができる代々の漆器が大事に残されている
初代表悦が作った茶托
100年以上前に作られたにもかかわらずゆがみや欠けはまったくない
木地作りから仕上げまで一切手抜きのない仕事を裏付けている
祖父が作った刷毛目が残る雑煮椀
(三木さん)うちの祖父は90ぐらいまでは仕事場に座ってたんですよ。
技術でいえば60代のときよりは90代のときは下がった仕事をしてますけれどもすごくあったかみのある雰囲気のある器になってるので…あの…下手っていうのとはまた違う雰囲気。
きれいに塗ってあるからいいっていうことではなくその雰囲気っていうのがまねできないんです。
なかなか理屈では分かってるんですけど実際自分がそれができるかっていったらなかなか難しいのでようやくだから父…ようやく父祖父初代がすごいなっていうことが分かるぐらいの勉強はできてきたかなと思いますね。
乳児は生後100日目にして漆職人の技に触れる
料亭や茶席で客人と主がもてなしの空間で心をつなぐ
その陰には京都の漆器職人の仕事が息づいている
およそ50年ぶりに復活した園祭後祭をご紹介します
2014/08/24(日) 06:15〜06:30
MBS毎日放送
美の京都遺産[字]
「京うるし・もてなしの心をつなぐ」
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
福祉 – 文字(字幕)
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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