(福島)皆さんおはようございます。
番組の案内役を務めますMBSアナウンサーの福島暢啓です。
この「らくごのお時間」では毎月1回寄席にお邪魔しまして落語を一席お届けしております。
さて今回私は2008年に完成しました大阪市西成区にあります動楽亭に来ております。
動楽亭があるのは大阪のシンボル通天閣がある街いつも大勢の観光客であふれています。
動楽亭は地下鉄動物園前駅のすぐそばにあります。
ここでは毎日のように落語を聴くことができます。
そんな動楽亭で先日落語会を開きお客さんに落語二席をご覧いただきました。
その中から本日は桂団朝さんの落語をご覧いただきます。
(桂団朝)「見事なまずさ…」。
芸歴27年…。
団朝さんは1987年に人間国宝の桂米朝さんに入門しました。
芝居好きが高じて数々の舞台にも出演しています。
さあ演目は…。
一体どんな男なんでしょうか?
(出囃子「浪花小唄」)
(出囃子「浪花小唄」)
(拍手)ええ〜どうも。
ただいま拍手いただいたお客様のみ厚くお礼を申し上げます。
ようこそこの動楽亭秘密クラブへお越しいただきましてね初めて来はった方さぞ勇気のいったことやろうと思います。
大変でございますよ。
ここも寄席終わったらとっとと帰りはる人多いんですよ。
逃げるように駅へ向かっていく人が多いんでございますけどね。
なかなか私もこの辺好きでございますからもう毎日のようにこの辺で飲んでたりするんでございますがしかし観光客も増えましたですね。
また新しい店がどんどんと出来てるんでございます。
昔から大阪は粉もん文化ってなこといわれてたりしますけどねやれB級グルメとか…。
こないだも通りましたらそこに新しいたこ焼き屋が出来てましてね面白い店のネーミングでございますよ。
よう「本家」とか「元祖」とかありますけどこの間通ったとこなんか「元家」って書いてましたですね。
(観客たち)あははっ。
どんなんやと思うんですけどね。
ほんで店の名前が「しらんがな!!」いうて訳分かりません。
(観客たち)あははっ。
大阪ならではでございますね。
まあよかったら確認に行っていただきたいなと思ったりするんでございますが。
またこの大阪この界わいもそうなんでございますが大衆演劇の劇場が結構あるんでございますね。
大衆演劇…ご存じでございますかねいわゆるところの旅芝居というやつ。
1か月単位で芝居打っては次の公演地へ行って旅から旅で芝居をしてるという。
大衆演劇の劇団が今ざっと日本に150ほどあるっちゅうんでございますね。
で劇場がどれぐらいあんのかといいますと150の劇団に対して36ぐらいしかないんですね劇場が。
でまあ劇場だけでは数合わんやないかなんてお思いでございますけどねほかにもいわゆる温泉旅館とか観光ホテルやとか昔のヘルスセンター今で言うところの健康ランドとかこういう所でお芝居をする舞台があったりしてねまあお湯につかってそのあとお芝居見れるというそういう施設がありますんでそういう所なんかも合わせますとちゃんと数が合うみたいでございますが。
劇場が大阪にはたくさんあるんでございますな。
この界わいだけでも通天閣の真下に浪速クラブやとか朝日劇場信号渡っていただきますとオーエス劇場いうてねちょっと足延ばしますと西成の鶴見橋の方には鈴成座とかねちょっと南へ行きましたら梅南座いうてねこっから歩いていけるとこだけでも5軒からあるんでございますな。
まあ大阪の梅田にも劇場出来ましたし京橋…十三の方にも昔ストリップ劇場やった所が劇場に替わったりとかね。
今度また阪急沿線で来月でございましたかな豊中の方にも庄内に劇場が出来たりという形で結構大阪は盛んで激戦区とこない言われてるんでございますな。
低料金で楽しめます。
だいたい3時間15分から20分ぐらいの興行を1日2回やってるんでございますな。
安う入ろうと思いましたら前売り券で1000円で入れたりするんでございますね。
なかなか面白い所でございますが昔は芝居が2本立てやったんでございますけどね前狂言切狂言…芝居2本で座長の口上挨拶というのがございます。
これが明日の替わり狂言…「今日はこんなん見ていただきましたんで明日はこんな芝居ご覧いただきましょう」ってなこと言うてね座長自ら次の日の宣伝をしてね。
第3部が歌と踊りのグランドショーというねたまにテレビなんかで見かけたりしますけど一万円札でレイ作ってもうてねお客さんからプレゼントされたりとかまあ座長が女形で踊ったかと思うとすぐに着替えてきて男になってまた歌歌たりとか。
最後フィナーレで座員総踊りでございますな。
こういうなんを見せたりという。
だいたいこういう番組でやってるんでございますが今は前狂言というのはほとんどなくなりましてねお芝居は1本だけ切狂言だけでございまして1番目は顔見世ショーいうてねうち座員こんなんいてますよというのを見せといてお芝居やって最終的にショー。
こういうことになるみたいでございますがまあただ座員が不足してるみたいでございましてねどうしても旅から旅続けていくわけですからファミリー的な…家族的な劇団ばっかりになってしまいます。
人数が足らん。
そうなると座員を募集してると。
まあ劇場なんかたまに通ったりしますと表に「劇団員募集」とかね看板出してるところあったりするんでございますがまあそういう看板が出てますとまた若い者が飛び込んでくるという。
そういったところを扱いました噺を聴いていただきましてお楽しみをいただこうとこういうことでございますが。
「さあさあどうぞこっち上がっておくんなはれ。
私が座長の佐野川玉五郎でございます。
お話を伺いますとつまりあんたはうちの一座に入って芝居がしたいとこうおっしゃりまんねんな?」。
「はい。
どうぞよろしゅうにお願いをいたします」。
「いや〜見てもうたら分かるとおりうちもしがない旅回りの大衆演劇の一座でなましてご当地は初の目見え今日が初日。
朝からバタバタしててとても新しい座員を増やすってな余裕もないようなこってな」。
「そら重々分かっております。
私あの〜お給金を頂こうやなんて思ってしまへんねん。
舞台へ上がってただただ芝居がしとうおます。
どうぞよろしゅうにお願いをいたします」。
「ちょっと待っておくんなはれ。
あんたお金やないというが…」。
「はい。
私が芝居をしたいのにはそれなりの深い訳がおますねん」。
「えっ?訳っちゅうと?」。
「はい。
小さい頃に生き別れになった母親にひと目会いとうございます」。
「えっ?おっかはんに?」。
「はい。
まあ座長さん聞いておくんなはれ。
私の母親というのはある田舎町のそこそこの家の娘やったんやそうでございます。
ところが大の芝居好きでございましてな芝居がかかると近所の町にでも見物に行こうというぐらい熱心な客でございました。
あるとき町の芝居小屋に尾上菊太郎という役者さんの一座がやってまいりまして…」。
「えっ?尾上菊太郎?ゼンさんあんた尾上菊太郎って名前知ってるか?えっ?ああ〜そうか。
私もこれなんやお名前だけは聞いたことあるような気もするんやがな…」。
「そこの二枚目役者の尾上菊松というのにうちの母親がえらいほれ込んでしまいましてとうとう深いええ仲になってしまいました」。
「おお〜そらまあようあるもんのこっちゃな」。
「へい。
そらもう死ぬの生きるのとえらい騒ぎやったんやそうでございます。
ところが座長の菊太郎というお方がえらいさばけたお人でおい菊松お前もいつまでもおしろい塗って暮らすよりこれをきっしょに堅気になれと諭してくれはりまして役者の世界から足を洗うて堅気になりうちの母親と晴れて夫婦になりました。
その翌年に生まれましたのがこの私でございます」。
「えっ?あんたが?」。
「へい。
まあおやじも私が生まれてからしばらくの間は堅気の暮らしをしておりましたが役者というのは3日やったらやめられんのやそうで足の裏が板をよう忘れんというのかなんというのか…。
あれはあっしが3つになった春の日のことでございました」。
(観客たち)はははっ。
「町の芝居小屋に旅役者の一座がやってまいりましておやじは私の手を引いて芝居見物に行く。
ところが小屋の匂いをかいで木頭の音を聞いてるうちに役者の血が騒ぎだしたのでございます」。
「なるほど」。
「おやじはその場で私を捨て母親を捨ててその一座に加わることを決めました。
で3つになったばかりの私の頭をなでながらなあ坊主。
ちゃんはこれから御用があって行かなきゃならねぇ。
おめぇはこっからまっすぐ一人でうちに帰るんだ。
私は父親と離れるのがただただ恐ろしぃてちゃんおいらも一緒に連れてって。
その日から我々親子は故郷を売ったのでございます。
荷車に乗せられて町を外れるとき峠の桜は満開でございました。
私が母親のいる家の方を振り返ろうとすると振り返っちゃいけねぇ。
未練を残しちゃいけねぇよそう言うおやじの頬には無情の風に吹き散らされた桜の花びらが涙で1枚くっついていたのでございます」。
「ああ〜つらかったんやろな」。
「へい。
それから20年あっしとおやじは旅役者として暮らしてまいりました。
ところがおやじもふとしたことで患いつき見も知らぬ場末の芝居小屋の楽屋で息を引き取りました。
もう一度…もう一度おめぇをおっかあに会わしてやりてぇなぁ。
いまわの際にこの言葉を残してあの世とやらへ旅立ったのでございます。
それから5年あっし一人旅役者の端くれとしていろんな劇団でお世話になりながら日本国中の芝居小屋健康ランドヘルスセンター回らせていただいております。
いやそれもこれも小さい頃に生き別れになった母親にひと目会いたい一心でございます。
おやじの名前尾上菊松の名を名乗って舞台に上がってさえすればその名に惹かれて恋しい母親が会いに来てくれるんじゃねぇかと。
ううっ…。
笑ってやっておくんなさい。
いくつになってもガキはガキだ。
30に近い身を持っても母親の前では別れた頃の3つのまんまだ。
おっかちゃん会いたかったよただすがりつき泣きてぇんでござんす。
その日が来るのを楽しみにおやじの位牌を抱いての旅の空でござんす。
おいらおっかさんに会いたくなりゃ上と下との瞼を合わせりゃ会わねぇ昔の優しいおっかさんの面影が浮かんでくるんでございますよ」。
「くぅ〜!ええ話やな。
いやいや菊松さんとやら頭上げておくんなはれ。
私も座長生活25年の佐野川玉五郎や。
まあ大船に乗った気でと言いたいところやけれども渡し船ぐらいに乗った気でいとくんなはれ。
うちの芝居でよかったら今夜から舞台に立ってもらいまひょ」。
「なら座長!」。
「菊松さん」。
「ならば今日からこの小屋で…」。
「母に見せてぇ夢芝居まあしっかりやっておくんなせぇよ」。
「ありがとうございます。
ありがとうございます」。
「いいってことよいいってことよ。
でね今日はね初日やいうても昼の部はおませんねや。
夜の部からの開幕。
夜の部からの初日ということで明日から昼夜昼夜とこういきまんねんけれどもな夜の部が初日になってます。
また夕方になりましたら皆で稽古をしますさかいそのころに訪ねてきておくんなはれ」。
「どうぞよろしゅうにお願いをいたします」。
「座長おはようさんで」。
「おっこら小屋主さんひとつ1か月よろしくお願いをいたします」。
「いやいやそらよろしいねんけれどもね座長今出ていったあの男は…」。
「さあそれですねや小屋主さん私もう涙しましたで。
なんでもね小さい時分に生き別れになった母親を訪ねて日本国中旅してるというえらい気の毒な身の上のお方でな…」。
「へえ〜。
今日はその手で来よりましたか」。
(笑い)「ん?いやその手っちゅいますと?」。
「いやあいつはねこの町では知らん者のないぐらいの大の芝居極道でなもう稼業ほったらかしては芝居ばっかりして遊んでますんやがな。
うちの小屋へ初めて乗った劇団があるとそこへなんじゃかんじゃ言うて潜り込んでは役者のまねして喜んでますねやがな」。
「えっ…ええ〜?ほたら今のうそ!?作り話?いやけどなんやおやじさんの位牌持ってました」。
「位牌ぐらい持ってまっしゃろ。
あいつこの町の仏壇屋のせがれやもん」。
(観客たち)あははっ。
「えっ!?ほたらあれ商売物でっか?」。
「そうでんがな。
位牌でも骨壺でも売るぐらいおますがな。
ええ〜あんた一座に入れなはった?わっちゃ〜もうちょっとはよ来たらよかったなぁ。
はぁ〜あ」。
「おかしなため息つきなはんな。
えっほたらなんでっかあいつ素人芸で芝居を壊しよりまんねんな?」。
「いやいやまあ芝居が好きなだけに壊すということはないと思いますけど。
こんなこと言うたらなんやけれどもね玄人の下っ端よりもかえって達者ってなもんなんやけど…」。
「達者やったらよろしいがな」。
「達者が達者すぎるというかな。
まあ今夜ひと晩つきおうたら分かりますわ。
はははっ!」。
「笑いなはんなほんまに。
えっ?なんやもう心細なってきたな」。
「座長昼間はどうも失礼をいたしました。
菊松でございます。
どうぞ今日からよろしゅうにお願いをいたします。
おいらなんだか今夜おっかさんに会えそうな気がいたしやす」。
「何を言うてんねん。
人をだましやがってほんまに。
お前この町の仏壇屋のせがれやないかい」。
「えっ?あっもうバレましたか?ははっ」。
「笑うなほんまに。
ほんまに途中で話してて言葉の調子が変わったさかいにおかしいなと思わんでもなかったんやがどっかで聞いたことあるセリフが交じってると思ったらあれはお前「瞼の母」やないかい」。
「ははっ分かりますか?さすが座長!玉五郎!」。
「褒めていらんわ」。
「ほたら今日の芝居はあきまへんか?」。
「当たり前じゃと言いたいところやけれどもな実はうちの座員の一人が最前から腹痛起こしよってな…」。
「しめた!ほたらわたいがその代役を!」。
「前へ乗り出すなほんまに。
素人に頼みたいことはないけど背に腹は代えられん。
それに初めて乗った劇場や。
一人でもぎょうさんの座員を並べたいのがわしの気持ちや。
ほたらもう今夜ひと晩だけやで」。
「ありがとうございます。
で今日のお芝居は?」。
「お前に出てもらいたい芝居はな一本刀土俵入や」。
「一本刀土俵入私の大好きな狂言でんがな。
長谷川伸先生の不朽の名作でね相撲取りをクビになった駒形茂兵衛が国へ帰ろうと取手の宿の我孫子屋で出会うたんが酌婦のお蔦ですわ。
このお蔦が茂兵衛の話を聞いて同情してかわいそうなっちゅうて2階から巾着ぐるみの金をポンとくれてやりまんねんな。
それだけでは足りんやろうっちゅうんでくしかんざしをしごきにくくって2階から下ろしてやりまんねん。
それを押しいただいて茂兵衛はもう一度相撲取りの修業をし直してきっと横綱になってねえさんに土俵入りを見てもらいますと言うてその場を去っていく。
さあそれから10年たった春の日のことですわ。
このお蔦には辰三郎っちゅう旦那とお君っちゅうてひと粒種の娘がいてまんねやけれどもこの亭主が魔が差したというのかいかさまバクチに手ぇ出して土地のヤクザに命を狙われまんねん。
あわやというときに現れたんが見知らぬ旅のヤクザですわ。
この旅人というのが誰やろう10年前お蔦に恩義を受けた駒形茂兵衛の成れの果て。
ねえさんに御恩返しするならこのときばかりと土地の大親分波一里儀十をやっつけてお蔦一家を逃してやるという大詰めがよろしいな。
桜の木をバックにしてね棒っきれを振り回してする茂兵衛のこれはしがねぇ姿の土俵入りでござんす〜!。
いやなんて…。
よし茂兵衛をやろう!」。
「なんでやねんおい」。
(観客たち)あはははっ。
「なんでお前に主役やらさないかんねん。
茂兵衛はわしの持ち役や。
お前にやってもらいたいのは相手の…」。
「お蔦ですか?白塗りで頑張ります」。
「違う違う。
お蔦はうちの嫁はんがするがな。
いやお前にやってもらいたいのは敵役の…」。
「はあ。
波一里儀十」。
「勝手に役決めなっちゅうねんほんまに。
お前にやってもらいたいのは波一里儀十の子分や」。
「はあはあ。
敵役の子分。
でなんちゅう名前の?」。
「名前なんかあるかいな。
名もない子分その4や」。
「ええっ?名もない子分でしかもその4?」。
「嫌やったら出てもらわんでええ」。
「いやいや一生懸命やらしていただきます」。
「ほたらちょっと稽古をするさかい舞台の方へ行って」。
大衆演劇の世界というのは口立て稽古というのが主流でございましてね我々の前座修業の師匠からの稽古口移しと同じようなもんでございますな。
今日この芝居をするぞとなりますと座長が座員を前へ並べましてね「はいお前この役この役この役」。
配役だけ決めますと座長が一人で…みんなのセリフも一緒でございますがばぁ〜っと芝居をしゃべっていくんでございますな。
そのときにセリフをもうてる人間がどんどんそのセリフを…自分のところを取っていって舞台にかけてしまうという。
ですから大衆演劇の役者さんというのはこういうことを毎日やるわけでございますから腕がなかったらできへんような仕事やなと思うたりするんでございますが。
まあ簡単な稽古が済みましてあらかたの立ち回りも手を合わしますといよいよ幕が上がります。
佐野川玉五郎劇団の初日でございます。
番組の内容はといいますと1部2部が通し狂言で「一本刀土俵入」。
そのあと座長の口上挨拶明日の替わり狂言のご披露がございまして第3部が歌と踊りのグランドショーとこういう段取りでございますが。
幕の方は開きまして芝居はトントントンと進みますな。
駒形茂兵衛がお蔦一家を逃してやるというところで波一里儀十の子分がどんどんと掛かってくるんでございますが子分その4だけが…。
「あっいとれへんがな。
はは〜ん役が気に入らんっちゅうてすねてずらかりよったなほんま。
あんなやつの1人や2人おらなんでもどうっちゅうことあるかい」。
鮮やかな立ち回りの末土地の大親分波一里儀十をやっつけましてお蔦一家を逃してやるという座長のいちばんええところでございますな。
「お蔦さん飛ぶには今が潮時でござんすぜ」。
「お蔦から話を聞きました。
僅かなことをいついつまでも思っていただいて」。
「いらねぇ辞儀だ。
さあ早くお行きなさんせ。
知らぬ他国で親子3人いついつまでも仲よくお暮らしなさんせよ」。
「茂兵衛さんお名残惜しい」。
「いいってことよ。
さあさあさあ早く早く早くお行きなさんせ。
行ってしまったか」。
「お蔦さん!」。
ゴーン
(鐘の音)「思い出されても面目ねぇが今からちょうど10年前取手の宿の我孫子屋でくしかんざし巾着ぐるみ意見をもらったねえさんにせめて見ていただく駒形のこれがしがねぇ姿の土俵入りでござんす〜!」。
「駒形さんお待ちなさい!」。
「えっ?」。
(観客たち)あはははっ。
「そんなセリフあったか?おい」。
(観客たち)あははっ。
「どどど…どちらさんでござんすか?」。
「私ですよ。
お見忘れですか?」。
「えっ?誰やねん?あっ!仏壇屋のせがれや!いてへんと思ったら勝手に衣装着替えてるがな。
えっなんやねん?黒紋付きに袴着けて足革靴履いてるがな。
どういうこっちゃ?えっ?しかし受けなしゃあないな。
ええ〜どちらさんでござんすか?」。
「私ですよ。
お見忘れですか?坂本龍馬です!」。
(観客たち)あはははっ。
「坂本!?そんなもん一本刀に出てくるかい。
小屋主笑うとったんここのことやな。
何をすんねんな。
穴あけるわけにいかんさかい…。
これは坂本先生お恥ずかしいところをお目にかけました」。
「駒形さんこの場は私が引き受けました。
さあ一刻も早くこの場から立ち退きなさい」。
「ええっ?ならば坂本先生…」。
「駒形さん」。
「あとはお任せいたしました」。
「さあさあ早く早く早くお行きなさい。
ああ〜行ってしまったか。
おお〜日が昇る!日本の…」。
カン!
(木頭)「夜明けは近〜い!」。
カンカンカンカンカン…「なんでやねんほんまに」。
(観客たち)あはははっ。
「なんでやねん。
情けないわほんまに。
なんで座長25年も張っててあんな幕切れの木頭素人に持っていかれないかんねんほんまに。
ゼンさんまたなんであんなとこでちょん入れたんや」。
「すみません。
私仏壇屋さんにご祝儀もろたんでつい」。
「ついやないぞお前。
それやったら明日から仏壇屋へ勤めに行け。
ほんま腹の立つ。
わしはやる気がのうなった。
第3部の歌と踊りはカットにしよう。
でお客さんには申し訳ないけど招待券丸札を配ろう。
で明日来てもらおう。
明日の昼の部を初日ということでな」。
「座長」。
「なんや?ゼンさん」。
「心配しはらんでも第3部の歌と踊りもう幕開いてまっせ」。
「何をすんねん。
えっ?わしが出てへんのにやでなんで第3部の歌と踊り幕が開くねん?」。
「いや仏壇屋さんがね勝手に幕開けてオープニングにチャンチキおけさ歌うてはります」。
「何をすんねん。
三波春夫のチャンチキおけさはわしの十八番やないかい。
ほなあいつにこの一座乗っ取られてるようなもんや」。
「いや〜けどね座長なんやかんや言うてもやっぱり素人の仏壇屋ですな」。
「ああ〜なるほどやっぱりあいつ芝居はできても歌は下手か」。
「いやいやあれだけ器用に歌えるやつはうちの一座にもいてまへんで」。
「ほう?ほたら何がいかんねん?」。
「歌と歌とのつなぎのしゃべりがなってまへんな。
特にお年寄りのお客さん皆気ぃ悪うしてはりまっせ」。
「ほう?あいつ一体何を言いよったんや?」。
「歌歌いながらにた〜っと笑うてお客様は仏様です」。
(観客たち)あははっ。
(拍手)
(受け囃子)桂団朝さんの落語をご覧いただきました。
MBSの番組にも…。
はい。
いわば素人の時代といいますか芸人さんになる前に出てらっしゃったというふうに…。
「素人名人会」ね。
ねえ。
漫才ですね。
あっ漫才を最初…。
成績もよかったというふうに…。
いやもう名人賞。
名人賞。
高校2年で1回取ってそのコンビでそのまま高3になってまた名人賞取って。
小さいときからいずれ漫才書いて出たろうというのも一つの夢やった。
で漫才をされてなぜそこから落語に?まあ落語も小さいときから見てましたけどあるとき「米朝独演会」で「帯久」というネタがあるんですけどねそれをうちの師匠がやってるのを見てすごいなと。
これは時代劇やと。
それでこっちは泣いて笑うてまた泣いてみたいな。
でこれやと。
落語がここまでできるとは知らなんだと。
はあ〜。
じゃあもうそこからはすぐに入門と…。
まあとりあえずなんとかこの人のとこ行かれへんかなみたいなことでね。
はあ〜。
団朝さんというお名前ですけれどもこのお名前には何か由来があるというふうに伺ったんですけど。
まあ入門して5日目ぐらいでしたけどまあ仕事から帰って来て師匠が晩酌しだしたときに「おいちょっと書くもん取れ」言いはってね「米太」「米孝」って二つ書いて「どっちか選びなさい。
これおまはんの芸名にするから選びなさい」と。
そこですぐ指さすこともできずにうなだれてたんですよ。
ほんで「なんやおまはん」いうて。
僕は体が大きかったんで…。
ずっと「団長」が通り名になってたんでうちの師匠に入門するにあたって送別会をしてくれたときに友達が「お前せっかく団長ってええあだ名あんねんから米朝さんとこ行けたら団朝が芸名にならへんかどうかいっぺん米朝さんに聞けよ」って言われてたんですよ。
「実はこうこうこうで」って言うたら「ええ話やないかい」言うてその場で今の字ね団朝っていうのを書いて「団な。
これ6画や。
米朝の米と一緒や。
ほなわしとおんなじ画数やな。
あっええ名前や。
ほんならお前今日から団朝。
よし団朝。
お前今日から団朝。
でこれで売れなんだらお前の責任」ってこう言ってくれた。
(一同)あははっ!確かにそうですね。
言われてみればそうですよね。
今後目標など何かありますでしょうか?やっぱりね噺家ですから…「落語ってね年寄りのもんや古くさい」とか…それいっぺん聴いて肌で感じてから言うてもらうのはええけども見もせん聴きもせんと言われるのはつらいんでそれやったらそんな人の前でいっぱいやりたいですね。
できるだけ初めて見るお客さんの前で…。
初めての人にやっぱり知ってもらえるような機会欲しいですよね。
はあ〜。
生で聴いたことないっていう人がいてたらそこへ行って耳元でもやりたいですね。
(一同)あはははっ!ということで団朝さんにお話を伺いました。
どうも今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
桂団朝さんも出演する「桂南光独演会」があさって火曜に豊中市立アクア文化ホールで行われます。
詳しくは番組ホームページまで。
次回は9月28日放送。
お楽しみに。
2014/08/24(日) 05:00〜05:30
MBS毎日放送
らくごのお時間[字]【桂団朝◆創作落語「座長の涙」】
<第11回>桂団朝◆創作落語「座長の涙」〜大阪市西成区の動楽亭で行われた寄席の様子をお届けします。▽月1回、第4日曜の朝に本格的な落語を一席。
詳細情報
お知らせ
月に1回、寄席小屋を訪れて、脂の乗った落語家の落語を1席お届けします。
番組内容
桂米朝さんの弟子、桂団朝さんが創作落語「座長の涙」を披露します。
出演者
【落語】
桂団朝
【案内人】
福島暢啓(MBSアナウンサー)
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – お笑い・コメディ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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