次の検案は吉崎さんにお願いしましょう。
やらせてもらえるんですか?私はおととい父を見たんですよ。
私も見ました。
死後1日にみられるよう誰かが遺体に工作したんでしょう。
あの絵は花鳥風月と揃って1つの作品だ。
最後の『月』が未完成では価値が半減する。
阿部氏の検案書が訂正できないもんかなって。
じゃあ書き直しますか。
え?私は嫌です。
監察医になって最初の検案にウソを書くなんて。
私はできません。
監察医吉崎薫子です。
私たち関東監察医務院は年間14,000ものご遺体の死因を追究し声なき声に耳を澄ませます。
ここの人たちは皆独特な着眼点を持つスペシャリストばかりなのですが私の上司秋田先生を筆頭にとにかくみんな風変わりでいつも振り回されっぱなし。
そんななかご遺体に対する入念な検証の果てに待っているのは意外な真実。
予想もしなかった衝撃の人間ドラマにたどり着く刺激的な毎日です。
死人に口なしなんてことは全然ないのです
さっきのご遺体…。
定形縊死でしたね。
体重がすべて頸部にかかってましたから。
(美恵子)おっなんか薫子ちゃん監察医っぽい。
毎日秋田さんに鍛えられてますからね。
別に鍛えてません。
普通に仕事をしてるだけです。
それでも他の監察医の下につくより苦労するんだから。
そうなんですか?他よりたいへん苦労したぶん成長も早いんでしょうね。
そんなに成長したなら次の検案は吉崎さんにお願いしましょう。
え?やらせてもらえるんですか?年間14,000体も検案しなきゃいけないんです。
あなたにも早く独り立ちしてもらわないと。
頑張ります。
はいもしもし。
はいわかりました。
新しい検案が入りました。
池田刑事いらっしゃいました。
あっご苦労さまです。
すみません急なお願いで。
いえ。
ご遺体は?あちらです。
これもういいね?はい。
(山倉)ご苦労さまです。
どうも。
画家の方ですか?阿部幸四郎ご存じない?あぁ!なんか有名な人ですよね?
(真治)なんか有名な?
(真治)現代日本絵画の第一人者。
美術界の宝です。
失礼しました。
知りませんでした。
私はテレビで見て知ってましたよ。
あの方は阿部先生のご子息の真治さん。
画家としても先生の一番弟子だったそうです。
遺体を発見したのは彼です。
お父さん展覧会の件でご相談があります。
お父さん。
お父さん?それが1時間ほど前です。
急いで救急車を呼ばれましたがすでに心肺停止状態でした。
阿部さんはここで1人で暮らしてらしたんですか?あいえ。
上の階にお手伝いの子がいて。
失礼します。
これが最近先生宛てに来たお手紙です。
ありがとうございます。
あっこの子です。
三崎亜都美。
食事を出したり身の回りの世話をしに時々来てます。
私がもっと父の健康を気遣っていればこんなことに…。
では検案を始めますのであちらでお待ちください。
あぁ…ではお願いします。
じゃ吉崎さんどうぞ。
え?私ですか?次やっていただくって話でした。
はい。
え?大丈夫?任せてください。
検案やるよ。
遺体運ぶ。
よろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
まずは眼瞼。
はい。
死因はおそらく心筋梗塞あたりでしょう。
それは私が決めることです。
すみません。
では我々は息子さんからお話を伺ってます。
池田おい。
何だろうこれ?ん?あ〜金粉かなぁ?採取しておいたほうがいいでしょう。
(2人)はい。
サンプリングお願いします。
はい。
では胸腔内穿刺。
はい。
ここです。
はい。
心膜内から血液が引けたので心タンポナーデですね。
では死亡推定時刻を。
直腸内温度は?はい。
26℃です。
26℃…。
体温を37℃として今26℃ということは…。
死後経過時間24時間前後です。
つまり死後約1日です。
阿部先生と最後に会ったのはどなたでしょうかね?たぶん私です。
昨日の夕方お食事を…。
先生お食事です。
そこに置いておいてください。
置いておきますそのお食事はお食べになったんですか?いえ手をつけないままでした。
先生は仕事に夢中になると1日〜2日何も食べないことがよくありました。
私も昨日の昼間ここへ来たんですがそのときも…。
お父さん大丈夫ですか?
(扉をステッキで叩く音)それ以上邪魔しちゃいけないと思って帰りました。
検案終わりました。
終わりました。
はい。
死因は心筋梗塞です。
結局心筋梗塞ですか。
死後推定1日前後です。
後ほど検案書をお渡しします。
はい。
どうもありがとうございました。
父はこの絵を描きあげて命が尽きたんですね…。
素人の私が見てもすばらしい絵だと思います。
あぁ…。
これは花鳥風月シリーズの最終作『月』です。
『花』『鳥』『風』と描きあげて10日ほど前からとりかかっていたのがこの『月』です。
普通なら完成するのに2週間はかかるところたった10日で…。
本当に見事な遺作です。
あの人は何をやってるんですかね。
さあ…。
ご遺体は明日監察医務院で解剖をさせていただきます。
(一同)えっ?解剖?だって遺体に不審な点はなかったんでしょう?念のためです。
困ります。
父は有名人なんですよ。
死去の一報が出ればマスコミが押しかけます。
それは大変ですね。
はっ?じゃ搬送の手配をお願いします。
ちょっと…。
失礼します。
失礼します。
ちょっと…。
池田手配。
では始めます。
(一同)はい。
後頭葉にわずかな萎縮があるようですね。
組織をとります。
はい。
他に死因になる病変はありません。
心臓の冠動脈前下行枝の高度硬化と血栓形成。
心破裂による心タンポナーデ…。
死因は心筋梗塞で間違いありません。
やっぱり心筋梗塞じゃねえかよ…。
ではこれで…。
ちょっと待ってください。
はい?これを見てください。
え…。
ここ…どう思いますか?あれ?胃が融解して穿孔してます。
明らかに死後の変化です。
その他の臓器の融解状態も進んでます。
え〜ということは…。
ということは?あのこれって昨日言った死後1日と違うっていうか…。
(山倉)え?違うってどういうことですか?いやあのつまりその…。
臓器をみるかぎり死亡推定時刻はおよそ72時間前。
死後すでに3日は経過しています。
えっ3日も?1日じゃなくて?死後3日?いや昨日は1日前だって。
そうなんですが…。
直腸温度からすると死後1日という判断は妥当です。
しかし私はご遺体の硬直に違和感を感じたんです。
あの硬直は死後硬直したあとなにか物理的なものによってその進行が止まりまた再硬直した痕跡がありました。
個所によって硬直の度合いにムラもありました。
それで念のために解剖したんです。
内臓の融解の状態をみたところ明らかに死後3日ほど経っています。
バカバカしい。
私はおととい父を見たんですよ。
私も見ました。
でもお二人が見たのはすりガラス越しでしょう。
絵には父のサインも入ってましたよ。
え〜と…。
私たちは法医学的観点からご遺体をみて判断するのが仕事なんです。
それ以外の要素は関係なく…。
(真治)関係ない?関係ないって言うんですか?じゃあなんですか?3日前に父が死んでたってことは誰か別の人間が父のふりをしてあの絵を描いていたってことですか?それは…。
阿部幸四郎の遺作にあなた方は泥を塗るつもりですか!こちら検案書になります。
受け取れませんよこんなもの!まぁまぁ…大丈夫です。
え?検案書の死亡日時ってのはあくまでも書類上のことでしてね公表する必要ってないんですよ。
そうですよね?そうなんですか?それはそうです。
じゃあこれはこれで受け取っておいて対外的にはお父様は1日前に死亡されたってことにすれば。
そりゃまぁそうでしょうけど。
これで丸くおさまった。
お疲れさまです。
お疲れさまです。
大変ですね。
あ…。
先生って厳しい人だったけどおちゃめなところもあって時々イタズラして私を驚かせたりしたんです。
そうなんですか。
あのとき私がガラス越しに見た先生って幽霊だったのかな?お疲れさま。
ご遺族はお帰りになったの?はい。
(山倉)やれやれ一時はどうなるかと思った。
(池田)う〜んでもどうして直腸温度と内臓の状態に食い違いがあったんですかね?簡単です。
死後1日にみられるよう誰かが遺体に工作したんでしょう。
(一同)えっ!また話をややこしくする。
誰がそんなことを。
でもどうやって?方法はあります。
例えば氷などで遺体を冷やして腐敗を遅らせる。
そのあと氷を取って遺体を環境温度に戻すと直腸温度も上昇して死亡推定時刻はごまかせます。
更に死後硬直の発現をマッサージによって遅らせるとか。
何のためにそんな手間のかかることを?可能性としてはこういうことでしょう。
阿部さんは3日前に絵が完成する前に死んでしまった。
あの絵は花鳥風月と揃ってひとつの作品だ。
最後の『月』が未完成では価値が半減する。
そこで誰かが代わりに絵を完成させ更に先生が昨日まで生きていたように偽装して先生の遺作に仕立てようとした。
まさか絵の価値を上げるためにそこまで?いやでも息子さんの口ぶりだと相当な価値になるみたいですよ。
じゃああの人が絵を描いて偽装工作もしたってこと?可能性はあります。
バカバカしい。
つきあってられませんよ。
おい行くぞ。
えっあっはい。
ファイト。
薫子ちゃん監察医としての初めての検案ご苦労さまでした。
すみません私が正しく検案してれば。
いやそれは難しかったでしょう。
だから念のために解剖したんです。
そうよ薫子ちゃんちゃんとやったわよ。
なにか飲まれますか?じゃあアイスコーヒーを。
では買ってこられてはいかがですか?プッ。
予定どおり父の作品展は開催させていただきます。
画家阿部幸四郎が最後に全芸術家人生を注いだ遺作を皆さんぜひ見にいらしてください。
この人なんだか芝居がかってるのよね。
ここでお父さんの絵の価値上げとけばこれからの人生左うちわでしょ。
必死なのよ。
やっぱり代わりに絵を描いたのはこいつなのかね。
ってことは詐欺罪か?それに遺体を工作したら死体損壊罪ですよ。
いいんですか?ほっといて。
これ一応警察には話したんでしょ?でも山倉さんたち全然相手にしてなかったわよ。
どう思う?薫子ちゃん。
(美恵子)あれ以来すっかり落ち込んじゃって。
秋田さんもまったくフォローする気配ないし。
じゃここは僕が。
まあ元気出しなよ。
出すってどこから出すんですか?え?人間の体のどこに元気とか希望とかそんなもの出てくる場所があるんですか?ああそうだね。
どこかね?あっあった!ウソ〜。
ハハハハ。
ハハ。
ハハ…。
ただいま。
おかえりなさい。
外の暑いこと。
薫子ちゃん秋田君もちょっと来てくれる?
(秋田/薫子)はい。
なんか死亡日時のことでもめてるらしいね。
もめてはいません。
事実を伝えただけです。
まあそうなんだけど先方じゃそれでおさまらないらしいんだよ。
検案の死亡日時を公表する必要はないということで納得されたんじゃないんですか?これが阿部幸四郎の遺作ってことであの絵が話題になってるときにもしも死亡日時のことがマスコミに漏れたらそりゃあ騒ぎになりますよ。
実はねさっきちょっと上の某方面から阿部氏の検案書が訂正できないもんかなって打診があったんだよ。
で書き直すっておっしゃったんですか?いやそれはまあ一応持ち帰って検討してみますなんてゴニョゴニョごまかしたんだけどもそれで済むわきゃないよな。
じゃあ書き直しますか。
え?いいんですか?しようがないでしょ。
ダメでしょそんな権力に負けるみたいな。
でもあの所見が正しかったことを我々は知っています。
書類に何と書いてあるかはたいした問題じゃありません。
院長は?院長のお考えはどうなんですか?私?私はほら長いものにはすぐ巻かれる男ですよ。
あっどう?この際一緒に巻かれない?巻かれます。
私は嫌です。
最初の検案がそんなことになるなんて。
まああの絵の作者は阿部さんじゃないという証拠を突きつければ先方だって黙るしかないと思うけどね。
じゃあそれやります。
どうやって?これから考えます。
とにかく監察医になって最初の検案にウソを書くなんて私はできません。
(亮子)いいぞ薫子ちゃん!
(拍手)僕が元気づけた効果がようやく出たようだね。
私たち応援するから。
ありがとうございます。
じゃそういうことで。
そういうこと…。
(亮子)行こう。
私権力に負けません!そうだ!
(美恵子)権力なんかに負けるな!やってやります!真実を追究しろ〜!追究します!
(柳田)なんかまずいことになっちゃったね。
まずいですね。
そうだキミが薫子ちゃんたきつけるようなこと言うから。
えっ僕ですか?ほら死亡日時書き直そうなんてわざわざかっかさせたでしょ。
院長こそ他の人間が絵を描いた証拠を見つけろなんてわざと言ってああいうの無茶ぶりって言うんでしょ。
こうなったら薫子ちゃんと協力して真相を究明して。
しかしそれは監察医の仕事とは…。
期限は3日。
それまでには返事するって上には約束したんだから頼みますよ。
あっ調査費用は出ないからね。
あくまでも非公式だからわかった?はい。
あ今返事したねじゃ。
あっいや…。
ありがとうございます。
一緒に調べてくださるんですね。
院長に無茶ぶりされたのでしかたなくやるだけです。
早速本題ですけど。
息子の真治さんと家政婦の亜都美さんおととい先生を見たと証言してますよね。
あれはウソってことですよね。
口裏を合わせてる可能性はありますね。
しかしそのウソを証明するのは難しいです。
それよりあの『月』の絵を描いたのが誰か。
それを突き止めるほうが早いんじゃないですか?それかえってハードル高くしてません?まあやってみないことにはなんとも。
絵を代わりに描いた人間か。
怪しいのはやっぱり真治さんですよね。
う〜ん。
あっいたいた。
ほいほい阿部さんの体についてたこれなんだけどね。
あ〜金粉なにかわかったんですか?成分は金銀銅が入ったごく一般的な金粉よ。
そっか死亡時刻とは関係なさそうですね。
そうとは言い切れませんよ。
鼻腔にあったということは死の直前に吸い込んだということです。
時間が経てば鼻水と一緒に外に出てしまいますから。
あそっかこれがいつどこでついたのか突き止めれば死亡時刻を確定する証拠になりますよね。
そういうことです。
どこかのお店でついたんでしょうかお酒の中に入ってたりするし。
ううんそれはないわね。
食用の金粉って最近安全のために金と銀だけで銅が入ってないの。
これは銅が入ってる。
じゃ食用以外か…なんだろう?う〜ん。
どうぞ。
ありがとうございます。
あの真治さんはいつ戻られますか?あっさあわかりません。
じゃ私仕事がありますので。
出直しましょうか。
いや彼女から先に攻めてみましょう。
えっどうやって…。
秋田さん勝手に触っちゃダメですよ。
あっ作品に触らないでもらえます?あっすみません。
ほら。
大変ですね先生が亡くなったあとまで。
私がやらないと真治さんにはわからないものもあって。
あっそうだ。
阿部さんのご遺体にこれがついてたんです。
どこでついたものかご存じないですか?あっわかりません。
ここにはありません。
先生は創作期間中はほとんど出かけませんでしたし。
そもそも亜都美さんはどういういきさつでここで働くことになったんですか?どうしてそんなこと聞くんですか?いえなんとなく。
私よく言われました。
あいつは先生の愛人だって。
私は別にそんなつもりじゃ。
構わないじゃないですか。
芸術家のなかには愛人がたくさんいてそれが創作の源になってる人もいるんでしょ。
残念ながら違います。
先生はいたって堅物でしたから。
これが私です。
私交通事故で両親を亡くしてこの養護施設で育ちました。
阿部先生はここに慈善活動に来てくださってたんです。
私が高校を卒業してしばらく経ったとき先生から身の回りのお世話を頼まれて。
あの『月』の絵は本当に阿部さんが描いたんでしょうか。
まさか本気で別の人が描いたと思ってるんですか?あ〜そういうわけじゃ。
疑ってます。
えっ。
実はあなたが描いたのかも。
ハッ…失礼なんだか素直なんだかわかんない人ですね。
すみません失礼がやや多めで。
素人があんな絵を描けるわけないじゃないですか。
じゃあ真治さんはどうですか?さあ確かにあの人は先生の一番弟子ですけど先生とそっくりに描けるものなのか。
阿部先生は日本を代表する画家です。
その絵を他の人が描いたなんて先生に失礼だし絵画をわかってない人の言葉です。
そうですか失礼しました。
あっ!気をつけてください!私がやります。
あっあっ。
すみませんでした。
あっ。
あっどうも。
なにかご用ですか?ちょっとお話をお聞きしたくて。
話なら今も警察でさんざん聞かれてきたところですよ。
私はねあの日父があの部屋で仕事をしてるところを見たんですよ。
ん〜でもあのすりガラス越しでしょう。
本人と断定できますか。
私は見たことを話しただけです。
フフッ警察じゃ私が父の代わりにあの絵を描いたなんて聞かれましたよ。
描けるんですか?多少似せて描くくらいはね。
ま本物には遠く及びませんよ。
はぁ〜あなたもね少しは芸術に触れればそんなバカなことは言わなくなります。
どうも。
帰りましょう失礼します。
失礼します。
(ため息)真治さんが絵を描いたかどうかもっと突っ込まなくていいんですか?真治さんは描いていません。
えっどうしてですか?帰ってご説明します。
あの『月』の絵いやあそこにあったすべての絵は右利きの人物によって描かれたものです。
えっどうしてわかるんですか?なぜなら陰影を表す斜線が右上から左下がりにこう描かれていました。
左利きの人なら左上から右下へのこういう斜線になるのがしぜんです。
あっほんとだ。
右手と左手で描きやすさが全然違う。
お〜ほんとだ。
かのレオナルド・ダ・ヴィンチも左利きだったと言われています。
彼が残した多くの素描ではこういう右下がりの斜線が多く見られるからです。
そして真治さんは左利きでした。
あっ。
あの絵を描いたのは真治さんではない。
そうなると残るのは?亜都美さん?でも彼女絵は素人だって。
それを証明できますか?それは…。
ところで皆さん何を描いているんですか?私はヒマワリ。
私は猫。
お相撲さんです。
あ〜なるほどまレベル的には中学生小学生幼稚園ってとこですかね。
も〜そんなこと言うなら秋田さん描いてみなさいよ。
そうよさぞかし上手なんでしょうね。
いや私は芸術は鑑賞する側に徹しております。
では。
逃げた。
下手クソなのよ絶対。
吉崎さん明日一緒に芸術に触れに行きましょう。
えっ私?いやらしい目で芸術を見ないでください。
このモデルは側弯症ですね。
わずかですが脊柱が曲がっています。
もういいですそれよりあれ見てください。
なんですか?ほらこれです。
金粉ですね。
秋田さんこのチラシ見て金粉のこと気づいてたんじゃないですか?確証はありませんでした。
芸術に触れようなんて変だと思ったんですよ。
あれ山内さんじゃないですか?あ〜阿部先生ですかええいらっしゃいましたよ。
やっぱりいつですか?ええっと先週の金曜だったかな。
亡くなった日。
先生はどんな様子でしたか?それがオブジェに。
拝見します。
お願いします。
あっ!阿部先生はなんだか足元がおぼつかない感じでした。
お一人だったんですか?いや付き人みたいな若い女性が一緒でした。
亜都美さん?彼女はどこにも出かけていないとウソをつきましたね。
先生は創作期間中はほとんど出かけませんでしたし阿部さんの足元がおぼつかなかったっていうのはどうしてなんでしょう。
所見では足に悪いところはありませんでしたよね。
秋田さん?はい竹下。
秋田です。
なに?お願いしていた阿部さんの脳の組織検査どうですか?今やってる。
早く結果が知りたいんです。
なる早ってやつ?いえもの早です。
わかった。
なに?「もの早」って。
ヨッシー。
はい。
スライスもの早で。
はい至急やります。
ものすごく早く。
ものすごく…ものすごく早く!あっはい。
ええ三崎亜都美さんはこの施設で育った子です。
どうぞ。
つかぬことを伺いますが亜都美さんは絵がうまかったなんてことはありますか?亜都美さんが絵を?いやぁそれはないですね。
えっ?絵がうまい子なら記憶に残ってるはずです。
そうですか…。
あまりまじめな子ではありませんでした。
どちらかというと問題児というか…。
どうしてですか?しょっちゅう門限を破って外で何をしてるか聞いても頑として答えないし。
あっお忙しいところありがとうございました。
ありがとうございました。
失礼いたします。
失礼します。
見当違いだったんでしょうか…いやそんなはずは。
さぁさぁ早く早く入って入って。
ありがとうございます。
怒られちゃうよ。
急いで急いで!すみません。
あっはい。
あの三崎亜都美さんっていう子覚えてませんか?三崎亜都…ああはいはいもうよく覚えてますよもうしょっちゅう面倒かけられましたから。
そうですか。
よく門限を破っていたそうですね。
はいそう…いやでもそんなフラフラした子じゃないんですよ。
芯があるっていいますかこういつも自分の眼差しを探してるようなそんな子でしたね。
ですから…なぜかこうしょっちゅう自分の爪いろんな色で塗ったくってましたね。
えっ爪を?はい。
あっ今開けますねはいはい。
それ誰の検体なんですか?ん?亡くなった画家の後頭葉なんだけどね。
あれ〜これやばいじゃんね。
やばいっすね。
この人画家だったんですよね?う〜んそうだよねぇ。
〜すばらしい作品ですね。
展覧会のオープニングセレモニーは5時からですけど。
あなたにお話があって。
あなたにお話があって。
なんでしょう?これらの絵は自信作ですか?もちろん先生の最高の自信作です。
僕が聞いてるのはあなたにとって自信作かということです。
えっ?あの『月』だけじゃないあなたが阿部さんのお手伝いとして雇われてからの阿部さんの作品はみんなあなたの手によって描かれたものですね?私が?バカバカしい!みんな先生が描いたものです。
いえ。
阿部さんには描けなかった。
なぜなら阿部さんは目が見えていなかったからです。
阿部さんの脳の組織検査により多発性脳梗塞の所見が認められました。
なんですか?それ。
眼球がとらえた視覚情報は視神経と視交叉を通じて大脳の後頭葉にある視覚中枢へと投影されそこで像が形成され初めて物を見ているという状態になります。
しかし阿部さんの後頭葉にはいくつもの梗塞が起こっていました。
それにより近年は物の色や形を日常的に認識できない状態だったと思われます。
阿部さんの歩き方がおぼつかなかったのは足の問題ではなく目が原因でしょう。
外に出るときにはあなたの付き添いが必ず必要なほどだった。
そんな状態で絵を1人で描くなんて到底無理です。
あなたが代わりに描いたんですね?いつわかったんですか?先日アトリエであなたは落ちたデッサンを迷うことなく順番に揃えていましたね。
まるで自分の絵を扱うように慣れた手つきでした。
あれを見てもしやと。
そっか…気をつけてたつもりなのに。
ふたば園の守衛さんが言ってました。
あなたはいつも爪をいろんな色に染めていたと。
それは絵の練習をして爪が絵の具で汚れたのを隠すためだったんじゃないですか?そうです。
どうして絵を描いてることを隠してたんですか?先生と私の秘密でした。
私事故で両親を亡くして頼る親戚もいなくて施設に入るしかありませんでした。
キミは踊らないの?ああいい月だ。
こんな夜にしょぼくれるのは似合わん。
よし絵を描きっこしようか。
じゃあ見せっこしようか。
はい。
いやぁこれはおもしろいな。
ハハハ…じゃあねもっと描いてみようか。
はいそれから先生は私をアトリエに呼んで絵を教えてくれるようになりました。
とても熱心に。
先生と一緒に絵を描いているときがいちばん幸せだった。
時間を忘れていつまでも描いていられました。
阿部さんはあなたの中に眠っていた才能を発見した。
そして10年にもわたってあなたは阿部さんから直々の指導を受けたんですね。
よく誰にも知られずに。
先生も私も独りぼっちだったからです。
息子の真治さんは先生のことを尊敬してるような素振りだけど。
本当は先生の名誉やお金にしがみついてるだけ。
実際真治さんは先生の目が見えなくなってきていることにも全然気づいていませんでした。
2人で絵を描いているときが先生も私も本当の自分になれる時間だったんです。
でも3年前…。
先生!どうしたの?先生!亜都美か?どうしてこんなこと…。
私にはもう必要ないんだ。
え?近頃ちゃんとものが見えなくなってきてな。
そのうちお前の顔もわからなくなるだろう。
え…。
私にはもう絵は描けない。
そんな…。
何をしてるんだ?私が続きを描く。
それじゃダメ?そんなことしてなんになる?先生の絵なら私がいちばんよく知ってる。
私が先生の目になる。
先生の手になる絵を売ったお金のほとんどはいろいろな施設に寄付してたんです。
でもそれは言い訳です。
やっていて楽しかったからずっと続けたかった。
先生は亜都美さんが描いた絵を自分の名前で発表することなんとも思ってなかったんですか?むしろおもしろがっていました。
先生のサインが入っているだけで世間の人たちは高い値段で絵を欲しがる。
そうやって世間をだますのもいいじゃないか。
そういうふうに先生は。
でも…。
完成まであと3日くらいかな。
そうか。
この絵すごく気に入ってるの。
描いてると先生と月を眺めたあの夜のことを思い出すの。
(うめき声)先生!先生!先生しっかり!今救急車。
私はもうダメだ。
それよりあの絵を完成させなさい。
なに言ってるの!ここまでやってきたんじゃないか。
世の中をあっと言わせてやろうじゃないか。
言っただろ。
こんないい月の夜にしょぼくれるのは似合わんと。
先生!先生!かなりの無茶ぶりですね。
でもそれが先生の遺言だから私は…。
絵が完成するまで阿部先生が生きていたようにみせるための方法はネットの推理小説のサイトで調べました。
お父さん大丈夫ですか?あまり根を詰めずにおやすみください。
先生できたよ。
やっとできたここにある絵は私が先生の代わりに描いたんじゃない。
私と先生の2人で描いたんです。
このこと世間に公表するんですか?いえ私たちは警察じゃありませんから。
もういいですよね?ほんとのこともわかったんだから。
秋田さん。
ひとつ納得できないことがあります。
なんですか?阿部さんはあなたの才能を誰も知らないまま埋もれさせて平気なんでしょうか?私はそんなこと別に。
あなたの気持はともかく阿部さんがどう思ってたかということです。
さあ。
いいじゃないですかもう。
あの本人がいいって言ってるんですから。
いえ。
この才能を埋もれさせるのは社会の損失です。
そんなの余計なお世話じゃないでしょうか。
私はあくまで客観的な立場で…。
(真治)お待たせいたしました。
ただ今よりオープニングセレモニーを行いたいと思います。
まず最初にですね皆様にご披露したいものがございます。
父の最後のメッセージが入ったDVDです。
(どよめき)オープニングセレモニー用と書いてあります。
父はちゃんと用意していたんですね。
たったひと言でしたが父の作品展にはやはり父の声と姿で幕を開けるのがふさわしいと思います。
ではお願いします。
皆さん本日は私の展覧会にお越しいただきましてまことにありがとうございます。
どうぞごゆっくりご覧ください。
ありがとうございます。
(拍手)え〜ではここでですねご来賓の方から…。
あのせっかく来ていただいたのに申し訳ないんですが実はそこにある絵を描いたのは私じゃありません。
(ざわめき)描いたのは私の家で家政婦をしていた三崎亜都美さんという女性です。
3年間にわたって彼女には私の影武者を務めさせてしまった。
本当に申し訳ないと思っています。
今日からは誰はばかることなく作品を発表してほしい。
亜都美君キミにはそうするに値する十分な才能があります。
この3年間いやキミと出会ってから10年以上。
とても楽しかった。
本当にありがとう。
ありがとう。
それから絵の作者が私だと偽ったことについてはその責任は彼女にはありません。
すべての責任は私阿部幸四郎にあります。
では皆さんさようなら。
どういうことなの?本当なの?今のお話は本当ですか?いや…亜都美!亜都美!ご存じなかったんですか?すみません。
すみませんあの…。
長年監察医をやっていますが自分の人生をこんなに見事に幕を引いた人を初めて見ました。
亜都美さんこれでここにあるのはみんなあなたの絵です。
(安田)まあ結果的にうちの検案が正しかったことが証明できてよかった。
警察もほっとしたんじゃないの?亡くなった当人が告白してくれて。
亜都美さんの罪は阿部先生自身が望んでいたこともあって重くならないみたいだし。
作者が亜都美さんだとわかって余計あの絵に高値がついてるそうじゃない?芸術の世界ってなんでもありね。
いやいや私もほっとしました。
これ以上もめるようだったら私がこっそり検案書を書きかえちゃおうかなと思ってたんです。
ハハ…またまたご冗談を。
ご心配をおかけしました。
ご心配をおかけしました。
あぁいいのいいの。
心配するのも仕事のうちだから。
ハハハハハハ!失礼します。
失礼します。
なんですか?これ。
ちょっと待っ…。
え〜なにこれ?わ…わかった。
ピカチュウだ!違うバイキンよこれバイキン。
違う違う足の裏に顔ついてるやつでしょ?絶対そうだ!わかりませんよね。
いやわからなくていいんです。
これは人生の不条理を抽象的に表現してみたんですから。
なに?抽象的って…。
よかったわからなくて。
2014/08/22(金) 19:58〜20:54
テレビ大阪1
金曜8時のドラマ ラスト・ドクター 〜監察医アキタの検死報告〜 第6話[字][デ]
薫子(相武紗季)が初めての検案を行なう。遺体は有名画家のもので、死因は心筋梗塞、死後1日と見立て事件性はないとする。しかし秋田(寺脇康文)は解剖すると言い出し…
詳細情報
第6話
秋田晋也(寺脇康文)、山下美恵子(戸田恵子)は監察医らしくなってきた吉崎薫子(相武紗季)に次の検案を任せることに。薫子の初めての検案は、現代日本絵画の第一人者・阿部幸四郎(大杉漣)の遺体で、完成されたばかりの絵の横に倒れるようにして亡くなっていた。薫子は緊張しながらも、死因は心筋梗塞、死後1日と見立てるが、秋田は遺体を解剖すると言い出す。その結果、死亡推定時刻が大きくずれていることが判明して…。
出演者 1
秋田晋也…寺脇康文
吉崎薫子…相武紗季
竹下亮子…YOU
安田圭介…マキタスポーツ
池田刑事…渡部秀
・
山倉刑事…渡辺いっけい
久保田孝輔…梶原善
山下美恵子…戸田恵子
柳田修平…伊東四朗
出演者 2
【第6話ゲスト】
阿部幸四郎…大杉漣
三崎阿都美…南沢奈央
守衛…森本レオ
阿部真治…伊東孝明
山内…飯田基祐
原作脚本
【脚本】関えり香、尾崎将也
監督・演出
【監督】水谷俊之
音楽
【主題歌】
「Wahの歌」
桐嶋ノドカ(A−Sketch)
関連情報
【番組公式WEBサイト】
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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