5オイコノミア「“富士山”を支える!経済学」(前編) 2014.08.20

(又吉)うわ〜富士山がきれいですね!
(大竹)そんなこと言っても又吉さん曇ってて見えてないじゃないですか。
いやさっきまで見えてたんですよね。
いや本当は確かにこのくらいにあるんですよね。
うわ〜!残念ですねぇ!残念ですねぇ!先生山登れる格好ですか?それは。
いや又吉さんこそ私気になってたんですけど富士山に登るつもりなんですか?いやそりゃそうでしょう。
「富士山行く」って誘われたんですから。
これ経済学の番組ですよ?はい。
富士山で経済学を考えようっていうことなんですよ。
富士山で!?はい。
経済学を?じゃあ僕この格好意味ないって事ですか。
全く意味がないですね。

(テーマ音楽)・「富士は日本一の山」今回の「オイコノミア」は富士山!経済学で見てみると「観光と環境」というキーワードが見えてきました。
・「山」先生。
富士山で経済学というのはどういうことなんですか?又吉さん何か気が付きません?そうですね。
やっぱり人は結構来てますけど。
あっ外国人の方が多いですかね。
そうですよね。
最近ね富士山では特に外国人の観光客が増えてるんですよ。
観光庁が調べたところによると山梨県と静岡県の外国人の宿泊者数は2009年には大体59万人だったんですよ。
それが2013年には104万人を超えてるんですね。
えっ!?だいぶ増えましたね。
そのほとんどの人は富士山近辺に宿泊してるんです。
へぇ〜!というわけで今回は「富士山の観光」がテーマ。
外国人観光客の増加を見越し7月には成田空港から特急の直接運転が始まりました。
ずばり富士山の魅力ってどこにあるんでしょう?教えて!さすが富士山大人気!その魅力に経済学から迫ってみましょう!2人がやってきた峠の茶屋。
キレイな富士山を眺めることができる取って置きの場所なのですが…。
ここは富士山と経済学そして又吉さんとも関係がある場所なんですよ。
僕とも?はい。
又吉さんが大好きな作家といえば…。
太宰治ですよね。
そうですよね。
はい。
昭和9年に建てられたこちらの茶屋。
今回は特別に許可をいただき太宰治ゆかりの部屋で富士山の経済学です!太宰治もここから富士山を眺めていたわけですよねぇ!そうですよね!ちょっと待ってくださいね。
はい。
今日は富士山見えないんで。
このパネルを。
富士山パネル。
そうです。
ここから見たときの写真だそうです。
本来ならこういうふうに見えると。
余計何か悔しさが増すような気がしますけどね。
本当はこれが見れてたのか!あそこに。
想像よりもだいぶ大っきく出るんですね。
そうですよねぇ。
確かにここまできれいだとやっぱり太宰治が「富嶽百景」で嫌ってたのも。
「富嶽百景」の中でいかにも注文どおりやみたいな事書いてましたよね。
そうですね。
風呂屋のペンキ絵やみたいなことを。
確かにあまりにもいかにも富士山という。
その辺が太宰っぽさというかね。
そうですね。
ちょっと皮肉な感じが。
これを見てね「恥づかしくてならなかった」というのはね。
はいはい。
続きは「100分de名著」におまかせして…。
今日本にやってくる外国人観光客が激増!去年初めて1,000万人を突破しました。
外国人観光客の多くが訪れる富士山。
経済学から見た富士山の魅力どこにあるのでしょう?やっぱり…世界遺産ですか?はい。
…に登録されたのはでかいんじゃないですかね。
そうですね。
いろんな理由がある中で大きな要因というのは恐らく富士山が「世界文化遺産」に登録されたというのが大きいですよね!はい。
去年富士山は世界文化遺産に登録されました。
日本人にとっては古くから信仰の対象でもあり文化的にも価値があると判断されたのです。
この世界遺産経済学の視点でも外国人観光客増加に大きな効果があるのだとか。
世界遺産は富士山を知らなかった外国人に知ってもらうというPR効果があるんだと思いますよ。
なるほど。
経済学から見ても多くの観光客を呼び寄せるような効果があるんですね。
はい。
分かります?経済学的に見ても?はい。
「し」から始まりますね。
「し」?小出しにしますね。
「し」。
はい。
え〜「し」の次なんすか?フッフッ。
又吉さん思い出しませんか?行列があるとそれだけでそのお店はおいしいと判断してしまうアレ。
シ・グ・ナ・ル・こ・う・か
(効果)!外国の人は日本のことをよく知らないとすれば富士山が世界文化遺産になっているんだっていうシグナルを持っていると「ああこれは本当にすごいんだろう!」というふうに思うじゃないですか。
だから世界文化遺産っていうのはそういう意味でシグナルの役割を果たしていると。
なるほど。
結局誰かが何かそういうふうに認定してくれるとまあ大丈夫だろうっていう自分よりもちゃんと情報を多く持ってる人たちが調査してくれてるって事ですよね。
そうですね。
あんまり人気が出てくると嫌だっていう人もいますけどね。
ああ一部。
はやっているものをちょっと避けたいとかっていう方。
そういうのを「スノッブ」って言うんですよ。
スノッブ?スノッブもやりましたね。
やりましたよね。
覚えては忘れて。
覚えては忘れて。
名前を忘れてるだけで中のその考え方とか僕全部ちゃんと覚えてますから。
そしたらちゃんと積み重ねがあるしね。
そうですよね。
名前はだから前も言ったかもしれないですけど引き出しのあのつまみですよね。
それが取れてるんで引き出しにくいですけど中にはちゃんと入ってますんで全部。
それを開けるのは先生です。
先生が爪でこう開けてくれたら僕ちゃんと。
全部覚えてるじゃないですか毎回。
そうですね。
「富士には月見草がよく似合う」というのはもう「富嶽百景」だけじゃなくて結構太宰文学の中でも有名なフレーズですよね。
そうですね。
面白いですね。
その組み合わせが。
「富士と月見草」というのが。
そうですねぇ。
なかなかねえそういう組み合わせ考えられないですよね。
そうですよね。
ところでね今の富士山には何がよく似合うんですかね?今の富士山にですか?はい。
外国人観光客が増えてますからね。
その外国人を相手にした商売っていうのも多くなってるみたいなんですよ。
富士山近辺ではどのようなことが起こってるのかちょっと調べてきてもらえますか。
分かりました。
こちらは富士山が望める観光ホテル。
すみません。
こちらでユニークなサービスをされてると聞いたんですが。
えっ!?カニの食べ放題?はい。
宿泊客の8割が外国人というこちらのホテルでは3年前から「カニの食べ放題」を始めました。
カニと言えば日本海や北海道の特産というイメージですよね。
このサービス近隣のホテルにも広がっているのだとか。
オー!デリシャス!富士山で見つけた知られざるカニブーム!おいしそう。
今までになかった組み合わせをするのが新しいサービスの形を生み出してるということですかね。
(支配人)そうですね。
わざわざ北海道に行かなくて富士山が見られてカニも食べれる。
それで外国人に受けると思いましてそこでビジネス成功ですか。
そういったことが起きるんじゃないかと思いまして始めました。
行ってきました。
はい。
どうでした?カニを売りにしているホテルがありましたね。
カニですか?はい。
富士山とカニ?日本人からは想像できないですね。
そうですね。
なかなか「富士山とカニ」っていう今まで印象はなかったんですけど。
まあそういう今までの観光という枠では捉えきれないのが外国人のニーズかもしれないですよねぇ。
オーストリアの経済学者シュンペーターは今までの枠組みを壊し物やサービスの新しい組み合わせがイノベーションだと考えました。
富士山とカニもイノベーションかもしれませんね。
カニ食べに行こう!富士山。
誰も思いつかなかったけれども組み合わせるとすごく魅力的なものになったと。
はいはい。
なるほど。
又吉さんのねお笑い芸人と文学というのもイノベーションじゃないですか。
イノベーションなんですかね?他にいないでしょ?まあそうですね。
そんなことを思いつく人もいなかったわけじゃないですか。
僕はたまたま好きやっただけですけどね。
だけどそれでやっぱり他にない魅力を出せたっていう意味では。
あ〜!そうやって見るともともとの太宰治さんの「月見草と富士」というのもそういう組み合わせというのはイノベーションだったかもしれないですね。
今までに誰も発見してないものですもんね。
富士山周辺への観光客増加とともに登山者数もここ10年で1.5倍に増えています。
又吉さん。
富士山は眺めて観光するだけじゃないですよね。
そうですね。
やっぱり富士山は山ですから登りますよね。
登られる方も大勢いますよね。
はい。
そういう意味ではね登山ということで考えてみると観光客の増加というのは喜ばしいことなんでしょうかね?ああ確かに。
それはどうなんですかね。
今日はその辺りを伺いたいと思ってゲストをお呼びしたんですよ。
登山家の田部井淳子さんです。
(田部井)こんにちは。
こんにちは。
よろしくお願いします。
富士山にも毎年登っているのだそうです。
田部井さんは実はおととい富士山に登ってらっしゃったんですよね。
はい。
おととい東北の高校生86名と一緒に登ってきました。
富士山もでもそんな簡単に登れる山ではないですよね。
そうですね。
結構つらいですね。
長いですからねぇ。
でもやっぱり一歩一歩登っていけば自分の目標が達成できるという何かそういう達成感がやっぱりある山ですね。
あっ富士山は?はい。
田部井さん世界的な山々を制覇された登山家にとって富士山の魅力というのはどこにあるんでしょう?やはり「日本一高い」っていうところと姿形が美しいところだと思います。
はい。
やっぱり日本一高いというところは大事ですか?大事ですね。
それはもう重大なポイントです。
なるほど。
又吉さんもしもね日本のどこかに富士山よりも高い山が発見されたとしますよね。
あるいは計測ミスで富士山が日本一高い山ではなかったとなったとしたらその魅力ってどのくらい減ると思います?例えばね今の富士山の魅力が10とします。
何ポイント変化するでしょうか?今が10やとするとマイナス2ポイントですね僕は。
マイナス2ポイント。
8ポイントになるんですね。
そうですね。
田部井さんいかがですか?マイナス5ですね。
マイナス5ですか。
半分。
やっぱり日本一というのは大きいですか?大きいです!ところで又吉さん日本で二番目の高さの山ってご存じですか?二番目に高い山知らないですね。
知らないですか。
田部井さん。
南アルプスの北岳。
北岳。
知らなかったですねぇ!二番目というのはあまり知られないんですよねぇ。
富士山というのは年間30万人以上の登山客がいるんですけど北岳というのは実は北岳のある南アルプス全体でも年間の登山者数というのは大体4万人くらいなんですよね。
あ〜!ガクンですね。
へぇ〜!世界一とか日本一っていうこの「一」っていう響き。
これにはやっぱりひかれますね。
はい。
やっぱり一番じゃなかったら富士山の魅力が半減するっていう。
お話を伺ってたら「確かにな」と思いますね。
確かにね田部井さんのようにせっかく登るんだったら日本で一番高い山に登りたいとか世界で一番高い山に登りたいという気持ちは実は経済学で「スーパースター現象」と言われてるのがあるんです。
それと同じなんです。
山っていうのはね規模が大きいですから登山者は1人登ったら他の人が登れないというんじゃなくて結構同時にたくさんの人が登れますよね。
それから日本一の山に登るのも二番目の山に登るのも登山の難しさを考えたうえでも費用はあんまり変わんないじゃないですか。
そうするとねどうせ登るんだったら二番じゃなくて一番というふうになるわけですよ。
だから一番の富士山に登るという形になる。
こういうのね「スーパースター現象」って言うんですね。
日本一の山に登るのも他の山に登るのも旅費や装備にかかるコストがほぼ同じならば日本一の山に人気が集中します。
これがスーパースター現象!ワオッ!又吉さんの世界も似てますよね。
そうですねぇ!やっぱり又吉さんの一流の芸が見たくてお客さんが集中して人気が高い又吉さんの年俸もすごく上がって。
いやそんな事ないです。
すごい。
そんな…。
田部井さん真に受けないでください。
大竹先生たまに適当なこと言う方なんでね。
芸人だとかスポーツの世界と山の人気というのは同じスーパースター現象で説明できるんですね。
富士山はスーパースターであるということですね。
う〜ん。
でもね富士山の人気がスーパースターっていうことで圧倒的に人気がある事が逆に問題を引き起こす事も経済学から考えることができるんですよね。
どういうことですか?やっぱりね普通の品物を考えてみて下さいよ。
ある製品がものすごく質がよくて人気があったとしますよね。
はい。
一種独占状態があったとすると競争がない状態になってきますよね。
ああ。
競争がないとみんな何をしだします?競争がないと…。
サービスが悪くなる。
悪くなったり…。
ちょっと手を抜いてもお客さんが来てくれるというのがありますしそれから価格を上げても大丈夫だってなるじゃないですか。
それから富士山というのは登山客や観光客数で他の山を圧倒的に引き離してますよね。
もしね競争が激しくって富士山と似たような山があって山の魅力がちょっと無くなったらお客さんが減るっていう状況に富士山があったら一生懸命に富士山の環境を整備したりするということがあるかもしれない。
(2人)なるほど。
きれいですね!実はこれ夜中に富士山を登る登山者のライト。
人気が高すぎるゆえの問題も実際に起こっています。
日の出を山頂で見ようと多くの人が暗闇の中頂上を目指すため渋滞が起こり危険が増します。
皆さん気をつけないとね。
初めて見ました。
こんな人多いんですね。
(田部井)いや〜!もう真夏の富士山の大渋滞はすごいですね。
もう前に進めないっていうか立ってる時間の方が長い時もあったりして。
自分のペースで登れないので非常に疲れる。
うん。
で暗いですから危険。
私とすればできるだけ昼間に登ってほしいなと思うんですけれどもなぜか富士山に登る大部分の人はあのご来光を頂上で見たいと思うんですね。
はいはい。
でも頂上で見なきゃいけないという約束は何もないし独立峰ですからむしろ八合目とか九合目で見ても同じものが見れるんですよ。
なるほど。
頂上はいっぱい人がいますから背伸びしてご来光を拝むよりは私はむしろちょっと下で山小屋でゆっくりして八合目辺りでもゆっくりこう同じ風景が見れるんだったらその方がなんかいい時間が持てるような気がするんですけど。
これだけ人が多いとやっぱり環境への負担も結構大きいでしょうね。
それからおっしゃったとおり安全の意味でもやっぱり不安ですよね。
こういうふうに人気がありすぎるということがこういう問題を解決しなければならないということを先送りにしてるんじゃないかと思うんですよね。
これ「富士山の悲劇」って言えるんじゃないかと思うんです。
でもね私はやっぱり山を登る立場からすればやっぱり日本人だったら一度は富士山に登って頂きたいなって思うし富士山に登らなければ見れない風景っていうのもぜひ見てほしいしあのきれいな富士山をやっぱり海外の人にも登ってもらいたいなとは思います。
なるほど。
だからできるだけたくさんの人に登ってもらいたいというのはあっても同じ曜日とか同じ時間に人が集中するところが問題だと。
だからもうちょっとバラけるともっとたくさんの人が楽しめて安全に楽しめるんじゃないかと。
…と私は思います。
なるほどね。
昨年試験導入された…それから今年から本格的に導入された入山料金というのがありますよね。
だからあれをもう少し一律1,000円でしたっけ今は。
でもピークロード料金という形で変えたらどうかと思うんですよね。
それは価格差別なんですけど休日に行くか平日に行くかで値段を変えるんですよね。
えっ!?例えば平日だったら安くして休日だったら高くする。
あるいはご来光の時間は高くするとか。
アハハハッ!なるほどなるほど。
そうするとお金に動かされる人もいるじゃないですか。
なるほど。
そうすると経済学の考えを使えばですねもうちょっとこう人の入山する時間帯をならすことでより多くの人が安全に富士山の登山を楽しめるようになるんじゃないかと思うんですよね。
実はね観光客を多く呼ぶ要因になっている世界遺産も今富士山はその登録抹消の危機にひんしてるんですよ。
えっ!?うんうん。
ホントですか?そう。
これからが問われるんですよね。
そうですよね。
世界遺産じゃなくなる可能性があるという事ですか?はい。
もしかしたら。
へぇ〜!どうですか又吉さんせっかくもらった称号を剥奪されるかもしれない…。
それはやっぱりちょっと残念ですよね!富士山が世界遺産に登録されたとニュースでも大々的に取り上げられてやっぱり何か誇らしい気持ちになりましたからね。
あと一回認められて取られると何かちょっと残念というか。
「損失回避」。
そういう言葉があるんですね。
経済用語。
なるほど。
次回は富士山を巡る環境を探っていきましょう。
美輪乃湯へようこそ。
2014/08/20(水) 23:25〜23:50
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「“富士山”を支える!経済学」(前編)[字]

日本の名峰、富士山。登山者は年間30万人を越し人気は高まる一方だ。ふもとでは外国人観光客の間で、景観を楽しみ「ある物」を食べるコースが受けている。いったい何?

詳細情報
番組内容
去年世界文化遺産に登録され、ますます注目が集まる富士山。経済学で読み解くと「観光」「環境」というキーワードが浮かび上がる。観光面で今、話題になっているのが富士山近辺のホテルの「カニ食べ放題」。日本人なら不思議に見える富士山とカニの組み合わせも、外国人観光客には、一度に二種類のことがらを満喫できるグッドアイデア。固定観念にとらわれない集客方法は、経済学で言うイノベーション、技術革新に当てはまる。
出演者
【ゲスト】登山家…田部井淳子,【出演】又吉直樹,【解説】大阪大学教授…大竹文雄,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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