若者たち2014 #06 2014.08.20

(旦)理屈じゃないんだよ。
愛っていうのはパッションなんだよ。
(旦)思いが伝わればどんな障害だって乗り越えられるんだよ。
これ俺の彼女。
カワイイでしょ?こんな子と付き合えるなんて夢みたいでしょ。
ねえ。
(旭)今日の夕飯の当番ひかりだったよな?
(暁)マジかよ?外で食ってこようかな。
(ひかり)納豆ご飯でいいでしょう。
(陽)えっ?また?何か料理作ってよ。
(旦)ちょっと。
俺の理屈じゃない話をスルーすんなって。
(陽)浮かれ過ぎなんだよ。
高卒認定の合否も出てねえのに。
何だよ?嫉妬かよ。
(陽)うん?
(旦)自分の劇団の看板女優だもんな。
でも彼女は俺のもんだ。
今はお互い受験生だけどおんなじ大学に入って就職して同棲して結婚…。
(陽)受験つまずかなきゃいいけどな。
(ひかり)まあまあ。
そうやってね誰かと恋愛するだけで人生が輝くなんてカワイイじゃないの。
だよね。
今ならどの大学だって受かる気がするよ。
姉ちゃん。
恋する人は誰しも自分ができる以上のことを果たしてみせると誓うのです。
恋は盲目で恋人たちは恋人が犯す小さな失敗が見えなくなる。
(ひかり・陽)ねえ。
ねえ。
(旭)あっ?
(陽)シェークスピアです。
旦君。
どちらもあなたに当てはまりますよ。
いや。
意味分かんねえよ。
(旭)恋愛っていうものはなそう簡単にうまくいくもんじゃねえってことなんだ。
(旭)いいか?恋愛っていうのはナックルボールなんだよ。
どういう変化をもたらしてどこに着地するか分からない。
(陽)俺に着地しちゃったよ。
(旭)つまりそれをきっちり捕れるキャッチャーこそがお前の本当の恋女房ってわけだ。
(旦)ますます意味分かんねえよ。
(暁)お前らな恋愛なんて語るだけやぼなんだよ。
(暁)しょせん雄と雌。
好きだから抱く寝るやる。
本能には逆らえねえの。
理性で恋愛できるなら不倫なんてしねえよな?ひかり。
(旭)お前。
何でそういう繊細な問題をさらっと切り出すんだよ?
(暁)だってお前らが腫れ物に触るみたいに話題にしねえから。
どうなんだよ?このまま続けられると思ってねえんだろ?
(暁)まさか新城が家族を捨てるなんて思ってんのかい?
(ひかり)ごちそうさま。
(暁)おい!
(ひかり)臭う!まことの恋の道はいばらの道なのです。
これもシェークスピアです。
何だよ!
(香澄)不倫?
(旦)そう。
しかもその相手が昔から俺たちの面倒を見てくれてた人でさ俺も聞いたときびっくりしたよ。
(香澄)もう長いの?
(旦)ああー。
どうだろう?俺も最近知ったから。
だいたいうちの家族の恋愛ってみんなゆがんでんだよ。
アサ兄はできちゃった婚でしょ。
サト兄はナンパ師姉ちゃんは不倫。
ハル兄は女に興味なし。
まともなのは俺ぐらいだよ。
(香澄)でも陽さんは彼女いたんでしょ?
(旦)でも別れた原因はハル兄が演劇ばっかだったからだよ。
それを考えたらやっぱり女に興味がないんだよ。
そんなことより…。
カラオケ行かない?あのホテルの。
(香澄)エロい顔。
(旦)えっ?
(香澄)今日は無理だよ。
5時から劇団の稽古だから。
(旦)えっ?舞台終わったばっかじゃん。
(香澄)やっとね陽さんの念願だったオリジナル作品が上演できることになったの。
今がチャンスなんだ。
(旦)でも付き合ってから全然出掛けてないしさ。
じゃあ来週の日曜ならいいよ。
稽古も休みだし。
(旦)えっ?ホントに?じゃあ俺どこ行くか考えとくから。
いきなりラブホはやめてね。
(旦)えっ?じゃあ最後ならいいの?
(師長)仲川まどかちゃん安定したみたいね。
(ひかり)あっはい。
だいぶ。
(師長)でも一歩間違えれば亡くなってたかもしれない。
難しいケースだけどもっと注意しないとね。
(ひかり)はい。
ありがとうございました。
(師長)うん。
(新城)リサ・ローブ。
(新城)学生のころに見た『リアリティ・バイツ』って映画で知ってからずっと聴いてて。
コンサート。
よかったら一緒に行かないか?うん。
行く。

(・『ステイ』)・
(歌声)
(旭)うるせえな!うちの壁どんだけ薄いと思ってんだよ!
(旦・陽)・「no,no,no」
(旭)うるせえっつってんだよバカ。
(ひかり)ごめんごめん…。
(旭)「no,no」じゃねえんだよ。
(旦)姉ちゃんライブ行くんだって。
リサ・ローブの。
(旭)えっ?バスローブ?
(陽)教えても無駄だよ。
アサ兄には洋楽のアーティストの名前もライブに誘われただけでこんなにCDまとめ買いしちゃうような女心は分かりません。
(ひかり)おい!何げに私もディスってない?
(旭)ちょっ…。
ちょっと待てって。
お前誰と行くんだよ?
(ひかり)えっ?別にいいでしょ。
新城さんか?新城さん…。
(陽・旦)はいはいはい…。
(陽)女心分からないおじさんはどっか行ってて。
(旦)はい。
じゃあね。

(・『ステイ』)
(暁)相当浮かれてんな。
ひかりのやつ。
(旭)ライブに行くんだとよ。
たぶん新城さんと。
(暁)お前が不倫を黙認するとはね。
(旭)俺だってやめさせてえよ。
でも色々あんだよ。

(ギターの演奏)
(多香子)弾けるんだ?
(暁)うん?これ大事なもんだろ?こんなとこ置いといていいの?
(多香子)ああ。
それ不燃の日に捨てといて。

(『ステイ』の演奏)
(多香子)その曲。
(暁)うん?ああ。
うちの妹がライブ行くとか言ってCDエンドレスで流しててさ。
(多香子)リサ・ローブ。
(暁)知ってんの?
(多香子)いや。
知ってるも何も彼女の歌を聴いてギターを始めたの。
(暁)へえ。
妙な偶然だね。
(多香子)あのさ。
ちょっと行きたいとこがあんだけど。

(新城)ひかり!ひかり!これ分かりにくい。
(美穂)あのう。
(旭)うん?
(美穂)もしかして?
(旭)あっ。
ああ。
(暁)ねえねえねえねえ。
チケットある?ねえ?あるでしょ?えっ?余ってない?えっ?ないの?うん。
気持ち悪いか。
そうだよね。
って何で俺がこんなことしなきゃいけないんだよ!?もう。
ああー。
もうどこ行っちまったんだよ?えっ?何だよ?自分だけ着替えちゃって。
いや。
リサに会うのに作業着じゃ失礼でしょ。
ああ。
そう。
あった?
(暁)自分でやってよ。
もう。

(新城)うれしいの?
(ひかり)うれしいでしょう。
ライブ行ったことないもん。
フフフ。
(暁)ずいぶん堂々と会うんだな。
(新城)暁も来てたのか?
(暁)俺彼女に付き合ってるだけだよ。
(ひかり)新しい彼女?
(暁)屋代さんちのお嬢さんだよ。
妹のひかり。
はい。
どうした?急に。
ちょっと待てよ。
分かった。
すぐ行く。
ごめん。
用事ができた。
えっ!?
(暁)奥さんこっちに来たとか?ハハハ。
図星かよ。
罰当たったね。
(新城)旭も来てるらしい。
じゃあ私も帰る。
(新城)いや。
(新城)後で連絡する。
ごめん。
(暁)修羅場だね。
フッ。
行こう。
(多香子)いいの?・
(ドアの開く音)
(旭)あっ。
帰ってきたみたいです。
(美穂)おかえんなさい。
(新城)ただいま。
(旭)新城さん。
(新城)どうなってんだよ?
(旭)知るかよ。
あんたと話そうと思って家の前で待ってたら突然現れて。
(新城)寿々は?
(美穂)うん。
お母さんに見てもらってる。
(新城)一人で来たのか?
(美穂)ごめんね。
急に訪ねてきたりなんかして。
これお代わり。
(旭)あっ。
すいません。
(美穂)何かねうちに妙なものが送られてきちゃって。
妹さんよね?
(旭)あっはい。
(美穂)私たちの結婚式に来てくれてたの覚えてたから。
ああ。
あっ。
これ。
ああ。
俺が撮ったんです。
あのう。
ひかりのやつ新城さんと昔からべったりで。
あっ。
もちろん兄のようにって意味ですよ。
あのう。
一緒にいるとこうやって腕組んで歩いたりしちゃうんですよね。
だから奥さんに誤解されても困るだろうって3人でいるときに僕が警告半分いたずら半分で撮ったんですよ。
ねえ新城さん。
(新城)ああ。
(旭)それを誰かが勘違いしちゃったんでしょうね。
冗談が分かんないやつもいるもんだなもう。
ねえ新城さん。
そっか。
いや。
私もそんなことじゃないかななんて思ってはいたんだけど。
ごめんね。
変なこと聞いたりして。
いやいやいや。
逆に不快な思いさせちゃってすいませんでした。
この写真は僕が処分しておきますから。
すいません。
ああー。
あっ。
もうこんな時間だ。
俺あした仕事早いんだよな。
そろそろ帰らないと。
(美穂)そう?
(旭)はい。
すいません。
(美穂)じゃあ今度妹さん。
あのう。
ひかりさんも一緒にうちでご飯とかどう?えっ?あっ。
そうですね。
(美穂)ぜひ。
(旭)はい。
はい。
じゃあ今度。
それじゃ。
すいません。
どうも失礼します。
すいません。

(多香子)ああー。
(暁)飲み過ぎなんだよ。
(多香子)やっぱりリサは最高だったな。
これでいい別れができそう。
フフッ。
(暁)ホントにいいの?
(多香子)うん。
(多香子)それ持ってきて。
んっ。
(多香子)バイバイ。

(暁)分かんねえな。
好きだったアーティストの歌聴いたら普通やる気が出るもんなんじゃないの?
(多香子)そういう人もいるかもしれないけど私は逆。
中学卒業と同時に家を飛び出して東京に来て路上で歌って自主でCD作って片っ端から事務所に送って。
でも全然駄目で。
取り返しのつかない過ちを犯して…。
いつの間にか誰かのために歌いたいなんて思えなくなっちゃってさ。
・おい!そこで何やってんだ!
(暁)えっ!?ヤベッ。
ちょっと。
・おい!待ちなさい!おい!
(暁)くそ。

(駆ける足音)
(暁)もう大丈夫だろう。
ハァ。
走ったな。

(多香子)ごめん。
やっぱり無理。
(多香子)苦手っていうか怖くなっちゃって。

(暁)じゃあ。
(暁)これならどう?・
(戸の開く音)
(多香子)お邪魔します。
(旭)あっ。
これはどうも。
弟がいつもお世話になってます。
(暁)彼女今日泊まるとこねえって言うから。
(旭)お前いいから。
ちょっとお前そこ座れ。
(暁)何だよ?先行ってて。
階段上がって左の部屋だから。
(多香子)うん。
あっ。
さっきはチケットありがとね。
(暁)ハァ。
よいしょ。
うん?
(旭)お前これ。
新城さんの奥さんのところへ送られてきたんだよ。
(暁)うん?
(ひかり)送ったの?
(暁)えっ?
(旭)何でお前さそんなことしたんだよ?
(暁)ちょっと待てよ。
俺がこれを美穂さんに送ったっていうのか?
(旭)美穂さんって。
お前奥さんのこと知ってんのか?
(暁)まあお前らよりはな。
昔世話にもなったし…。
だから送ったんだ?送ったんでしょ?興奮すんなって。
仮に俺がこれを送ったとして…。
(ひかり)あっ。
送ったんだ!
(暁)お前いいかげん目覚ませよ。
不倫がよくないなんて小学生でも知ってるぞ。
サト兄に言われたくない。
サト兄が逮捕されて周りとなかなかうまくいかなくなって。
新城さんがいなかったら私駄目だった。
ああ。
悪い男だよな。
そうやって弱みに付け込んでやっちまうなんてよ。
(旭)おい。
お前。
(ひかり)何で刑務所から出てきたのよ?出てこなきゃよかったじゃない。
(旭)やめろ。
お前。
おい!やめろ!お前。
やめろってお前。
ほら分かったから。
おい!
(旭)ああーほら。

(医師)赤ちゃん順調に育ってますよ。
(旭)ああ。
そうですか。
よかった。
よかったね。
(医師)前置胎盤の改善は見られてはいませんがこのまま育ってくれれば大丈夫ですからね。
(梓)はい。
(医師)梓さん出血してませんか?
(梓)大丈夫です。
(医師)他に違和感とかある?うーん。
たまにおなかが少し張るかなっていうときがあるんですけど。
(医師)そうですか。
くれぐれも無理をしたり体に負担がかかるようなことはしないようにしてくださいね。
はい!
(医師)フフフ。
あっ。
俺じゃねえか。
ハハッ。
すいません。
(旭)いやぁ。
順調に育っててよかったな。
(梓)うん。
この子も頑張ってくれてんだよ。
(旭)そうだね。
お前も何か体調悪かったらすぐ言えよ。
(梓)うん。
ありがと。
(旭)じゃあ仕事行ってくるわ。
(梓)うん。
いってらっしゃい。
頑張ってね。
(旭)じゃあね。
(旭)おはようございます!おはようございます!あっ。
おはようございます!
(男性)おう。
(旭)あっ。
おはようございます!おはようございます!
(男性)おはようございます!
(旭)おはようございます!
(男性)おはようさん。
(旭)はい。
おはようございます。
(男性)これよろしく。
(旭)あっ。
分かりました。
よいしょ。
よっしゃ。
(バイブレーターの音)はい。
ああ。
昨日はどうも。
えっ?今日ですか?
(旦)ねえ?今度の日曜どこ行く?幾つか候補考えてきたんだけどさ。
(旦)遊園地とかね水族館。
ごめん。
その日駄目になっちゃった。
(旦)えっ?
(香澄)何か家族で伊豆に行くことになって。
ほら高校卒業するしこれが最後の家族旅行になるだろうからって。
(旦)でも親とケンカしてるんじゃないの?劇団やること反対されて。
(香澄)ああ。
うん。
でもちゃんと話し合ったら分かってくれて。
だからごめん。
(旦)分かった。

(旭)やっぱりやめとくか?適当に理由つけて。
(ひかり)大丈夫。
(旭)まあ取りあえずバレてなさそうだしそれらしく振る舞えよ。
(ひかり)うん。
(旭)あっ。
(美穂)いらっしゃい。
ごめんなさい。
急に誘ったりして。
あのう。
本日はお招きいただいて…。
(美穂)そ…そういう堅苦しいのなし。
ねっ。
入って入って。
(旭)あっ。
お邪魔します。
(美穂)どうぞ。
スリッパ使って。
(旭)あっ。
これつまらないものなんですけど。
(美穂)ああー。
ごめんなさい。
ありがとうございます。
頂きます。
(旭)お邪魔します。
(美穂)どうぞ。
(ひかり)お邪魔します。
(新城)いらっしゃい。
座って待ってて。
(美穂)ちょっと手伝ってくれる?
(新城)うん。
(美穂)これ頂いちゃったの。
(新城)ありがとう。
(美穂)冷蔵庫ね。
(旭)んっ!うまっ!これ。
(美穂)どう?
(ひかり)おいしいです。
(旭)うん。
(美穂)そう?よかった。
張り切って作ったかいあった。
(旭)いやぁ。
うちのカレーと大違いですよこれ。
(ひかり)ねえ?
(旭)うん?
(ひかり)ビーフストロガノフだよ。
(旭)えっ?ビーフストロング?ビーフストロガノフ。
(旭)ガノフ。
(美穂)すごいそれ。
えっ?おんなじ。
えっ?何が。
(美穂)私もねビーフストロングだと思い込んでたの。
学生時代料理なんてまったくしてなかったからビーフストロング。
つまりビーフをストロングに硬くして食べるもんだって信じこんでて。
だからね牛のブロックを買ってきてそれを延々焼き続けたの。
それが私が彼に初めて作ってあげた料理だったの。
へえー。
そうなんだ。
懐かしいね。
(新城)そうだな。
(旭)いや。
でもそれがこんなにおいしくなるんだからすごいっすよ。
お前もちょっとは見習え。
こいつ料理全然駄目なんですよ。
全然。
全然駄目なんです。
(美穂)大丈夫大丈夫。
これね結婚するといやが応でもできるようになんの。
そういうものですか?
(美穂)うん。
でもまあさすがに10年たつとねちょっと最近手抜きだよね。
結婚してもう10年ですか?
(美穂)うん。
私が二十歳んときに出会ってからだから。
えー。
付き合ってる期間と結婚してる期間含めると。
うーん。
もう20年以上。
そう考えると長いね。
(新城)そうだな。
(ひかり)20年。
(美穂)でもね最初は絶対この人とは結婚しないと思ったの。
だってね最初この人ぼろぼろのジーンズはいてほいで路上でギター弾いてたんだよ。
(旭)あっ。
それ知ってます。
俺そのときだって隣に越してきたんだよね?
(美穂)あっ。
そうだったの?
(旭)そうなんすよ。
(美穂)へえー。
(美穂)でもねサークルが一緒であるとき授業が休講になってね。
で偶然2人ともそのとき時間があってじゃあ一緒に映画見に行こうってことになって近くのね映画館行ったの。
でリバイバル上映してた映画を見たんだよね。
『リアリティ・バイツ』っていうの。
(旭)ふーん。
(美穂)もうそれに2人ともどんぴしゃにはまっちゃって。
特にあれ音楽よかったよね?レニクラ。
ザ・ナック。
あとほらほら。
あのう。
U2。
(旭)じゃあそれがきっかけで付き合ったんですか?そう。
最初のデートもねその映画のサントラ買いに行ったのよ。
あっ。
それで偶然なんだけど私たちの好きな。
一番好きな曲がね一緒だったの。
あっ。
ねえねえ。
あるよね?ちょっと待ってて。
(新城)いいだろ今。
(美穂)いや。
でもせっかくだから。
(美穂)ほらあった。
(旭)うめえなこれ。
(美穂)何曲目かな?あっ。
あったあった。
(美穂)うん。
(・『ステイ』)
(旭)この曲は…。
(美穂)知ってる?リサ・ローブ。
(旭)あっはい。
いや。
ちょっとだけ。
(美穂)ああ。
お二人は覚えてないと思うんだけど私たちの結婚式でも流したのよ。
2人の思い出の曲だからね。

(美穂)ひかりさんはどんな音楽を聴くの?
(ひかり)あっ。
私は洋楽はあんまり。
(美穂)そう?
(ひかり)はい。
(美穂)だったら彼に教えてもらうといいよ。
彼すっごく…。
(旭)ああー!ごめん。
俺もう駄目だ。
ああー。
新城さんさ何でこの曲ひかりに薦めたんだよ?
(ひかり)アサ兄。
(旭)こいつがどんだけうれしそうにこの曲を聴いてたか?
(ひかり)もういいから。
(美穂)そっか。
そうだよね。
ひかりさんリサ・ローブのライブ行くはずだったんだよね?ごめんね。
私があの日こっちに来なければ2人でライブ楽しめたのにね。
知ってたのか?
(美穂)そりゃ。
あの写真見て幼なじみのじゃれ合いだと思う方がおかしいよ。
好きなんでしょ?この人のこと。
言い訳も謝罪も何にもいらないから。
ただ一つだけ約束して。
今日で終わりにする。
できません。
お前。
(ひかり)支えなんです。
これまで支えてもらってたんです。
運命の人だって思ったんです。
諦めきれません。
あなたは大きな誤解をしている。
相手が既婚者だった時点でもうそれは運命の人じゃないのよ。

(新城)いつから知ってた?
(美穂)もう終わったことだから。
(新城)俺は…。
(美穂)寿々。
あなたには私だけじゃなくて寿々もいるの。
そのことよく考えて。

(梓)いやさみんな外でご飯食べてくるならもっと早く連絡欲しかったよね。
多香子さんいてくれてよかった。
(多香子)いや。
こっちこそ。
久々においしいご飯食べた気がする。
(梓)ごちそうさまでした。
食べた。
(多香子)ああー。
おいしかった。
ごちそうさまでした。
(梓)ああ。
いいよいいよいいよ。
(暁)今ごろバトルかもな?
(梓)跳び蹴りとかしてなきゃいいけどね。
いや。
運転あるし。
もう1泊すれば?もうこの時間だし。
(梓)そうだよ。
泊まってきなよ。
(多香子)いや。
でも。
(暁)遠慮すんなよ。
俺またここで寝るから。
じゃあ。
(暁)今日どこ行ってたの?
(多香子)うん?ああ。
ギターがちゃんと燃えたのか見に行ってきたの。
ケースの燃えかすしかなかったからたぶん成仏したんだと思う。

(戸の開く音)
(梓)おかえりなさい。
(旭)ああ。
(多香子)お邪魔してます。
(旭)ああ。
どうも。
(梓)早かったね。
(旭)ああ。
腹減った。
どっこいしょ。
(多香子)一服してくるわ。
(梓)うん?食べてこなかったの?
(旭)ああ。
そのはずだったんだけどちょっとね。
じゃあお茶漬けでも作りましょうか?
(旭)はい。
(梓)はい。
どうだったんだよ?
(旭)どうもこうもねえよ。
まるで手のひらの上で転がされてるような気分だったよ。
(旭)もう終わりにしてくれってよ。
KO負けか。
まあ悪いのは完全にこっちだからな。
(旭)そりゃそうなんだけど。
ひかりだって別に不倫したくてしてたわけじゃねえんだしよ。
(ひかり)もういいよ。
後は自分で決めるから。
(暁)自分で決める?そんな権利あるわけないだろ。
よその家族傷つけといてまだ自分を正当化するつもりか?お前にそんな反論する余地はないんだよ。
おい。
(暁)お前は幸せな家庭を壊そうとしてんだよ。
(多香子)この家壁薄いね。
ハハッ。
(旭)何がおかしいんだよ?らしくねえからだよ。
(旭)はっ?
(暁)お前が本質見失ってどうすんだよ?駄目なものは駄目って言えよ。
(旭)うるせえな!俺まで否定したらあいつには誰もいなくなっちまう…。
(暁)あん?
(旭)理屈じゃねえんだよ!もう。
(多香子)うちの家族と似てる。
何でもかんでも干渉してくるところが。
うちの母も私が音楽をやることに反対でね。
事あるごとにぶつかってた。
当時はそれがうっとうしくて家出同然に上京してきたんだけど。
今思えばそれも私のことを心配してくれてのことだったんだよね。
(ひかり)音楽は続けてるんですか?
(多香子)やめた。
昨日ギターも捨てたし。
捨てて吹っ切れるかと思ったんだけど全然そんなことはなくて。
(多香子)けど引きずっててもしょうがないか。
まあギター捨てるよりも男と別れる方が大変か。

(梓)入るよ。
(旭)うん。
(梓)はい。
食べて。
(旭)はい。
ありがとう。
(旭)いただきます。
(梓)まあさ難しいよね。
ひかりさんの気持ち考えれば好きになっちゃいけない人を好きになっちゃったつらさがあるだろうし。
新城さんの奥さんは奥さんで家族守るためにいろんな思いをのみ込んで許そうとしてるわけだし。
いやぁ。
俺だってよ不倫が人さまにどれだけ迷惑を掛けるかってことは分かってんだよ。
分かってんだけどさひかりっていう人間をただ不倫する女で片付けてほしくないっていうか。
今のあいつはさいろんなことがあってああなっちまってるわけで。
何ていうか。
くそ。
何て言っていいか分かんねえな。
そんなにもやもやしてるんだったらさぶつけてみたら?
(旭)えっ?
(梓)おい。
理屈じゃないんだろ?だったら感じたことを伝えるしかないんじゃない?
(旭)うん。
(旦)うまい!
(陽)梓さんの料理最高だ。
(梓)胃袋がっつりつかんでるんで。
(暁)そういえばあいつどこ行ったんだ?
(梓)何か新城さんの奥さんと大学病院に行くって。
(陽)何で?
(梓)知らない。
あのバカ。
(美穂)夜には名古屋に帰らないといけないんだけど。
(旭)すいません。
けどどうしても見てもらいたいものがあって。
こちらです。
(旭)あそこです。
(ひかり)おいしかったね。
ごちそうさましますね。
(旭)ひかりは小さいころから看護師になるのが夢でした。
新城さんが誕生日にナイチンゲールの本をプレゼントしたのがきっかけでそれですっかり魅了されちまって。
だからあいつは今夢がかなってここにいるんです。
(旭)仕事が始まってから家事そっちのけで患者のことしか頭になくて。
昔からのめりこむたちだったんでいつかパンクするんじゃねえかってずっと心配してて。
弟が逮捕されたときぐらいからか何か情緒不安定っていうか。
突然泣きだしたりとかして。
きっとひかりは職場で孤立して新城さんだけが味方で。
だから頼ってしまったんじゃないかってそう思うんです。
(美穂)だから…。
だから許せっていうの?
(旭)いや。
そうじゃなくて。
ただ分かってもらいたいんです。
知ってもらいたいんです。
佐藤ひかりって人間がどんな人間かってことを。
(新城)ミルク全部飲んだね。
(ひかり)はい。
終わったら先生に報告しますね。
帰ります。

(旭)あのう。
あのうすいません。
(美穂)もう話すことなんてないから。
(旭)ホントに申し訳ありませんでした。
ひかりに代わって謝ります。
ホントにすいませんでした。
俺は自分が不器用だから不倫なんてしたら絶対すぐにバレるだろうし相手にも絶対そんなことしてほしくないしホントにホントに大嫌いなんです。
だからひかりがやったことは絶対に許されることじゃないし奥さんやお子さんのこと考えれば償っても償いきれない罪を犯したと思ってます。
でも俺は情けねえことにどんだけあいつが間違っててもあいつの味方でいてやりたいと思っちまう駄目な兄貴なんですよ。
無理も承知でお願いです。
どうかあいつに時間を下さい。
新城さんとのことひかり自身に決着つけさせてやってもらえませんか?お願いします。

(旭)痛っ!?そういうやり方はねとってもひきょうだと思うわ。
すいません。
(美穂)はっ!?
(暁)お前何してんだよ!この人家族守ろうとしてるだけじゃねえか。
悪いのはひかりなんだよ。
それを身内だからって。
間違ってんだろ!こんなこと。
あいつにあんなことやらせんなよお前。

(暁)すいません。
こんな形で会いたくなかったんですけど。
(暁)家まで送ります。

(美穂)お兄さん。
今どき珍しいタイプよね。
(暁)ホントすいません。
(美穂)いいのよ。
若いんだから。
真っすぐでいいんじゃない。
でもこのままだと傷つくのは彼女の方よ。
妹もちゃんと考えると思います。

(戸の開く音)
(多香子)スカイツリーってのぼったことある?
(ひかり)ないです。
(多香子)私も。
(多香子)のぼってみようと思って下まで見に行ったけど見上げたらどんとそびえ立ってて何か自分が見下されてる気がしてのぼるのやめちゃった。
(ひかり)私も建ててるときは出来上がるのすごい楽しみにしててオープンしたら絶対のぼってみようって思ってました。
でも休みの日になると子供連れの家族でいっぱいでのぼるのやめちゃいました。
(多香子)フフッ。
でもさこっから見るとスカイツリーも案外悪くないよね。
何かうん。
頑張って立ってる気がする。
(ひかり)そうかも。
(ひかり)こうか?すごいですねスカイツリー。
(ひかり)多香子さん。
リクエストしてもいいですか?
(多香子)あっ。
私もう…。
(ひかり)リサ・ローブの『ステイ』っていう曲なんですけど。
(多香子)どうして?
(ひかり)私が嫌いな曲だから。
大嫌いな曲だから。

(『ステイ』の演奏)
(美穂)もうここでいいから。
(新城)気を付けて。
(美穂)うん。
(美穂)じゃあね。
ありがとう。

(多香子)何だかんだ居着いちゃってすいませんでした。
(旭)いやいやいや。
またいつでも来てください。
何なら土地の権利証返してくれちゃってもいいですから。
それは兄が持ってるんで。
(旭)あっそうなんだ。
(梓)これよかったら食べて。
(多香子)ありがと。
(暁)じゃあ行ってくるわ。
(旭)あっ。
お前一生帰ってこなくていいぞ。
(暁)うるせえ!おら!何だお前。
帰ってこなくていいんだ。
(旭)バイバイ。
(暁)やるぞ?
(旭)おい。
お前やめろやめろ。
危ない危ない危ない。
何だよ。
じゃあまたね。
(ひかり)また。
(旭)やめろお前。
(多香子)じゃあね。
(旭)やめなさい。
だからやめろっつうんだよ。

(戸をたたく音)
(旭)やめなさい。
早く行けよ。
ったくあいつは。
(暁)よし。
(多香子)大丈夫?こんなんで。
(暁)大丈夫だこれでよ。
よし。
(多香子)あっ。
ちょっちょっちょっ…。
(暁)えっ?
(多香子)ほら。
運転。
(暁)運転!?やなんだけどもう。
(多香子)すげえ汗かいてんな。
(暁)あっ?汗だよお前。
男は汗だよ。
お前。
あっつい。
(多香子)あちい!変な家族だよね。
(暁)ハハハ。
じゅうぶん溶け込んでたけどな。
(多香子)さあ行こうか。
(暁)よし。

(内海)おはよう。
あっ。
おはようございます。
(内海)ねえ?今日終わったら映画見に行かない?いや。
患者の家族からチケットもらっちゃってさ。
あっ。
(内海)それは…。
俺は…。
だってやめた方がいいよ。
不倫なんて。
俺は君のためを思って…。
もう関係ないんで。
お疲れさまです。

(従業員)いらっしゃいませ。
2014/08/20(水) 22:35〜23:44
関西テレビ1
若者たち2014 #06[字]

バレー延長の為35分繰下げてお送りします。
「男と女は」
不倫を続けるひかりは突然来た相手の妻と食事するはめに。夫婦とは?恋人とは?兄達の行動にひかりは…。

詳細情報
おしらせ
「女子バレーボールワールドグランプリ2014日本×ロシア」延長の際、放送時間を繰り下げてお送りします。
番組内容
 永原香澄(橋本愛)と付き合うことになった佐藤旦(野村周平)は浮かれまくる。それを見た陽(柄本佑)は、受験でつまずかなければいいが、と皮肉を言う。
 ひかり(満島ひかり)は、新城正臣(吉岡秀隆)からリサ・ローブのライブに誘われる。リサ・ローブは新城が学生時代から好きだったシンガー・ソングライターだという。嬉しいひかりは、大量のCDを買い込んで予習を始める。旭(妻夫木聡)は、そんなひかりを黙認する。
番組内容2
 同じ頃、屋代多香子(長澤まさみ)の家の倉庫でギターを見つけた暁(瑛太)は、それをつま弾く。そこへ来た多香子は、ギターを弾くのも見るのもつらいから捨ててくれ、と頼む。暁がひかりの影響で最近ずっと聴いていたリサ・ローブの曲を弾くと、多香子は彼女の曲を聴いてギターを始めたのだ、と明かした。
 ライブ当日、会場には「チケット譲ってください」と書かれたボードを持った暁がいた。チケットを取っていないにも
番組内容3
関わらず、多香子が行きたいと言い出したのだ。そこへ遅れて多香子がやってくる。ライブ用にドレスアップした彼女に暁は目を奪われる。さらに、ひかりと新城もやってくる。そこで新城の携帯が鳴った。相手は妻の美穂(斉藤由貴)で、新城のマンションにいて、そばには旭もいると言う。後で連絡すると言うと、新城はチケットをひかりに渡してその場を去る。それを見送るしかないひかり。暁はひかりが手にしたチケットを取り上げ…。
出演者
佐藤旭: 妻夫木聡 
佐藤暁: 瑛太 
佐藤ひかり: 満島ひかり 
佐藤陽: 柄本佑 
佐藤旦: 野村周平 

澤辺梓: 蒼井優 
屋代多香子: 長澤まさみ 
永原香澄: 橋本愛 

新城正臣: 吉岡秀隆
スタッフ
【原案】
山内久 
森川時久 

【脚本】
武藤将吾 

【音楽】
荻野清子 

【主題歌】
「若者たち」森山直太朗(ユニバーサルミュージック) 

【プロデュース】
石井浩二 

【演出】
杉田成道 
中江功 
並木道子 

【制作】
フジテレビドラマ制作センター

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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