私たちの社会を未来へとつなぐ子ども。
一人一人が無限の可能性を秘めた社会の希望です。
しかし今子どもの6人に1人が貧困。
困難を前に中には自分が生まれてきた事を責めたり将来への希望を失う子どもたちも少なくありません。
こうした中家でも学校でもない第3の場所で子どもたちに自信を取り戻してもらう試みが注目を集めています。
京都市のNPO法人…地域の学生ボランティアが子どもたちにマンツーマンで寄り添い生きる自信を育もうと取り組んでいます。
地域の力で子どもたちの未来への希望を取り戻す試み。
最前線のリポートです。
シリーズでお伝えしています「子どもクライシス」。
これまで2日間にわたって支援の手が行き届かない子どもたちの姿を見てきました。
私たち一人一人は地域の子どもたちの成長のために何ができるのか。
今日は大きなヒントとなる取り組みをご覧頂きます。
こちら京都府で活動するNPO法人山科醍醐こどものひろばです。
地域の学生ボランティア200人以上の力を活用し子どもたちに勉強を教え身近な相談相手となっています。
こちらをご覧下さい。
京都市のベッドタウン山科醍醐地域。
NPO法人山科醍醐こどものひろばは住宅街の一軒家で活動しています。
訪れる子どもたちの中には貧困や不登校などさまざまな事情を抱える子もいます。
中学3年生の…高校入試を終え真っ先に報告にやって来ました。
(瀧本)すごいやん。
半年前から通い始め大学生のボランティアにマンツーマンで勉強を教わってきました。
(瀧本)するよ。
する?ケイスケくんの家庭は経済的に苦しく公立高校への進学を目指しています。
ケイスケくんは母親と幼い妹の3人暮らし。
母に代わって妹の世話をする事も多くなかなか勉強に集中できない事からここに通うようになりました。
ケイスケくんを教えてきたのはこどものひろばのボランティアメンバー瀧本愼也さん。
地元京都市で生まれ育った大学2年生です。
フェイスブックで活動を知り自分にも何か役に立てる事はあるのではないかと応募。
初めて担当したのがケイスケくんでした。
地域のボランティアの力で子どもたちを支える取り組みが始まったのは34年前。
学校や家庭だけでは体験できない活動を通して子どもたちのもう一つの居場所を作ろうというのがきっかけでした。
特に必要だったのが貧困や不登校などに悩む子どもたちへの学習支援。
力を発揮したのが学生ボランティアでした。
学習支援を始めて気付いた事がありました。
夕食は夜一人という子どもたちが数多くいたのです。
そこで学生ボランティアたちは勉強が終わったあと一緒に夕食をとる事にしました。
頂きます。
(2人)頂きま〜す。
ケイスケくんも勉強が長引いた時は瀧本さんたちと食事を共にします。
年の近いボランティアたちとの気兼ねない会話。
ケイスケくんは一人で抱えていた悩みを打ち明けるようになりました。
ケイスケくんは小学生の頃からしっかり勉強して早く自立し自分が家族を支えていきたいと考えていました。
しかし同級生の話題はゲームやテレビの事ばかり。
自分の思いを安心して話せる相手はいませんでした。
そんな悩みに初めて真剣に耳を傾けてくれたのが学生ボランティアの瀧本さんでした。
初めての受験が近づいてきた時瀧本さんはケイスケくんに1枚のメッセージカードを手渡しました。
高校の合格発表は3週間後。
2人は結果を心待ちにしています。
家でも学校でもない地域の中の居場所。
また明日。
じゃあバイバイ。
ここから前に進もうとするケイスケくんです。
山科醍醐こどものひろばはその場限りの支援ではなく継続していく事が重要だと考えています。
この日訪ねてきたのはひろばに通って2年半になる高校1年生のナナさんとその母親。
通い始めたばかりの頃ナナさんは不登校でリストカットを繰り返していました。
母親は持病を抱えながら1人でナナさんを育ててきました。
病気のため外出もできず家計は生活保護で成り立たせてきました。
そんな母親を支えようとナナさんは幼い頃から家事を手伝ってきました。
ところが小学5年生の時いじめをきっかけに不登校になりリストカットをするようになりました。
ナナさんを担当する事になったのがひろばの梅原美野さんでした。
ナナさんにまず大切なのは抱え込んだ思いを素直に吐き出す事だと感じました。
ナナさんが通ってくる度夜遅くまで話に耳を傾けた梅原さん。
ナナさんは次第に心を開いていきました。
梅原さんはナナさんにどう向き合うべきか悩んでいた母親の思いにも耳を傾けました。
今親子は将来について語り合っています。
ナナさんの夢は管理栄養士になる事。
母親はできる限り応援したいと考えています。
スタジオには子どもを巡る問題に詳しい中央大学教授の宮本太郎さんとNPO法人山科醍醐こどものひろば理事長村井琢哉さんにお越し頂きました。
よろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
まずは宮本さん今のVTRですけれども学生と接する事で自信をどんどん深めていく子どもたちどうご覧になりました?これ私ねとても大切な事をやっておられるなと思うんですね。
と申しますのも今子どもたちを巡る環境を考えてみるとですね一つは親や先生との縦の関係。
非常に閉じた関係がありますね。
もう一つは狭い同学年の友達との横の関係があるんですね。
でここにもう一ついわばななめの関係。
目上の人なんだけれども自由に話せるというようなななめの関係を作ってあげているんですね。
これが非常に大きな効果を起こしていると…。
一つは例えばナナさんもケイスケくんもしゃべりまくってるって言ってましたよね。
友達に「俺将来何になろうかな。
どう思う?」と言ったら「今日どうしちゃったんだ?」とか言われるのが関の山なんですね。
でもこのななめの関係だと自由に語れる。
2人ともせきを切ったようにしゃべってる。
もう一つはアドバイスを素直に聞ける関係なんですね。
縦の関係で先生や親に何か言われた時にえてして子どもたちはそれをド〜ンと受け止めてしまうんです。
そこにななめの関係のおにいさんおねえさんが「今日お母さんちょっと疲れてイライラしているんだよ」と言ってくれると「ああそういうもんなんだ。
親もいろいろあるんだな」とすごく客観的にカメラを引いて見る事ができて周りが見えてくる訳ですね。
そういう意味でこうした関係は子どもたちの成長にものすごく大事な場面になってると思いますね。
言いたい事を言う事ができてそれを受け止めてくれる場所があるっていうのはどれだけ心強い事かというのを感じますけども実際村井さん現場で子どもたちと接してきてどういうふうに映ってますか?実際大学生たちは子どもたちのお兄ちゃんとか親でもないですのでそもそもの上下があまり成立してなくてななめの関係というのもありますのでそういう部分では子どもたちが本音でしゃべっていく。
ふだん使わない言葉であったりとかふだんしない相談であったりとかもしくはホントは親にしたかったうれしい話であったりとか親に対しての悩みだったりとかいろんな事が吐き出せる。
吐き出していってだんだんすっきりしていくんですね。
すっきりして笑顔に変わっていく。
そういう笑顔というのはなかなか家でも学校でもない場でないと出てこないですしそれがまたプロの専門職の人でも引き出せないんですよね。
それを当たり前のような姿で聞いてくれる大学生たちだからこそ…。
そういう意味で笑顔がただ笑っているんじゃなくて今までとちょっと違う学校でも家でも出せない笑顔が出てくる。
そういう変化はたくさんありますね。
そういう事もあってVTRに出ていたケイスケくんその後見事第1志望の公立高校に合格したと。
本当にそれを聞くとうれしいですけどもそういう地域に居場所があるっていう事はやっぱり子どもたちにとっても大事な事心強い事なんですね。
そうですね。
今申し上げたななめの関係であるという事に加えてですねここで出来上がっている関係はもう一歩深くてですねいわばメンターの関係。
メンターっていうのは信頼しているんだけれども自由に話せる関係。
そういう師弟関係みたいなところですね。
これを作ってくれている訳です。
こういう関係はアメリカの放課後政策なんかで導入されてものすごく子どもの成長にいい効果があるという事が知られてはいたんですけれどもそうした関係を日本でどんどん導入してくれているという事がよく分かりましたね。
このメンター関係がナナさんやケイスケくんの成長に大きなサポートになっているという事が一つポイントだと思います。
今そのナナさんに関して言うと高校生になってまでも継続して見ていく。
そして家族ごと見ていくという事。
これも大事に考えているという事ですね。
子どもの時だけよくても意味がないんですよね。
人生長いですので。
そういう意味では支援するされるだとサービスが終わってしまったら終わるんですけれどもあくまでそこから一緒に地域で過ごす仲間というか住民というかそういう関係性を続けていく事が結果として子どもの人生そのものを応援していける関係もしくは子どもたちからずっと見られる関係ですので僕たちも育っていかないといけないなというような関係を作れますね。
お互いに育つという事を考えると支援している学生にとっても大事な成長できる場と考えていいでしょうか?そうですね。
やっぱり学生はプロではないですし不完全な部分…。
まあ私たちもそうですが不完全な部分が多くてそこを子どももちゃんと見れると。
でも親とか先生はそこの不完全を見せないように振る舞わないといけない部分がたくさんある。
でも学生はそこもさらけ出して関わっていく中で実は刺激し合って学生たちも育っていくという部分はあるかと思います。
あのケイスケくんにねメッセージを書いてそのメッセージを読んだケイスケくんから「ありがとう」と言われた時の表情。
すごい印象的だったんですよね。
ああいう「ありがとう」って学生のうちに聞く事ってほとんどないですよね。
そういう部分でも学生にとってとても大きな経験になるんじゃないかなと思いますね。
宮本さんどういうふうに捉えています?私のゼミの学生もですねこうした子ども支援の活動に携わっている学生たちが何人かいました。
本当にゼミで見せる顔とこういう子どもたちとのメンター関係の中で見せる顔と全然違ってて「こんな大人の顔しているんだ」とびっくりするくらいなんです。
でもそうした一方で学生たちも彼らなりにものすごく悩んでて彼らにとっても本当に新しい関係なんでこれどう作っていこうかと。
でも子どもたちも敏感なんでねそうやって本当に真摯に悩んでくれている学生たちを見てそこからまた元気をもらう。
だからここには実は学生も支えられているというところがあって支える学生支えられる子どもじゃなくてある種支える支えられるの2分法を超えた支えあいの関係になっているんですね。
これからこの支えあいの関係を支えるっていうサポートが大事になってくるのかなというふうに思いますね。
その学生たちボランティアが子どもたちを楽しませようと自主的に企画している活動があります。
その数200にも上るんですがその一部ご覧頂きたいと思います。
子どもたちが集まってきました。
何をするのか。
これから始まるのは?村井さん。
この日はクッキー作りなんですけれども私たちは活動がたくさんあるんですよね。
200という話がありましたけれども実際たくさんある活動にもいろんなジャンルがあってその中の一つとしてものづくりとか何かを作るという企画を学生たち中心に企画してくれて…。
その中の一つで子どものアイデアで「クッキー作りたいおやつ作りたい」というのでそういう企画が生まれてきて一緒に作ったりしているんですね。
子どもたちのアイデアをしっかりと受け止めて企画にしていると。
子どもたち同士の交流もありますもんね。
そうですね。
大体小学生とかだと学区を越えての関係作りはなかなか難しいんですね。
そういえばあまりないですよね。
そういう部分でもいろんな学区やいろんな年齢の方々が集まって一緒にものを作ったり楽しい経験をするという事はとても大事かなと思います。
宮本さんこういう場所が地域にあるという事をどのように考えますか?今ね地域の関係がだんだん疎遠になってきている。
つまりかつては地縁血縁と言ったんだけれどもこれも衰退している。
会社の縁社縁みたいのが一時期強くなったんだけれども会社もばらけてしまっている。
そうした中でこれから地域を支えるのはこうした子ども子育てを巡る縁だとかあるいは高齢者のサポートを巡る縁だとかそうした縁なんですね。
この場合はいわば子どもの縁子どもの縁ですね。
子ども縁が広がっていてそれが地域にフィードバックして地域をも元気にしているというこれが一つポイントかなと思います。
その子ども縁ですが地域だけではなくて学校の中へと広がろうとしています。
去年秋から山科醍醐こどものひろばは休日に小学校が開いている土曜学習事業に協力するようになりました。
(一同)よろしくお願いします。
この日は大学のアートサークルに所属する学生たちが独自の企画を持ち込みました。
パズルのピースを自由に組み合わせて作る工作。
子どもたちからは大人気です。
土曜学習事業が始まったのは学校側が休日にも子どもたちが活動できる居場所を作りたいと考えたからでした。
教職員たちはふだんは元気に見えても悩みを打ち明けず抱え込んでいる子がいるかもしれないと感じていました。
しかし教職員だけで休日や放課後に子どもたちを支えていく事は限界がありました。
そこで地域のボランティアたちの力に注目。
山科醍醐こどものひろばの力も借りる事にしたのです。
地域の人たちが関わるようになって子どもたちも変わりました。
これ何?「書写」。
書写か。
どんな事に悩んでいるのか。
将来は何になりたいのか。
人見知りだった子どもでも積極的に話をしてくれるようになったのです。
子どもたちの気持ちに地域のみんなで向き合っていく。
その取り組みが一人一人の生きる力を育んでいます。
学校の中にも広がりつつある子ども縁ですが宮本さんどうご覧になりました?もともとは狭い学校を越え出て広がってった子ども縁ですよね。
これが地域のいろんな人たちを巻き込んでねまた学校に戻ってきたという感じですね。
それで学校の学び教えをバージョンアップしていると。
よく考えてみるともともとはね地域のいろんな街角でおっちゃんおばちゃんがその子どもたちに世の中はこんなふうになってんだよっていうふうに教えてた訳ですね。
そういう関係が希薄になっちゃったあとにですねこれをいわばシステムとして学校の中でもう一回再構築をしていく。
そして本来の正規の授業と並んでいろんな学びの場があり正規の師弟関係と並んでいろんなユニークな新しい師弟関係を作っていく。
そうした試みですね。
これが実は学びを複合化して大変効果があるという事は文科省なども注目をしていて実はこうした経験も一つのきっかけに…。
例えば今年平成26年度の予算には地域の多様な資源を活用する土曜日の教育再構築というプログラムが10億円以上の予算で費目として上がっているんですね。
つまりこうした試みを行政も全国に広げていこうとしている。
そういう代表的な試みだと思いますね。
こうした活動の場がどんどん広がっていく事について村井さんはどういうふうに考えていますか?実際学校に地域の人たちが入っていく機会が随分減っているんですよね。
そういった中で学校の中で何が起こっているのか楽しい学びをしているのか難しい勉強をしているのかそれとも困っているのかなんて事は全然地域の方が実は知らないまま学校にいろんなものを押しつけている部分がたくさんある中で入っていく機会を作る事で実は地域が学校の事を改めて知る機会になっていくと。
実は学校もですね困っていたりとか何か新しい事したいと思っても誰に相談していいか分からないんですよね。
そういったものが「地域とつながればこういう事ができるんだ」という事が少し示せればもっともっと子どもたちの学びの機会が増えていくんじゃないかなと思っています。
更に私たちでいうとそういった学校やNPOに任せるだけでなくて何ができるか一人一人考える事が大事になってくると思うんですね。
そうですね。
こうした子ども縁をですね多層的に地域に作っていく。
今日話に出ていた学生ボランティアと子どもの関係。
これも大事ですけどこれからは地域にいる豊かな経験を備えた高齢者がたくさん活躍できる訳ですね。
この高齢者と子どもの関係をどう作っていくか。
これも新しい子ども縁の一つのパターンとして大事だなというふうに思いますね。
地域の資源をどう使っていくか。
そうですね。
その事によって地域の資源も活用されよみがえっていくという事です。
3回にわたってお送りしてきた「シリーズ子どもクライシス」。
今月下旬には皆さんの声を基に子どもたちの育ちをどう支えていくか更に考えていきます。
今日はどうもありがとうございました。
2014/08/20(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ 子どもクライシス 第3回「ある地域の挑戦」[字]
京都府のNPO「山科醍醐こどものひろば」は、学生ボランティアによる子どもたちへのマンツーマン支援で成果を上げ、全国から注目されている。支援現場の最前線リポート。
詳細情報
番組内容
家にも学校にも居場所を見つけられない子どもたちに、どうすれば「自信」を取り戻せられるのか。先駆的な取り組みをしているのが、京都府のNPO「山科醍醐こどものひろば」。学生ボランティアがマンツーマンで子どもたちに向き合い、学習支援や日常の相談に乗っている。「ひろば」は、地元の小学校とも連携し、より多くの子どもたちの支援にも取り組み始めた。子どもたちの将来を支える活動、その最前線をリポート。
出演者
【ゲスト】NPO法人山科醍醐こどものひろば理事長…村井琢哉,【出演】中央大学法学部教授…宮本太郎,【司会】山田賢治
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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