下見ててごらん。
下見てて。
私たちの社会を未来へとつなぐ子ども。
一人一人が無限の可能性を秘めた社会の希望です。
しかし今…経済的に追いつめられる中虐待や心中に至るケースが増えています。
去年5月には3歳の子どもが餓死。
一緒に亡くなっていた母親の…というメモが残っていました。
貧困の中虐待され自ら命を絶とうとした子ども。
追いつめられる日々の中子どもたちは生きる道を必死に見つけようとしています。
国は今年の1月子どもの貧困対策法を施行。
しかし具体的な対策はまだ何も決まっていません。
子どもたちの健やかな育ちを支えていくためにはどうすればいいのか。
「ハートネットTV」では4月シリーズで考えていきます。
こんばんは。
「ハートネットTV」…今日から新年度です。
誰もが希望を持って生きるためにはどうすればいいのか。
皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
4月のテーマは「子どもクライシス」。
子どもたちが置かれている現状を見つめていきます。
まずはこちらの数字。
15.7%。
これは子どもがいる世帯の貧困率です。
実に6人に1人の割合で貧困という事になります。
こんなに貧困の家庭が多いのかと驚かれた方も多いと思いますがこれは相対的貧困率といいまして明日食べる物がないといった絶対的貧困ではなく健康で文化的な生活が十分には送れないという世帯の割合です。
子どもたちの育ちに影響を及ぼすのではないかといわれています。
実は子どもの貧困は見えない貧困だといわれています。
親が子どもだけには迷惑をかけたくない。
更には世間の目があって「助けて」と言えない状態が続く。
この結果餓死事件や心中事件が起こって初めて表に出てくるというケースが少なくありません。
その中でとりわけ困窮しているのが母子世帯シングルマザーの世帯です。
まずはその暮らしの現状からご覧下さい。
冬の訪れを感じる…3人の子どもたちが暮らすシングルマザーの家族に出会いました。
長男は小学校6年生。
2人の妹の面倒を見ています。
30代の母親は2か月前に離婚。
派遣の仕事で家計を支えています。
生活は苦しく一家の食べ物の多くは周囲からの頂き物だといいます。
節約のため暖房器具を使う事はほとんどありません。
何か着なさいよ何か。
電気代やガス代は3か月以上滞納しています。
支払いのめどは立っておらずこのままでは止められてしまいます。
妹に声を上げたのは…日々家計が追いつめられていく事を気にかけています。
夜分遅くすいません。
そんな家族を定期的に訪ねている人がいます。
徳丸ゆき子さん。
この日は子どもたちのための食べ物を持ってきていました。
少しお子さんの様子が心配だという事があったので夜分遅くではあったんですが。
ふだんもちゃんとごはん食べてるのかなという事とかはやっぱり心配になりました。
徳丸さんは去年の6月大阪で生活に困窮する子どもたちを支援する団体を立ち上げました。
月に1度ボランティアを募って夜回りをしています。
配るのは連絡先を記したカード。
「『助けて!』って言ってもええねんで」というメッセージを載せています。
孤立し助けを求められずにいるシングルマザーと子どもたちを見つけ出す努力を続けています。
おいくつですか?はい今何歳言うの?2歳。
2歳。
かわいい〜!徳丸さんがこの活動を始めたのはある事件がきっかけでした。
大阪市のマンションでシングルマザーの親子が遺体で発見されました。
3歳の子どもは餓死。
部屋には母親の…というメモが残されていました。
亡くなる前年母親は市役所に生活保護を受けられないか相談に行ったものの断られていました。
子どもが犠牲となった餓死や心中虐待などの事件はこの1年報道されただけでも80件以上に達しています。
徳丸さん自身8歳の子どもがいるシングルマザーです。
この事件はひと事とは思えなかったといいます。
徳丸さんが健一くんの一家と関わるようになったのは去年の秋。
離婚し生活に困窮しているという話を聞いたのがきっかけでした。
派遣で働く母親の給料は手取りで10万円。
家賃の6万円と生活のために借りたローンの返済が毎月3万円あります。
母親の離婚のきっかけは夫の激しい暴力でした。
その矛先は健一くんたちにも向けられました。
健一くんは母親を守ろうとする度に激しく殴られ続けたといいます。
離婚後養育費の支払いはありません。
母親は1歳の妹を保育園に預け働き始めました。
夜間子どもを預けるお金がないため働けるのは夕方まで。
一家は困窮から抜け出せずにいます。
健一くんの唯一の楽しみは週末のサッカークラブ。
欲しい道具があってもねだる事はありません。
健一くんはいち早く独り立ちして母親を支えたいと考えています。
(取材者)夢は何なの?
(健一)夢?大工。
母親の努力だけではどうにもならない現実。
子どもたちはじっと我慢を重ねていました。
健一くん一家を心配する徳丸さん。
昼夜を問わず多くのシングルマザーから相談のメールが届きます。
もう心中しようと思うと。
娘にお母さん死にたいって言ったら娘も死ぬって言うんで一緒に死のうかと思うんですけどとか来るんですよ。
もう子どもにそういう事を言わないでって心の中で思いますよね。
「お母さん死のうと思うんだけどどう思う?」とか。
これまで支援してきた中には自信を失い将来に希望が持てず不登校になったり自殺に追い込まれたりする子どもたちも少なくありませんでした。
子どもを守るには親ごと支えるしかない。
徳丸さんの調査で母親たちは誰にも相談できず孤立している事が分かってきました。
なるほど。
貧困から脱しようと多くのシングルマザーは生活保護を受けられないか市役所に相談に行っていました。
しかし受給できているのは僅か15%。
本来なら受給できるはずのシングルマザーでも働けると見なされて受け付けてすらもらえませんでした。
半数以上のシングルマザーが非正規雇用です。
生活を成り立たせようと複数のパートを掛け持ちせざるをえない人も少なくありません。
その結果仕事に追われ親子で触れ合う時間がなくなり子どもにしわ寄せがいっているといいます。
長時間働き続ける母親を子どもたちはどう思っているのか。
母親と2人暮らしの子どもが話を聞かせてくれました。
18歳のアヤカさんです。
母親は正社員で働き続けてきました。
母親は家計を支えるため毎日のように朝から深夜まで働きづめ。
アヤカさんが触れ合う時間はほとんどありませんでした。
アヤカさんは少しでも母の助けになればと学校が終わると夜遅くまでコンビニでアルバイトをしてきました。
それでも親子の暮らしは楽になりません。
母親は正社員の仕事に加えパートも掛け持ちで働き続けました。
自分のために働き続ける母親。
アヤカさんはせめて感謝の気持ちを伝えたいとアルバイト代をためマッサージチェアをプレゼントしました。
その半年後母親に異変が起きます。
正社員の仕事で月100時間以上の残業を続けてきた事から精神的に追いつめられ休職せざるをえなくなったのです。
会社からは退職を迫られています。
10日後には今住んでいる会社の寮を出なければなりません。
アヤカさんは子どもたちを支える仕事に就きたいと保健師を目指しています。
しかし今は自分が母親を支えていかなければならない。
進学も迷い始めています。
生活に困窮していた健一くん一家の様子に変化が起きていました。
母親は勤めていた事業所が廃止となったため失業してしまったのです。
母親は次の仕事を見つけるため失業保険が出ている間に資格を取ろうと無料の職業訓練に通い始めていました。
訓練が始まって1週間後。
子どもが次々とインフルエンザにかかり通えなくなってしまいました。
これ以上休むと資格が取れなくなってしまいます。
母親は病気の娘を家に置いて訓練に出る事にしました。
6月には失業保険も切れますが仕事の当ては見つかっていません。
長男の健一くんはこの春中学生になります。
スタジオにはVTRにも出演して頂きました徳丸ゆき子さんそして貧困問題に詳しい社会活動家で法政大学教授の湯浅誠さんにお越し頂きました。
よろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
まずは徳丸さんにお伺いしたいんですが暖房をつけたくても我慢しているといった子どもの現状ありました。
実際接していてどんな事を感じていますか?ホントに先ほどのお子さんもそうなんですが自分が習いたい事ですとか部活も諦めざるをえない。
あとはおやつも食べさせてもらえない。
ごはんもお代わりがなかったり十分におなかいっぱい食べれない。
お母さんが忙しくて寂しい思いをしているといった感じでとにかく我慢する事が多いんですね。
あらゆる機会が奪われていくといった状態がございます。
我慢してホントは言いたい事も言えない。
気を遣ってしまっているという中でなかなかコミュニケーションがうまくいかないという現状はあるんでしょうか?ホントにシングルマザーの方というのはいわゆるワーキングプア長時間労働をしている方が多いので物理的に時間がないといった事もございます。
あと子どもの立場から考えるとどうしても例えば学校に行って友達との比較の中で自分を捉えてしまうという中で劣等感といいますかそういうような思いも出てくると思うんですよね。
そうですね。
この途上国とは違って靴を履いているとか当たり前。
そういう時に靴が小さくて履けなくて後ろ踏んでずっと過ごしていたという子どもたちもいたんですね。
そうするとだんだん何でそういう事をしているんだと言われていじめにつながったというケースもございました。
こういう現状を見ると何でこういう状況に陥ってしまったのかと考えてしまうんですが湯浅さんどういうふうに考えたらいいのでしょうか?子どもの気持ちとしては「自分自身からの排除」と言ったりもするんですけど。
「自分自身からの排除」。
ええ。
人には本来伸びたいという気持ちがあるんですよね。
それを無理に押さえつけていると押さえられた気持ちが例えば他人に向けて出ちゃうとか。
フラストレーションが自分に向けて出ちゃうとか。
それが他人に向けて出る時は人に対する暴力になったり。
自分に向けて出る時はいわゆる自傷行為みたいになったりする訳ですけど。
そうやって無理に押さえつける。
ここ難しいところで何でもかんでも言うとおり買ってあげなさいって言ったら単にわがままじゃないかって話なんですけど。
逆に何でもかんでも我慢させるっていうのはそういう伸びたい気持ちも押さえつける事になっちゃうので。
やっぱり無理に無理が重なっていくと自分の事を大事にできなくなるというか。
大学ホントは行きたいんだけどそれは諦めるしかないんだとか。
そういうふうにだんだんどうせ自分なんて無理なんだっていうのが癖になってっちゃう。
いわゆる諦め癖みたいのがついていくと諦めなければ夢はかなうんだと言われても何かそれどこの誰の話なのかと。
ホントにそうなら自分の人生何でこうなのというふうに思っちゃうようになっていく訳ですね。
結局それはどういう問題かというとそういう事を通じて社会の体力が奪われていく訳ですよ。
社会の体力?ええ。
子どもさんは将来この社会を回していく担い手ですよね。
そのお母さんたちも追いつめられた末に適応障害とかになっていくという話もありましたけど。
そういうふうにして一人一人がすり減ってってしまえば結果的に社会はうまく回らなくなっていく。
だからこれはその子どもがかわいそうかどうかとかお母さんがかわいそうかどうかという次元の話を超えて社会が体力をちゃんとつけて回り続けるために社会的に対応していかないといけない事なんだというふうに問題立てる必要があると思いますね。
そう考えるとホントに今やるべき事をやっていかないとという思いを強くしますがちょっとこちらのデ−タご覧頂きたいと思います。
子どもの貧困を考える上ではやはり家族の状況全体を見ていかないといけないと思います。
シングルマザーの現状です。
相対的貧困率といいますと今さまざまな統計から5割以上といわれています。
そして収入といいますと平均で181万円です。
これは子どもがいる世帯の平均よりもおよそ400万円低いという状況です。
母子世帯のお母さんは8割以上働いていながらこの収入です。
しかも働いていたとしても半数以上が非正規雇用という状況でその中で生活保護の助けを借りている世帯は15%もないですよね。
この現状どういうふうに見たらいいでしょうか?そうですね。
私たちのシングルマザーの調査の中でも今のデータと同じような状況というのは見えておりましてホントに社会構造の問題だとしか思えないと感じています。
となると今のVTRのお母さんもそのお母さんだけの問題ではなくてやはり社会の問題だと捉える事が大事だという事でしょうか。
そうですね。
ホントに先ほどのデータにもあったようにほとんどの方8割以上の方がシングルマザーでも働いている。
それでも働いても働いても181万円というのが現状です。
私たちの中でも特に多いのがDVで離婚するといったケースが多いんですがホントに着の身着のまま逃げてきて1〜2週間だけシェルターにいてそのあとは体を壊すまでワーキングプアが続くといった方も多く見られます。
子どもだけの問題ではなくてお母さんの育ちという事もやっぱり影響している可能性があるという事ですか?そういったDVを受けていたといった方の中にもやはりその方の親自分のお母さんもDVを受けていたといったケースも多い現状です。
連鎖という事も絡んでるという事なんでしょうか。
そうですね。
さっきのような状態が放置されていくとどうしても親から子にという話が行き着いていっちゃう訳ですが。
私たちここで考えないといけないのが相対的貧困って冒頭にもご説明のあった。
あれ確かに分かりにくいですがむしろ逆に考えた方がいい。
つまり何でわざわざあんな分かりにくい概念まで作ってこれなんとかしなきゃいけないといってるのかという事ですね。
これは結局ひいては憲法25条の話にもなるんですが。
憲法25条には健康で文化的な最低限度の生活と書いてあると。
餓死しない生活を保障するんだとは書いてないと。
そこに人々の生活を保っていく事がさっき話した社会の体力を回していく事になりますから。
そのためのセーフティーネットであり雇用やあるいはさまざまな支援体制の構築という事が国や私たち自身に求められるという事だと思うんですね。
となると今年の1月に施行された子どもの貧困対策法。
まさに内容はこれからというのはありますが。
あれは理念法ですから具体的な事はまさにこれからなんですが。
ただ貧困という言葉がついた法律というのは多分戦後初めて出来た。
そういう意味では大事な一歩ではあるんですね。
これを育てていかないといけないと思います。
徳丸さん現場でこういう家庭と接してきてどんな事が必要だと一番感じてますか?本当に貧困対策法が出来たというのはありがたい事なんですが本当に大切な事は親子の生活を安定させるという事だと感じていますのでそういった具体的に使えるものになるように私たちも注視していかなければならないと思っております。
明日あさっても子どもたちが置かれている現状について考えていきます。
ありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2014/08/19(火) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ子どもクライシス 第1回「貧困・追いつめられる母子」[字]
特集は「追いつめられる子どもたち」。いま子どもの6人に1人が貧困状態といわれる。国の対策が後手に回る中、大阪で始まった民間団体による調査・支援の現場を追う。
詳細情報
番組内容
特集は「追いつめられる子どもたち」。今年「子どもの貧困対策法」が施行されたが、消費税アップによる増収5兆円のうち、社会保障費にあてられるのはわずか5000億円。子ども支援の財政的後ろ盾は心もとない。大阪ではシングルマザーの徳丸ゆき子さんが中心となり「大阪子どもの貧困アクショングループ」が設立された。シングルマザーへのヒアリング調査や支援が始まっている。子どもたちを取り囲む厳しい現実を取材する。
出演者
【出演】法政大学教授…湯浅誠,大阪子供の貧困アクショングループ代表…徳丸ゆき子,【司会】山田賢治
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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