(テーマ音楽)あ〜ケイコちゃんたらこんなに気を遣わなくてもいいのに。
京都の姪がですねこの間までうちに遊びに来てたんですよ。
それでわざわざお礼に送ってくれたんです。
さて京都といえば和菓子かな。
どれどれ。
コーヒーに洋菓子。
なるほどカフェセットってわけですね。
でも京都といえば抹茶に和菓子でしょ。
ケイコちゃんまだまだ若いですねぇ。
ちょっと草刈さん。
うん?知らないんですか?京都って意外とモダンなんですよ。
え?…知ってますよ。
京都というとどんな風景を思い浮かべますか?みやびな風情の古い町並み。
和の情緒あふれる路地。
すてきですよね。
でも実は京都はレトロな洋館の宝庫でもあるんです。
明治時代京都のメインストリートとして栄えた三条通です。
写真家の神崎順一さん。
寺院や町家を撮り続けていますが洋館も京都の街の魅力だと言います。
正面がいいですねやはり。
旧日本銀行京都支店。
鮮やかな赤レンガが京都の街に映えます。
中へ入ると…広々とした格調高い空間。
ちょっと何か覚えてそうな映画の1シーンに出てきそうな感じなので。
すごいいいですねこれ。
窓口だったカウンターも味わいたっぷり。
ノスタルジックな世界へいざないます。
(神崎)明治というのは手が届きそうでなかなか届かない。
けれども懐かしい。
お寺とか神社とか町家とかとちょっと違う味がある。
京都には明治以降さまざまに姿を変えてきた洋館が残っています。
明治時代の郵便局はルネサンス様式に基づいた端正な造り。
大正時代の銀行は装飾を抑えたシンプルなスタイル。
昭和初期の新聞社は当時最先端のアールデコ調で飾られました。
僕も知らなかったようにあまり知らない。
地元の人にも知られていない洋館の数々。
今日は京都の新たな魅力洋館の美をご紹介します。
夕闇迫る鴨川。
京の夏の風物詩…いにしえから都人が楽しんできた四条河原の夕涼み。
和の情緒に酔いしれながら四条大橋を渡っていると…。
目の前に洋館が現れます。
今は中国料理店ですが元は西洋レストラン。
大正15年に建てられました。
訪れる客の目に留まるのが玄関の豪華な装飾。
レストランならではの遊び心が隠されています。
これは羊。
魚。
そしてタコ。
おいしそうな食材がお迎えするというわけです。
江戸時代にはやった夕涼みの景色から大正モダン建築へ。
今日一つ目の壺は…京都の建築を研究してきた石田潤一郎さんに時空を超えた散歩にいざなってもらいます。
まずは足利義満ゆかりの禅寺相国寺。
400年前に建てられた法堂。
堂々とした風格を漂わせます。
境内に流れる厳かな時間を満喫したら…。
相国寺の境内を南に歩いてゆくと門が見えてきます。
さあここから先は…皆さんも一緒にタイムスリップ!現れたのは赤レンガが鮮やかな洋館。
同志社大学のキャンパスです。
明治初期宣教師として帰国した新島襄がキリスト教精神のもと創立しました。
それが京都という街独特の個性を与えていると思います。
次はこちら西本願寺から。
堀川通に沿って門前を歩いていると…。
見えてきました。
あれです。
どこですか?ああ奥に不思議な建物が見えますね。
風情ある門前町とは対照的な洋館です。
なんとこれは西本願寺の施設伝道院です。
赤レンガにドームを載せた奇抜なデザイン。
西本願寺が設立した生命保険会社の社屋として建てられました。
明治時代仏教のイメージをより時代に即したものに変えてゆこうと当時最先端のデザインが採用されたのです。
本願寺さんに限らず…それを何とか押しとどめなければいけない。
一番そのとんがった部分がこの伝道院だと言えるかと思います。
革新的な洋館と伝統的な町並みが織り成す風景。
時代を切り開いてきた京都の歴史そのものです。
言われてみれば京都には洋館造りのモダンな喫茶店がありましたねぇ。
妻とよく入りました。
うん。
あこれね京都では「フレッシュ」って言うんですよ。
僕はブラック君はフレッシュだったよね。
あぁ〜な〜んてあのころの僕たち初々しかったなぁ。
う〜んフレッシュ!東山の麓に広がる岡崎公園に一風変わった洋館があります。
昭和8年に建てられた京都市美術館です。
近代的な美術館として鉄筋コンクリートで建設されました。
ところが建物の上には和風の銅葺き屋根。
日本伝統の千鳥破風が飾られています。
車寄せを設けた洋風の玄関にも。
寺や神社の柱を飾る木鼻をわざわざコンクリートで模しています。
和風の装飾で飾ったのには理由がありました。
日本的なデザインで設計するようある取り決めがあったのです。
昭和の5年になりまして都市計画法で風致地区という地区があるんですけれどもこの場所が岡崎公園が指定をされたんですね。
それはやはり東山を背景にした眺望というものがあって歴史的な環境に配慮するという意図が強く働いたんじゃないかと考えられます。
千年の都・京都ならではの洋館が生み出されたのです。
二つ目の壺は…京都の華祇園。
この街にも洋館があるのをご存じでしたか?お茶屋が軒を並べる中にひときわ目立つ5階建ての建物。
祇園のランドマーク弥栄会館です。
春には都をどりが披露される伝統的な歌舞練場。
その隣に祇園にも近代的な劇場を造ろうと建てられました。
中は2階席を設けた1,000人余りを収容できる大ホール。
老舗のお茶屋の八代目太田紀美さんも学生時代にこのホールで芝居や映画に親しみました。
「アンネの日記」もそこで見ましたし仲代達矢さんの「ハムレット」も見ましたし。
ここみたいなハイカラな劇場というのは他ではあんまりなかったん違いますか。
…ということをしょっちゅう母が言うとりましてね。
ただ古いもんを守ってるだけではジリ貧になってしまってどんどんどんどん尻すぼみになっていくさかいにそやさかいにどっかでモダンを古い中でもモダンをパッとつかまえていかんとあかんという。
時代を先取りしようと建物は鉄筋コンクリートの巨大な造り。
しかしここは祇園。
モダンな劇場も伝統花街にふさわしい装飾で包み込みました。
白いタイル張りのしゃれた壁にカーブが美しい…鉄筋造りの箱形を感じさせない華麗な外観に仕上げました。
ここの町並みは全部瓦のひいた屋根ですからそういうとこに……こういう具合にしやしたん違いますやろか。
中はモダンでもね。
伝統とモダンの両立。
魅力的であり続けるための古都の知恵です。
名刹清水寺。
この門前にも昔ながらの景観に配慮した洋館があります。
大正3年に清水焼で財を成した実業家松風嘉定によって建てられました。
屋根は瓦葺きですがその下にはバルコニーやサンルームが設けられています。
見上げれば寺院の屋根を飾る…そして洋風の…和洋折衷絶妙なバランスです。
この洋館一番の見どころは4階にあたる…階段を上がってゆくと…眼下に都の絶景が広がります。
30年前に建物を譲り受けた上田両四郎さん。
この洋館にある謙虚さを感じると言います。
この上には清水寺がありまして清水寺には三重塔というのがございます。
その三重塔……というような思いはどっかにあったんやと思うんですよね。
やっぱり清水の方ですし我々もやっぱり清水でここでお商売させて頂いてるとやはり清水さんあっての我々のお商売ですし。
殿様気分の眺めを楽しみながらもここは門前町。
清水寺はちゃんと仰ぎ見るというわけです。
慎みもまた古都の洋館の味わいです。
フレッシュだった僕たち2人は京都のすてきな町並みをあちこちと歩き回りましたねぇ。
祇園…鴨川…河原町。
フレッシュバックが止まらない!ベランダ付きの瀟洒な木造一戸建て。
今から130年以上も前に建てられた明治時代の住宅です。
住んでいたのは同志社を創立した新島襄と妻八重。
ここで当時最先端の洋風の生活を送りました。
中でも画期的なのがこの台所。
それまで土間で炊事をするのが一般的でしたが床板を敷き詰めかまどや流しを並べたのです。
井戸までも室内に取り入れた一直線の配置はいわば…甘党だった襄のためにここで八重が洋菓子を作ったと言われます。
そんな八重にとって大切な場所がありました。
茶室です。
しかしよく見ると壁が天井まで仕切られていないのがお分かりですか?実は周りを壁で簡単に区切ってあるだけ。
襄の死後八重は洋館を生かしつつ中にささやかな茶室を設けたのです。
基本的には襄と一緒に暮らしていた時の建築というのを崩さずにそこに自分の趣味のお茶のお茶室をしつらえるというところからもすごく…当時は慣れなかったであろう洋風の生活というものを受け入れて実際に実践をしていたという部分とそれで和風の生活というのを全て排除したのではなくてそれも持ち続けていたという面でどちらも八重の生活であるというのが面白さかなと。
和も洋も全てが八重の都ぐらしです。
今日最後の壺。
古くからの商家が軒を連ねる一角。
伝統的な町家の間から洋館が生えてきたかのように飛び出しています。
大正15年に建てられた豪商の家です。
石灰岩とタイルのしゃれた外装は当時流行したデザイン。
建築家フランク・ロイド・ライトの設計を参考にしました。
町家とつながった洋館は西洋風に客を接待するための応接間だったのです。
京都一流の商家として格調高い空間で客をもてなしました。
更にこの洋館には京都ならではの特別なしつらいが備わっています。
ご主人の川榮一郎さん。
なんと町家の2階から伝っていったのは洋館の上。
へえ洋館の上は展望台になっていたんですね。
でここで何を見るんですか?そちらから鉾がず〜っと来てこの辺に2階があります。
鉾の2階が。
囃子方がどんな感じで演奏してるかすぐ分かります。
実はここ祇園祭の山鉾を見るための鉾見台でした。
すぐ目の前は山鉾の通り道なのです。
…という決まりになってます。
巡行当日は僕は巡行にお供で付いてますのでお祭りのほうに行ってしまうので朝早くから。
ほとんどここに上がることはないです。
年に一度の山鉾巡行。
豪華に飾り立てた町内自慢の山八幡山が京の街を巡ります。
川さんも晴れ姿です。
今日はどうもありがとうございます。
どうぞ一日楽しんでいって下さい。
鉾見台も準備してますので。
いよいよ鉾見台が活躍します。
(お囃子)お囃子の音とともに…。
待ちに待ったその時が来ました。
(お囃子)特等席からの眺めです。
(お囃子)八幡山が巡行から戻ってきました。
(拍手)自慢の山を温かい拍手が迎えます。
川さんも鉾見台へ帰ってきました。
(掛け声)帰ってくると最後にやっぱり建物を見てみんなワッと歓声が上がるのが非常にもうそれが楽しみで一年やってます。
一年に一度だけの贅沢な舞台。
あっぱれなり京の洋館!京都の街ってず〜っと同じようだけど毎日フレッシュ。
まるで僕らみたいだね。
今日は千葉県幕張メッセで開催中の2014/08/17(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「京の洋館」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「京の洋館」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
古都・京都は、実はレトロな洋館の宝庫。意外にも街中には明治・大正・昭和のモダンな建物が多く残されている。見どころは「和」と「洋」が入り交じる京都独特のスタイル。しゃれた洋館と伝統的な町並みが織りなす不思議な風景とは?年に一度、祇園祭を見るためだけに作られた洋館のしつらいとは?「八重の桜」でおなじみ新島八重のマイホームも紹介。洋館散歩いち押しのスポットを歩きながら、知られざる京都の洋館の美に迫る。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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