難波刑事:聞いてるか?子供は疲れきっている。
自分の子供だろう!子供だけでも解放してくれ!
(犯人)うるせ〜!黙ってろ!
(子供の泣き声)
(母親)逃げて〜!
(子供の泣き声)チクショー!逃げんなよ!
(子供の泣き声)
(犯人)このヤロウ〜!
(犯人)うわ〜っ!
(母親)あなた!やめて!
(母親の悲鳴)
(遠山)怜子〜!
(難波)遠山さん!はなせ〜!
(遠山怜子)あなた…。
あなた…あなた…。
あなた!あなた〜っ!あなた〜っ!結〜!早く支度しなさい!遅刻するわよ。
(結)とっくに着替えてるわよ。
寝坊したのお母さんのほうでしょう?はいこれ持っていって!学校に持っていく雑巾用意してくれた?そこに置いてある。
縫ってくれたの?ごめん…忙しくて縫えなかった。
100円ショップか…。
本当にごめん。
今回だけは勘弁して…。
ま…忘れなかっただけでもエライエライ…。
ありがとう。
ハハハ…食べよう食べよう。
(2人)頂きま〜す。
痛っ…。
昨日治療してもらったんでしょう?行かなかったの?忙しかったんだもの…。
この前もそう言ってた。
結だって歯医者さんに行くたびに「お母さ〜ん」て泣いてたくせに。
やめてよそんな大昔のこと。
今日こそ行きなさいよね。
分かりました。
ほら…早く食べなさいよ!痛い〜っ!
(エレベーターのチャイム)
(チャイム)
(チャイム)
(鷹子)美容と健康をテーマに女性にやさしい…。
(牧原)もういい。
とにかくこの商品企画は打ち切りだ。
納得できる理由を聞かせてください。
売れないからだ。
他にどんな理由が必要だ?企画がスタートしてまだひと月です。
もう少し時間を…。
とにかく打ち切りだ。
社長命令だ!兄さん!社長と呼べ!
(菜保子)社長…ただいまお水を…。
いい…。
分かりました。
要するに社長は私の企画が気に入らないということですね?失礼します。
(板井)前に治療された先生はかなり個性的な治療をなさってますね。
先生によって治療の仕方違うんですか?やっぱり個性ってありますよ。
少なくとも自分で治療した歯だったら患者の顔は忘れても歯を見れば分かるもんですよ。
そういうものなんですか。
はい倒しますよ。
はい…。
(警備員)すみません。
入構証をお持ちですか?
(役員)納品発注といった製品化に至るまでの作業を合理化することで業務をスムーズに…。
社長…どうかなさいましたか?ちょっと気分が…。
社長…う〜…。
(茶碗の割れる音)何があったんですか?
(救急隊員)さがってください!・
(寺岡)はい特殊犯捜査係。
はいお待ちください。
係長…1番の電話遠山さんです。
は〜い。
・遠山です。
1人で歯医者に行けたか?・これから山手医大病院に回ります。
そんなに悪かったのか?歯じゃありません。
集団中毒みたいなんです。
集団中毒!?布施君!
(布施)係長に「行け」って…。
(氷川辰代)これあなたの分…。
苺大福おいしいですよ。
せっかくですけど…。
え〜!?歯医者の帰りなんですよ。
だから甘いものは…。
そうじゃなくて…勤務中でしょう。
虫歯ですか?はい…。
いけませんね。
そろそろ歯槽膿漏も出てくる年ごろですから。
定期検診はちゃんと受けたほうがいいですよ。
それはご親切にどうも。
で容体は?分かりません。
私は法医学が専門ですから。
運ばれた9名全員が吐き気めまい頭痛などの症状を訴えていますが快方に向かっています。
何かの中毒でしょうか?単なる食中毒じゃないかもしれませんよ。
じゃあ…毒物中毒?まず基本となる「リン系」「青酸系」「ヒ素系」この3つの毒から当たってみますけどね。
世の中には無数の毒物がありますからね。
そう簡単には特定できないかもしれません。
ま…焦らずにいきましょ。
あ…じゃあこれ結ちゃんに…。
あ…ありがとうございます。
あの人が牧原総業社長の牧原英明さん。
付いていらっしゃる方はお嬢さん?
(布施)違いますよ。
あの人は最近社長と結婚した奥さんなんですよ。
警視庁特殊犯捜査係の遠山です。
同じく布施です。
(菜保子)特殊犯捜査係?例えば今回のような毒物混入事件誘拐事件や立てこもり事件など凶悪な特殊事件に対応できる部署です。
所属は捜査一課です。
ああ…。
加瀬さんは牧原総業で社長秘書をなさってますよね?はい…。
今日の会議で何か変わった事はありませんでしたか?変わったこと!?
(菜保子)今日も社長と専務が口論になりまして専務が途中で退席なさいました。
専務というのは?
(菜保子)社長の実の妹牧原鷹子さんです。
じゃあ牧原専務だけ具合が悪くならなかったわけですか?お陰さまで…。
じゃあ…お茶は誰がいれたんですか?いつもは社長秘書の加瀬さんがいれてますけど…。
社長秘書の加瀬さん…。
じゃああなたはいれてない?私は専務ですよ。
お茶なんか…。
すみません。
それにしてもまるで私がお茶に毒でも入れたかのような口ぶりですね。
いや…ただ事実を…。
それでしたら不審な女を調べたほうがよろしいのでは…。
不審な女!?事件が起きる直前このオフィスに若い女性が無断で侵入しておりました。
3の13の23の3…。
多分あのアパートですね。
でも警備員に言った住所なんてデタラメですよ。
とにかく行ってみましょう。
はい…。
201202…ここですね。
(チャイム)すみません小田切さん!いらっしゃいますか?こんにちは…小田切さんですか?ほらやっぱりデタラメじゃないですか。
(ビーズの落ちる音)あ〜らら〜…。
大丈夫よ。
よいしょ…。
わ〜…きれいね…。
(ミキ)小田切ですけど何か?あ〜…。
あなたが小田切ミキさん?あなた今日受付で許可をとらないで牧原総業のオフィスに入りましたね?警備員に止められて住所氏名は言ったけどオフィスに入った目的は言わなかった。
目的は何だったんですか?あなたは毒物混入事件の容疑者として疑われているんですよ。
きちんと話していただかないと警察で話を伺うことになりますけど…。
布施君…。
社長に渡したいものがあったんです。
牧原社長に渡したいものって?そこまで言う必要ないと思いますけど。
牧原総業を訪ねた目的はそれだけですか?それだけです。
・
(由美)先生!・見てて…。
由美ちゃんできたね。
もう1回やるね。
何の先生なんでしょうね。
どういう関係なんだろう?
(ミキ)わ〜上手上手!ありがとう。
おかえり!ごめ〜ん…。
起こしちゃった?宿題してた。
こんな時間まで?最近の中学生はたいへんなのよ。
で…歯医者さんは?勿論行ってきたわよ。
泣いた?そんなわけないじゃない。
カ〜ッ!カ〜って言うのいいかげんやめてくれない!だんだん親父に見えてきた。
あそうだ。
結にお土産があったんだ。
氷川先生がこれを結にって…。
やだ!苺大福。
私が苺嫌いなの知ってるでしょう?変なとこだけ似て…。
お父さんも「苺のプチプチが嫌いだ」って絶対に食べなかったわよ。
へ〜…お父さんも苺嫌いだったんだ。
初めて聞いた。
おまけにメロンも…。
お父さんもお母さんと同じで刑事だったんだよね?改まってどうしたの?今学校で「職業について調べる」っていうのやってるの。
あ〜進路指導?それで警察官の仕事に興味が…ってわけ?そうお父さんは仕事中に死んじゃったんでしょう?具体的にどんなふうに死んじゃったの?
(ヤカンの蒸気音)あ〜お湯が沸いた。
結も食べる?こんな時間に食べたら太っちゃうか?前にも一度同じこと聞いたよね。
その時もお母さんごまかした。
お父さん子供を助けようとして殉職したんでしょう?どうしてこの事隠すの?それとももっと他に私に言えない秘密があるの?お母さん答えてよ!別荘の管理人には連絡しておきましたから。
会社のことは気にせずゆっくり静養なさってください。
社長…。
頼んだよ。
(鷹子)奥さまも…。
(須磨子)鷹子さんじゃない?何が?毒を入れた犯人ですよ。
まさか…。
鷹子さん言葉にこそ出しませんけどあなたより自分のほうが社長にふさわしいと思ってるわ。
親父と喧嘩して家を飛び出した私が勝手に戻ってきたんだ。
アイツにしたら牧原総業をここまで大きくしたのは自分の力だと思っている。
しかし実際アイツは社長の器じゃない。
はっきりそう言ってあげなさいよ。
(大木運転手)申し訳ありません。
ちょっと止まります。
社長…どうされました?大木が急に具合が悪くなって…。
まさかまた中毒じゃないでしょうね。
(役員)販売ネットワークが出来る。
顧客維持継続化が計れる。
グループ企業全体の顧客管理が容易となる。
(牧原)大丈夫か?あ〜…すみません。
町立病院まで私が先導するからついて来なさい。
分かりました。
何で加瀬さんまで連れてきたの?仕事だって抱えてきてるんだ。
嫌いなのよあの人…。
どう…大丈夫?さっきよりは楽になりました。
(菜保子)おかしいわ。
どうしたんですか?社長の車…。
あなた!あなたあなた…危ないっ!あ〜っ!あ〜っ…。
社長…。
加瀬さん加瀬さん!何でこんなことに?申し訳ありませんでした。
ちょっと…。
どっちが先に死んだの?どっちが先に死んだのか聞いてるのよ。
須磨子さんでしょ?須磨子さんじゃなかった?奥さまです。
あ〜…そう…。
私会社に電話してきます。
あの…たいへん申し訳ございませんがお二人を司法解剖させていただくことになると思います。
昨日の今日ということでこの事故は事件性も考えられますので。
承知しました。
遺体と対面もしないんですね。
牧原社長夫妻は1年半前に結婚。
子供はなし。
身近な親族は専務である妹の牧原鷹子だけ。
だから牧原夫人が先に亡くなった場合牧原社長の遺産を相続するのは?実の妹の鷹子ですよね。
そう。
ではもし仮に夫人よりも先に牧原社長が亡くなったとしたら?え〜…その場合は…。
(寺岡)遺産はまず奥さんが相続してその後奥さんが死亡した場合は遺産は奥さん方の相続人にいくそういうことだろう?
(藤原)つまり鷹子には遺産相続の権利が全くなくなるわけか…。
(吉村)だから遺体と対面もせず死亡の順を聞いたんですね。
これが殺しだとしたら牧原鷹子相当怪しいな。
それと事件当日牧原総業に侵入した小田切ミキこの女も怪しいですよ。
(布施)続けてもう1体やるんですよね?氷川先生タフだな…。
解剖を始めます。
(助手)氏名牧原英明49歳。
男性。
西多摩署扱い。
胃の内容物が気になりますね。
大至急検査に回して。
分かりました。
さっき胃の内容物が気になるとおっしゃってましたけど?それは検査結果を待ってください。
それと念のために伺いたいのですが牧原夫妻はどちらが先に亡くなったんでしょう?分かりません。
両者を解剖してもどちらが先か分からないものなんですか?そんなこと分かるわけないでしょう!いいですか例えばあのご夫妻が5分違いで亡くなったとします。
それを24時間たって解剖してどっちが先に死んだかなんて分かるわけないでしょう。
そんなこと分かるのは神様だけですよ。
そういうものですか。
あ…。
はい…。
ちょっと…。
はい!?昨日結ちゃんが訪ねてきました。
結が!?光一さんが殉職した時の新聞記事をね図書館で見つけたらしいんですよ。
お母さんはこの事件のことで何か隠してるみたいなんです。
先生は何か知りませんか?先生どんなことでもいいから知っていたら教えてくださいそれはお母さんから聞きなさいって帰しましたけどね。
やっぱりあなたから話すべきでしょう。
すみません。
辛いですか?事故後鑑識で牧原社長の車を調べましたがブレーキなど一切異常は見られませんでした。
司法解剖の結果は?はい。
牧原英明の胃の内容物と血液中から「トリアゾラム」が検出されました。
トリアゾラム?はい。
1錠0.25mgを飲んだだけで約15分ほどで入眠効果が表れる超短期作用型睡眠導入剤です。
トリアゾラムが検出されたのは運転していた旦那だけか?はい。
社長の妻の須磨子からは検出されませんでした。
牧原社長はどうもサプリメントのつもりで睡眠薬を飲んだみたいです。
サプリメントって栄養を補助するために飲むアレか?そうです。
牧原社長は日常的にサプリメントを飲んでいました。
誰かがサプリメントと睡眠薬をすり替えたっていうのか?まず間違いないと思います。
動機に関して考えれば牧原鷹子はクロだなぁ。
ちょっと待った!今の段階で捜査対象を絞り込むのは危険だ。
もう一度牧原社長の身辺を徹底的に洗い直してくれ。
個人的な恨み仕事上のトラブルどんな小さなことも見逃すな!
(一同)はい!そのお車も牧原社長のですか?ええ。
あまりお乗りになりませんでしたけど…。
ああホントだ…まだ1万kmも走ってませんね。
トリップメーター「ゼロ」にするタイプなんだ。
ええ…ガソリンを満タンにしたときに。
几帳面なんですね。
大木さんは過去にも体調を崩して途中で運転ができなくなったなんていうことはあるんですか?いいえ。
牧原社長が毎日サプリメントを飲んでらしたのはご存じですよね?はい。
あの事故の日も飲んでらっしゃいましたか?ええ。
車の中で…。
社長はサプリメントを入れておくピルケースを車の中に置きっぱなしにしたりしたことは?それは…あったかもしれませんが…。
・
(熊代大助)お嬢さまが相続できる遺産は牧原社長名義の財産分のみです。
つまり奥さま名義の財産分まではお嬢さまに相続する権利はないということです。
どうしてですか?司法解剖の結果ご夫婦のうちどちらが先に亡くなったか判定できないということでした。
その場合法律的には「同時死亡」ということになるんです。
同時死亡?民法第32条の2にそうあります。
その場合同時死亡の推定という手続きを経て夫名義の財産は夫側の相続人へ。
妻名義の財産は妻側の相続人へ…。
牧原家の財産のうち半分は須磨子さんの名義なんですよ。
そんなこと…絶対認めません!だって目撃者がいるんですよ。
確かに事実は奥さまが先に亡くなったのかもしれません。
ですが…今となってはそれを確かめる術はないです。
あなたね…お父さまの時代からの牧原総業の顧問弁護士でしょ?何とかしてくださいよ。
牧原家の莫大な財産の半分を相続できるんです。
それだけでも十分じゃないですか?
(読経)へえ〜さすが牧原総業…。
すごいっすねぇ。
怜子さん…怜子さん。
ほらあれ…小田切ミキですよ。
(布施)何なんだ?何とかしてくださいよ先生…。
ちょっとよろしいでしょうか?警察の方が何のご用でしょうか?お話しすることは何もございませんが…。
警察!?この人たち私が会議のお茶に毒を入れたんじゃないかって疑ってるの…。
何なんですか?あなたは…。
顧問弁護士の熊代です。
お話は私が伺いますが…。
警視庁の遠山です。
布施です。
牧原社長ご夫妻が亡くなられた今回の事故について不審な点がありお話が伺えたらと思い…。
兄は殺されたんですか?車の故障じゃなかったんですか?お嬢さま!車に…故障はありませんでした。
牧原社長は何者かに睡眠薬を飲まされていたんです。
サプリメントが睡眠薬とすり替えられていたんですよ。
ええっ!?それが事故の原因というわけですか?最近会社の運営方針を巡って牧原社長とよく衝突なさっていたそうですね?また…私を疑ってるんですか?今度は私が睡眠薬を飲ませて兄を殺したと言いたいんですか?お嬢さま!・
(大木)専務。
加瀬さんがちょっとお話があるそうです。
加瀬さんが?はい。
あの子!由美…おばさまにごあいさつなさい。
はじめましておばさま。
牧原由美と申します。
牧原由美?加瀬さんどういうこと?この娘は牧原社長と私との間に生まれた娘なんです。
この娘は牧原社長と私との間に生まれた娘なんです。
ははは…加瀬さん場をわきまえなさい。
悪い冗談だわ。
冗談なんかじゃありません。
認知はしていただいていませんけど由美は…牧原社長の娘です。
いいかげんにしなさい!熊代先生なら私が妊娠していたことをご存じのはずです。
そうですよね?そんな出鱈目誰が信じますか?信じていただけないのでしたら「強制認知」していただくまでです。
強制認知?裁判所に認知を求める訴えを起こし子供であることを認知してもらうことです。
そんなことできるはずないじゃありませんか。
牧原社長のご遺体からDNAを採取させてください。
それを由美のDNAと比べれば親子鑑定できるはずです。
そんなこと私が許しません!
(米倉亮一)アンタの許しなんて関係ないんだよ!牧原の髪の毛いただきますよ。
おい!おいキミ!おいやめろ!やめるんだ!このヤロウ!おいっ!おとなしくしなさい!うう〜っ!警察です。
牧原社長に隠し子!?加瀬菜保子が言ってるだけでまだ断定はできません。
しかしそれが本当なら加瀬菜保子にも牧原社長殺害の動機が出てきたってことか…。
・男の身元が割れました!米倉亮一27歳。
加瀬菜保子が昔勤めていたクラブのボーイです。
牧原はさんざん菜保子のことをもてあそんだんだよ。
血でも髪の毛でもさっさとよこしゃいいんだよ!社長のDNAが採取されそうなものは全部捨てるの!ひとつ残らずよ!はい。
失礼します。
ああ。
先生…大至急って何事ですか?お忙しいとこ申し訳ありませんけどね…このお二人がどうしても帰ってくださらないんで困ってるんですよ。
聞いてください!鷹子専務が…役所で勝手に手続きして牧原社長のご遺体を荼毘に付してしまったんです。
告別式も終わっていないのにですよ。
勝手にも何もそんなことあなたにいちいち断る筋合いありませんでしょ?さっきからず〜っとこれなんですよ。
大体どうしてお二人がここにいらっしゃるんですか?よくぞ聞いてくれました。
まずですね…こちらはウチで保管してある牧原社長の血液を返してほしいとおっしゃる。
一方こちらはその血液を使って親子鑑定をしてほしいとおっしゃる。
「そのどちらも無理です」とさっきから口をすっぱくして何度も申しあげてるんですがお分かりいただけない。
はあ〜あ。
私は牧原社長のDNAを採取するためにほんの少し血液をいただきたいと申しあげているだけなんです。
鷹子専務のように「全部よこせ」なんて…。
「よこせ」とは人聞き悪いですわね。
ですからね…裁判所が司法解剖を許可した時点で牧原社長の血液はいわば国家のものも同然なんです。
死因の鑑定にしか使えないんです。
ですから勝手にご遺族にお返ししたり親子鑑定に使うこともできないんです。
お分かりですか?裁判所に強制認知の訴訟を起こします。
そうすればきっと社長の血液を親子鑑定に使わせてもらえます。
だから…訴訟を起こしても血液を使うことは無理です!失礼します。
あなたは納得していただけましたか?失礼します。
まったく金の亡者めが…。
むなしいですねぇ。
仮に親子だと分かって遺産をもらったからって子供は喜びますかねぇ…。
ただいま。
結…。
寝てるの?入るわよ。
・入らないで!氷川先生から聞いた…。
ちゃんと結に話すべきだったよね。
ごめん…。
11年前…結はまだ3歳だった。
お母さんが所轄署の刑事になってすぐの頃だったわ…。
お父さんはその時今お母さんがいる特殊犯捜査係にいたの。
ある日お母さんがいた多摩川西署管内で包丁を持った男が離婚した奥さんと3歳になる自分の娘を人質にとり立てこもるという事件が起きたの…。
難波さん…そろそろ人質も限界です。
突入しましょう!私に案内させてください。
あの娘ウチの娘の友達なんです。
私家の中の様子も分かりますから…。
ダメだ!所轄の女刑事さんは引っ込んでてくれ。
怜子…ここは俺たちに任せろ。
オマエは絶対に手を出すな!いいな?
(子供の泣き声)早く黙らせろ!ほら!やめて!あなた!ぶっ殺されてえのか!このガキうるせえんだよ!
(泣きじゃくる声)やめて〜!クミコ〜!うるせえ!クミコ!やめて〜!
(子供の泣き声)クミコ逃げて〜!
(子供の泣き声)
(ガラスが割れる音)チクショー!逃げんなよ!もう大丈夫!大丈夫よ…。
このヤロウ〜ッ!うわ〜っ!あなた…あなた!うるせえ!オマエは黙ってろ!ぶっ殺してやる!怜子〜っ!うわ〜っ!
(刑事)遠山さん!おいこら〜っ!
(犯人)離せ〜っ!あなた…?あっ!ああ…あなた!あなた!あなた〜っ!!遠山!あなた!あなた!あなた〜っ!!お母さんが勝手なことしなかったら…お父さんは死ななかったってこと?結…。
(大きな物音)誰!?そこにいるのは!何してんの!
(ガラス瓶が壊れる音)えい〜っ!ああ〜っ!こら!逃げるな!卑怯者!ああ…イタタタ…。
牧原社長の血液だけ盗み出されていた。
今いちばん牧原社長の血液が欲しい人間は親子鑑定したい人間ですよね?それはないわね。
だってさ…布施君だったらここから盗み出した血液を親子鑑定に出したりする?そうか…自分が犯人だと言ってるようなもんか…。
じゃあ逆だ!ね?うん。
おそらく…親子鑑定をさせたくない人間が犯人。
ふう〜ん。
ああ…とっとと犯人捕まえてくださいよ。
先生…大丈夫なんですか?ちょっと腰を打っただけですけどね。
でもね…もうちょっとでガラスが顔に当たるところだったんですよ。
全く…嫁入り前の大事な顔だっていうのに。
ホントですよねぇ…。
で犯人の人相と特徴は?分かりません!真っ暗で見えませんでした。
あああイタタタ…。
あ〜あ。
まだですの?どうだった?確かに昨夜12時まで会社の顧問弁護士と会ってました。
アリバイ成立か…。
もうよろしいですわね?はあ…。
ちょっと失礼。
はい遠山です。
ああ氷川先生…。
牧原鷹子さんなら今こちらに…ええ…。
どうなさったんですか?先生…。
こちらがこれを持って来られました。
これ…歯ですか?牧原社長の親知らずだそうです。
兄の!?はい。
いざという時に親子鑑定ができるようにって社長が取って置いてくださったのを思い出したんです。
嘘よ!そんなの…。
どこに保管してあったんですか?社長の掛かりつけだった向田歯科です。
でも…普通40歳過ぎて親知らず抜きますかね?永久歯が生えそろうのは大体何歳ぐらいか知ってますか?はいキミ!えっ!え〜と…。
永久歯は14歳ぐらいまでに普通生えそろう…。
それに比べてこの親知らずは17歳から25歳…つまり子供が親の手を離れた頃に生えてくる。
だから親は知らない。
それで親知らずって言うんですね?だからね親知らずを抜くのはその頃に多いんですよ。
ほら横っちょ向いて生えてきちゃったり…。
すぐ虫歯になるのでしょう親知らずは。
それ…本当に最近抜いたものなんですか?〜〜社長が親知らずを抜いたことは〜ご存じですよね?1年ほど前です。
〜歯ぐきが炎症を起こしたのを覚えてますよね?〜でも保管してあったなんて全く聞いてませんわ。
〜〜とにかくこの親知らずで親子鑑定をしてほしいと〜要請されているんですがどうしましょう?〜事件に関わってくる可能性もありますので〜先生にお願いできれば…。
そうくると思ってました。
〜じゃあこの親知らずが本当に牧原社長の〜ものであるという裏を取りたいので〜よろしくお願いします。
はい。
〜〜むこうだ…歯科。
ああここだ。
お待たせしました。
(向田)これが牧原社長が親知らずを抜く前のレントゲン写真です。
しばらくお借りしてもよろしいですか?ああ…どうぞ。
確かに牧原社長と加瀬菜保子さんはおつきあいしてました。
社長秘書になる前加瀬さんが銀座のクラブでホステスをしていた頃のことです。
じゃあ由美ちゃんはやはり牧原社長の娘…?それは私には分かりません。
ただ牧原社長に頼まれていわゆる手切れ金を渡しに行ったとき確かに彼女は妊娠していました。
社長のお気持です…これでご縁を切っていただきたい。
バカにしないでください!私はお金なんか要りません。
私はただ牧原社長のおそばにいたいだけなんです
(熊代)ですが加瀬さんには受け取りを拒否されたんです。
(布施)どうしてですか?お金は要らないからその代わり出産後牧原社長のそばで秘書として働かせてほしいと言うんです。
それで…牧原社長は?最初は困ったご様子でしたが結局加瀬さんの希望どおり秘書として採用されました。
加瀬さんとは別れたかったんでしょ?それなのに秘書にしたってことは由美ちゃんが牧原社長の子供だったからですかね?さあ…私には何とも申しあげられません。
社長秘書となった加瀬さんと牧原社長の関係はどうだったんですか?加瀬さんは社長に執拗に結婚を迫っていたようです。
牧原社長は?勿論応じませんでした。
ある時社長が私に〜零したことがあります。
「あの女は社長秘書なんかじゃない。
〜あれは私に付きまとうストーカーだ」って…。
〜須磨子さんとの結婚が決まった時のことです。
〜婚約指輪?〜すてき…!〜はめてごらん。
〜はい。
すごくきれい。
〜ピッタリだわ。
すてき…。
〜きれい…〜そういう関係のまま牧原社長は1年半ほど前に須磨子夫人とご結婚なさったんですね?はい。
ですがその時から加瀬さんの態度がガラッと変わったそうです。
どういうふうにですか?一切ストーカー行為をしなくなったそうです。
ストーカー行為をやめた?ええ。
社長はそれが余計に怖いとおっしゃっていました。
しつこいようですが牧原社長から由美ちゃんのことについて本当に何も聞いていないんですか?実は社長から一度隠し子のことを聞いたことがあります。
それが由美さんのことかどうかは分かりません。
ちょうどひと月前のことです。
ひと月前?ええ。
今思えばあれは社長の遺言だったのかもしれません。
いつか私が死んだ後その子が訪ねて来るかもしれない。
〜その子は私の歯を持っている。
〜歯を使えば親子鑑定もできるんだろ?〜訪ねて来たら力になってやってほしい。
〜縁起でもないことをおっしゃらないでください。
〜だからもしもの時だ〜それがあの親知らずのことなんですかねぇ?〜〜あありがとう。
何時になりますかねぇ?え〜と1時20分です。
加瀬菜保子さん遅いですねぇ。
DNA鑑定をしろって騒いでいたけどやっぱりあの子が兄の娘だなんて嘘なんですよ。
だから来られないんだわ。
もう一度電話してみますね。
はい。
なんでしたら結果は私から加瀬さんに伝えますが…。
ああそうしてもらいましょうか。
やっぱり出ません。
では結果をお伝えします。
え〜…牧原英明社長の親知らずから抽出したDNAと加瀬菜保子さんのDNA…更には加瀬由美ちゃんのDNAを比べた結果…加瀬由美ちゃんは牧原英明社長の子供であると断定されました。
嘘よ!私信じませんから。
〜〜お嬢様!?〜だってほら…。
〜〜親知らずが親子を証明するなんてなんか皮肉ですよね。
〜〜ただしあの親知らずが確かに〜牧原社長のものであるという条件つきですけどね。
〜〜今日加瀬由美ちゃん来てますか?
(園長)ええ来てますよ。
ほらあそこに…。
じゃあ今朝お母さんが連れて来たんですね?いえ昨日からお母さんは見かけていませんね。
じゃ由美ちゃん昨夜は?実はうちの保育士のところで預かったんです。
お迎えが遅い時もいつもその保育士が預かっているんですけどね。
丸一日ほったらかしというのは今回が初めてですね。
由美ちゃんそんなにほったらかしに?ほとんどネグレクトですよ。
ネグレクト…養育放棄?〜〜
(園長)由美ちゃんのお母さんは去年あたりから〜由美ちゃん1人家に置いて〜夜中まで遊び歩いてるらしいんですよ。
〜一向に改まる気配がなくて困ってましてね…。
〜由美ちゃんの面倒をよく見ている保育士の方って…?〜ああミキ先生!〜はい…。
〜〜だからあの時…。
〜小田切ですけど何か…。
〜先生!見てて〜〜
(園児)先生…さようなら。
懐かしいなぁ保育園…。
私にも娘がいるんですよ。
3歳の時に父親を亡くして私も仕事に精一杯だったからろくに母親らしいことしてやれなくて…だからうちの娘は保育園に育ててもらったようなものなんです。
いつも由美ちゃんの面倒を見てあげてるそうですね?ほっとけませんから。
でも本当は嫌なんです。
どこか昔の自分を見てるみたいで…。
私もずっと母と2人きりでしたから…。
女は子供を産めば誰でも母親になれると思ってるけどそんなことない。
なっちゃいけない人もいるんです。
耳が痛い…。
ウフフ…。
私の母は母なりに私のことを懸命に育ててくれたんですけど由美ちゃんのお母さんは…。
私がこんなこと言うと偉そうかもしれないんですけどもう少し由美ちゃんのこと考えてあげてほしいんです。
〜愛せないの由美のこと。
〜どうやって愛したらいいか分からないの。
〜私だって愛されたことなんてなかったもの母親に…。
〜いつも自分のことしか考えてなかったあの女!〜由美!行くわよ。
〜抱き締めてあげてください!〜〜他のことはいいです。
〜とにかく由美ちゃんを抱き締めてあげてください〜〜ミキさん…お父さんは?〜〜知りません。
〜知りたいと思ったことは?〜知らないほうが幸せってこともあるんじゃないですか?〜〜お父さん子供を助けようとして殉職したんでしょ。
〜どうしてこのことを隠すの!〜そうかもしれないわね。
〜何を作ってるの?うん?お誕生日のケーキ。
来月由美ちゃんお誕生日だもんね。
違う。
お母さんの。
じゃあ先生が由美ちゃんのケーキ作ってあげる。
食べきれないくらい大きいやつ。
苺がいっぱい乗ってるやつがいい。
じゃあこれ苺にしようか?うん。
あの男の人…?ええ。
たまに由美ちゃんをお迎えに…。
そうですか。
はい遠山です。
ああ氷川ですけど今焼死体の検視に来てるんですけどねどうも加瀬菜保子さんみたいなんですよ。
えっ!?加瀬菜保子に間違いありませんか?〜あぁ頭蓋骨の感じからみてまず女性でしょう。
〜身長は170cm前後加瀬さんの背格好と合います。
〜でもそれだけじゃ…。
〜問題はこれです。
〜〜ピアス?〜これと同じようなピアスを加瀬さんがつけてたような気が…。
(吉村)でもこれ殺人と断定していいんですかね?〜殺人です。
〜自殺ですと表面的に焼けるだけですけどこれ〜何度も油をかけられてますからね。
〜
(藤原)臭いからしてガソリンですね。
〜
(寺岡)身元を隠すために焼いたってことか。
〜司法解剖の結果私はこう判断しました。
はい!ガイ者は刃物で刺されているけど致命傷にはなっていなかった…。
生きたままガソリンをかけられて燃やされていますね。
気道にススがついていましたから間違いありません。
生きたままですか。
まったくひどいことするよな。
あ加瀬菜保子さんのかかりつけの歯科医分かりますか?すぐに焼死体の歯見てもらいましょう。
分かりました。
(布施)どうですか?この状態ではちょっと…。
あじゃちょっとこれ見ていただけますか?この遺体の歯のレントゲン写真なんですけどね。
はい。
牧原社長だけでなく加瀬さんの治療もなさってたんですね。
ええ。
牧原社長の紹介で…。
これなんですけど…。
加瀬菜保子さんじゃありませんか?違います。
そうですか…。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
違うか…。
絶対そうだと思ったんだけどなぁ。
何か?もう一度レントゲン写真見せてもらっていいですか?ああどうぞ。
あの…さっき言ったことを訂正させていただいてもよろしいですか?は?あ…すみません。
この遺体は…加瀬菜保子さんです。
本当ですか!?間違いありませんね?間違いありません…と思います。
〜何で最初「違う」って言ったんでしょうね…。
歯科医なら歯を見ただけで自分が治療した歯かどうか分かるはずなんですけどねぇ。
治療の仕方には歯医者それぞれの個性があるって私も聞いたことがあります。
向田医師は焼死体の歯を見た瞬間に加瀬菜保子さんだと分かったはずですおそらく…。
なのに違うって嘘をついた。
どうしてそんな嘘をつく必要があったんでしょうか?ひょっとしたら向田医師と加瀬さんは医者と患者以上の関係だった。
結ちゃんに話しました?はい?ああ…はい。
どうでした?「お母さんが勝手なことしなかったらお父さんは死ななかったの?」って言われちゃいました。
それから部屋にずっとこもったまんまで…。
後悔してるの?後悔なんかすることありませんよ。
すぐには無理でも結ちゃんならいつかちゃんと受け止めてくれますって。
だといいんですけど。
大丈夫!はい食べて元気出して。
うん?まだ痛いの。
(婦人)向田先生がお出かけになるのは〜ほとんど見たことありませんね。
〜土曜日の午後ぐらいですかね。
〜えっそれはどこにですか?〜分かりませんけどゴルフのレッスンって感じでしたね。
〜ゴルフのレッスン?〜もういいですか?あどうもありがとうございました。
どうも…。
〜〜は〜っ真面目で仕事人間ってことぐらいしか出てきませんね。
婿養子としては理想的よね。
〜加瀬菜保子とは医者と患者としての接点しかない。
〜〜
(藤原)夕方から大事な会議って言っていましたよね?〜〜
(吉村)追うぞ。
〜〜この辺りでこの人を見かけたことありませんか?
(主婦)さあ…お隣り同士といっても加瀬さんとはほとんどおつきあいがなかったから…。
そうですか。
ありがとうございました。
どうも…。
あの…由美ちゃんって言いましたっけ?あの子どうしているんですか?とりあえず由美ちゃんが通ってる保育園の先生が預かっています。
それならいいけど…。
あの子いつもこの近くの公園で1人で遊んでいたんですよ。
特に土曜日の午後は毎週…。
土曜日の午後!?
(主婦)かわいそうに雨でも何でも土曜日の午後は〜いつも公園で遊んでいましたよ。
私が家に帰りなさいと言っても帰らないんですよ。
〜〜土曜日ですか?〜〜ゴルフは上達なさいましたか?〜えっ?ああ全然駄目ですね。
〜毎週レッスンに通っているのに?〜ハハハハ…。
もともと運動神経が鈍いもんで。
〜運動神経の問題じゃないんじゃないでしょうか。
〜あなたはこの1年実際には〜まったくゴルフのレッスンには通っていなかった。
〜申し訳ありませんけど調べさせていただきました。
あなた〜1年分レッスンを申し込んでるのに行ったのは最初の1回だけ。
〜毎週土曜日の午後ゴルフバッグをかついで〜あなたが向かっていた先は加瀬菜保子さんの部屋だった。
あなたと加瀬さんはいわゆる不倫関係にあった。
〜〜違いますか?〜あなたが加瀬菜保子さんを殺したんじゃありませんか?違うそんなことしてない!絶対にしてません。
焼死体を見た時最初から加瀬さんだと分かってましたね?えっええ…。
なのに違うと嘘をついた。
どうしてですか?焼死体が彼女だと分かったらまずいことになるだろうと思って…。
まずいこと?自分の立場っていうか…。
彼女に脅されてやったことなんですよ。
分かるように説明してください。
〜〜彼女は…な…なんていうか…。
〜〜魔性の女っていうか…。
〜私の頼みが聞けないの。
〜だったら別れる。
〜ごめん。
別れるなんて言わないでよ。
〜冗談だろう?〜だったら私の言うこと聞いてくれるんでしょ?〜
(向田)はっきり返事をしないでいたら〜今度は妻に自分たちの関係をバラすぞって脅されて…。
〜彼女の頼みって何だったんですか?〜〜保存しておいてほしいって頼まれたんです。
〜誰のだか分からない親知らずを…。
〜〜じゃああの親知らずは〜牧原社長のではなかったんですね?〜〜加瀬菜保子が向田医師に親知らずを保存させたのが約1年前。
おそらくその時から牧原社長殺害の計画を立てていたものと思われます。
自分を裏切って他の女と結婚したことへの復讐と同時に遺産狙いか。
怖い女だ。
社長秘書である加瀬菜保子は牧原社長が毎日決まった時間にサプリメントを飲むことは当然知っていた。
それを睡眠薬とすり替え殺すことを思いつくのは容易です。
でまんまと居眠り運転をさせて事故を起こさせた。
(車が大破する音)社長夫人が先に亡くなったと証言したのも遺産相続を自分に有利にするためのものだったと思われます。
更にその後娘を連れて牧原夫妻の通夜に乗り込んだのも計画的な芝居だったんです。
強制認知の訴えを起こすと騒ぐことで牧原鷹子を慌てさせるのが目的でした。
実際牧原鷹子は牧原社長のDNAが採取されるものを徹底的に処分しようとしたのでしょう。
そうさせておいて加瀬菜保子は満を持して保管しておいた親知らずを出してきたってわけだ。
加瀬菜保子の計画の全貌はおそらくそうかもしれん。
だがほとんどが推測だ。
しかも加瀬菜保子は殺された。
いったい誰が殺したんでしょうね。
(藤原)恋人の米倉と仲間割れした可能性はありますね。
じゃあ米倉亮一をもう一度引っ張りましょうよ。
おそらく親知らずもアイツのものですよ。
あの男相当したたかだ。
ただ引っ張っても口を割るとは思えん。
歯科医師会に協力を要請したらどうですか?とりあえず都内で1年前に親知らずを抜いた男をリストアップする。
そうだな。
後藤君手配を頼む!
(後藤)はい!それから藤原と吉村!
(2人)はい。
引き続き牧原鷹子を洗ってくれ。
分かりました。
はい!加瀬菜保子の部屋を調べさせてください。
何か出るかも…。
分かった。
早速令状をとろう!お願いします。
(吉村)ひどいなぁこれは…。
子供に料理なんか作ってやってなかったんですね。
〜あれ〜…。
〜これって…生命保険の契約証じゃないですか?〜〜由美ちゃんにかけられた生命保険?〜死亡保険金5,000万円!?5歳の子供だろ?〜俺なんか生命保険に入りたくてもなかなか入れないのによ。
〜いやでも何で破り捨ててあるんですかね?〜〜これ見てください。
〜〜ほらこれ!毒物のサイトばっかりですよ。
〜ヒ素青酸農薬それに植物毒!?〜植物毒!?〜〜これ!〜〜牧原総業の中毒事件は〜スズランの毒によるものと断定されました。
〜あんなかわいい花に毒があるんですか?〜スズランにはですねコンバラトキシンコンバラトキソールコンバロサイドなどの〜猛毒が含まれています。
〜北海道では「スズランの花畑では眠るな」という〜言い伝えがあるくらい怖い植物なんです。
〜これで毒物混入事件も〜加瀬菜保子によるものとみて間違いないと思います。
〜
(寺岡)自らも被害者になる一方で牧原鷹子にだけは〜毒を飲ませず警察の目を鷹子に向けさせた。
〜まったくしたたかな女だぜ。
失礼します。
はい。
歯科医師会からリストが届きました。
細かいな。
布施。
はい。
米倉米倉米倉…。
ないよ。
偽名を使ったかもしれませんね。
しかたないな。
リストにあがった者がかかった歯科医をすべて当たれ。
例の親知らず…忘れるな。
自分にこれ全部回れと…?100軒はありますよ。
だから何なんだ?本物の刑事になりたかったらつべこべ言わずに歩く!
(難波)はい。
行くわよ。
はい。
行ってきます。
引き続き捜査に当たってくれ。
(一同)はい。
ここですねここ。
警視庁の遠山です。
先生にお伺いしたいことが…。
ありがとうございました。
お役に立てませんで…。
ここも駄目でしたねもう50軒目ですよ。
まだまだ!加瀬菜保子いったい誰が殺したんでしょうね。
けど親知らずを抜いた人間が犯人とは限らないですもんね。
まずは抜いた歯科医を見つけること。
頑張りましょう。
はい。
(小室)私が抜いたものです。
本当ですか?間違いありません。
患者の名前は?青山一郎さん保険を使ってませんね。
どういうことですか?保険証を持ってこなくて実費で支払ってます。
偽名の可能性が高いわね。
はい。
あの何か特徴覚えてませんか?歳は40歳越えてましたね。
20代後半じゃなく?親知らずを40歳すぎて抜くのは珍しいのでよく覚えてます。
それにこの人の場合抜く必要がなかったんですよ。
抜く必要がなかった?つまり親知らずが虫歯だったわけではないし歯茎の炎症もない。
でも本人が痛いというので…。
だから余計印象に残ってますよ。
顔の特徴とか覚えていらっしゃいませんか?顔ねぇ。
歯だったら覚えてるんだけどな。
あ歯がかなり摩耗していましたよ。
例えば歯を食いしばるような仕事をしている人とか?可能性はありますね。
野球の強打者カーレーサーや運転手それから…。
運転手…?その青山一郎さんのレントゲン写真お借りすることできますか?
(鑑識)遠山さん。
はい。
見てください。
あっ。
あ…。
お母さんにお父さんが亡くなった時のこと聞いたんだって?はい。
恨んでるの?お母さんのこと。
分かりません。
お父さんの司法解剖したの私なの。
司法解剖?犯人の包丁があと1cmずれてたらお父さんきっと助かってたわ。
あの時3歳の女の子が人質になってたの知ってるでしょ?はい。
あなたもねちょうどその時3歳だったの。
お母さんその子を見てあなたを思ったんだと思う。
あなたを助けたいと思ったんだと思う。
そしてお父さんはそのお母さんを守りたいと思った。
お父さんはね命をかけてお母さんとその子を守ったの。
あなたはねそういうお父さんとお母さんから生まれてきたんだよ。
誇りに思いなさい。
はい。
でも…。
うん?生きてるお父さんにも会ってみたかった。
うん。
みんな遅いわねちょっと様子見てくるわね。
お父さん…。
由美ちゃんのお父さんですよね?由美ちゃんを守るために菜保子さんを殺したんですよね。
ああ…。
大木さんあなたはずっと以前から菜保子さんのことが好きだった。
菜保子さんがまだホステスの頃あなたたちは男女の関係になった。
大木この女を頼む。
はい。
社長どこ行くの?いいからオマエは帰れ。
行け!ちゃんと言っといてよ!私社長と絶対に別れないんだから。
あ〜んっ!あのこんなところで寝たらかぜひきますからベッドに寝てください。
僕帰りますから。
え大木ちゃん帰るの?いやだいやだ。
1人にしないで。
大木ちゃんいやだっ。
菜保子さん…あの時だけです。
菜保子さんの気まぐれだったんです。
だけど菜保子さんは妊娠し父親の名前を誰にも告げず由美ちゃんを産んだ。
1年前初めて菜保子さんから聞かされました。
その時菜保子さんから親知らずを抜いてほしいと頼まれた…?理由を聞いても教えてもらえませんでした。
ただ由美が幸せになるためだって。
そう言われたあなたは…由美ちゃんのためならと小室歯科で青山一郎の名前で親知らずを抜いた。
それから1年。
菜保子さんはついに計画を実行に移した。
俺も社長と奥さんが亡くなった日の晩初めて聞かされました。
私が社長のサプリメントを睡眠薬にすり替えたの。
あなたが具合悪くなったのも私がスズランの毒をあなたのお昼ご飯に入れたから。
なんでそんな恐ろしいことを。
決まってるじゃない。
あなたと由美と3人幸せになるためよ。
分かるでしょ?それしかなかったのよそう言われたらあなたはもう菜保子さんに従うしかなかった。
氷川先生の法医学教室に忍び込んだのもあなたですね?あれは牧原社長のDNAを採取できなくするためにやったことですね?でも私には分かりませんね。
それほどまでして菜保子さんにつくしていたあなたがどうして菜保子さんをあんなことに?菜保子さんは由美ちゃんのことまで殺そうとしてたんじゃないんですか?え?ま…まさか!違いますか?菜保子さんの部屋で由美ちゃんにかけた生命保険証券を見ました。
5歳の子供に死亡時5,000万円の保険なんて普通じゃありません。
しかも由美ちゃんの殺害を菜保子さんはあなたに依頼したんじゃありませんか?あなたには酷な言い方ですが菜保子さんは最初からあなたと一緒になるつもりなんかなかった。
若い恋人米倉亮一と一緒になるつもりだった。
しかも遺産を手に入れてしまえば由美ちゃんは邪魔。
それならいっそ…。
やめてくれ!だけどあなたは由美ちゃん殺害の依頼をきっぱりと断った。
破り捨てられていた保険証券にはっきりとあなたの指紋が残っていました。
由美を殺すなんてそんなことできませんでした。
父親だって名乗ったことないけど由美は血を分けた俺の娘なんです。
殺すなんてそんな…。
なのに菜保子さんは俺をなじったんです。
ひどい言葉で何度も。
だからカッとなって…。
気がついたら包丁で…。
運搬に使った車は牧原社長の車ですね?加瀬さんを燃やす時に使ったガソリンは車のタンクから取り出した。
トリップメーターを見ると大して走っていないのにガソリンがほとんどなくなっていたので分かりました。
給油の度にメーターを「ゼロ」にすると言っていましたもんね?すみませんでした。
大木さん…あなた嘘をついてます。
そんなことはありません。
すべて正直にお話ししました。
いいえ。
ひとつだけ嘘をついてます。
大木さんあなた嘘ついてます。
そんなことはありません。
すべて正直にお話ししました。
いいえ。
ひとつだけ嘘をついてます。
嘘なんかついてません!全部正直に話しました。
いいえ。
私が刺したんです!えっ?私が由美ちゃんのお母さんを刺しました。
何言ってんだ!?俺が刺したんだ。
いいかげんなこと言うな!大木さんもう分かってるんですよ。
菜保子さんの部屋には菜保子さん殺害を示す血液反応は一切ありませんでした。
最初に菜保子さんを刺したのはミキさんです。
それもミキさんの部屋で…。
それを教えてくれたのはビーズです。
ミキ:小田切ですけど何か?菜保子さんはミキさんの部屋にあったビーズを手に握ったまま運ばれたんですよ。
これだけは信じてください。
あれは事故だったんです。
僕由美のことが心配で由美を隠したんです。
そしたらそうとは知らない菜保子さんが先生のところへ…。
ねえ由美どこなのよ!?今日は本当に来てないんです。
言いなさいよ。
ねえ由美どこにやったのよ!?そんなに由美ちゃんが心配ならなぜほっとくんですか?なにすんのよ!うっ!そんなところに由美のことを相談しようと思って俺が…。
ミキ:救急車。
救急車呼んでください。
いや…これでいいんです。
この人は由美のことを殺そうとしているんです。
何をするんですか!?先生は何もしてない何も見てない。
黙っててください。
どうか由美のことだけは由美のことだけはよろしくお願いします。
お願いします。
(大木)ごめんなさい!ごめんなさい!刑事さん先生を見逃してください。
先生がいないと由美は生きていけません。
どうか由美のためにもお願いします。
それだけはできません。
お願いしますお願いします!由美ちゃんのことがそれほど大事なら2人ともきちんと罪を償ってください。
それが由美ちゃんのためです。
これを由美ちゃんのために使ってください。
この歯は?私もずっとその歯に振り回されてきたんです。
あなたひょっとして牧原社長の!?母はずっと父のことを話してくれませんでした。
でも亡くなる直前初めて。
25年前父が母と別れる時に言ったっていうんです。
困ったことがあったらその歯を持って訪ねてきなさいって。
その頃父が抜いた親知らずだそうです。
でも…そんなこと突然言われても…。
それからの1年はずっとその歯が重荷でした。
だから母の一周忌に返すことにしたんです。
それであの日牧原社長を訪ねて行ったのね。
でも…。
訪ねたら…。
本当は…その歯のことなんてどうでもいいことに気づいたんです。
本当は…。
お父さんに一目会いたかった。
お父さまも同じ気持だったと思う。
生前牧原社長からあなたのことを頼まれていました。
その子は私の歯を持っている。
歯を使えば親子鑑定もできるんだろ?訪ねて来たら力になってやってほしいあなたに代わって由美さんのこと面倒みさせてもらいます。
よろしくお願いします。
由美ちゃん…。
ごめんね。
そろそろ行きましょうか。
先生?また明日ね。
また明日ね。
結…。
久しぶりに一緒に夕飯食べようよ。
結の好きなすき焼き作るからさあ。
今日は奮発して特上のお肉買ってきちゃったおいしいよ。
あ痛いっ。
切った。
血出てる。
痛いよ!こんなんなっちゃって。
ああ痛い!見せて!ほら。
オーバーなんだから。
だって。
ありがと。
それとお父さんのことごめんなさい。
結からお父さん奪ったこと本当に悪いと思ってる。
恨んだよ。
正直お母さんのこと恨んだ。
話聞いてから全然気持の整理つかなかったし。
だけど氷川先生に話聞いてから考えてみたの。
もし自分がお母さんの立場だったらどうするだろうって。
そしたら?きっと私もその子助けると思う。
お母さんと同じように。
はい終わり。
駄目だよ泣いちゃ。
結…。
しようがない…すき焼き作ってやるか。
今日はお母さんが作るから。
無理しなくていいって。
じゃあ一緒に作ろうね。
じゃあお母さんネギを切るから。
何?そのネギの切り方…おそばじゃないんだから。
2014/08/17(日) 11:00〜12:54
テレビ大阪1
夏樹静子サスペンス「特捜刑事 遠山怜子2 親子鑑定殺人事件」[字]
遺産に群がる女たち・・・。「歯」とビーズが記憶する殺意の相関図。
詳細情報
番組内容
警視庁で特殊捜査係の刑事をしている遠山怜子のシリーズパート2。「牧原総業」の会議中、お茶に毒物が混入され、牧原社長以下、重役数名が被害に遭う。翌日、牧原社長が運転する車が交通事故に遭い、牧原夫妻は死亡。牧原社長の常用していたピルケースは睡眠薬にすり替えられていた事が判明する。社長の妹で専務の鷹子は「夫婦のどちらが先に死んだか」を知りたがる。
番組内容続き
夫妻には子供がなく、財産分与の際には重要になるからだった。数日後、社長秘書の加瀬菜保子が「自分の子は社長の子である」と相続権を主張するべく、社長の親不知を持ってくる。「親子」を巡る事件の真相とは?
出演者
遠山怜子・・・浅野ゆう子
難波岳志・・・小野武彦
寺岡澄人・・・宇梶剛士
布施慎吾・・・川岡大次郎
小田切ミキ・・雛形あきこ
加瀬菜保子・・斉藤陽子
牧原鷹子・・・芦川よしみ
大木一夫・・・光石研
遠山結・・・・伊藤未希
熊代大助・・・山田明郷 ほか
原作脚本
【原作】夏樹静子
【脚本】田子明弘
監督・演出
【演出】伊藤寿浩
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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