「テレビ体操」はこの辺で。
どうぞ良い日曜日をお過ごし下さい。
「NHK俳句」今週も「いまさら聞けない俳句の疑問」と題して特集でお送り致します。
お答え下さいますのは第3週の選者櫂未知子さんでいらっしゃいます。
そして今日もスペシャルホスト作家の長嶋有さんがご一緒です。
よろしくお願いします。
3回目ですがいかがでしょう?スタジオには慣れました。
…が?いや…あの…もう2週間で今まで知ったかぶりをしていた事をいろいろ学ぶ事ができて。
これからはさも昔から知ってたような顔で人に言いたいなと。
今日も櫂さんからいろいろ盗みたいなと思います。
お二方今日もよろしくお願い致します。
今日もたくさんのご質問頂いているんですがまず今日の兼題からご紹介しましょうかね。
今日の兼題は「箱庭」なんですが。
長嶋さんお手元にあります箱庭。
まず箱庭という日本語はもちろん知ってましたがこういう形のものがあってしかも季語だというのは今日初めて知りました。
初めてですか?はい。
すごいです。
ここに苔がありまして。
これNHKの人が作ったんじゃないんですか?実は私が。
えっ?プラモデルのジオラマを作るみたいな…?そういう感じですね。
私はもともと50年続いた模型屋の娘ですので。
そうでしたか。
ですからこういうのを子どもの時から。
確かにこれとかはNゲージとかの鉄道の模型を流用してるんですか?まさしくそうです。
それにいろいろとつけまして。
何か素材がいろいろありますね?苔を育てたり…。
苔は本物?本物です。
みずみずしいですよね。
はい。
何かパンパスグラスのようにこう…。
これとか食べられそうじゃないですか?これは実はもう使わなくなった駅にある観光協会という。
箱庭に筋書きもあるんですね?そうなんです。
考えてあるんです。
それはいろんな人が作る箱庭それぞれに何か設定やストーリーが…?ある訳ですね。
これもちょっと素材違いますけどこれは何ですか?これは実は外にあるトイレでございます。
ちゃんとトイレに行けるようになってるんですね。
裏から行って?そうです。
民家風になってます。
それにしても長嶋さんこれ季語ですよね?そういえばこれが季語だって事も面白いと思ったんですがどうして夏の季語なんでしょうね?江戸時代の庶民というのは庭や家を…持ち家がなかったのでこういう小さな庭を自分で作って。
江戸の長屋住まいじゃないけれど狭い所。
作ってそれで夕涼みの時などに外に出して。
じゃあ遊びというか?見て楽しむもの。
いろいろといろんなこういうものに凝る時代でしたから。
なるほど。
エンターテインメントとして競い合うというか?そうですね。
楽しみ合ってた訳ですね。
それが夕涼みのような頃に庭先に出してるから夏の季語なんですね?多分そうなったんじゃないかと。
見た目も涼しげですよね?そうですね。
船遊びなどをしてました。
これが細かいんですよ。
何か酔いどれて寝てるみたいな人たちが…。
これも設定なんでしょ?そうなんです。
あまりこの話をし過ぎると30分間櫂さんの箱庭の番組になってしまうので。
聞きたいですけどね。
疑問にお答えしましょうね。
後ろたくさんある中で早速まいりますね。
まずこちらからいきましょうか。
非常におずおずとした質問ですね。
実はこれは一番多い質問ですね。
やっぱり最初に迷うんでしょうかね?長嶋さんも文法ってどうですか?今日文法でお話伺うんですが。
そこが一番苦手なところでもあるので。
一番盗みたいところでもあります。
実際これはまずどうなんですか?旧仮名遣いは使った方がよいのかよくないのかではなくて作者自身が選べばそれで済む話なんですね。
例えばいわゆる文語で句を作っているから必ず歴史的仮名遣い…。
こちらまとめました。
入れなければいけないという事はない?ないです。
文語だと歴史的仮名遣いでなきゃいけない気がするけど?ないです。
大丈夫です。
文語で現代仮名遣い…?大丈夫です。
その逆で口語だからといって現代仮名遣いでなければならないという事もありません。
つまり口語で歴史的仮名遣いも大丈夫という事になります。
だいぶ中田さんがほっとされたんじゃないですか。
作者が好きなものを選べばよろしいと思われます。
文語で旧仮名というのはよくイメージできるんですが文語で新仮名という例にはどういうものが?ちょっとご紹介します。
こちらです。
「かな」という切れ字を使う時には基本的に文語でくくった方が収まりがよいといわれていますがこの句そういう文語で作ってあるのに「洗う」。
「う」ですよね?そうですね。
仮名遣いは新仮名。
旧仮名にしたければ「ふ」になる訳ですが作者はあくまでもふだん基本的に新仮名遣いで作っておりますのでここは「う」にしてあるという事になります。
僕も口語新仮名というのが多いんですが口語の例にはどんなものが?実は私の句にもありまして。
ちょっと形の変わった句なんですが。
ちょっと切ない恋心のような句なんですが。
この「笑つて」に注目して頂きたいんです。
よく見ると…。
「つ」が大きいですよね。
どこからどう見ても口語の句なんですが私は口語で作る時も文語で作る時も基本的に旧仮名遣いを使っておりますので「つ」は大きくしてあります。
僕も始めた頃の入門書で「新仮名でも旧仮名でもいいが一度そう決めたらそれになるべく徹底した方がいい」というので作ってる句があります。
長嶋さんのこちらの句です。
何かのんきな句なんですが。
のんきでいいですね。
この場合は「立った」という部分を新仮名に。
これをもしこの同じモチーフを文語でやるとしたらどういう言い方になりますか?う〜ん…ちょっと苦しいですが無理やり変えるとすれば例えば…「まま」というのはその状態が続いておりますので「立ちたるままキリンよく」…ここは「寝て」ではなく文語ですと「ぬ」ですから「よく寝る」ぐらいになりますか。
だいぶ印象が変わりますね。
何か妙に立派な句になりましたね。
僕は俳句自体がどうしても立派な趣味みたいに見られちゃうような感じがあって何か立派な事を言ったとつい思われちゃうのでそうではない。
平熱の感じを出したいという気持ちで「立ちたるまま」とかだと立派なキリンになる。
そうではなくて平熱でフラットに寝てる感じにしたかったので新仮名口語にしたんです。
だから何を選ぶかというのはどんな句を作りたいかって事にもよりますよね?分かりますね。
心をワッと前に出したい時などは口語が合いますよね。
あるいは軽やかな感じを出したい時には口語というのは句にぴったりはまると思われます。
また後ほど「文法」についてはお答えしたいと思いますがまずは櫂さんが選んだ入選句ここでご紹介してまいります。
まず1番です。
この句ですが人形などを置いてますとどちらにしてもけんかをしようがないんですよね。
じっとここにいるだけですから。
でも分かりきった事をちゃんと「諍ひのなき」と言っておいて更に最後に「日暮かな」という平和な状態。
それを表しているすてきな作品だと思われます。
では2番です。
この句なんですがほかの句は「犬が置いてある」「猫がいる」などがたくさんあったんですが何とも言えぬ何かに特定しない「獣」というこの強い言葉を置いた辺りが作者が何か望んでいるようなそんな感じが致しました。
3番です。
作っている最中を描いた句は意外となかったんです。
これはきっと武骨な男の人の指ですよね。
それがいきなり箱庭の上に太い指が下りていくという感じ。
妙にたくましい句で非常に印象に残りました。
では4番です。
家とか山河を置いた句はたくさんあったんですが「電柱」は恐らくこれだけだったんです。
でも箱庭の中にいろいろできますからね。
僕今回入選九句どれもすごい面白かったんですが取り合わせの句というよりは全て一物というか箱庭にどうしてるのかとか箱庭がどうなのかって事にトライしてる句が多くて。
僕は二物でつい作っちゃいそうな気がしたんです。
「箱庭」と聞いた時。
でも全部箱庭のディテールに寄っていって成功している句が多くてすごいなと。
この「電柱の影」もそうですよね。
「生れけり」が確かに突然日がさしそうになる瞬間が出てるような気がするんですよね。
すてきな作品ですよね。
実際の影がこうね…。
はい。
今度は5番です。
「箱庭の浜辺」といいますと日傘を置いてみたり浜日傘置いてみたりあるいはたくさんの人がいるようにしつらえたりとかすると思うんですが。
ところがみんな黙ってますよね。
静かだけれどにぎわっているという逆の事を言ってる訳です。
それが非常に箱庭らしくていいと思われました。
6番です。
この句も楽しい句でね。
「ゴジラ」の句結構あったんですが。
ちょうど映画も公開されてますけど「ゴジラ」がまず面白い訳だけれどただそれだけだと面白だけになっちゃう。
これ最後「誰だ」って強く止めた勢いが面白いと思うんです。
おじいさんがお孫さんか何かに怒鳴ってるような感じがあってこれはユニーク。
勝手にされちゃったんですね。
「何だ私の丹精した箱庭をどうしてこんなふうにしたんだ」というね。
でも置きたくなる気持ちも分かります。
これは楽しい句でしたね。
では7番です。
「置きぬ」で一度切れます。
石を置いた句たくさんあったんですが「故山」という格調高い言葉を使ってくれたのはこの句だけだったんですね。
ふるさとの山といいましょうか郷里の事を指す訳ですがその石をそっとそこに配したというね。
なかなか渋いけれどもすてきな作品でした。
8番です。
これ「二三人」というのが面白いんですが。
長嶋さんどう思われますか?これは箱庭の臨場感があるのは通りすがる人も別に嫌いとかじゃなくて褒める自信がない…いいものなのかどうか評価できないという感じがあると思うんです。
だから「二三人」という少ない人数なんだけどもでもいい箱庭だから褒めていく人もいるという箱庭ビギナーもこの句の実感が分かる。
いい句だと思います。
作者はもっと褒めてほしかったんじゃないかなと私は思ったんですが。
うっすら感じられて面白いですね。
五〜六人でもなく一人でもないところがこの句の面白さですね。
では9番です。
「二日」がポイントだと思いませんか?没頭しましたね。
一日でもなく一週間使った訳でもないという。
無駄に過ごしたようで充実している感じがしますね。
「使ひきる」という言い切りがすてきですね。
入選句でした。
それでは特選句です。
まず三席の句はどちらでしょう?後藤幸次郎さんの句です。
では二席の句です。
村岡純子さんの句です。
一席はどちらでしょう?奥村真由美さんの句です。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらNHK俳句テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして「入選の秘訣」です。
入選までのあと一歩を教えて頂きます。
実は今回は「ガリバー」という言葉を使った句が…。
箱庭だから?そうなんですよ。
自分がガリバーであるというような句が多かったんですがその中でちょっと気になる使い方の句がありましたので見てみましょう。
箱庭の周りにまるでガリバーのように子どもたちがいるという句です。
惜しいのはこの真ん中の七音です。
ちょっと変ですよね?はい。
「ガリバーのごとく」にしたいけれどそうすると音が余ってしまう。
「ガリバーのごと」で十分なんです。
この例えがちゃんと素直に伝わるように気を付けてここはちゃんと「の」を入れて頂きたいと思われます。
どうぞ参考になさって下さい。
それでは櫂さんの年間のテーマは「日本の季語遺産」で今日は「箱庭」についてですがまずこちらの句でお願いできますか?誠シンプルな句だと思われませんか?そうですね。
鳥取のような箱庭だと言ってるだけなんですけど。
でも何か面白いのは鳥取だからでしょうかね。
砂丘といいましょうか…。
砂丘がまず浮かびました。
砂丘のような作り方をして。
箱庭というのは全く自由な作り方ができますので。
例えば緑たっぷりにもできるし砂だらけにもできると。
ですから砂丘のイメージ。
「でありけり」と五文字もたっぷり使って言うのに何かしみじみと箱庭が出来たぞあるいは箱庭を見ているという感じが出て何か大胆に「でありけり」は使いたいですけどね。
大抵はこんなにうまくいかない。
非常にきっぱりとした楽しい句だと思われます。
「鳥取」と「箱庭」というところが。
その取り合わせは新鮮ですよね。
この句それしかないというのがすごいんです。
東京だと何となく比喩っぽくなってしまう。
さあそれでは「いまさら聞けない俳句の疑問」後半にまいります。
後半もたくさんあるんですがこちらでいきます。
その意味は分かります。
そういう時には一番簡単なのは立夏を表す「夏は来ぬ」。
・「夏は来ぬ」歌にありましたよね。
あれで覚えると簡単ですね。
「夏は来ぬ」は「夏が来ました」という事です。
それに対して「夏は来ぬ」だとどうなりますか?夏が来ない。
なんて寂しいんでしょう。
「き」と「こ」で全く意味が変わる?はい。
だいぶ変わりますのでそこは気を付けたいと思います。
こちらの句でご紹介頂けますか?僕の句で僭越ですが。
この場合の「ぬ」。
これは見ていた?「いた」というか見たんだという感じですね。
そうですね。
切ってるから。
これを否定にしちゃいますと「おらぬ」。
ちょっと落ち着かないです。
「おらず」ぐらいになりますかね?そうですね。
全く意味が変わってきますので。
やはり気を付けたいですね。
そうですね。
例句で覚えるのがいいですね?一番簡単です。
有名な句をしっかり覚えればこれは来るという意味の「ぬ」なんだという事や否定の意味のと分かります。
これが一番簡単です。
次はこれがなかなか…音便なんですが。
なかなか音便難しいですよね。
難しいですけれども音便にしたい時に音便にするのであって音便にしなければならないという決まりはないんですね。
ですから例えば「舞ひて」というのは本来は普通の言い方といいましょうか正しい言い方なのでわざわざする必要はないんです。
したい時だけすると思って下されば大丈夫だと思われます。
例えば「面白くて」を「面白うて」としたい時もありますよね。
あるいは「買ひて」。
何か物を買う。
「買ひて」を「買うて」とする。
ただ問題はその時にここは「はひふへほ」を使わないで音便の場合には普通に「う」になるところが大事ですね。
何か「は行」を使いたくなってしまいますが。
その気持ちは分かります。
でもこれなんかどうですか?「関西弁のようだ」とおっしゃってましたよね?さっき。
感じとして。
先ほど櫂さんが「関西弁のようだと思えばいい」と言うからそれも感銘を受けたんです。
関西の方の句で…。
これは「名を言ってみよ」だと全く硬くなり過ぎて。
そうですね。
強いですよね。
強くなり過ぎちゃいますね。
ですからここは音便にしまして。
音便が生きてるという事?そうです。
本来は「言ふ」を使いますが音便になると「て」がつくと駄目なんです。
「ふ」は使えないんです。
そこが難しいです。
そこ間違えそうになっちゃう…。
「言うて」でいいんです。
「ふてねはいけません」と覚えると簡単です。
間違えやすい旧仮名も是非聞きたいんです。
これさえ覚えてしまえば旧仮名は完全にマスターした事になりますので。
音便はまさしく旧仮名の華と言えるものだと思います。
華でございます。
それにしても「間違えやすい仮名遣いはあるか?」という事なんですが。
こちらに…昔思い出しますと覚えましたといいましょうか覚えさせられましたといいましょうか。
これは確かに間違えそうですね。
口語で言うと「老いる」。
だけど昔は古文の時間に「老ゆ」「悔ゆ」「報ゆ」と習いましたね?ですから「や行」ですから普通に「い」でいいんです。
「老いる」で結構だという事を覚えておいて下さい。
さあ今日は「文法」について…。
3回にわたりまして皆さんから「いまさら聞けない俳句の疑問」お答え頂きましたけれども3回にわたっていかがでしたか?3週間いろいろ学ぶ事ができて俳句愛好者代表としていろんな…僕の代わりに聞いて下さったみたいな質問もあってよかったんですけど皆さんのお答えを聞くにある答えが今得られてもそこで考えをやめなくていいという感じがしましたね。
というのは答えてらっしゃる先生方もみんな実作者で今なお俳句を悩んでいる。
そういう悩んで考えながらの今の答えを言っているというのがあったので。
「ここで答え得た。
よかった」ではなく引き続き考えていきたいなと全ての答えに対して。
そういう事を思いましたね。
ありがとうございました。
それでは今度の投稿のご案内をしたいと思います。
こちらをご覧下さい。
お手元にはまた。
今度は菊枕になってますね?次回の季語ですね?そうです。
これももしかしてご自身で?もちろんでございます。
通信販売で買ったとかじゃなく?いいえ違います。
お作りに?干すんですか?はい。
ポプリみたいな事ですかね?ポプリのようなものなんですが。
この枕を本来の枕の上に敷いて。
何だよかった。
何か枕にしては小さすぎると思ったんですよ。
敷いて使うと?目の病とか頭痛が治るといわれているものなんです。
この「菊枕」で投稿して頂けたらと思っています。
箱庭もお作りになって?はい。
何でも作ります。
どうもありがとうございました。
櫂先生また次回もよろしくお願い致します。
そして長嶋さん本当に3週にわたりましてどうもありがとうございました。
とても楽しかったです。
ありがとうございました。
それでは失礼します。
2014/08/17(日) 06:35〜07:00
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「箱庭」[字]
「今さらきけない俳句の疑問」の三回目。今回は文法や仮名遣いなど、初心者が間違えやすい問題を取り上げる。出演 櫂未知子 長嶋有 桜井洋子アナウンサー 題「箱庭」
詳細情報
番組内容
「今さらきけない俳句の疑問」の三回目。今回は文法やかなづかいなど、初心者が間違えやすい問題を取り上げる。題「箱庭」【選者】櫂未知子【ゲスト】長嶋有【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】長嶋有,櫂未知子,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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