2NHK短歌 題「汗」 2014.08.17

今月の「NHK短歌」は「今さら聞けない短歌の疑問」と題してお送りしていますがこの講座ではメキメキ短歌の腕上達してるというのは視聴者の皆さんもご存じだと思いますけど知花さん気付いてましたか?選者をご紹介したいと思います。
永田和宏さんですよろしくお願い致します。
聞くところによりますと知花さん永田先生の一番弟子という事で。
ほんとにね大変お世話になってるんです。
知花さんね1年半ぐらいかな歌を始められたんだけどとてもいいんです。
まず何よりも言いたい事がたくさんある。
恋の思いもあるしねそれからアフリカの事もあるし欠点は歌を作る数が少ない。
頑張ります。
先生今日僕が知花さんよりいい歌作れたら弟子…採ってもらえますか?もちろん!そんな簡単になれるの?チャンスです。
今日頑張ります。
今回どんな事勉強しましょう?確かに思いを風景で表すと短歌がうまく見えるというのは分かってるんですけど難しくてこれが。
どんな風景をとるかが難しいね。
視聴者からもそういった声が多く寄せられておりましてまずはお手本の短歌をご紹介したいと思います。
先生これは?これね五月に採った歌なんです。
お父さんだと思うんだけど娘のアパートに行ったんだと思うんですよね。
そしたら色が違う歯ブラシが二本立てかけてあった。
お父さんハハンと思うわけだけどそれ以上は聞かないで帰ってきた。
外へ出て歩いてると土手にたんぽぽが咲いていたと。
このね何も確かめないででもほわんとしたうれしい気持ちというがここに出ている。
この風景の切り取り方はとてもいいと思うんですよね。
一番最後の行が感情を書くんではなく見えた土手にたんぽぽというのがこの歌のいいところなんでしょ。
娘にもやっと恋人ができたかとかそんな事じゃないんだよね。
そこがいいところ。
でもこれはとり方によっては…。
これ読んだ時に女性の歌で嫉妬の悲しい歌なのかなと…。
だってね歯ブラシ二本並んでて聞けないですよね?好きな先輩の家へ遊びに行ったらそこにね…。
何か切ないじゃないですか。
全くそれは思い浮かばなかったけどそういうふうにもとれますよね。
その時たんぽぽってどんな感じ?一本だけ寂しく風に揺れてるのかなと思って。
たんぽぽに自分の気持ちを全部表現してるというふうにとらない方がいい。
そこにたまたまたんぽぽがあったみたいな。
今日のテーマになると思うけど風景にあんまり感情を乗せないというのがすごく大事なとこね。
あっさりめの方が逆に伝わると。
今回は思いやものを風景で表現するという勉強ですけどどうやって練習するんですか?そこでですねこんな場面をご用意致しました。
どうぞ。
テスト開始まであと20分。
次のバスに乗れば何とか間に合いそう。
…とその時ハプニング発生。
「待って〜」と声もむなしくバスに乗り遅れてしまった時の思いをものや風景で表してみましょう。
なるほど。
バスに乗り遅れたこの風景の何かで歌を作る。
ただ今…あれ?来てくれたんだ。
来ちゃいました。
永田先生に会いたくて。
握手してもらっていいですか?すいません。
どうもどうも。
ずっとお会いしたかったんで。
ありがとうございます。
「短歌de胸キュン」という番組のメンバーのえりちょすでございます。
どうもよろしく。
見てます見てます。
見てるんですか?見てます。
何で俺の時言ってくれないんですか?俺も出てますよ!そうそう。
今の風景からいろいろシチュエーションで使えるものを探すというのも勉強の練習。
そうですね。
小沢さんどうですか?今のを見て。
例えば映ってないですけどハイヒールが折れたというのでも風景の一つになるわけですか?「折れたハイヒール」。
ちょっとつきすぎだよね。
わかりやすすぎる。
逆に「折れなかったハイヒール」。
例えば「家に忘れた腕時計」とか。
そういうのは面白いなぁ。
「鳴らなかった目覚まし時計」とか。
それはちょっとつきすぎたね。
難しい。
知花さんある?過ぎゆくバスに乗ってた乗客の方の顔とか。
そういうのはいいよね。
「自分を見てた」でもいいし「向こうを見てた」でもいいし。
やりますね〜さすが弟子だな。
あんまりつきすぎた風景自分の気持ちとぴったりの風景をとってくると駄目ね。
さっきの風景なら先生何かお手本は?乗り遅れてはっと見たら目の前に時刻表があってそこに落書きされてるとか落書きが面白かったでもいいけど。
時刻表の字が薄れてたとか路肩の角が欠けてたとかふだん気が付かない風景でもその時ふっと見つけた風景そういうのがいいと思うね。
あんまりぴったりの風景を見つけないのが鉄則ですね。
これ面白いんじゃないですか?練習になりそうだしもっとやりたいですもん。
それではケース2です。
最近なかなか連絡がとれない彼。
そんなある日…街でばったり遭遇した彼が…別の女性を連れていた時…。
この時の主人公の思いをものや風景に表してみましょう。
例えば好きな人がいるのに他の人と歩いてるのを見ちゃった瞬間「おろしたての靴」とかどうですか?自分の?それはいいかもわからんね。
つきすぎないでちょっと遠目のやつ。
どうでしょう?そうだな…「夏の日ざしに白く光る横断歩道」とか。
いいですね。
それもそうね。
弟子やってるな。
やった〜!やるな〜姉弟子。
持ってないけど例えば日傘とかね。
あのね大事な事は風景って普通見てるけど何の意味もないの風景そのものには。
自分の気持ちが何かの時にその風景に意味が出てくる。
そういうふだん見逃してる風景にその時だから意味が出てくるような風景があると一番いいね。
今曲がり角に木があったじゃない?あの木がものがきちんと分かっていればその木の陰から出てきたとかそういう具体を出すのがすごく大事。
クヌギの木だったら一気にギュッと。
単なる花よりも何とかの花の方がいいしどんどん具体にいくというわけね。
コツ分かってきましたよ小沢。
えりちょすはコツ分かってきた?はい!ちょっと必死です。
メモってるだけだもんね。
勉強にはなってる?なってます!今日は一日一緒に勉強しようよ。
はいお願いします。
それでは今週の入選歌のご紹介です。
題は「汗」または自由です。
永田先生が選んだ入選歌をご紹介しながら私たちが選んだ一席もご紹介していきたいと思います。
(知花)これは小沢さんの一席ですね?これは僕が選んだんですけどこの歌の中には思い出とか過去のとかはないのに若かった頃の暑い夏の恋若いからこその恋愛に対して打算のないすごい熱い恋…懐かしいっすね先生。
同世代か!そういう歌なんで僕は好きです。
「エアコン無しの」がいいよね。
すごく濃密な感じで汗の匂い…「神田川」の世界だな。
どっちかっていうとね。
(知花)続いての一首にまいります。
これは私が選んだ一席なんですけどドキドキする女性の心理が伝わってくる気がして相手の甘い言葉を待ってるんですよ。
甘い言葉なら得意ですが。
(笑い)スルーしてもいいですか?スルーして下さいよ。
この歌はねカンパリって何色してるんだっけ?ものによるんじゃないですか?グラスの汗だけを見てて相手の顔が見られなかった。
何も書いてないけど「君のひとこと期待しながら」って見てたのはカンパリのグラスの汗っていうところがとても女性の心理だと思うな。
続いての歌にまいります。
これがえりちょすさんの選んだ一席ですね。
作者の方が女性の方なんですけど泣きたいのに泣けなくて下の句の「拳の中に」というところで悔しさが拳の部分ににじみ出てる感じがして女性なのに男らしい歌だなって思いました。
えりちょすさんも思い出があるんだ。
そういう何か。
ありますね。
やっぱり涙って人に見せたくないし。
涙見せたっていいじゃない。
何か嫌なんですよ。
若いうちしか泣けなくなるよ。
どうしたらいいんですかね?これは。
基本スルーして。
はい分かりました。
これはよく分かる歌なんだけど手のひらの中に握った汗が泣けない時の涙なんだ。
とてもいいんで僕も本当は採ろうかと思ったんだけどねちょっと涙と汗がつきすぎなのよね。
涙は心の汗みたいなの昔から言われ過ぎちゃって。
ちょっと惜しいところですね。
では永田先生の三席の発表です。
先生これはいかがでしょうか?フォークダンスの世代ですよね?「オクラホマミキサー」懐かしい。
向こうから彼女が来るかと思うと遠ざかっていっちゃうしなかなかまどろっこしいダンスなんですよ。
それを汗と動悸と心と手のひらが直結している感じをうまく捉えたと思うね。
まあ我々世代の歌ですね。
我々世代というのは僕も入ってる?エアコンなしの世代?エアコンなしの世代。
「オクラホマミキサー」下手したら知らないんじゃない?知らないです。
聞いた事ない。
知らないですか?知ってます。
オクラホマチルドレン3人そろいました。
じゃあ今度一緒にやろう。
続いてまいります。
永田先生の二席です。
よくあるよねこういうのはね。
ぐっしょり汗かいて目が覚めるとあ〜そういえばあの時ほんとに殺されかけたんだ。
ああよかったな生きてるってそんな感じの歌ですね。
僕思ったんですけどこれ本当にただ寝て起きた朝の一コマじゃないですか?こういうほんの些細な事でも短歌になるんですね。
それとてもいいポイントね。
歌ってあんまり言いたい事がいっぱいありすぎるとこれとこれとこれは言いたいと思うと大体失敗しちゃう。
本当に些細な事でチラッと思った事が歌になるといい歌になりますね。
これ結構ある事ですからねすごいよな〜。
続いて永田先生の一席をご紹介します。
これは?剣道ですよね。
籠手をとられてあっ負けたというので一礼をして面を取る。
そこまで剣道って考えてみたら汗拭けないんだよね顔の。
面がありますからね。
それが「汗に目に染む」ってとてもよく分かるな。
汗が目に染みるというのは悔しくて泣いてるとはまた違う?そこ言っちゃ駄目だね。
やってて負けたけれども取ったら目に染みた。
そこでだと思いますね。
以上入選九首でした。
入選歌と佳作は「NHK短歌」テキストに掲載されます。
ここで皆さんからお寄せ頂く投稿のご案内です。
続いては選者のお話のコーナーです。
この間に小沢さんには先ほどの講座を受けて一首を作って頂きたいと思います。
先生!できしだいによっちゃ弟子にしてみませんか?断る事もありますけど。
いや〜頑張るから!頑張るから!作りますから〜待って。
それでは永田さんのテーマ「時の断面あの日、あの時、あの一首」今回は親の介護の日々です。
今ねほんとに親の介護の問題は誰にも避けて通れなくなっている大事な問題なんですけれども栗木さんもお母さんを自分たちだけでは面倒みきれなくなって施設に預けたと。
そういう時の歌ですね。
これまではお母さんと娘という関係であったものが施設に預けちゃうと406号室の住人になってしまう。
自分の生命を持った存在から部屋の番号で呼ばれる存在になる。
そんな存在にしてしまったのは私とそして私の兄なんだと。
つまり兄妹で相談をしてしょうがないから施設に入れようかと。
そこにこの数字を与えたのは兄と我だというところにいろんな思いが籠もってるんだけどその思いを悲しいとか悔しいとか申し訳ないとかそういうものを一切言わないで数字を与えた。
そういう私と兄なんだと言ったところがとてもいい歌になりましたね。
大きくうなずいてらっしゃいましたけどいかがでしたか?私にはまだ経験した事がない事なのでいろいろ考えさせられる歌でした。
まあもうすぐそうなりますからね。
もうすぐって結構早いよね。
多分まだ先だと…。
みんなが経験する事ですからね。
僕もついこの間までえりちょすさんぐらいの年だったと思ってた。
そんなわけないです。
師匠すいません。
永田さんありがとうございました。
先生突然なんですが私も短歌を作ってまいりましたので見て頂けますか?この場で。
それは是非。
お願い致します。
知花さんとても大胆な歌を作られるけどこれもいい歌だと思うな。
ししゃもって本当に腹をほぐして食べる時に卵ばっかりという感じだよね?これは生命の本質で生命は子孫を残すというのは大事な作業なのでその腹をほぐしながら自分はこの子孫を食べてるんだというか卵を食べてるというそういう一方で思いがあってもう一方ででも自分はピルで子宮から卵を遠ざけていると。
そういうコントロールをしている。
そういう自分でありながら卵を食べているというそこに非常にある種の矛盾も感じるしそんな感じかな?女性として生きるうえで現代っていろんな技術と共に生きてるわけですけどししゃもの腹をほぐした時にリアルな命を見たような気がしてドキッとさせられたんですよね。
女性はこういう歌を作るのにすごく勇気が要ると思うけどよく作ったと思いますね。
ありがとうございます。
小沢さんそろそろできましたか?渾身の一作お願いします。
僕からの何でしょう?先生への弟子への招待状になると思います。
失礼します。
お願いします。
夏の一コマのさっきのアパートの歌じゃないですけど若い頃の恋の歌手を握りたくても握れない。
まだ青春してるという歌だな。
握れない手は汗だけかいてってそれはとてもいいと思いますね。
「午後七時」もいいんだけど第二句と三句はちょっとまどろっこしい感じで「どこかで聞こえる花火の音に」というのが何となく間延びをしてるという感じなのでそこだけちょっと直したらいいんじゃないかと思います。
例えばどう直してみましょう?「花火が遠く聞こえてる」とか…。
「どこかで」でもいいけど「花火が遠く」でもいいや。
「聞こえてる」あるいは「はじけてる」どちらでもいいです。
好きな方。
好きなの書いていいって言ったら俺先生の名前書いちゃいますよ。
「聞こえてる」にしましょう。
「きこえる」はどっちの漢字がいいですか?まあ「聞」でしょうね。
はい分かりました。
先生に直して頂いたのを読んでみたいと思います。
締まった。
かっこいい。
一枚のきれいな水彩画を描いたような気持ちです。
自分で言っちゃった。
淡い色使い。
色使いが淡い。
う〜ん。
ありがとうございます。
先生どうでしょう?お弟子に採ってみる気には?う〜んまあもう少し…。
頑張りま〜す!「胸キュン」でもうちょっと修業して下さい。
この3週間「今さら聞けない短歌の疑問」と題してお送りしてきましたけどえりちょすも僕と一緒に「短歌de胸キュン」チームからやって来ましたけど勉強になりました?なりましたし最後の最後で永田先生にお会いできてすっごいうれしさがいまだに。
もう1回握手してもらっていいですか?嘘でしょ?2年半一緒にいたのに初めて聞いたよそんな設定。
「胸キュン」でも確か例で出てたと思うんですよね先生の歌。
檸檬のやつ。
そのころからもうずっと。
はい。
実在したんです。
そして知花くららさんどうでしたか?短歌を一度始めてしまうとなかなか今さら聞けないなという事ってありますよね?こういうふうに皆さんと一緒にお勉強する事でもうちょっと踏み込めた気がします。
勉強も大事なんだけど自分で作る事が大事。
どんどん作るとだんだん呼吸が分かってくる。
それは私への駄目出しですね。
知花さん1年半で十首ぐらいしか作ってない。
そんな事ないですよ。
もっと作ってます!小沢さんいかがでしたか?今日は。
やっぱりどうしてもいいシーンとかいい歌を作りたいという気持ちがありすぎて今日先生に教わったのは寝起きのあの一コマでも歌になる。
狙いすぎない。
さっと思った事をその瞬間大した事なくてもいいと。
それを切り取ればいいというのを勉強させて頂きました。
とてもいい事をおっしゃってたのは自分の気持ちから風景を探しにいかない。
これ僕大事だと思う。
自分の気持ちに合う風景はどれかって探してると歌がつきすぎちゃうから駄目で。
すごい勉強になりましたのでもし良ければ先生もくららさんも「短歌de胸キュン」という番組僕らやってるんで井戸田と小島というのが恐らくもう出ないと思うんでもしその時があればお二方来て下さい。
ねえ?是非是非。
もっともっと俺らも短歌うまくなりたいもんね。
梅内さんに拒否されたりしてね。
学んだ事をこれからの短歌作りの参考にしていきたいと思います。
また短歌の番組でご一緒したいです。
2014/08/17(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「汗」[字]

「今さらきけない短歌の疑問」その三回目。今回は「思いをモノや風景に託す」。嬉しい、悲しいといった言葉を使わないで、その感情を伝える方法を紹介。永田和宏 小沢一敬

詳細情報
番組内容
「今さらきけない短歌の疑問」その三回目。今回は「思いをモノや風景に託す」。嬉しい、悲しいといった言葉を使わないで、その感情を伝える方法を紹介。【出演】永田和宏、知花くらら、小沢一敬
出演者
【出演】小沢一敬,永田和宏,知花くらら,えりちょす,松下雄一郎,寿るい

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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