富士山の裾野に広がる町御殿場。
明治時代ここへ愛する夫のために命懸けの覚悟でやって来た一人の女性がいた。
(千代子)ねえ園子。
富士山よ。
お父様とお母様が登る山よ。
彼女は後に芙蓉の人と呼ばれた。
冬の富士山頂で気象観測を行う。
野中到は何度も山に登りその実現のために一人努力していた。
(和田)気象観測装置一式を中央気象台から貸与する事になりました。
ついては正式に気象観測を委託するという公文書を発行するよう働きかけます。
野中観測所国を挙げて応援します。
(到)ありがとうございます。
誰もなしえなかった富士山の越冬観測。
成功すれば到の挑戦が国に認められる。
妻千代子はそんな到を見守りそして強い思いに駆られる。
もしも許して頂けたら一緒に行ってお手伝いしたいと。
(とみ子)あなたが富士山に?少しでも妻として到さんのお力にと。
そうですね。
あなたは女ですから。
男の到でさえ難儀する山に登る事は難しいでしょうね。
そこに女の身で籠もるなどとてもできる事じゃありませんよ。
(勝良)ではまた御殿場に行くのだな。
はい。
来月にでも滝河原の佐藤與平治の宿を借りて早速大工仕事を始めようと思います。
私も御殿場まで参ります。
きっと何かのお役に立つでしょう。
(勝良)おおそうだな。
それは名案かな。
家の事は誰がやるんです?御殿場へ旅立つ到を見送る千代子。
主婦が長く家を空ける事は許されなかった時代。
しかし…。
私は10日ほどたってから参ります。
え?せめて御殿場までは。
どうしても来るのか?どこまでもあなたの後についていきます。
お母様到さんのお仕事のためどうかこの千代子を御殿場にやって下さいまし。
お願いします!必ず…必ずお役に立ちます。
到を頼みますよ。
ありがとうございます。
富士山は夏になると人で大変でしょう?
(與平治)何しろよ日本中の人が汽車でやって来るもんだからよ。
おっ!あっ!何だ着いたのか。
「何だ」ってもう…。
無事に着きました。
千代子と到の御殿場での二人三脚が始まった。
千代子は会計や家事を手伝いながらひそかにある計画を練っていたのだった。
こんなもんでそろっただらか?あのあとお米をもう一俵追加して下さい。
こんなこんわしが言うこんじゃにゃあけんど奥さんは何か隠していにゃあかね?私は主人の後を追って富士山に登るつもりです。
どうか與平治さんの胸の奥だけにしまっておいて下さいませ。
だけんどよ…。
とにかく今は観測所の完成を待たないと。
富士山頂で始まった建設工事は過酷を極めた。
しかし皆の熱意によって着実に進んでいった。
野中観測所完成。
到の長年の夢が大きな一歩を踏み出した。
(熊吉)万歳!
(一同)万歳!万歳!
(一同)万歳!万歳!万歳!万歳!私は東京に帰ろうかと思います。
もう私の仕事はそうありませんから。
そうか。
長い間ご苦労だったな。
月末には観測所に籠もるつもりだ。
春になったらひげだらけになってお山から下りてくる。
待っていてくれ。
泣くな。
大丈夫だ。
到にうそをついた千代子は富士山に登る最後の準備のために福岡の実家へと旅立つ。
今度会う時は奥さんが山ん登る時ずら。
足を鍛えておきます。
ごめんくださいませ。
(糸子)まあ千代子!
(只圓)お前がか?到さんと富士へ?妻が夫を手伝うのは当たり前の事ですけん。
なかなか勇ましか事たい。
でもまあ本当によう決心したものたいね。
私山に登る練習ばしたいのですけれど。
山に登る練習って…。
足ば鍛えるためですわ。
だって私あの日本一の山富士山に登るとですから。
千代子が富士に…。
ですから言ったのですよ。
女の身で冬山など死にに行くようなものだ。
東京から手紙が来たけん。
「どうしても行くというのなら今すぐ園子をこちらへよこしなさい。
それができぬというのなら一緒に帰るよう千代子にお伝え下さい」。
そげん書いてあるわ。
あなた覚悟はあるとね?我が子ば置いていく覚悟。
あの人は死ぬ気ですけん。
将来この子に「お母様は何もできなかった。
あなたの面倒見るしかなかったからよ」とそげなふうに言うのは。
それよりも「お母様はお父様と一緒に闘ったのよ」とそうこの子に言いたい。
秋到はついに富士山頂へと向かった。
一歩一歩千代子もまたそこにたどりつけるようにと歩いた。
園子。
園子…ごめんね。
さあもう行かんね。
母がここであなたば引き止める前に。
行かんね。
千代子はいよいよ富士山頂へと向かう。
愛する夫のもとへたどりつくために。
そして夫婦で共に生きて戻るために。
自然の厳しさをも恐れぬ千代子の強い愛がこの山頂に奇跡をもたらす。
2014/08/16(土) 03:50〜04:00
NHK総合1・神戸
まだ間に合う!土曜ドラマ「芙蓉の人〜富士山頂の妻」[字]
明治28年、冬の富士山頂での気象観測に臨む野中到(佐藤隆太)とその妻、千代子(松下奈緒)。夫の身を案じた千代子は同行して支えようと決意を固め愛娘を両親に預ける。
詳細情報
番組内容
明治28年、前人未踏の冬の富士山頂での気象観測に臨む野中到(佐藤隆太)とその妻、千代子(松下奈緒)。ただ一人山頂で越冬しようとする到だが、千代子は夫の身を案じ、自らも同行して支えようと決意する。姑のとみ子(余貴美子)らは反対するが、千代子の思いは変わらない。観測所を建設する到を御殿場で手伝ったあと、福岡の実家に愛娘を預けに向かう。そして到を追い富士山頂へ出発した千代子は一歩ずつ夫へと近づいていく。
出演者
【出演】松下奈緒,佐藤隆太,三浦貴大,勝村政信,苅谷俊介,市毛良枝,堀内正美,平田満,余貴美子,【語り】益岡徹
原作・脚本
【原作】新田次郎,【脚本】金子ありさ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
情報/ワイドショー – 番組紹介・お知らせ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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サンプリングレート : 48kHz
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