日本一の標高に位置するダムです。
毎年6月ごろになると黒部ダムの水は水煙を上げながら勢いよく放水されます。
その迫力の放水に訪れた観光客は大感動。
人々を魅了するこの水が持っているエネルギーが今日のテーマです。
高校の時「黒べえ」と呼ばれていました…じゃあ黒べえって呼ばなきゃね。
現役高校生の…あのダムの放水って実際見たら感動するらしいね。
いや〜行ってみたいな黒部ダム。
熊谷君これは物理だからね。
行けたとしても熊谷君には是非ダムの水が持つエネルギーを感じられる物理の目を持ってほしい訳。
エネルギーねぇ。
ピンと来てない熊谷君と一緒に今日もしっかり学習しましょう。
今日のテーマはこちら。
物体が持っているエネルギーの中で今日は位置によって決まるエネルギーについて学習します。
そもそもエネルギーって何だったか覚えてる?熊谷君。
仕事をする事なんだよね?うん。
(ブツリン)前回モーターとビー玉の関係から…ビー玉が上がる時モーターがビー玉に仕事をした。
そしてビー玉が下がる時ビー玉はモーターを回す仕事をした。
これをエネルギーの視点で見てみると…。
ビー玉が上がる時モーターからエネルギーを与えられビー玉が下がる時そのエネルギーがモーターを回す仕事をしたという事になるよね。
そう。
つまり…そっか。
この弓矢もエネルギーに注目して説明してみると…。
こんなふうに弓がしなって弓に蓄えられたエネルギーが矢を飛ばす仕事をする。
矢は弓にエネルギーを与えられたから飛んだって事だよね。
なるほど。
では熊谷君…えっダムだから発電?発電もそうだね。
あとほらすごい勢いで放水してたでしょ。
あの高さを落ちる黒部ダムの水熊谷君下で受けられる?無理でしょ。
無理だよ!すごい勢いだよ。
潰されちゃうよ。
それ。
高い所にあった水が落下するのって硬い岩も砕く勢いでしょう。
その岩を砕くのも水が持っていたエネルギーがした仕事になるの。
そうしたエネルギーは…もともと持っていた?今回位置によって決まるエネルギーについてお話頂くのは野口禎久先生です。
先生よろしくお願いします。
(野口)よろしくお願いします。
エネルギーとは仕事をする能力の事をいいます。
例えばビー玉や黒部ダムで見たように高い位置にあった物体は落下する事で仕事をする事ができます。
つまり物体は潜在的に仕事をする能力を持っていた事になりビー玉や水がエネルギーを持っていたと考えるのです。
こうした…まずは重力による位置エネルギーの大きさについて見ていきましょう。
熊谷君黒部ダムの水があの2倍の高さを落ちると仮定すると…。
2倍ですか?そうですね。
持っていたエネルギーの大きさはどうなると思いますか?いやとんでもない事になるのは想像できるんですけど…。
それでは高さと重力による位置エネルギーの大きさの関係を調べた実験を見てみましょう。
高さと位置エネルギーの関係を調べるために仕事を比べてみましょう。
測定に使用するのはこの装置です。
上からおもりを落とすと杭が動くのでその仕事からエネルギーをはかる事ができます。
高さを変えておもりを落とし仕事の大きさを比べてみましょう。
ではまずおよそ10cmの高さからおもりを落とします。
1cm動きました。
この時の落下距離は…続いておよそ20cmの高さからおもりを落とします。
1.9cm動いたのでこの時の落下距離はおよそ…次は30cmの高さです。
3cm動いたので落下距離は…この結果から杭の移動距離が落下距離に比例し仕事の大きさは高さに比例する事が分かります。
今の実験でどうして杭が移動した距離から重力による位置エネルギーが分かるのかという事を説明しておきます。
おもりが杭に衝突したあとおもりは杭に力Fを加えて大きさが一定の動摩擦力fに逆らって押し込んでいきます。
杭が十分軽い時Fとfは同じ大きさになります。
従って杭の移動距離をとするとおもりが杭にした仕事…つまり杭が止まるまでの移動距離でおもりがした仕事の大きさすなわち重力による位置エネルギーを比べられる…という事になります。
実験の結果位置エネルギーの大きさは高さに比例して大きくなるという事が確かめられました。
続いて質量によって位置エネルギーがどのように変化するのか見てみましょう。
3種類のおもりを使って位置エネルギーの違いを調べましょう。
まずは60gのおもりを落とします。
0.95cm動きました。
次に同じ所から120gを落とします。
1.9cm動きました。
最後は180gです。
3cm動きました。
同じようにして3種類のおもりをいろいろな高さから落とす実験を行いその結果をグラフにするとこのようになりました。
このグラフを見るとどの高さでもおもりの質量が2倍になると杭の移動距離は2倍。
おもりの質量が3倍になると杭の移動距離は3倍になっている事が分かります。
つまり位置エネルギーは物体の質量に比例している事が分かります。
このように高ければ高いほどそして質量が大きければ大きいほど位置エネルギーもそれらに比例して大きくなるという事が分かりました。
それでは重力による位置エネルギーの大きさを求めるにはどうすればいいのか考えてみましょう。
エネルギーは仕事Wすなわち力×移動距離で求める事ができます。
床から高さhにある質量mの物体が床まで落下する時物体は重力によってmg×hの仕事をされると考える事ができます。
物体はこの仕事の分だけエネルギーを得て何かに衝突すると仕事をする事ができます。
見方を変えると初めから高さhの所にある時に仕事W=mg×hの分のエネルギーを持っていたと考える事ができます。
このように基準である床から高さhの位置にある質量mの物体は重力による位置エネルギー……を持っているという事になります。
それでは熊谷君この10kgのおもりをこのテーブルの高さから1mの高さに持ち上げてくれる?うん分かった。
よいしょ。
こう?はい。
これ高さが1mだから位置エネルギーはいくつになる?えっと重力加速度は9.8m/sだから重さの…う〜んどうかなぁ?どうかなぁ?
(正解のチャイム)それでは位置エネルギーの仕事をする能力を体感しよう!…という事でジャ〜ン!すごい!これ何?黒べえ水力発電所?うん黒べえ水力発電所。
フフフ位置エネルギーによる代表的な仕事が水力発電。
このポリタンクには水がたくさん入っています。
水が落ちるエネルギーを使って水車が回ります。
そして発電機が回ってその電気でプロペラが回ります。
水の位置エネルギーを利用するっていう考え方は実は古代からあったの。
水の力を利用して水車を動かして穀物を砕いたり織物をしたりしてたんだから位置エネルギーに歴史ありだよね。
分かったからね。
早く回してみようよ。
うんそうだね。
じゃあ早速回してみます。
いきま〜す。
お〜プロペラが回った。
すごいね。
これって…あ〜言ったな熊谷君。
じゃあこのタンクにずっと水入れといてくれるの?すぐなくなるんだよこれ。
しかもこのプロペラ回すぐらいの電力しかないんだよ。
そっか…こんなに大がかりな装置でもこれだけしかできないんだね。
ダムの位置エネルギーってすごいんだなぁ。
ダムの水が持つ重力による位置エネルギー。
これは何から与えられて得たエネルギーだと思いますか?ダムから流れた水は川を流れて海に注がれますよね。
そこで水は太陽からエネルギーを得て水蒸気となり再び高く上昇します。
つまり重力による位置エネルギーを再び得るという事なんです。
そして雨となってまたダムにためられます。
ダムの水が持っていた重力による位置エネルギーは実は太陽がエネルギーだったんですね。
続いては弾性力による位置エネルギーです。
熊谷君この箱開けてみて。
うん。
いくよ…お〜。
かわいいね。
もっとビックリしてよ。
えっだって見えてたんだけど。
この飛び出してきた人形にさエネルギー感じない?う〜んばねの勢いによって飛び出してきたよね。
ばねだから弾性力って事?そう。
これまで高い位置にある物体すなわち重力による位置エネルギーを主に見てきたけど位置って上下だけじゃないでしょ?この場合はばねの力によって物体の位置が移動するから弾性力による位置エネルギーなの。
さっき弓矢で仕事をする能力考えてみたよね。
これも弓の弾性力によって矢が打ち出されたから弾性力による位置エネルギーになるの。
そうですね。
それではビックリ箱を使って説明していきます。
熊谷君ビックリ箱ちょっと貸してもらえますか?はいどうぞ。
人形は箱の中に押さえつけられていたばねによって飛び出しました。
ばねに力を加えて引っ張る。
あるいはこの箱に閉じ込めていたように縮めた時ばねにはエネルギーが蓄えられていて仕事をする能力を持っていたと考える事ができる訳です。
このエネルギーを…それでは弾性エネルギーはどのように考えて求めればよいのでしょうか?仕事は力と距離で求める事ができましたね。
ばねの弾性力は…そうだったね。
どう考えるのかな?ばね定数kのばねに物体をつけ自然の長さからだけ引き伸ばしてから静かに手を離してばねが自然の長さに戻る時に弾性力がする仕事について考えてみましょう。
弾性力の大きさFはばねが縮むに従って小さくなっていきます。
だけ伸びている時ばねの弾性力はフックの法則からF=kです。
自然の長さになった時には0です。
この間の力の大きさの平均は…それに移動距離を掛ける事によって弾性力が物体にした仕事Wが…つまりばねは2分の1kのエネルギーを物体に与えた事になります。
従ってばねがだけ伸びていた時ばねは2分の1kのエネルギーを持っていた事になり弾性力による位置エネルギーはEp=2分の1kで求める事ができるという事になります。
はい。
弾性エネルギーはばねの伸びの2乗に比例するのでしょうか?実験で確かめてみましょう。
ばねの伸びが2倍になった時弾性エネルギーはどうなるか?ゴムの場合で確かめてみましょう。
力を加えない時ゴムはこの長さになっています。
赤いボールをストッパーの青いボールの位置まで下げて赤いボールの位置が0mになるように合わせて打ち出します。
高さは0.38mでした。
次にストッパーの青いボールの位置を下げます。
赤いボールを青いストッパーの所まで引き下げます。
これでゴムの伸びは2倍になりました。
目盛りを動かし赤いボールの位置が0mになるように調節し打ち出します。
1.48mの高さまで上がりました。
ゴムの伸びを2倍にすると打ち上げられたボールの最高点はほぼ4倍になりました。
今の実験からゴムの伸びが2倍になった時打ち上げられたボールの高さが4倍になりました。
つまりボールは4倍のエネルギーをもらったのです。
ですから弾性力による位置エネルギーも4倍であったと考える事ができるのです。
従って弾性力による位置エネルギーは伸びの2乗に比例する事が確認できました。
今回作るのはこちら!弾性エネルギーの仕事を利用した…ペットボトルに穴を開けてゴムを通します。
底はゴムが動かないように固定してあります。
これで割り箸をクルクル回すとゴムに弾性エネルギーが蓄えられて走りだします。
では熊谷君どちらの弾性エネルギーが仕事をするか勝負だよ。
いいよ。
僕の結構巻いたよ。
本当?じゃあいくよ。
用意ドン。
おっお〜。
おっあ〜。
どっちが勝った?それでは今日はここまでです。
エネルギーには重力や弾性力による位置エネルギーのほかにもいろいろな種類のエネルギーがあります。
次回は…そして位置エネルギーと運動エネルギーの関係性へとつながっていきます。
はいこれからもいろんなエネルギー学習していきましょう。
それでは皆さんさようなら。
さようなら。
エネルギーとはほかの物体に仕事をする能力の事をいいます。
重力が働いている場所で高い位置にある物体はエネルギーを持っていると考えそのエネルギーを重力による位置エネルギーといいます。
その大きさはmghで求める事ができます。
ばねが持っているエネルギーを弾性エネルギーあるいは弾性力による位置エネルギーといいます。
その大きさは2分の1kで求める事ができます。
2014/09/10(水) 14:20〜14:40
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 物理基礎「位置によって決まるエネルギー〜位置エネルギー〜」[字]
仕事をする能力のことをエネルギーという。今回は位置エネルギーについて学習する。1.仕事とエネルギー、2.重力による位置エネルギー、3.弾性力による位置エネルギー
詳細情報
番組内容
高さh〔m〕にある物体はEp=mgh〔J〕のエネルギーをもっていたと考えることができる。このエネルギーを重力による位置エネルギーという。また、x〔m〕伸びたばねに付けられた物体は Ep=kx2〔J〕のエネルギーをもっていたと考えることができる。このエネルギーを弾性力による位置エネルギーという。実験を通して学習していく。【講師】野口禎久(東京都立立川高校教諭)【司会】黒田有彩、熊谷知博
出演者
【講師】東京都立立川高等学校教諭…野口禎久,【司会】黒田有彩,熊谷知博
ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 480i(525i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:23797(0x5CF5)