島根県益田東高校野球部のエース…ストレートと多彩な変化球を操り抜群のコントロールが武器。
チームの不動のエースです。
実は蒼磨くんは先天性の難聴。
話す事にも障害があります。
チームのコミュニケーションは簡単な手話と指文字。
僕の名前は…指文字は50音を1つずつ表すもの。
チーム全員が使いこなしエースを支えてきました。
せ〜の。
しかし夏を前にエースの座が揺らぎます。
弱さを克服し本当のエースになれるのか。
チーム一丸となって甲子園を目指す最後の夏。
エースと仲間たちの絆の物語です。
島根県西部にある益田東高校。
スポーツが盛んで県外からも生徒が集まってきます。
今年も野球部に新入生が入ってきました。
まずは挨拶の練習から。
気を付け!
(一同)ありがとうございました!誰も全然分からんから…早く名前覚える。
1年生は先に先輩の名前覚える。
OK?3年生起立。
(掛け声)甲子園にこれまで3回出場した事がある益田東。
県大会では常に上位に入る実力校です。
3年生の蒼磨くんは奈良にあるろう学校から進学してきました。
練習中は白いヘルメットをかぶりいつ飛んでくるか分からないボールから頭を守っています。
練習中の会話は指文字。
監督がチームを集めて指導する時も誰かが必ず指文字で伝えます。
更に試合中とっさの場面でも対応できるようチームは合図を作っています。
例えば一塁ランナーの盗塁を防ぐ場面。
ランナーが走り出すとキャッチャーが即座に立ち上がり身振りで指示。
二塁へすぐ送球できました。
声が聞こえなくても蒼磨くんと野手は指示を出し合う事ができるのです。
チームはさまざまな工夫で蒼磨くんを支え蒼磨くんはエースとしてチームを支えています。
野球部員の大半は寮生活を送っています。
蒼磨くんと部員たちは初めは指文字ではなく手のひらや紙に字を書いてやり取りをしていました。
最初こんなんやったもんな。
あああったなあったなそういうの。
ある部員のアイデアで50音さえ覚えれば言葉を伝えられる指文字を使う事にしたのです。
たちまち全員が指文字を覚え今では何でも話せるようになりました。
みんなが指文字なしで口々に話すと蒼磨くんには分かりません。
仲のいい中林くんが答えました。
幼い頃からボールを投げる事が何よりも好きだった蒼磨くん。
ろう学校の小学部に入ると毎朝近所の子とキャッチボールをするようになりました。
中学部に上がり地元の硬式野球チームに入ります。
ピッチングの実力は認められたもののエースを任される事はほとんどありませんでした。
ほかの選手の言葉が聞こえず蒼磨くんから指示を出す事もできなかったためです。
背番号1には遠く及ばないまま3年間が終わってしまいました。
野球を続けエースになりたい。
進学先を探す中で訪れた益田東高校の雰囲気が気に入り入学を決めました。
仲間たちとコミュニケ−ションできるようになり初めてエースに選ばれたのです。
そんなエースのピッチングに陰りが見え始めました。
得意のコントロールが悪くなってきていたのです。
練習試合でもコースが甘くなり失点を重ねます。
3回で降板させられた事もありました。
しかし蒼磨くんは不調の原因を自分から突き止めようとはしませんでした。
配球もキャッチャーの古賀くんに任せきり。
6月初めの公式戦では9回ツーアウトから5点を取られ逆転負け。
打線の活躍をエースが台なしにしてしまいました。
その翌日。
蒼磨くんは寝坊して朝練をサボり学校にも遅刻しました。
放課後見かねた監督が蒼磨くんを呼び出しました。
結局お前学校を…おいおい!
(叫び声)声を振り絞り監督のノックを受けます。
ナイスキャッチ!あっ!あっ!エースの座を失う危機。
それは蒼磨くんにとってもう一つ大切なものを失うかもしれない危機でもありました。
不安を抱えながらもどうすればいいのか分からないまま夏の大会まで40日を切っていました。
ある夜。
ルームメートの中林くんと菅野くんが蒼磨くんに声をかけました。
指文字でいいよ。
手話はちょっと分からん。
お前がもっと…聞きに…ごめん。
ちょっと出られへん顔してる。
仲間たちはエースが立ち上がるのを信じていました。
翌朝グラウンドへの坂を1人上る蒼磨くんの姿がありました。
コントロールの安定に欠かせない下半身を鍛える走り込みです。
自分からアドバイスを求めに行くようにもなりました。
(掛け声)迎えた島根大会初戦。
相手は去年県大会で準優勝した強豪校です。
(場内アナウンス)「お待たせ致しました。
本日の第2試合は間もなく開始でございます」。
最後の夏が幕を開けました。
1回いきなりヒットを打たれランナーを出してしまいます。
相手はバント。
しかし素早く二塁へ送球します。
キャッチャーが立ち上がり蒼磨くんへ二塁を合図。
練習どおりの連係プレーです。
この回を無失点に抑えます。
3回コントロールが乱れ2つのデッドボール。
更にエラーで出塁を許しワンアウト三塁二塁のピンチに追い込まれてしまいます。
その時仲間たちがマウンドに集まりました。
これまで作り上げてきた自分たちのサイン。
見逃しの三振でピンチを乗り切りました。
思い切って思い切って!頑張れ頑張れ!4回相手の強力な打線から2本の長打を浴び0対2と先制されます。
それでも仲間がエースをもり立てます。
6回の攻撃では4番バッターがツーベースヒット。
1点を返します。
蒼磨くんは回を重ねるごとに調子を上げていきます。
9回を2失点。
投げきりました。
その裏1点を追う益田東。
ヒットでランナーを進めツーアウト三塁一塁のチャンスに持ち込みます。
打席に立ったのはルームメートの中林くん。
(歓声)初戦敗退。
早すぎる夏の終わりでした。
翌日。
グラウンドではもう来年に向けて新チームの練習が始まりました。
野球部を引退する蒼磨くんに監督は言葉をかけました。
夏が終わっても蒼磨くんには終わらないものがあります。
2014/08/14(木) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「ぼくたちのサイン〜難聴のエースと仲間たち 最後の夏〜」[字]
島根県にある益田東高校野球部の投手・廣中蒼磨くんは生まれつきの難聴。部員全員が50音の指文字を覚えて、彼を支えてきた。最後の夏、エースと仲間たちの強い絆の物語。
詳細情報
番組内容
島根県にある益田東高校野球部は、甲子園に3回出場経験がある強豪チーム。抜群のコントロールを武器にする不動のエースが廣中蒼磨くんだ。廣中くんは生まれつきの難聴。部員全員が50音の指文字を覚え、様々なサインを作るなどして彼を支えてきた。しかし夏の大会を前に、エースの座を脅かされる事態が。そこには耳が聞こえないことを言い訳にする廣中くんの甘さがあった。甲子園を目指す最後の夏、エースと仲間たちの絆の物語。
出演者
【語り】森川葵
ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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