とともに、悲惨な体験を風化させてはいけないと話していました。
ねえあなた!どうした?これ…。
(男性)人の…骨か!?
(女性)あーっ!・
(パトカーのサイレン)
(橋口)警部!
(狩矢)ご苦労さん。
(野村)ご苦労さまです。
(狩矢)これは時間たってんな…。
(野村)はい。
(狩矢)性別は?
(野村)おそらく女性かと。
それと一緒にこんなものが埋まってました。
(狩矢)指輪か?
(野村)はい。
トンボの模様が施されています。
トンボ?
(女性)《・「夕焼小焼の赤とんぼ」》《・「負われて見たのはいつの日か」》
(明子)皆さまこんばんは。
また皆さまにお目にかかることができました。
心うれしいかぎりでございます。
当石原葬儀社を長くご愛顧いただきましたこと心より感謝申し上げます。
さて皆さまはご自分の葬儀の際にどのような遺影が飾られるか不安に思われたことはありませんか?そこで最近お元気なうちに写真館でご自身の遺影を撮っておく方が増えてまいりました。
はいお待たせいたしました。
それではにっこりとお願いします。
(女性)はい。
(カメラマン)いい?ちょっとそれちょっと笑い過ぎでございます。
ちょっと抑えていただいた方がよろしいございますんで。
何しろご遺影でございますから。
笑え言うたや〜ん。
(カメラマン)そんなこと申しません。
にっこりと申した。
にっこりと。
(女性)にっこり。
(カメラマン)はいそれはへらへら笑いでございますんでもう少し自然な笑顔でお願いします。
誰がへらへらしてんのよ。
自然な笑いでしょう?見本見せてどないして笑うの?
(カメラマン)見本?私がカメラマンになるさかいほらこっちこっちこっち来て。
ほらほらはい!はいはい。
(カメラマン)はい…。
(女性)じゃあにっこり笑って〜。
はいちょっと上目遣いに。
ウインクしてみましょうか。
あ〜カワイイわね!はいいいですね。
じゃあ今度は四つんばいになって〜。
よ…四つんばい!?
(女性)はいはい。
四つんばいになって〜。
(カメラマン)はいはい…。
でちょっと髪をかき上げて。
(カメラマン)髪を…。
はいでちょっと色っぽくセクシーに。
セクシーに…。
(女性)はいいいですよ。
お尻も振ってみましょう。
(カメラマン)お尻も…。
(女性)はいいいですね〜。
(カメラマン)ちょっと待ってえな。
こんなん遺影か?フゥ〜ご遺影用の写真となるとやはりなかなか難しいものがあるようですね。
そもそも葬儀というものは故人とご遺族との永遠の絆を契ると同時に故人の素晴らしい人生をたたえ人生の成就をお祝いするものだといわれており赤い霊きゅう車にもそういった意味があるそうです。
そんな葬儀を執り行う際にはぜひ当石原葬儀社にお申し付けくださいませ。
心を込めてお手伝いさせていただきます。
(千草)ただいま〜。
(良恵)おかえんなさい。
(千草)老人会に石原葬儀社のチラシ配ってきました。
ありがとう。
(良恵)ご苦労さん。
ねえねえご褒美にケーキあるえ。
でも勤務中ですので。
(良恵)勤務中やから食べんのやないの。
元気回復には甘いもんが一番。
(良恵)そう食べる?あっ明子さん千草さんがケーキ食べたい言わはるさかいにうちも一緒に頂きますわ。
私?どうぞ。
(良恵)さあ。
(千草・良恵)おかえりなさい。
(秋山)ただいま。
(秋山)いや〜困ったことになったわいや。
ん?何が困ったんですか?いやあの明子はん私のあの古い友人のおばあちゃんが100歳になったんですわ。
すごーい。
おめでたいわね。
その…お医者さんがあんた残り少ないねんから自分の好きな物を食べなさいって。
で好きなことをしなさいってこう言うてもうたんやって。
告知されたってことね。
うん。
(良恵)ほんで何が困ったんです?そのおばあさん急に「私が死んだらパーッと明るく祝うてちょうだいよ」「そして赤い霊きゅう車に乗せてください」ってこうきたんや。
赤い霊きゅう車?そんなのあるんですか?まあもともと朱色は極楽浄土の色だから霊きゅう車にもふさわしいだろうって…。
確か赤い霊きゅう車を造ったところがあるって聞いたことはあるけど…今もあるのかしら?けど赤い霊きゅう車って何でそんな面倒なこと断らへんかったんです?もう秋山さんまた調子に乗ってはいかしこまりました。
私にお任せください。
何てったってわしは一級葬祭…。
(千草)ディレクター!ですよって言わはったんでしょ?えっ!?あっ図星や。
(千草)ウフフ!千草!お前人をこけにしやがって。
すいませんそんなつもりじゃ…。
良恵お前一緒にこれお前やらしたやろ?そうです。
あら!?今日は何やなすっかり認めよったな。
じゃあ捜してみましょうか?何?赤い霊きゅう車。
えっ?100歳まで生きてご本人が葬儀はお祝いにしてほしいっておっしゃるなら石原葬儀社としては全力でそのご要望にお応えすべきなんじゃないの?おっしゃるとおりです。
さすが明子はんや!はい。
(ノック)
(民子)ごめんください。
民子さん!?
(民子)秋山さま。
はい。
お久しゅうございます。
はい。
民子でございます。
あっ秋山でございます。
どうもどうも。
民子さんどうなさったんですか?あ…実は急なんですけどすぐ千草さんに龍野へいらしていただけないかという大奥さまからのお言付けなんです。
龍野へですか?
(民子)はい。
あの…もしよろしければ明子さんもご一緒にいらしていただけないでしょうか?表に車を待たせてありますので。
私も?何かあったんですか?それは…あちらで大奥さまがお話しになると存じます。
分かりました。
千草さんすぐ支度して。
はい。
秋山さん良恵さんあとお願いします。
はいかしこまりました。
(良恵)はい。
秋山さまありがとうございます。
あっど…どういたしまして。
それから…。
(良恵)はい。
えっと…あっ…。
アハハ!ありがとうございます。
(良恵)はい。
うちだけ覚えてあらへん。
(民子)あっどうぞ。
すいません。
(民子)こちらでございます。
ありがとうございます。
狩矢さん!
(狩矢)明子さん。
狩矢さんまでどうしてここに?
(狩矢)それがですねちょっと難しいことになったんでこれから皆さんに詳しいことはお話しします。
中へ。
あっはい。
(民子)こちらに。
(紅子)ご苦労さまです。
皆さんお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
今日は京都府警の狩矢警部からお話ししたいことがあるというので集まっていただきました。
狩矢さんお願いいたします。
京都府警の狩矢と申します。
では早速本題に入らせていただきます。
先日京都の嵯峨野で白骨死体が発見されました。
白骨死体!?
(狩矢)そしてその白骨死体を調べた結果…。
野村君。
(野村)はい。
性別は女性年齢は20歳から40歳。
死後経過時間は約20年前後。
(橋口)え〜身長体重歯の治療痕などによる身元確認に関しましては現在調査中です。
そしてその白骨死体と一緒に指輪が発見されたんです。
(野村)この指輪です。
(狩矢)ご覧のとおりこの指輪はトンボをモチーフとした物です。
そして…。
内側に「TtoA」と刻印されていました。
(狩矢)龍野のシンボルマークは赤トンボということから龍野の関係者に事情を聴取した結果この「TtoA」と刻印された指輪は自分が作った物だという方がいました。
渋川太郎さん間違いありませんね?
(渋川)ああ俺が結婚したときにあかねに贈った結婚指輪だ。
渋川太郎さんの「T」とあかねさんの「A」です。
あかねさん…。
お母さんの?
(雪子)じゃあ姉さんの白骨なの?
(狩矢)現在DNA鑑定を行っているところなのでその結果が出れば判明するかと思いますが…。
(野村)骨自体が古いものなんで時間がかかると思います。
だって姉さんの指輪も一緒に発見されたんでしょ?だったら姉さんじゃないの?まったくもう。
失踪騒ぎを起こして散々迷惑掛けた揚げ句に今度は白骨?ホント厄介な人ね〜。
そしてこの白骨死体は殺害されたものと思われます。
殺害?
(野村)肋骨に鋭利な刃物で切りつけられたと思われる傷が残っておりました。
それが致命傷になったと思われます。
(宗助)お前たちか…。
お前たち余木派の誰かがあかねさん殺したんだ。
(公一郎)バカを言うな!
(初音)雪子さんだって怪しいわよね。
あかねさんと仲悪かったし。
(雪子)何ですって!おやめなさい。
(狩矢)去年おととしと龍野の騎馬武者行列で亡くなった三山陽介さんと東山栄治さんの事件ですが二条路信也さん殺害容疑で逮捕した盛田和夫とは無関係であることが判明しました。
つまり二条路信也さん殺害は盛田和夫が犯人ですがその前の2人に関しては他に犯人がいるということです。
(狩矢)現在そちらの事件も兵庫県警とたつの署そして京都府警も協力して捜査を進めておりますのでどうぞ皆さんにも捜査の協力をお願いできたらと思っております。
(千草)渋川さん!何だ?あかねさんのこと何か知ってるんじゃないですか?何が?
(千草)だって渋川さんあかねさんがいなくなる直前まで一緒にいたんですよね?千草さん!
(渋川)どういう意味だ?
(千草)そのころあかねさんはあなたに暴力を振るわれていたとか。
他にも女の人が何人もいたっていう噂を…。
(渋川)だから俺があかねを殺したっていうのか?ふざけんな!私はあかねさんの娘です。
聞く権利はあります!俺に内緒で産んだ娘だろ。
それをとぼけてのうのうと俺と結婚して失踪。
揚げ句にあのざまだ。
そんな女知るか。
あの女の名前を聞くだけでも不愉快だ!渋川さん!千草さん!落ち着こうねっ。
まだあかねさんだって決まったわけじゃないんだし。
(紅子)ハァ…あかねにはいつかきっと会えると信じてきたのに。
(余木)まだ結果が出たわけじゃありません。
きっとどこかで元気でいると信じましょう。
もしそうなら…。
ハァ…間に合ってほしい。
うっ…あっ…。
(千草)母に会えるかもしれないって…。
かすかでも…その希望を持って頑張ろうって決めたのに…。
(春彦)千草さんどう?白骨死体がお母さんかもしれなくて相当ショックなんじゃないの?かなりね〜。
渋川さんがあかねさんに贈った指輪もあったわけだし。
でもまっ決まったわけじゃないし。
そうだね。
今回は?うん?どのくらい京都にいられるの?こっちでね集中講義やることになったから1週間ぐらいいられるよ。
やった〜。
あ〜そうだ。
騎馬武者行列の事件なんだけど去年とおととしの事件については盛田和夫の犯行じゃないことが分かったらしいわ。
っていうことは犯人はまだどっかにいるってこと?そういうこと。
あの赤トンボの折り紙が気になるわよね〜。
信也君のときもその前の2人のときも…。
(陽介のうめき声)
(栄治のうめき声)
(信也のうめき声)しかも今度の白骨死体のそばにはトンボがモチーフの指輪でしょ。
何かのメッセージかもしれないな。
うん…。
おはようございます!千草さん!?帰ってきてたの?2〜3日龍野にいなさいって言ったのに。
実家にいてもうじうじ余計なこと考えて落ち込んじゃうだけですし早く葬儀社の仕事もしたいので帰ってきちゃいました。
そっか。
仕事仕事!おはようございます!おはよう!
(良恵)おはようございます。
明子はん手掛かり見つけましたで。
赤い霊きゅう車!ホント?ええ富山の方でねその車をね見つけたっていう人が何人か出てきましたんですわ。
赤い霊きゅう車。
富山?はいそれで富山の葬儀社の方に片っ端から今電話を入れたんです。
分かったの?分かりません。
まあそういうことでもう電話ではらちが明かんな〜ちゅうことになりましてね。
みんなで富山へ乗り込んで片っ端から聞き込みしたらどうか思うんですけど。
あ〜そうね。
千草さん気晴らしにあなたも一緒に行きましょう。
はい!よっしゃそうしましょ。
そうしましょう!富山やったらおいしいもんいっぱいありますしな〜。
あかんあかんあんたはお一人で留守番。
留守番!?留守番。
なあちょっとお前なコピー3つしてくれ。
富山の葬儀社や仏具屋さんのリストですね。
そういうこっちゃ!なっこうなったら富山へ行ってな赤い霊きゅう車絶対つかまえてくんで。
なっ気合入れろお前も一緒にほれ!
(秋山・千草)エイエイオー!いやあかんあのこの辺でなもう3人ばらばらになってな捜してみよう。
そうねOK。
(千草)はい。
赤い霊きゅう車をご覧になったことありますか?
(店員)赤ですか?ええ。
(店員)いや見たことないですね。
あ〜そうですか。
(千草)おばあちゃん大丈夫ですか?荷物持ちますね。
(女性)あんがと。
(千草)ねえおばあちゃん赤い霊きゅう車って見たことないですか?赤い霊きゅう車?
(女性)知らんな〜。
(住職)赤い霊きゅう車?知らんね〜。
あっそうどすか。
えらいどうも…失礼します。
どうもありがとうございました。
(店員)じゃ気を付けて。
(洋子)蜃気楼を見たいならここじゃなくて魚津の方へ行かないと見られないわよ。
蜃気楼?違った?それはごめんなさい。
でも蜃気楼みたいなものだったのかもしれません。
そう…。
じゃあこっち向いて。
(千草)え?せーので叫ぶわよ。
叫ぶ?
(洋子)もちろん!バカヤロー!…ってハハハハ!恥ずかしい?でも元気出るわよ。
ありがとうございます。
千草さーん!はーい!分かったみたいよ行きましょう。
今行きます!ありがとうございました。
頑張ってね。
(千草)はい。
その住所ならすぐこの先ですね。
急ぎましょう。
ど…どうしました?良恵さん!?良恵!お前こんなとこで何してんねん?誰のことかしら?お前のことやないかい!店で留守番しとけって言うたやろ!うーんそうかてうちかて赤い霊きゅう車見たいもん。
秋山さん言うたらうちだけのけ者にして。
あ〜!ああ〜!!こんなとこで泣くな!ごめんごめんごめん良恵さん。
ねっ一緒に行こう。
(良恵)はーい。
あーあすこや。
ほれ。
あの「菊池葬儀社」って書いてある。
あったあった。
いよいよ赤い霊きゅう車ね。
(良恵)赤い霊きゅう車。
へえ〜。
(菊池)赤い霊きゅう車。
あれ売ってもうたわ。
売った?あ痛〜。
どちらへ売られたんでしょうか?あっ鹿児島の方の葬儀社やけど。
(秋山・良恵)鹿児島!?
(菊池)うん。
でもそれからまた釧路の方の葬儀社が買い取ったとか。
(秋山・良恵)釧路!?
(菊池)うん。
それからまた今度は…。
(良恵)どこです?ごめん。
分かりませんわ。
分かりませんて。
(良恵)分かりませんてえ〜?そうですか。
あっ社長ちょっといいですか?うん。
これ赤トンボですよね?うん赤トンボやけど。
納棺のときに棺に赤トンボの折り紙をそっと忍ばせる納棺師がいるんですよ。
納棺師?
(菊池)ええ。
これがなかなかの腕の持ち主でその上これが実にまたべっぴんなんですよ。
フフフ…。
えっべっぴんって…女性の方なんですか?ええそうです。
女性の納棺師ってのはまあ珍しいわよね。
お名前は?うん。
山田洋子さんちゅうんやけど。
山田洋子さん。
あの…連絡先を教えていただくっていうことはできますか?うん…あっでもね今日ちょうどその先で納棺式やっとるさかい本人にお会いになるんだったら今からちょうど行ってみたらどうや。
(洋子)これより納棺の儀を執り行わさせていただきます。
さっきの人よね?ええ。
あの納棺師さんすごいですね。
うん見事なもんや。
気迫も尋常やないな。
おふたをお願いいたします。
素晴らしい納棺の儀式でした。
ありがとうございます。
私京都で葬儀社をやっております石原明子と申します。
初めまして。
菊池葬儀社さんから女性の納棺師の方がいらっしゃると伺ってそれはもうぜひ拝見させていただきたく社員と一緒に。
素晴らしかったです。
いや〜見事な腕前どしたな。
この秋山見ほれておりました。
いいえ。
まだまだ未熟者です。
あら…。
先ほどはありがとうございました。
あなたも葬儀社の方だったの?はい。
あの…最後にお棺に赤トンボの折り紙を入れてらっしゃいましたがあれにはどういった意味が…?蜻蛉という漢字には「全てが美しい」という意味があるそうなんです。
それで故人さまに「素晴らしい人生を終えて今とても美しいですよ」というメッセージのつもりで赤トンボを。
そうでしたか。
すてきですね。
ありがとうございます。
失礼ですがご出身は?出身…ですか?ええ。
赤トンボの折り紙で有名な所がありましてもしかしたらそちらかなと思って。
私はずっと北の方ですが。
北の方…。
ではこれで失礼いたします。
お手間を取らせまして申し訳ありません。
千草さんちゃんとお礼申し上げて。
はい。
ありがとうございました。
何か…。
あっ。
いえ別に。
頑張ってね。
はい!狩矢さん。
(狩矢)あっ明子さん。
呼び出してすみません。
例の白骨ですがDNA鑑定の結果が出ました。
結果が?それで…。
白骨死体はあかねさんではありませんでした。
違った。
(狩矢)白骨の身元に関しては今歯の治療痕などをもとに調べてるんですが。
(橋口)あっそれと一緒に埋まっていたあかねさんの結婚指輪の件なんですが今当時の関係者を聞き込みしています。
あー不謹慎かもしれないけどあかねさんじゃなかった。
よかった。
(千草)はい。
でも母の指輪が一緒にあったということはその白骨になった人は母が…。
駄目駄目。
そういうことは考えちゃ駄目!とにかくこれであかねさんが生きてるってことが分かったわけだから希望を持ちましょう。
はい。
こんにちは。
ここに来ればお会いできるかなと思って。
私に?はい。
大変ぶしつけなことを申し上げます。
山田洋子さん。
もしかして本当のお名前は二条路あかねさんではありませんか?先日私と一緒にいた沢木千草さんは23年前まだ生まれたばかりの赤ん坊のころに兵庫県龍野の駐在所に捨てられていたんです。
それが先日千草さんが二条路あかねさんのお嬢さんであることが分かりました。
千草さんうちの葬儀社に面接に来たときに「人生のけじめの出来事に興味がある」「その神聖な儀式に携わっていきたい」「だから葬儀社に入りたいんだ」ってそう言ったんです。
そしてあなたの納棺の儀を拝見して最後に赤トンボを入れられたときもしかしたらあなたがあかねさんなんじゃないかって。
私胸が熱くなってしまって。
もしそうだとしたら感動的ですよね?母と子が生まれてすぐに別れてもこんなふうにつながってるなんて。
千草さんあかねさんと会える日を心待ちにしています。
たった今も。
あかねさんですね?その手に握ってらっしゃるのはカメオですよね。
それとおんなじカメオ千草さんも肌身離さずずっと大事に持ってます。
どんな事情があるか分かりませんがもう名乗られてもいいんじゃありませんか?あかねさん。
(あかね)できません。
それは…できません。
(民子)大奥さま!大奥さま!
(紅子)どうしたの?民子さんそんなに慌てて。
今明子さんから連絡がありましてあかねお嬢さまらしき人が見つかったそうです。
あかねが?
(沢木)失礼します。
余木先生…。
さっき紅子さんから連絡をもらった。
そうですか。
(余木)沢木…。
お前に話しておかなければならないときが来たようだ。
えっ?あかねはどんな様子でしたか?元気そうでしたか?はい。
納棺師なんですって?はい。
納棺の儀に詳しいうちの専務がとても素晴らしい納棺師だと言ってました。
そうですか。
それで千草はそのこと…。
まだ言ってません。
あかねさんには名乗り出られない何か深い事情がおありのようだったので。
そう。
でも明子さん。
はい。
あかねが生きていたとすると…。
指輪のことですね?あの子がそんなことするはずはないと思いますけどもし…もしそのときは明子さん千草を頼みますよ。
分かりました。
こんにちは。
(良恵)いらっしゃいあっ狩矢警部。
あっちょっと待ってください。
あの警察の方が何でお越しになったんですか?秋山さん。
はい。
いつ見てもお若いですな〜。
おおきに。
明子さんとお話がありましてね。
えっ?うちの社長警察にお世話になるようなことなさったんですか?フフフそんなことあるわけないでしょ。
だったらうちに営業妨害にお越しになったっちゅうわけで…。
秋山さんそんな意地悪なこと言っちゃ駄目…。
秋山さん。
はいはい。
すぐに戻りますから。
はい。
ちょっと待って…ちょっと待ってください。
うちの社長を刑事にスカウトに来られたんやったらわて絶対に許しまへんで。
(狩矢)おー怖。
あっ秋山さん。
はい。
一級葬祭ディレクターでしょ?はい!そうでございます。
カッコイイ〜!アハッおおきに。
ハハハハ…。
笑ってる場合とちゃうねん。
こら…。
(狩矢)実は例の白骨死体の身元が分かりました。
身元が?
(狩矢)小池美砂子さん。
当時24歳。
龍野在住の女性でした。
龍野の人?ええ。
鶴千代という名の芸者だったそうです。
芸者さん?それで失踪当時に捜索願が出てるんですがそれを見ていたら妙なことが分かりましてね。
妙なこと?これが小池美砂子さんの捜索願なんですが日付がですね「平成2年5月26日」なんですよ。
平成2年…22年前。
そうなんです。
それで私もふっと思ってあかねさんが失踪した日を調べたんですが何とまったく同じ日だったんです。
同じ日?
(狩矢)ええ。
ねえ明子さんこの龍野へいらしてて小池美砂子という女性の名前を聞かれたことはありませんかね。
噂でも何でもいいんですけど。
いえ…初めて聞く名前です。
その捜索願は出されたのはご家族ですか?いえ。
小池美砂子には家族はいないんで芸者屋の女将が出してます。
そうですか。
狩矢さん。
(狩矢)何でしょう?あの…富山に山田洋子さんって納棺師の女性がいらっしゃるんです。
調べていただけますか?納棺師?ねえそれホントにあかねさんだったの?うん。
間違いない。
そうか。
でも白骨が龍野の芸者さんでそばに落っこってたのがあかねさんの指輪だとしたら…。
あかねさんの容疑が深まるわね。
うん。
あ〜千草さんに何て言えばいいのかなあ。
そうだよな。
私あした龍野に行ってくる。
えっ?当時あかねさんと美砂子さんにどんな関係があったのか調べてみるわ。
じゃあ僕も行く?いいの?大学の講義は?あした休み。
助かる〜。
千草さん。
すみません。
今日お休みをもらいました。
どうしてここに?昨日明子さんが狩矢さんと話してるの聞いちゃったんです。
(千草)ここ元芸者置屋の女将さんのお店ですよね?私もあかねさんのこと知りたいんです。
千草さん。
調べてるといろんな噂も出てくる。
その都度動揺するよりはっきり分かったことだけ知った方がいいんじゃない?でも知りたいんです!あかねさんのこと何でも知りたいんです!お願いします。
一緒に聞かせてください。
分かったわ。
一緒に聞きましょう。
はい。
(智恵子)新谷智恵子は私ですが。
以前龍野芸者の置屋の女将さんをやってらしたって伺ったんですが。
(智恵子)ええそうですけど。
小池美砂子さんを覚えてらっしゃいますか?鶴千代さんです。
(智恵子)ああそのこと。
昨日も刑事さんが来はって白骨で見つかったそうな…。
はい。
あの…22年前に行方不明になったと聞いたんですがその訳か何かご存じですか?
(智恵子)そりゃもう渋川さんのことですわ。
渋川さん?鶴千代さん渋川さんにすっかりほれてしもうて「結婚して芸者辞める」てうちに言うてはったんです。
結婚…。
渋川さんと?ええ。
でも渋川さん二条路家のお嬢さんのあかねさんと結婚してしまはってひどくショック受けてはって。
それから間なしでしたわ。
彼女が突然行方不明になったんは。
そうでしたか。
やっぱりあかねさんが美砂子さんを殺した犯人なんでしょうか。
千草さん…。
だから逃げたんでしょうか。
駄目よ。
そんなふうに思っちゃ。
あっごめん。
ごめんね。
狩矢さん。
はいもしもし。
富山の山田洋子さんという納棺師ですがね…。
分かりました。
ありがとうございました。
・
(雪子)姉さん。
雪子。
(雪子)久しぶり。
元気そうね。
(雪子)元気じゃなきゃ会社なんかやっていけないわよ。
二条路醤油どんどん大きくなって素晴らしいわ。
雪子のおかげね。
(雪子)姉さんには関係ないでしょ。
失踪したんなら見つからないでほしかったわね。
この20年私が二条路醤油を支えてきたんですからね。
いまさら見つかったんで「帰ります」「二条路家の長女です」なんてバカなことはやめてよね。
そんなつもりないわ。
帰ってくるつもりなら…。
覚悟してもらうから。
(あかね)覚悟?千草だって絶対に二条路家に入れないからね。
あの子には一生捨て子でいてもらうわ。
その方がお似合いなのよ。
雪子!雪子なんてなれなれしく呼ばないでよ!・
(パトカーのサイレン)
(狩矢)京都府警捜査一課の狩矢です。
(橋口)橋口です。
(小宮山)ご苦労さまです。
確認していただけますか?二条路醤油社長二条路雪子の名刺を持っていたんですが。
間違いありませんな。
二条路雪子です。
(小宮山)そうですか。
ちょうど龍野の事件で狩矢警部が捜査なさっていたので連絡させていただいたんですが。
これはやはりそちらの事件と関連が?赤トンボ?赤トンボ?こんにちは。
(橋口)こんにちは。
こんにちは。
(狩矢)あの失礼ですがお名前を。
山田洋子です。
それは納棺師をなさるときのお名前ですね。
本当のお名前は二条路あかねさんではありませんか?そうですね?京都府警の狩矢と申します。
(橋口)橋口です。
(狩矢)先ほど魚津の漁港であなたの妹雪子さんの遺体が発見されました。
雪子が!?首を絞められて殺害されてました。
殺害…。
失礼ですが昨日の夕方どちらへいらっしゃいましたか?あなたが雪子さんと会っているのを見たという目撃者がいるんですが。
(あかね)会ってましたけど。
(橋口)会った?そうですか。
では署の方で詳しい事情を聞かせていただけますね?
(橋口)どうぞ。
(千草)お母さん!無事でよかったです。
生きててくれて…。
よかったです。
こんな人がお母さんだったらいいなって思った人が…。
ホントにお母さんでした。
いつか必ず海に向かって叫びたいです。
バカヤローじゃなくて…。
ありがとうってお母さんと一緒に。
(小宮山)ご苦労さまでした。
雪子さんのことで何か新しい情報が入りましたらすぐに連絡させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
あかね。
あかねなのね?お母さん。
おかえりなさい。
申し訳ありませんでした。
謝るのは私の方。
私が悪かったの。
私のせいであんたにこんな苦労を掛けてしまって。
違う私が…。
(狩矢)申し訳ありませんがこれから少し取り調べがあるものですから。
取り調べ?
(狩矢)詳しいことはまた後ほど。
橋口。
こちらへ。
(あかね)ごめんなさいお母さん。
(狩矢)雪子さんと会って何をお話ししてたんですか?現場にこの赤トンボの折り紙が置いてありました。
あなた納棺のときにこの赤トンボと同じ折り紙を棺の中に入れますよね?先日嵯峨野で白骨死体が見つかりました。
身元は小池美砂子さんと判明しそしてそこにあなたの結婚指輪が埋まっていた。
当時美砂子さんはあなたが結婚していた渋川太郎さんと深い関係にあった。
渋川さんを巡って美砂子さんと争いになったということはありませんか?
(狩矢)雪子さんはそのことご存じだったんでしょうか?
(狩矢)困りましたな。
話していただかないと状況が不利になりますよ。
お父さん!お母さんに会ったの!知ってたの?
(沢木)ああ。
じゃあお母さんが捕まったことは?えっ助けないの!?お母さん雪子さんを殺したりするわけないでしょ!?分かってる。
ねえだったら何とかしてよ!お父さんが愛した人でしょ!?捜査は富山県警と狩矢警部がやる。
じゃあいい。
私がお母さんの無実を証明する。
よせ。
(千草)どうしてよ。
それはお前がやることじゃない。
だって…。
(沢木)余計なことはするな。
信じて待つんだ。
お前の母親だろう。
長女は失踪次女はこんなことになって…。
ハァ母親失格ね。
赤トンボですか。
ええ。
すてきでしょ。
はい。
一番のお気に入りでね。
これだけは私が死んでも娘たちの形見にしたくはないの。
お棺に一緒に入れてちょうだいって民子さんに頼んであるのよ。
でも全てこの赤トンボがいけなかったのかしら。
龍野の赤トンボが。
孫や娘より長生きするなんて…。
こんなつらいことはないわ。
ああ…。
ううっ…。
ハァ…ハァ…。
(民子)大奥さまこんなに龍野のために尽くしているのにどうしてこんなことばかり続くんでしょう。
若いときからずっと苦労なさっていてまだこんな試練を…。
お若いときから?大奥さま親に無理やりお金持ちの御曹司と結婚させられたんです。
そうなんですか。
(民子)それがまたひどい旦那さまでしてね。
大奥さまが一生懸命二条路醤油を立て直している裏でもうけたお金を使い放題。
旦那さまが亡くなってそんな苦労から少しは解放されたと思ったら今度はこの騒ぎですからね。
いったいどこに神様仏様がいるのか。
あの…雪子さんのことなんですが。
(民子)はい。
あの日何か変わったことありませんでしたか?それが…。
(雪子)《姉さんなんかに絶対渡さないから》《冗談じゃないわよ》「渡さない」?二条路醤油のことですか?ええ。
あかねさんが帰ってらしたら長女ですしやがて二条路家の当主になられると思うんですよね。
雪子さんそれが面白くなかったんじゃないんでしょうか。
民子さん。
紅子さんはどこかお体の具合がお悪いんですか?だいぶつらそうでしたよね。
(民子)決して誰にも言うなとは言われているんですが…。
もうお医者さまには…。
あと少しかもしれないって。
手の施しようがないんだそうです。
(民子)あの秋山さまにもくれぐれもお体に気を付けるよう民子がそう申し上げていたとお伝え願いますか?
(くしゃみ)ハァまた誰かわしの噂してるな。
民子さんでしょきっと。
えっ?世界中探したかて秋山さんの噂する人なんて民子さんしかいはらへんし。
お前いちいちなとげのある話をするな。
はい。
そんなことよりここに最近来たかわいらしい顔の長い目の玉の大きいあの…。
千草さん。
千草。
あの子はどうでもええわい。
うちの明子はんや。
社長はんやで。
龍野に行ったっきりやないかい。
仕事どないしはんのや。
仕事はどうするっちゅうのやね。
もう人に文句言う前に秋山さんは赤い霊きゅう車捜さなあかんでしょ。
そやねんそやねん。
捜してんねや。
一生懸命…お前かて捜さなあかんやないか。
う〜んけどこんだけあちこちに電話して捜し回って見つからへんのやさかいにもう赤い霊きゅう車はこの世にはないん違いますか?お前な勝手にそういうこと決めるな。
なっ?お客さんのご要望を死ぬまで一生懸命頑張ってかなえるのが石原葬儀社のモットーやないかい。
ちょっと待て。
食べる前になそのまんじゅう…あ〜もう食ってまいよった。
遅かった。
千草さん大丈夫かな。
うんお父さんと一緒だから。
でもつらいわよね。
千草さんのためにもあかねさんの無実が証明できればいいんだけど。
私ね春彦さん。
たとえ最悪の結果になっても千草さんには真実を知らせてあげたいの。
そうだね。
(店員)お待たせしました。
ああどうも。
(店員)失礼します。
(店員)お待たせしました。
ありがとうございます。
頂こうか。
うん。
雪子さんはあかねさんに龍野に戻っても二条路醤油は継がせないってそれを言いに行ったのよねきっと。
たぶんね。
でもあかねさんは納棺師として立派に生きてるわけだし二条路家の当主になろうとか二条路醤油の社長になろうって望んでたわけじゃないと思う。
私もそう思うの。
でも雪子さん何で赤トンボ握ってたんだろう。
つまり龍野武者行列で亡くなった…。
(陽介のうめき声)三山陽介さんと東山栄治さん。
この2つの事件とも関連があるってことじゃない?雪子さんの殺害とその前の騎馬武者の事件と一連の事件ってこと?なぜ3人ともが赤トンボを持たされていたのかって考えるとそうならない?ねえ前に渡した本持ってる?赤トンボの本?そう。
ちょっと貸して。
ヨーロッパじゃね赤トンボを…これこれ魔女の使いっていうんだって。
魔女の使い?嘘をつくと赤トンボの針で口を縫っちゃうぞってことらしい。
怖い。
つまり。
あっ。
口封じ?そういうこと。
それじゃあ三山陽介さんと東山栄治さんは…。
口封じのために殺された。
雪子さんも何かの口封じで…。
殺されたのかもしれない。
ねえだったら2年前の事件からもう一度調べてみない?それがあかねさんと千草さんを助ける一番の近道じゃないかしら?
(公一郎)三山陽介?はい。
おととし騎馬武者行列で亡くなった余木醤油さんで働いてらしたんですよね?
(公一郎)ええ。
後々は幹部にするつもりで留学までさして育ててたんですが。
留学?以前会長が招待されてたイギリスの酒造会社とパイプができてたんで研修で行かせてたんですがね。
イギリスですか。
でもあれからあいつおかしくなったんだよな。
おかしくなったって?真面目だけが取りえのようなやつだったんですがイギリスから帰ったら平気で仕事サボって働かなくなりましてね。
一度叱ったら「もう仕事なんてしなくていいんだ」なんて言いだしましてね。
「もう仕事しなくていい」?何かあったんですか?イギリスで。
さあ。
失礼します。
あっどうも。
栄治さんのことなんですが去年の騎馬武者行列のときに何か変わったことありませんでしたか?
(宗助)前の年に親しかった三山陽介が死んだ後あいつ「あれは事故じゃない。
殺されたんだ」と言って色々調べてたみたいなんです。
殺された?
(宗助)そのころですかね。
あいつ宛てに外国から小包が届いたんです。
外国から?それを待っていたようでその小包を持って慌てて自分の部屋に入っていったんですが。
あのそれはどんな物だったか分かりますか?それが…。
(宗助)《おい栄治》《お前に外国から小包来てるぞ。
何だ?これ》
(栄治)《何でもないよ》
(宗助)《おい!》外国ってどこの国か分かりますか?「UK」と書いてありましたから。
イギリスですよね。
今思えばそのころから仕事をサボるようになりまして私と何度もケンカするようになりましてね。
ついには「こんな仕事辞めてやる」って言いだしまして。
春彦さんどうだった?狩矢さんに聞いて東山栄治がどこから何を取り寄せたか分かった。
どこから?イギリス。
「BURTONTIMES」っていう地方新聞。
新聞?で今その新聞社に同じものをメールで送ってくれるようにファクスしてきた。
さすが春彦さん。
素早い。
それが来れば何か分かるかもしれないじゃない。
そうね。
東山栄治さんが三山陽介さんの事件を調べていて三山さんの研修先のイギリスから新聞を取り寄せた。
ということは…。
その新聞に何かが載ってんじゃない?それじゃあ東山さんはその新聞を見たことが原因で殺されたってこと?かもしれない。
そして三山さんはイギリスでその新聞を見てしまったから殺された。
ねえ。
みんなイギリスじゃない?余木先生なら何か知ってるかも。
三山陽介ですか?はい。
イギリスに研修に行かせていたそうですね。
それが何か?あちらで何か変わったことがあったという話は聞かれませんでしたか?変わったこと?特に聞いてませんが。
ではあの東山栄治さんがイギリスのことについて何か聞きに来たことありませんか?ありませんがなぜですか?東山さんがどうも三山さんのイギリス時代の何かを調べていたようなんです。
ほうそうなんですか。
いや申し訳ないがこれから人に会う約束があるんで。
あっごめんなさい。
突然お邪魔して…。
その懐中時計おしゃれですね。
これ気に入ってましてね。
私が死んだら棺に入れてくれっておいっ子に頼んであるんですよ。
《赤トンボですか》《一番のお気に入りでね》《これだけは私が死んでも娘たちの形見にしたくはないの》《お棺に一緒に入れてちょうだいって民子さんに頼んであるのよ》同じトンボに同じせりふ?そうなの。
偶然にしては引っ掛かるわ。
ということは?春彦さん。
もしかして余木先生と紅子さんって…。
狩矢さん。
無実が証明されたってことですよね?いいえ。
証拠不十分で釈放です。
じゃあまだ…。
ええ。
あの居場所ははっきりさせといていただけますね?はい。
あかねさん。
一度千草さんにお母さんとして会ってあげてほしいんです。
私はあの子を捨てた女です。
いまさら母親だなんて。
千草さんはあなたの事情を彼女なりに理解しています。
あなたに千草って呼ばれたいんです。
ずっとそう思って生きてきたんです。
ありがとう明子さん。
でも…。
・
(千草)お母さん!私もう子供じゃありません。
お母さんが龍野を出た事情も分かるし私を捨てた事情だって理解できます。
でもお母さんのことを知らないのが一番嫌なんです。
どんな真実だって知りたいんです。
私はお母さんの娘だしどんなことだって受け止められます。
あなたが手放したときの千草さんとは違いますよね?もう立派な大人の女性です。
千草さんごめんなさい。
私にはその資格がないの。
あなたを捨てた上にあなたを人殺しの娘にしてしまった。
人殺しの娘?それはどういうことですか?美砂子さんを殺してしまったのは…。
私なんです。
22年前私と渋川が結婚したとき渋川のことが好きだった美砂子さんに呼び出されて。
(美砂子)《何が二条路よ》《彼は私に「結婚してくれ」言うてんよ?》
(美砂子)《それやのにあんた何よ?》《泥棒猫みたいに彼を奪って》《さっさとこの町出てってよ》《知ってんのよ私》《千草があんたと沢木の子やって》《自分で産んどいて捨てるなんてあんた最低の女やね》《ごみみたいに捨てたんやからあの子の人生なんてどうなってもええんでしょ?》《あんたが渋川と別れへんって言うんやったらあんたの代わりに一生あの子いじめ抜いたるわ》《いいんでしょ?あんたあの子捨てたんやから》《千草は関係ないでしょ》《私には大ありなんよ》《それも嫌やって言うんやったらあんた死になさいよ》《ああっ!あっ!》《ああっ!やめて!》
(あかね)そしてもみ合ってるうち美砂子さんは。
・
(落下音)《ああ…》《ああ…ああ…》それで遺体を。
(あかね)はい。
指輪はそのときに落としたんですか?それがよく分からないんです。
あのころはもうすでに指輪は外して家に置いてありましたし。
家に?そのことご家族はご存じでしたか?確か妹の雪子には話しました。
(あかね)明子さん。
千草のことお願いできないでしょうか。
どういうことですか?あなたをとても信頼してるようですし。
ぜひこれからもずっと千草のそばにいてあげてほしいんです。
お母さん。
私はこれから自首します。
ごめんね。
千草。
あかねさん。
それはちょっと待ってください。
もしかしたらあなたを救えるかもしれません。
あっ来てる。
春彦さんねっ。
イギリスからのメール来てる。
来てる来てる。
「BURTONTIMES」これのどこかに何か三山陽介が気にしてた記事が出てるはずなんだよね。
ちょっと待って!これ…この写真。
これは地元のお祭りか何かの写真じゃないの?違うここ見て。
これ…。
よね?うん。
あかね。
ごめんなさい。
俺には千草がいたから。
私もここに。
おかえり。
明子さんお願いいたします。
はい。
昨日あかねさんとお話をさせていただきました。
その中で京都の嵯峨野で発見された小池美砂子さんはあかねさんが誤って殺害してしまったのだとの告白を受けました。
でも遺体は京都の嵯峨野の山奥に埋まっていたんです。
とてもあかねさん一人の力でできることじゃありません。
私は誰か男性が助けたのではないかと思いました。
そしてそのことをあかねさんに尋ねました。
あかねさん。
あの晩美砂子さんを殺してしまって動転した私はそのことを渋川に話したんです。
(渋川)《何だと!?》《私今から警察へ行って自首します》《バカヤロー!そんなことしたら俺にどれほどの迷惑が掛かると思ってんだ》《どこだ場所は!どこに置きっ放しにしてきたんだ》《泣いてないで言え!》
(あかね)渋川は怒りその遺体を嵯峨野まで運び埋めました。
(渋川)こんな人殺しの話をいちいち信じるなよ。
バカらしい。
この女の指輪だって出てきたんだろう。
それがあなたの犯した最大の過ちです。
何!?あのころあかねさんはもう結婚指輪をしていなかったんです。
外して家に置いてあった。
そうですよね?はい。
つまり渋川さん。
あなたがあかねさんの犯行に見せるために美砂子さんの遺体と一緒に指輪を埋めたんです。
待てよ。
もともと美砂子はあかねが殺したんだろ?偽装なんかする必要がどこにある?渋川さん。
警察の調べで美砂子さんの死因が判明してます。
鋭利な刃物による刺殺だそうです。
つまりあかねさんから「美砂子さんを殺してしまった」と告白を受けたあなたがその現場に行ったとき…。
《お前…》
(狩矢)美砂子さんはまだ生きていた。
(美砂子)《あの女警察に突き出して。
人殺しよ》《それで一緒になろう。
ねっ》・
(刺す音)
(狩矢)そしてあなたは美砂子さんの遺体を嵯峨野に埋めあかねさんがやったように見せるために指輪を一緒に埋めた。
違いますか?そしてそのことに気付いた雪子さんもあなたが殺害した。
《慌てて富山までやって来たってことは…》《やっぱりねえ》《あんたが美砂子さん殺したんでしょう?》
(渋川)《バカなこと言うな》《現場からあかねの指輪だって出てるんだ》《あかねが殺したのさ》
(雪子)《あのころ姉さんはあんたとの結婚指輪なんかとっくに指から外してたわよ》《あんたが美砂子さん殺して姉さんがやったように見せ掛けたんでしょう?》《姉さんなんか助けたくもないけど二条路家から殺人犯なんか出たら困るのよ》《さっさと自首しなさいよ》《やっぱりあんたそんなことしないわよねえ》《じゃあ私が警察に言うわ》《しっかり罪を償ってくればいいわ》《じゃあねフフフ》それをあかねさんの犯行に見せようとして赤トンボの折り紙を置いた。
あなたが…美砂子さんと雪子を?お前のせいだ!お前のせいだ!
(橋口)ナイフを捨てろ!
(橋口)殺人未遂の現行犯だ。
渋川太郎。
小池美砂子および二条路雪子殺害容疑で逮捕する。
(橋口)立て。
余木先生。
イギリスから取り寄せました。
イギリスのローカル紙「BURTONTIMES」の1989年のコピーです。
そのお祭りの写真に写ってるのは紅子さんと余木先生。
そしてあかねさんと生まれたばかりの千草さんですよね?お二人は同じ柄の懐中時計と髪留めを持ってらっしゃいます。
その新聞の幸せそうな写真を見て思いました。
あかねさんは紅子さんと余木先生のお子さんではなかったのかと。
騎馬武者行列で亡くなった三山陽介さんと東山栄治さんのことですが。
余木先生。
お話しいただけますか?三山陽介はイギリスへ研修に行ったとき偶然その新聞を目にした。
そしてあなた方と同じように全てを悟ったんです。
(余木)そしてあいつは帰国してから私を脅迫したんです。
あかねが私と紅子さんの子供であることを龍野の人々が知ったら大変なスキャンダルになる。
二条路醤油も紅子さんも信用を失って失墜するだろうと。
金を要求されたんですか?
(余木)ええ。
それだけではなく「千草と結婚させろ」と。
千草と結婚すれば二条路家に入り込むことができる。
しかしそんなことはさせない。
それで騎馬武者行列のとき三山陽介に毒入りカプセルをのませました。
そして三山陽介さんの死を調べていた東山栄治さんもその新聞に気付き同じように余木先生を脅迫した。
ええ。
三山陽介と東山栄治は私が殺しました。
2人の手のひらに赤トンボの折り紙を載せたのは口封じを意味するものですか?ヨーロッパでは赤トンボを「魔女の使い」と呼びそれは口封じを意味するものだそうですね。
そうすることでこの事件は単なる個人的な恨みではないもっと大きな龍野全体を巻き込む事件だと見せるおつもりだった。
つまり捜査のかく乱。
でもそれは決して自分の犯行を隠すためではない。
紅子さんあかねさん千草さんを守るためだった。
そう。
どんな手を使ってでも私が彼女たちを守る。
命を賭しても。
それが私の願いであり使命だと思ってます。
余木先生。
私が至らなかったばっかりにこんなことになってしまって。
本当に申し訳ございません。
いやそれは違う。
それは違います。
私は自分がするべきことをした。
それだけです。
沢木。
(沢木)はい。
お前が私を逮捕しろ。
手錠だ。
そんな…。
沢木。
すみません。
(狩矢)連行しろ。
(紅子)余木先生!お父さん!余木先生が私のお父さんだったなんてこんな幸せはありません。
願いがかないました。
お母さん。
明子さん黒沢先生。
やっとあかねにお父さんって呼んでもらえました。
ありがとう。
(狩矢)明子さん黒沢先生。
(紅子)あかね千草ここへ来て。
私の身勝手を許してね。
でもあなた方がこうしていてくれて私はうれしい。
(紅子)私のわずかに残る命の中でもう二度とあのような悲しい出来事が起こりませんようこの龍野の人々がささやかでも楽しく幸せに暮らしていける町になるよう願ってます。
(紅子)あかね沢木さん千草。
あとはあなた方若い人たちが力を合わせてそれを成し遂げてくださいね。
お願いいたします。
明子さん黒沢先生。
そのときはぜひこの龍野のためにもう一度ご尽力いただければと。
あっ。
(民子)大奥さま!私にはもう時間がないようだわ。
あとをよろしくお願いいたします。
それから間もなくのことでした
紅子さんが亡くなったという知らせが届きました
納棺の儀式はあかねさんにやっていただくことになりました
そして千草さんがあかねさんをお手伝いすることになりました
秋山さんと良恵さんが必死で頑張ってくれて赤い霊きゅう車が見つかりました
二条路紅子さんの素晴らしい人生を祝うかのように赤い霊きゅう車は見事に輝きを放っていました
明子お疲れさん。
春彦さんも。
フフフ。
だけどさ家柄とか格式ってそれはそれで歴史があっていいもんなんだけど…。
今生きてる人がそれで犠牲になるってのは悲しいな。
そうね。
人の気持ちの方がずーっと大切よね。
「好き」とか「愛してる」とか。
「すっごく好き」とか「すっごく愛してる」とか。
えっ?だからそういう気持ちの方が絶対大事なの。
そりゃそうだよ。
でもさあ紅子さんと余木先生何十年にもわたってずーっと愛し続けてきたわけでしょ?すごいわよね。
そうだね。
見習いたいね。
うん?見習いたい?見習わないとできないわけ?私は確かにあの2人はすごいなって言ったけど私たちもそうよって言いたかったの。
ハァ。
春彦さんは見習わないとできないんだ。
だっだからそれは言葉のあやってもんで。
僕だって赤い霊きゅう車に乗るまで明子と…。
うん?「明子と…」何?うん?行こうか。
春彦さん。
最後まで言ってよ!おはよう。
おはようございます。
明子はん。
ご苦労さんでございました。
秋山さんどうもありがとう。
いえ。
赤い霊きゅう車見つかってよかったわ。
わてにできないことはないっちゅうことでございましょ。
そうね。
さすがだわ。
はい。
ありがとうございます。
千草さんから連絡があって今日からおしょうゆ工場で研修なんですって。
そっか。
寂しくなるわね。
でもゆくゆくは二条路醤油の社長さんになる人だもの。
しょうがないわね。
おしょうゆ送って言うときました。
やめてよもう。
秋山さんに民子さんからはがき来てました。
えっ!?民子さんからはがきって…。
ちょっと社長はっきり言っときますけど私石原葬儀社に骨を埋めるつもりでおますさかいな。
「秋山さますてきな思い出をありがとうございました」何やその「すてきな思い出」って。
「私民子は幼なじみのヨシオさんと結婚することに相なりましたことをご報告させていただきます」結婚するの!?ちょっと待て。
何でこんな幼なじみヨシオさんっていう人と結婚すんねんこの人は。
そんなん知らんわ。
さあ仕事仕事!ねっお仕事しましょう。
(明子・良恵)・「仕事仕事」良恵!お前そんなまんじゅうばっかり食わんと一生懸命仕事せえ!まんじゅう食べてませんて。
明子はんあの狩矢っちゅうね時代劇に出てくるようなあんな刑事にだまされてあんた刑事になったらわて許しませんで!刑事にはならないと思いますよ。
そうです。
明子さんは絶対そんなことにならしません。
こっ…こいつはまた一生懸命仕事してるし。
わてどないしましょう?あっ民子さんが来はった。
えっ!?ちょっと待って…。
あ〜元気なった!えっ嘘かい?はい。
何でもええけどお前の後ろへ隠れてたら世間が全然見えへんねん。
それ私が太ってるっちゅうことか?まあそういうことや。
ちょっともう!ごめん!悪かった!2014/08/14(木) 14:57〜16:48
関西テレビ1
山村美紗サスペンス赤い霊柩車30 後編[再][字][多]
山村美紗×西村京太郎が紡ぐ傑作・龍野武者行列殺人事件、幻の映像化!白骨死体が語る女系一族の血塗られた歴史…葬られた女が今覚醒する
詳細情報
番組内容
石原明子(片平なぎさ)が社長を務める石原葬儀社の新入社員・沢木千草(黒川智花)の故郷、龍野を訪れた石原葬儀社の面々と黒沢春彦(神田正輝)。龍野名物の騎馬武者行列の最中に、千草の婚約者の二条路信也(塩田貞治)が殺された。騎馬武者行列で死者が出たのは今回で3年連続であるという。そして死体の傍らには赤とんぼの折り紙があり、呪いではないかと噂されていた。推理を進めるにつれ、明らかになる千草の出生の秘密。
番組内容2
千草の母親は二条路紅子(草笛光子)の娘で、失踪中のあかねであるというのだ。そして、ついに信也を殺したのが信也の親友で腹違いの弟の盛田和夫(木村了)だということを突き止めた。盛田は、千草に横恋慕し、信也を殺すことで千草を奪おうとしていたのだ。事件を一旦解決し京都に戻った一行。
そんななか、一体の白骨死体が赤とんぼの模様が施された結婚指輪と一緒に発見されたとの知らせが入る。ショックを受ける
番組内容3
千草。さらに、盛田は去年・一昨年の殺人事件とは無関係だということが明らかになる。龍野武者行列連続殺人事件は未だ解決していなかった。そして、赤とんぼの謎…それは、失踪したあかねを象徴するものだった。再び京都に戻り、葬儀屋の仕事に戻る一行だが、ひょんな事から赤い霊柩車を探すことになる。困難を極める赤い霊柩車探しだが、富山に目撃証言があった。石原葬儀社のメンバーは、赤い霊柩車探しに富山に出かける…
出演者
片平なぎさ
神田正輝
若林豪
大村崑
山村紅葉
・
草笛光子
夏八木勲
石黒賢
とよた真帆
黒川智花
原作・脚本
【原作】
山村美紗
西村京太郎
「龍野武者行列殺人事件」より
【脚本】
石原武龍
監督・演出
【編成企画】
太田大
【プロデューサー】
八木亜未(大映テレビ)
熊谷理恵(大映テレビ)
【監督】
本橋圭太
【企画協力】
野木小四郎(大映テレビ)
制作
フジテレビ
大映テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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