2014年9月10日 コメントは受け付けていません。

経団連が献金再開。表面的には関係修復が目的だが、もっと深刻な理由も

 経団連の榊原定征会長は2014年9月8日、政治献金を5年ぶりに再開する方針を明らかにした。ただ、企業や業界団体に献金額を割り当てる方式ではなく、強制力のない呼び掛けにとどめる。冷え切っていた安倍政権との関係を修復し、重要政策への影響力を強める狙いと考えられる。

sakakibara

 経団連の政治献金は、奥田碩元会長時代には、政党の政策内容を検証し、その評価に応じて献金を実施する方式を採用していた。その後、民主党への政権交代もあり、御手洗冨士夫元会長時代には、政治献金の廃止を決定していた。

 このような中、榊原氏が献金再開を決断したのは、経団連と政権の冷え切った関係を修復したいという思いがあるからだ。米倉前会長は、安倍政権の経済政策を厳しく批判して政権と対立。経団連は政策に対して影響力を行使することが難しくなっていた。
 安倍首相と個人的に親しい榊原氏が経団連の新会長に就任したのも、こうした関係を修復するためである。榊原氏の会長就任をきっかけに、献金再開を決断したのは自然な流れといってよいだろう。

 だが、献金再開の背景にはもっと深刻な問題があると考えた方がよい。日本の産業界はかつての競争力をすでに失っており、自ら構造改革を進める当事者能力も失いつつある。産業界は、政府の支援に頼らなければ十分な収益を確保できないほど弱体化しているのが現実である。

 こうした兆候はすでに数年前から顕著になっていた。日本を代表する産業であるはずの自動車業界でさえ、リーマンショック直後には、エコカー補助金という政府からの補助金を受け取る立場になってしまった。エコポイントをばらまいた家電業界はいまだに業績を回復できない状況が続いているし、重電各社などは、政府によるトップセールスに完全に依存した状況だ。

 政治との関係が密接な一部の業界は例外だが、本来であれば、政治に働きかけるよりも、市場メカニズムに沿ってビジネスをする方が圧倒的に利益は大きい。したがって献金に対するスタンスは企業ごとにバラバラであるのが自然な姿である。

 大手企業のほとんどを網羅する巨大な経済団体が、政権与党に集中して献金する構図が続くということは、日本がいまだに途上国型の産業構造から脱却できていない現実を象徴しているのかもしれない。

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