緩和効果さらに強まっていく、企業マインド改善継続=日銀副総裁
[金沢市 10日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は10日、金沢市で講演し、量的・質的緩和(QQE)は所期の効果を発揮していると強調した。輸出の伸び悩みが続くにもかかわらず海外販売の好調などで企業の設備投資や賃上げなどで景気の好循環が持続し、緩和効果は「今後さらに強まっていく」との見通しを示した。現状の政策を継続することで、2%の物価目標は達成可能との見解をあらためて強調したとみられる。
足元の円安傾向については特段触れず、物価は円安でなくQQEによる需要創出で上がっているとの持論を強調した。政府の積極的な財政出動とセットで効果を挙げたとの見解を示唆した恰好だ。
<海外販売好調で企業は連結ベースで増益>
岩田副総裁は「輸出の弱めの動きにもかかわらず、(企業)マインドの改善傾向は維持されている」とし、背景として「海外販売の好調などから連結ベースで増益を続けている」ことなどを挙げた。また企業マインドが「総じて良好な水準にある下で、設備投資は非製造業を中心に緩やかに増加している」、「製造業の設備投資も回復が明確」など、企業収益の改善と設備投資が、輸出を補う形で日本経済をけん引するとの見方を示した。
4─6月期は消費税引き上げに伴う駆け込みの反動減が見られたとしつつ、「景気の前向きな循環メカニズムはしっかり維持されている」と指摘。名目賃金に雇用者数をかけた雇用者所得が「ここ数カ月、前年比2%程度のペースで増加した」点を強調摘した。ただし「消費税引き上げに伴う実質所得のマイナスの影響は引き続き注意深く点検していく」とした。
<「辛抱強く見守って欲しい」─実質賃金の下落批判で>
「足元の物価が上昇すれば予想インフレ率も上昇する」と説明し、2015年度を中心に物価は目標とする2%に達する可能性が高いとの従来見解は堅持した。
また物価の上昇は「需要増を伴うのが重要」として、日銀は物価のみの上昇を進めてはいないとの見解を示した。物価上昇と消費税引き上げに対して、賃上げが追いついておらず、「実質賃金下がっているとの批判あるが、物事には順序があるので、もう少し辛抱強く政策効果を見守ってほしい」と訴えた。 今後「企業収益改善や予想インフレ率の高まりで賃金上昇傾向はっきりしてくる」と主張し、消費税の影響を除いた実質賃金は「一般労働者は6月、パートタイム労働者は7月にプラスに転じた」とも説明した。
<円安定着すれば輸出伸びていく>
岩田副総裁は、1998年から2013年までの物価と為替の関係を図示し、「円安で物価が上昇とは言えない。むしろ円安で物価は下落する」と指摘。ガソリン上昇による他の財やサービスへの支出切り詰めが物価下落圧力になると説明した。
一方、2013年10月以降は、「円安の進行程度が落ちても、需給ギャップ縮や労働市場のタイト化で物価上昇が続いている」とし、足元の物価上昇は「QQEの効果などで経済全体の需要が拡大しているため」と説明した。
輸出低迷の背景には「製造業の海外生産拡大など構造的要因が影響している」と指摘する一方、「円安が定着すれば輸出は伸びていく」との期待も示した。
<日銀法改正以降デフレ、以前から成長力強化を重視>
大胆な金融緩和を主張するリフレ派の代表的な論客である岩田副総裁は、就任前は日銀に対する鋭い舌鋒で知られたが、就任後の公式発言は、執行部の意向に配慮を示した形が多い。ただ、この日の講演では、失業率と物価上昇率の関係を示すグラフを図示しながら、「1998年4月の日銀法改正を起点に日本経済はデフレになった」と指摘するなど、予定原稿をはみ出した発言も多かった。
日銀で0%台半ばと試算する潜在成長率を引き上げるためには、「成長力強化が重要」と指摘したが、一方、「成長力強化が物価目標達成の必要条件ではない」と強調。金融緩和の強化を最重要課題としていた副総裁就任前と考えが変わってはいない点をあえて強調した。
*内容を追加します。
(竹本能文 編集:山川薫)
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