今回は常日頃から抱えている所得税の表記方法に関する不満を書いてみたいと思います(こちらの所得税に関する記事を読んで、思いだした内容です)。
まず2014年現在、所得税の最高税率は40%です。ご存知のように来年からは所得税の最高税率は45%に変更になりますが、これを含めてもあまり詳しくない方からすると、『ふーん、所得税って最高でもそんなものなんだ。50%以下だから、もう少し税率をあげても良いんじゃない?』って思える割合だと思うんですよね。
参考までに下記の税率表も引用しておきます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
住民税を加えると、最高税率は50%以上に:
しかし実際にはあくまで所得税だけが所得にかかる税金ではありません。所得税に住民税を加えた+10%の税率こそが、『本当の所得税』だと私は思うのです。
- 本当の所得税=所得税+住民税
つまり、感覚的には下記の表のほうが近いはずなんですよね。わざわざ住民税10%分を除いた議論をする意味がわかりません(税金の使われ方が違うのはわかりますが、どちらも所得に対してかかる税金です)。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 15% |
| 195万円を超え 330万円以下 | 20% |
| 330万円を超え 695万円以下 | 30% |
| 695万円を超え 900万円以下 | 33% |
| 900万円を超え 1,800万円以下 | 43% |
| 1,800万円超え 4,000万円以下 | 50% |
| 4,000万円超え | 55% |
是非、みなさんも自分のだいたいの年収*1を当てはめてみて、どのくらいの税金を取られているのかを確認してみてください。所得税だけを見た場合よりも、かなり多いなーという印象を受けるはずです。
新聞社の記事などを参考までに紹介:
いくつか参考までに、各新聞社がどんなふうに所得税のことを紹介しているのかをピックアップしてみます。まずは住民税に一切触れずに、所得税率のことだけが書いてある記事等を引用してみます。
所得税は現在、課税対象となる所得が1800万円を超える部分に、40%の最高税率が適用されている。25年度改正では、課税所得が数千万円を超える人向けに新たな税率区分を作る。
所得税の最高税率は現行の40%から45%に引き上げ、適用する課税所得を「4千万円超」の部分とする方向だ。
政府税制調査会は21日の会合で、所得税の最高税率をいまの40%から45%に上げることで一致した。年内をめどにまとめる社会保障と税の一体改革の素案に盛り込み、消費増税にあわせて実施したい考えだ。
消費増税は、低所得者ほど負担感が強くなる「逆進性」をもつ。高所得者の負担を増やすことで、不公平感を和らげるのがねらい。
所得税の富裕層増税をめぐっては、昨年の消費税法に関する3党協議で結論が先送りされた。民主党は所得5千万円超の税率を45%に引き上げる案を主張したのに対し、自民党は慎重姿勢を示した。公明党は逆に所得3千万円超を45%、所得5千万円超を50%とすべきだと民主党案より厳しくすることを求めたため、3党間で折り合いがつかなかった。
自民、公明、民主の3党は21日、2013年税制改正で所得税の最高税率を現行の40%から45%に引き上げ、課税所得「4000万円超」の部分に当てはめることなどを議論した。これを受け13年度改正の焦点だった所得税と相続税の富裕層増税が22日にも決着。24日に策定する税制改正大綱に盛り込み、15年1月から実施する。
格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について、45%の税率を設けます。
これらの記事や情報内には一切、住民税に関する記述がありません*3。税金に詳しくない方からすると、所得税率だけを見て税金の過多を考えてしまってもおかしくないと思います。
住民税の記述まできちんとある記事:
次に住民税の記述まできちんとしてある記事も紹介しておきます。
その所得税だが、最高税率が40%から45%に引き上げられる。具体的には、現行制度では課税所得が1800万円超の場合、所得税の税率は一律40%だ。これが15年以降は、新たに課税所得金額4000万円超という区分が設けられ、ここに課される税率は45%となる。住民税の所得に対する税率は一律10%であるため、所得税の税率と個人住民税の税率を単純に足すと55%になる計算だ。
こちらのほうが圧倒的にわかりやすいと思うんですが、こういった住民税まで加えた税率を書いているメディアはこのプレジデントやオールアバウトなどだけでした。新聞社は一様に『敢えて住民税に触れない書き方』をしているんじゃないかな?と思えたほどです。
所得にかかる税金は全て所得税にしてほしい:
住民税は住民税としての使われ方があるのでしょうが、個人的には所得に一定割合かかる税金は全て、所得税という名称で統一してほしいなと思います。なにせ普通に考えれば、所得税のみが所得にかかる税金…。住民税を別枠にしてしまうからこそ、『合計でどのくらいの税金がかかるのか?』ということがわかりにくいのです。
そうならぬよう、住民税は所得税名目で徴収してその後、分配する方式を採用してほしいなと思います*4。
以上、所得税の最高税率45%…という表記方法のズルさに関する不満を書いた内容でした。みなさんも是非、所得に対してどのくらいの税金を払っているのかを確認してみてくださいね。ほんと所得税のみを計算しても意味がありませんよ!
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*1:実際には課税所得なので年収とは少し違います。そして控除金額もあるので、表示してある税率よりも少なくはなります。
*2:ログイン出来ないので、記事本文まで確認できていません。
*3:所得税率に関する記事が盛んに報道されていた当時には、もう少し多くの記事があったのですが、時間の流れとともに削除されてしまったようです。それらの消えてしまった記事の中にも、住民税の記述がないものが多かった印象ですね(読売新聞の記事もキャッシュとして残っていましたが、住民税の記述はありませんでした)。
*4:実際には住民税率は自治体が自由に決められる裁量があるなど、複雑な理由があるという点も重々に理解した上での意見です。