九州の中堅小売業で、大手主導による再編が本格化してきた。イオンは8日、九州北部を中心に展開する中堅スーパーのレッドキャベツ(山口県下関市、岩下良社長)を買収すると正式に発表した。7月にはイズミがスーパーの広栄(熊本市)を買収。価格競争が激しい九州では消費増税後に収益が悪化するスーパーが相次いでいる。
イオンは9月22日付でレッドキャベツの第三者割当増資を引き受け、87%の株を取得して連結子会社にする。取得額は明らかにしていないが約10億円とみられる。
イオンはイオン九州とマックスバリュ九州で計約250店舗を展開するが、今回の買収で手薄な福岡市や北九州市を強化できる。レッドキャベツには年内にもプライベートブランド(PB=自主企画)「トップバリュ」を供給。電子マネー「WAON(ワオン)」も使えるようにする。
レッドキャベツの2013年7月期の売上高は307億円。イオンが九州地盤でこの規模の食品スーパーを買収するのは初めて。岩下社長は続投し、イオンは常勤取締役など計6人を派遣する。
レッドキャベツは福岡や熊本など九州北部を中心に41店舗を展開する。肉や生鮮を格安で提供する食品スーパーとして違いを出してきた。だが日用品や飲料の分野ではディスカウントストアに品ぞろえや価格でかなわず、ここ数年減収基調が続いていた。
8日、福岡市で記者会件した岩下社長は「今は営業黒字でも、10年後を見たときに会社の成長を描けなかった」と語った。レッドキャベツは当面、新規出店はせず、第三者割当増資で得た資金を店舗の改装に充てて集客力を高める。
今回の買収は1月末にレッドキャベツが持ちかけた。レッドキャベツは複数社に資本提携を打診したが、本命は最初からイオンだったようだ。岩下社長の父である故岩下義之前社長はジャスコ(現イオンリテール)で働き、1984年にレッドキャベツを立ち上げた。「イオンが経営ノウハウの基盤にあり、考え方も近かった」という。
イオンにとってもメリットはある。消費増税後も価格を据え置く九州のディスカウントストアに対抗するため、ポイントサービスを拡大し、利益率が下がっていた。仕入れ量が増えれば調達コストを減らせる。
九州の流通業で売上高首位はコスモス薬品だが、グループを合わせるとイオンが4700億円程度でトップになる。九州は北海道や東北などに比べ寡占化していないため、イオンの岡田元也社長は「売上高の伸びしろはある」と指摘。九州でダイエーを含めたグループの再編に乗り出したほか、M&A(合併・買収)でシェア拡大を急ぐ。
大手ではイズミが広栄を買収した際の発表が話題になっている。イズミの山西泰明社長は4店舗しかない企業の買収だったにもかかわらず、わざわざ熊本市で会見し「建設費の高騰で自社で店舗を建てるよりも買った方が効率的」と強調した。
地元では「いつでも支援要請を待っているというイズミのアピール」との受け止めが広がった。「日本一価格が厳しく、まさに戦国」(イオンのSM事業戦略チームの内田一男リーダー)といわれる九州に本格的な再編の波が訪れた。
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