私は今年初めにあった投資家向けの会議での講演で「地政学リスク」について話した。ロシア、中東、南シナ海、ユーロ圏がどうなっているかを手短に解説した。その後、コーヒーを飲みながら、同様に講師として参加していた著名投資家に、(投資の際には)地政学リスクをどれほど考慮するのかと尋ねた。
その投資家は「まず考えないな。僕らが注意するのは企業、資金フロー、投資そのものだ」と答えた。
プライベートジェットでマドリードまで送ると言ってくれたほど成功している投資家の言葉を顧みないわけにはいかない。投資家にとって政治ニュースは、新聞のスポーツ面に比べ少しは意味があるくらいにしか考えないのは当然だ。だれかが悲惨な目にあっていても投資家には関係がない。犠牲者が20万人近くに達するシリア内戦を横目に、株式市場は活況だ。
■市場と政治のずれは大きく
市場と政治のずれは最近、ますます大きくなってきた。先週、各紙はウクライナや中東における戦闘、英国が分裂する可能性に関する記事で埋め尽くされていたのに、英FTSE100種総合株価指数は14年ぶりの水準に上昇した。その前の週には、米S&P500種株価指数が初めて2000台をつけた。
こんな状況をみると、政治評論家は投資家の短絡さに舌打ちするだろう。だが、市場は正しいのかもしれない。政治による衝撃で株価が下落することも時にはあるが、一時的な現象にすぎない。
最近の経験則では、株価の回復は驚くほど早い場合が多い。2001年の米同時テロ後で初めての週の取引で、ダウ工業株30種平均は14%下がった。だが、ダウはナスダック総合株価指数とともに、2カ月のうちには米同時テロの前の水準を回復した。
クーデターや戦争が起きるかどうかを知る価値はある。だが、この数十年間、世界の投資家心理を一変させるような出来事は政治でなく、経済によって引き起こされてきた。最も顕著なのは00年のIT(情報技術)バブル崩壊や、08年の金融危機、それに続く米金融当局の量的緩和策だ。株価が足元で高い理由は、投資家の関心がなお戦争よりも金融政策の方に向いているからだろう。
■中東に左右されなくなったエネルギー市場
こうした姿勢で、地政学上の混乱が相次ぐ現状を切り抜けられるのだろうか。1970年代には、戦争や革命でエネルギー価格が高騰し、欧米は景気後退に陥った。いまは、世界の二大エネルギー生産地域であるロシアと中東が混乱している状態だ。それでも、原油価格は下がっているのが実態だ。
私は今年初めにあった投資家向けの会議での講演で「地政学リスク」について話した。ロシア、中東、南シナ海、ユーロ圏がどうなっているかを手短に解説した。…続き (9/9)
革命を達成し、仲間と力を合わせ、世の中を根本から変えるユートピア思想に賭けて、世間から遮断された暮らしに何年も耐えるささやかな集団がいる。…続き (9/9)
各種サービスの説明をご覧ください。