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<担当放送作家として語る>『みのもんたの朝ズバッ!』はこうして誕生し、こうして解体した①[全6回] - 高橋秀樹

私は、その金額を聞いて「えっ!」と言ったきり、言葉を失った。想像を絶する額だったからである。みのもんた側が要求したギャラの年額は、それほどインパクトがあった。

『みのもんたの朝ズバッ!』はこうして誕生し、こうして解体した」というタイトルの文章を書くには、25年ほど時代を遡らなければならない。1989年10月26日、TBSのワイドショー『3時にあいましょう』のスタッフが「弁護士の坂本堤氏がオウム真理教を批判するインタビュー映像」を放送直前にオウム真理教幹部に見せた。

TBS側スタッフがオウム幹部にビデオを見せたことは、情報源の秘匿というジャーナリズムの原則に反し、報道倫理を大きく逸脱するものであることは、明らかである。TBSは、この問題がワイドショー番組の製作現場で発生したことに鑑み、『3時にあいましょう』の後継番組『スーパーワイド』を終了させた。

TBSの番組改革は朝のワイドショーにも及んだ。朝6時からの『フレッシュ!』は『おはようクジラ』に、次の時間帯の『モーニングEye』は『はなまるマーケット』に変更された。ビデオ問題が起こったのは、「ワイドショーだから」ではない、のは明らかである。ワイドショーはスケープゴートにされただけである。

私は、新しく始まる『おはようクジラ』と『はなまるマーケット』両方の番組に放送作家として関わることになった。仕事は、コンセプトメークと骨組みづくりである。両番組ともコンセプトは実にはっきりしていた。『おはようクジラ』は「裏番組『ズームイン!!朝!』の、各局中継を忠実に真似し、内容で『ズームイン!!朝!』に勝つことである。『はなまるマーケット』の方のコンセプトは脱ワイドショー。芸能スキャンダルも、ニュースもやらない。ワイドショー色をすべて消し去ること、制作プロデューサーは「病院の待合室にいる人でも安心してみられる番組」を標榜した。
『はなまるマーケット』は、すぐに好反応がでた。成功である。その詳細は「立ち上げメンバーとして語る・TBS『はなまるマーケット』の終了?オウム事件の反省からの17年」(http://mediagong.jp/?p=2857)と題して書いているので、参照していただきたい。

成功の2大要因は、司会に岡江久美子と薬丸裕英を起用したこと。そして番組が人事面における“解体的出直し”であったことである。通常こうした番組改変の場合、解体は済んでいても、出直しの人材がいなかったり、その逆であったりする。それが『はなまるマーケット』の場合、脱ワイドショーという旗幟鮮明なコンセプトがあったおかげで、解体と出直しが、同時に進行したのである。これは奇跡的と言っても良い。

一方、『おはようクジラ』のほうは、人事面においても、内容面においても、解体も出直しも中途半端な形で番組が進んでしまった。ひとつ例を挙げる。私は、ニュースのまとめ方として「時系列ニュース」というアイディアを提案した。前日の放送終了から当日の放送まで24時間で起こった主要ニュースを時系列で並べ、5分サイズにまとめるのである。ところがこれができない。

ワイドショー経験のあるディレクターがサンプルを作ってくれたが、それに対して、報道出身のディレクターが異議をさし挟む。この事件の発生時刻は裏が取れているのか、他局は時刻を打っているが、うちの社会部は掴んでいない。この政治案件は国会に提出された時刻より、決議された時刻のほうが大事なのではないのか。

全くわかっていない。正確な時刻よりも「時系列で並べた」という、手法が新しいのに。今は日本テレビの『NEWS ZERO』が時系列ニュースを売り物にしている。『おはようクジラ』は低迷した。

日本各地の朝を中継で繋ぐという手法は『ズームイン!!朝!』の発明である。日本テレビの場合、ネットの各ローカル局は後発のUHF局も多く、日本テレビから幹部が送り込まれるケースも多い。一方TBSのネット局は老舗のVHF局が中心だ。つまり、日本テレビだと、その指示によって号令一下各局が動くのに対して、TBSの場合、老舗局は何かと反発を示し動かない。そういう下地がある上に、TBSのネット各局は中継というものの経験値が少なく下手である。

私は,過去に『アッコにおまかせ!』の、中継に備えてディレクターと同行してTBSの各ネット局を訪ね歩いた。なぜ、作家が同行するかというと前日にネット局のディレクターと打ち合わせをするためである。ディレクターに中継のプランを聞き、TBSのディレクターを含め3人で構成を考え、必要なら演出がうまくいくよう、書き込みの多い進行表を作る。そうやって、中継内容の品質を維持した。毎日放送がある『おはようクジラ』では、そんな丁寧さは望めない。中継が売り物なのに中継がブレークスルーしない。

『ズームイン!!朝!』も最初はそうだったと聞く。それを挽回するためにスタッフは放送が休みの土日に各局を行脚して、厳しい言葉でつまらない中継をなじった。改良を指示した。各局のほうも、各地方ブロックの幹事社、たとえば、九州なら、福岡が中心となって、1ヶ月に1回、九州の局を全部集めて、だめな中継を糾弾した。

中京テレビの場合、『ズームイン!!朝!』専任のスタッフがいて、中継をしきっていた。そのディレクターは『ズームイン!!朝!』の中継担当になった時にはお腹が痛くなるほどだと語った。これと同じことはTBSでは望むべくもなかった。

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