本田悦朗内閣官房参与(2002年) Bloomberg News
【東京】安倍晋三首相の経済政策ブレーンの1人である本田悦朗内閣官房参与(静岡県立大学教授)は、消費増税の実施で消費者の買い渋りが続く中、成長重視型の経済政策は勢いを失いつつあると指摘した。また、現時点で予定されている追加増税を来年実施するのは間違いだと警告した。
本田氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「アベノミクスの効果は昨年に比べると弱まっている」と語った。また、現状が続くなら、日本銀行はある段階でインフレを目標水準に誘導するための施策をさらに講じる必要がある、とも述べた。
政府が4月1日付で消費税率を5%から8%に引き上げたことにより消費者の実質購買力は低下し、内需に大きな打撃となった。本田氏は、このような結果が来年繰り返されることを回避すべきだとの見方を示した。
安倍晋三首相(8日、スリランカ) lakruwan wanniarachchi/Agence France-Presse/Getty Images
「アベノミクスと消費税率引き上げは逆向きの方向性を持った政策。本来思いっきりアクセルをふかしているときにブレーキをかけたらどうなるか。車は必ずスピンする」と警告した。
黒田東彦日銀総裁が先週、来年10月に政府は消費税の再引き上げを予定通り行うべきだと話したことについて、本田氏は不快感を示した。政府は法律に基づき、景気が「上向き」傾向にある限り消費税率10%への引き上げを実施することになっている。
本田氏は「日本銀行総裁には金融政策に専念してほしい。消費税をどのタイミングでどうするかは、政府の専権事項。政府にまかせてほしい」と述べた。
安倍首相の長年の友人で、金融緩和、財政出動、構造改革を盛り込んだアベノミクス政策の立案者の1人である本田氏は、政府にとっての「ベスト」の選択肢は、10%への消費税率引き上げを当初予定より1年半先送りすることだろうと話した。そうすれば、持続的な経済成長を確立する上で必要な、より大幅な賃金上昇を実現させる時間が稼げる、と指摘した。
本田氏と黒田日銀総裁の租税政策に関する意見は食い違っているが、両者ともに、円が対ドルで下落すれば国民の生活費が上昇するため経済成長が妨げられる、との見方には否定的だ。
本田氏は、円安が進行すれば輸出で得る日本企業の収益と円建ての対外投資価値が上昇するため、「今の水準は全く問題ないし、もう少し円安でも全然構わない」と語った。また、「もう少し円安になってもおかしくはない」としつつ、1ドル=120円以上では「(ドルは)高すぎる」との見方も示した。