ブランドを毀損せずにプロトタイピングを行う方法

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IDEOで製品開発を率いた元リーダーたちが示す、プロトタイピングの心得。第2回は、試作品の市場投入が不評を招きブランドを傷つける、という事態を回避する方法を紹介する。実験に二の足を踏む幹部を説得するためにも有効だ。


 設計者や起業家は何年も前から、ライブ・プロトタイピング(未完成の製品コンセプトを、市場や実際に顧客のいる状況に送り込むこと)を試みてきたが、いまや比較的大規模な企業もこのアプローチを採用し始めている。多くの経営幹部は、間違ったアイデアへの過剰投資を避けたいと強く望み、このアプローチに興味をそそられている一方で、洗練する前の製品やサービスを市場に送り込むことを恐れてもいる。「自社のブランドを傷つけることになるのでは?」「顧客はプロトタイプの粗雑さに気づいたら、自社への信頼度を下げるのでは?」「我々の戦略を競合他社にさらけ出していいのだろうか?」といった具合だ。

 このような懸念は当然かもしれない。しかし通常、いくつかの問いと変数を検証することで、顧客との関係を危険にさらさずに市場テストを行う方法を見つけられる。

 最初にやるべきことは、提供する製品・サービスの変更および「粗さ」に対して、顧客がどれくらい敏感かを感じ取ることだ。実際の市場でテストする際に、どの程度の用心深さが必要なのか。この点に関する幹部の理解を助けるには、我々の経験に照らせば以下のアプローチが役に立つ。

1.ブランドの歴史を考慮する
 自社はこれまで、実際の市場で実験をしてきた実績があるだろうか。そうであれば、消費者の反応はどうだっただろう。主要顧客が評価しているのは、自社の創意工夫か、それとも信頼性か。H&M(スウェーデンのアパレルメーカー)に対しては、顧客は「ユニーク」であることを期待する。リーバイ・ストラウスであれば、変わらぬクラシックなスタイルが強く支持されているため、刷新の試みに対して顧客は当惑するかもしれない。

2.競争の基準を考慮する
 提供する製品・サービスの「品質の下限」を特定する。自社の市場では品質は不可欠か、それとも単に「あれば越したことはない」程度か。この下限は、車や法律サービスに関してはきわめて高くなるだろうが、娯楽的なサービスに関しては低い場合もある。

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