さて、さらに昨日の続きです。
隠されていた病気 その2 〜乳腺腫瘍+鼠径ヘルニア+α〜
隠されていた病気 その1 〜乳腺腫瘍+α〜
隠されていたというより春の血液検査でなんとなくこの病気を持っていると思っていたのですが、飼い主さんがそれ以上の検査を望まれなかったので、致し方なく経過観察ということになっていました。
が、やはり乳腺腫瘍の手術をするからにはこの病気は手術をする上でのリスクになります。
ということで、この病気の可能性が高い事とこの病気による手術リスクが高まる事を説明し、その病気の検査をさせていただくことになりました。
さて、その病気とは・・・・

体型と被毛でなんとなく病気は絞られます。
もちろん春の健康診断での血液検査とも一致します。

手術後の写真ですが、所々皮膚の薄皮が円形に剥けているのがわかりますでしょうか?
これを表皮小環といいますが、膿皮症の典型的な症状です。

さらに頸部にも同様に膿皮症の所見があります。
体全体の脱毛(薄毛)、膿皮症、体型、年齢から考えられる病気と言えば・・・・

甲状腺機能低下症です。
検査結果の数値としては参考値内ギリギリ加減ですが、検査結果の数値はあくまでも「参考値」。
数字はあくまでも数字であって、臨床症状として出ていれば数値はギリギリ参考値内であってもそれは甲状腺機能低下症と私は考えます。

ということでこの子は乳腺腫瘍のみならず、鼠蹊ヘルニア、甲状腺機能低下症が併発していたのでした。
甲状腺から出るホルモンは体の活動を活発化させてくれる重要なホルモンです。
それが少ないということはもちろん色々な病気を併発する可能性があります。
なにせ体の活動性が低下するんですから。
そのうちの一つが膿皮症。
皮膚バリアの機能が低下し、膿皮症などの皮膚疾患として表れる事もあります。
もちろん毛根の活動も低下しますので、脱毛(体全体、もしくは左右対称性の薄毛)が起ります。
血液検査では高脂血症。
体の代謝が落ちる訳ですから、脂肪分を燃焼できず、高脂血症になるというわけです。
もちろんおかげで、ずんぐりむっくりの体型になるわけです。
ということで、この子は春の健康診断の時点でその可能性が高い事に気づいていたのですが、私の説明下手から確定診断をするためのホルモン検査(T4、FT4)を受けてもらえなかったという訳です。
なので最後の3つ目は隠されていたというよりも気づいていたけれど、飼い主さんに上手く納得してもらえず、検査ができずに確定診断にいたっていなかったということです。
でも甲状腺機能低下症であれば麻酔のリスクも上がりますし、術後の傷口の治りの悪さにも繋がる事、そのほか併発する病気が今後出てくることを説明させていただき、甲状腺ホルモンの検査をすることを納得していただきました。
検査、検査と検査ばかりを押し付ける事はしたくないのですが、結果、乳腺腫瘍の手術をすることになった結果、甲状腺ホルモンの検査を行ないましたが、本来ならば、やはり疑わしは検査ということも重要です。
必要な検査、不必要な検査を見分けるのは難しいですし、獣医師にとっては必要な検査と思っても飼い主さんにとってはもっとその見分けは難しいでしょう。
動物病院にも色々な病院があります。
何でもかんでも検査という病院から、飼い主さんの費用負担を考え、最低限度の検査しかしない病院まで(検査検査検査 〜どこまで必要?〜参照)。
どちらがいいとか、悪いとかではなく、結果論として検査、検査で隠れていた病気が見つかる事もありますし、場合によっては不必要な検査で利益を上げようとする病院ももちろんあるようです。
そしてさらに結果論として飼い主さんの費用を考えて、最小限度の検査で飼い主さんの費用の負担も軽減され、健康なまま過ごす子もいますし、追加検査をせず、病気の見落とし、誤診をしてしまうこともあるのも現状です(誤診〜絶対にしてはならない、絶対にしたくない、でも絶対に避けられない〜参照)。
いずれにせよ、結果論になってしまうのですが、明らかに利益目的の不必要な検査は問題ですし、少ない検査で仮診断をし、その仮診断で治療に反応しないにも関わらず、追加検査も行なわずダラダラと同じ治療を続けるのも問題です。
そのあたりの落としどころをいかに見つけるか、そして検査の数値だけに惑わされず診断、治療を行なうのが獣医師の真価が問われるところです。
つくづく、獣医療の難しさを思い知らされる日々です。
診療時間の臨時変更のお知らせ。
大変申し訳ありませんが、9月11日(木)の夜の診療は18:00~19:30までとさせていただきます。
午前の診療は通常通り9:00~12:00で行ないます。
ご迷惑をおかけしますがご協力お願いいたします。
隠されていた病気 その2 〜乳腺腫瘍+鼠径ヘルニア+α〜
隠されていた病気 その1 〜乳腺腫瘍+α〜
隠されていたというより春の血液検査でなんとなくこの病気を持っていると思っていたのですが、飼い主さんがそれ以上の検査を望まれなかったので、致し方なく経過観察ということになっていました。
が、やはり乳腺腫瘍の手術をするからにはこの病気は手術をする上でのリスクになります。
ということで、この病気の可能性が高い事とこの病気による手術リスクが高まる事を説明し、その病気の検査をさせていただくことになりました。
さて、その病気とは・・・・
体型と被毛でなんとなく病気は絞られます。
もちろん春の健康診断での血液検査とも一致します。
手術後の写真ですが、所々皮膚の薄皮が円形に剥けているのがわかりますでしょうか?
これを表皮小環といいますが、膿皮症の典型的な症状です。
さらに頸部にも同様に膿皮症の所見があります。
体全体の脱毛(薄毛)、膿皮症、体型、年齢から考えられる病気と言えば・・・・
甲状腺機能低下症です。
検査結果の数値としては参考値内ギリギリ加減ですが、検査結果の数値はあくまでも「参考値」。
数字はあくまでも数字であって、臨床症状として出ていれば数値はギリギリ参考値内であってもそれは甲状腺機能低下症と私は考えます。
ということでこの子は乳腺腫瘍のみならず、鼠蹊ヘルニア、甲状腺機能低下症が併発していたのでした。
甲状腺から出るホルモンは体の活動を活発化させてくれる重要なホルモンです。
それが少ないということはもちろん色々な病気を併発する可能性があります。
なにせ体の活動性が低下するんですから。
そのうちの一つが膿皮症。
皮膚バリアの機能が低下し、膿皮症などの皮膚疾患として表れる事もあります。
もちろん毛根の活動も低下しますので、脱毛(体全体、もしくは左右対称性の薄毛)が起ります。
血液検査では高脂血症。
体の代謝が落ちる訳ですから、脂肪分を燃焼できず、高脂血症になるというわけです。
もちろんおかげで、ずんぐりむっくりの体型になるわけです。
ということで、この子は春の健康診断の時点でその可能性が高い事に気づいていたのですが、私の説明下手から確定診断をするためのホルモン検査(T4、FT4)を受けてもらえなかったという訳です。
なので最後の3つ目は隠されていたというよりも気づいていたけれど、飼い主さんに上手く納得してもらえず、検査ができずに確定診断にいたっていなかったということです。
でも甲状腺機能低下症であれば麻酔のリスクも上がりますし、術後の傷口の治りの悪さにも繋がる事、そのほか併発する病気が今後出てくることを説明させていただき、甲状腺ホルモンの検査をすることを納得していただきました。
検査、検査と検査ばかりを押し付ける事はしたくないのですが、結果、乳腺腫瘍の手術をすることになった結果、甲状腺ホルモンの検査を行ないましたが、本来ならば、やはり疑わしは検査ということも重要です。
必要な検査、不必要な検査を見分けるのは難しいですし、獣医師にとっては必要な検査と思っても飼い主さんにとってはもっとその見分けは難しいでしょう。
動物病院にも色々な病院があります。
何でもかんでも検査という病院から、飼い主さんの費用負担を考え、最低限度の検査しかしない病院まで(検査検査検査 〜どこまで必要?〜参照)。
どちらがいいとか、悪いとかではなく、結果論として検査、検査で隠れていた病気が見つかる事もありますし、場合によっては不必要な検査で利益を上げようとする病院ももちろんあるようです。
そしてさらに結果論として飼い主さんの費用を考えて、最小限度の検査で飼い主さんの費用の負担も軽減され、健康なまま過ごす子もいますし、追加検査をせず、病気の見落とし、誤診をしてしまうこともあるのも現状です(誤診〜絶対にしてはならない、絶対にしたくない、でも絶対に避けられない〜参照)。
いずれにせよ、結果論になってしまうのですが、明らかに利益目的の不必要な検査は問題ですし、少ない検査で仮診断をし、その仮診断で治療に反応しないにも関わらず、追加検査も行なわずダラダラと同じ治療を続けるのも問題です。
そのあたりの落としどころをいかに見つけるか、そして検査の数値だけに惑わされず診断、治療を行なうのが獣医師の真価が問われるところです。
つくづく、獣医療の難しさを思い知らされる日々です。
診療時間の臨時変更のお知らせ。
大変申し訳ありませんが、9月11日(木)の夜の診療は18:00~19:30までとさせていただきます。
午前の診療は通常通り9:00~12:00で行ないます。
ご迷惑をおかけしますがご協力お願いいたします。
コメント
コメント一覧
膀胱の腫瘍や肺転移したのかな…などと考えていました。
足立先生のブログはためになる情報が多くてとてもとても参考になります。
猫喘息と珍しい肺の病気を患う愛猫の飼い主より
一つの症例を引っ張って書くのというのは以前にもしましたが、意外とみなさん色々推察されるんですね。
もったいぶって悪いかな?と思いつつ(嘘)、今後もそういった症例があれば続けてみようかなと思ってしまいました。