広島土砂災害:PTSD防げ…子供の心をケアで支援チーム

毎日新聞 2014年08月27日 13時00分(最終更新 08月27日 16時29分)

 広島市北部の土砂災害で大きなショックを受けた子供の心をケアしようと、広島県内の精神科医や児童心理司などからなる「こども支援チーム」が避難所の巡回を始めている。県が医師会や市児童相談所などに呼びかけて結成した。既に精神医療支援に当たっている「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」とは別に、対象を子供に特化。心的外傷後ストレス障害(PTSD)など心の傷の重症化につながらないよう目を凝らす。

 「家が流されるといけないから避難所にいこうよ」

 甚大な被害を受けた安佐南区八木地区に住むパート女性(35)の自宅は被害を免れた。しかし、小学6年生の次男(11)は雨が降り出す度にこう心配するようになった。中学3年生の長男(14)は風呂に入っても、すぐに上がってしまう。だから雨の日は近くの避難所に寝泊まりする。女性は「ささいなことでも子供の話を聞いていきたい」と心を砕く。

 被災した子供をケアする支援チームは、宮城県が東日本大震災後に組織して大きな効果を上げている。同県によると、特に震災後の半年間は、夜泣きや暴力的になるなどPTSDとみられる重い症状についての相談が多かった。

 今回の広島県のチームには小児科医や児童相談所職員、大学の研究者らも参加。避難所を普段から回っている保健師から報告を受け、不調な子供のケアや保護者からの相談などに当たる。面談は1人当たり20分ほど。活動初日の25日と26日の2日間で計19件の相談を受けた。症状の重い子供は1年ほどかけて医療的な支援を続ける予定で、県の本広篤子・働く女性・子育て支援部長は「子供はストレスも大人と違う。早く対応することが大切だ」と力を込める。

 また、全国的にも今回の災害が初活動となったDPATは27日までに、3チームが避難所7カ所で計26人31件の相談に乗った。家族の死による抑うつ状態やプライバシーのない避難所生活でのストレスの他、雨音などちょっとしたことに過敏になるなどの症状が見られるという。

 一方、保護者サイドでも子供を支える自主的な取り組みが始まっている。

 避難所になっている梅林(ばいりん)小学校(安佐南区)では25日から、図工室を子供の遊び場として開放した。不安を少しでも和らげたいというPTAの提案を受けたもので、連日約20人がけん玉や折り紙に夢中になり、歓声を上げている。

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