2014年09月08日

女性にも楽しんでもらいやすいボドゲはどういうものか?

【ボードゲーム会にまだまだ女性が少ないのは?】
現在マーケティングにおいて、「女性の心をいかに掴むか」ということは多くの企業にとって課題である。
なぜなら、彼女たちは流行に敏感であり、家庭における購入決定者であるからだ。
しかしながら、ボードゲームに立ち返って考えてみると、私は色々なボドゲ会に行っているが、女性の割合はすこぶる少ない。ほとんどが1割以下(30〜40人いて2,3人)の印象だ。
その原因はなんだろうか? 2つの可能性に分けて考えてみよう。

1. そもそも女性はボードゲームが好きではない。

例えばプラモデルなどの趣味は、女性はそもそも好きでないということが当てはまりそうだ。
しかし、ボードゲームに関してはこの可能性は低そうだ。なぜなら、同僚の女性陣とボードゲーム会を自宅でするときには、ほとんどの人が盛り上がるし、楽しんでいる。
ゲーム会に来られる女性も、リピート率は高そうだった。

2. ボードゲーム会の雰囲気が男性寄りである。

これは大きいだろう。というよりは、主催者の影響が大きいように思う。
以前いったボドゲ会は、会社の同期で立ちあげたものらしく、最初から女性もいる環境から始まっていたらしい。そのボドゲ会の女性の割合は4割近かった。この事例から考えれば、主催者の方向性とその構成メンバー、つまりは「女性目線での参加のしやすさ」が影響すると思われる。
また、下記のサイトには男女の脳の差に関する科学的な検証結果が書かれている。

http://www.men-joy.jp/archives/110511

曰く、男性は小脳が発達しており、一つの分野について極めるのが得意だという。(例:一般的に将棋や囲碁のプロは男性の方が強い)
一方、女性は右脳と左脳を繋げることが得意で、様々なことを同時にこなす、マルチタスクが得意だそうだ。(例:複数の料理を要領よく同時に作る)
ここから考えると、現在の男性ボードゲームプレイヤーは、趣味の中でもウェイトの高いものとしてボードゲームを扱っている可能性が高く、結果的にフリーク・ガチな雰囲気が醸成されやすい。
一方、女性がココに求めるものは、「新しい体験に触れてみたいという好奇心」や、「新たなコミュニティづくり」が主体なのかもしれない。

【得意=楽しい?】

さて、それでは今後女性のボードゲームプレイヤー(購入してくれる人)を増やすためにはどうすればいいだろうか。上述では、「ボードゲームは女性にも楽しんでもらえる」と書いたが、新たにボードゲームをプレイする女性に「楽しんでもらいやすいボードゲーム」というのは、どのようなものなのだろうか。

それを考えるにあたって、まずは「ゲームにおける楽しい」を分解することから始めよう。
楽しいとはつまり、「夢中になること」とも言えるだろう。
いくつかの資料を元に、7つの要素に分解をしてみた。

「相手との関係性」
1. 競争:優越感を得られる (例:他人より良い装備、ランキング高い)

2. 協力:達成感、貢献感、評価を得られる (例:連携して強い敵を撃破、フィードバック機能)

「自己完結するもの」
3. 収集:満足感を得られる (例:モンスター図鑑を埋める)

4. 学習:自己成長を感じられる (例:繰り返しプレイしてようやくクリアできた)

5. 表現:アイデンティティを感じられる (例:アバター機能)(他面的には相手との関わりも関係)

6. 発見:知的好奇心を満たす (例:豆知識Tips)

7. 没入:その世界に入り込める感覚を得られる (例:ストーリー、世界観)

さて、その上で次に「得意なことは楽しいか?」について考えてみる。
なぜなら、女性と男性では既に挙げたサイト(http://www.men-joy.jp/archives/110511)にあるように、得意なことが少し異なるためだ。仮に「得意なこと=楽しい」のであれば、女性が得意なことを満たせるゲームが女性に受け入れられやすいゲームということになる。

これについては、得意・不得意の軸と楽しい・楽しくないの2つの軸でマトリックスを使って整理してみる。

得意・楽しいマトリックス.png

結局のところ、プレイヤーがゲームに何を求めているかで答えは変わってくる。
「相手との関わり」を重視する人にとっては、得意であることは楽しいことと相関がありそうだ。
一方、「自己完結」で楽しめる人にとっては、得意であることは楽しいことと相関性が低いだろう。

では、女性の場合どちらが多いのか。
この答えになるかどうかは分からないが、既存ゲーム市場の成功事例から引っ張るのが良さそうだ。

日本ゲーム市場の歴史の中で女性ユーザーをゲームに取り込んだことで成功したゲームはいくつかあるが、その中でも顕著なのは「どうぶつの森シリーズ」ではないだろうか。
2001年以降シリーズ累計1,800万本以上売れているこのシリーズは、特に携帯ゲーム機になった「おいでよ どうぶつの森」「とびだせ どうぶつの森」で人気が加速した。その開発陣の大半は女性であり、ターゲティングも女性を意識しているのは明白である。

この「どうぶつの森」シリーズにおいて、強いゲーム要素はなんだろうかと考えてみると、「自己完結」要素が圧倒的に強いことが分かる(もちろん、協力・競争要素もあるが)。

収集:色々な家具などを集める
学習:繰り返しプレイで育っていく
表現:自分だけの村作り(ここに他者との関わりも入る)
没入:かわいい世界観、主人公は自分、日常との連動イベント

つまり、多くの女性がゲームに求めていることは競争、協力要素より、上述のようなものなのではないか。

【ボードゲームの目的にジレンマ】

しかしながら、よくよく考えてみると、ボードゲームの最終的な目的は「勝つこと」あるいは「負けないこと」であるものが圧倒的に多い。その制約の中でどのようなゲームにすれば女性に楽しんでもらいやすいだろうか。
これには2つの方向性があるだろう(この2つは相反するわけではない)。

1. 女性が得意なマルチタスク、もしくは言語・感情分野に根ざしたゲームを作る

つまり、「得意だから楽しい系」の女性を取り込む戦略だ。マルチタスクに加えて、女性のほうが左脳が発達している傾向にあると言われている。感情と言論の結びつけも上手いため、ブラフ系ゲームは女性のほうが強いだろう。「人狼ゲーム」が女性にもウケているのは、この「女性の強み」と「人狼の世界観への没入感」にあると思われる(状況が容易に想像しやすく、緊迫感もある。リアル脱出ゲームも同様に世界観をとても大切にしている。)
もしくはマルチタスクを具体化するなら、1度の複数のことを考えて実行しなければならないゲームだ。そしてその実行には制限時間、もしくは早いもの勝ちという制限があったほうが良い。じっくり考えると男性の方に優位性がありそうだ。

2. 勝ち負け以外の楽しい要素を盛り込んだゲームを作る

当然ゲームなので「勝ち負け」要素はあるのだが、その過程において、女性に受け入れられやすい要素をちりばめることだ。
まずもっとも重要なのが、没入感。つまりパッケージなどから感じられる「かわいい」「面白そう」という空気感、そして実際にそれがゲームシステムとマッチしているかどうか。そのテーマは「戦う」よりも、「集める」「作る」「育てる」「購入する」といったほうが受け入れやすいだろう。このあたりのテーマ性の男女差については、下記のサイトの本能マップが参考になる。

http://yuofc2.blog72.fc2.com/blog-entry-238.html

女性にコミュニケーションゲームが受け入れられやすいのは、言語分野の得意性もあるが、それ以上に勝ち負け要素の薄いゲームが多いからだ。
重要なのは「没入できるデザインとテーマ性」、そしてゲームの過程における「自己完結」できる要素「収集」「成長」「表現」「発見」を散りばめることだと考える(全てある必要は無い)。

【ポイントの整理】

・ボードゲーム市場における女性プレイヤーはまだまだ少ない(全体の1割)

・一方で女性を取り込むことは、市場全体の活性化につながる(流行の発信源であり、家庭における購入決定者であることが多いため)

・ゲームにおける楽しさは大きく分けて7つの要素に分けられる。
「相手との関わり」に関係する「競争」「協力」
「自己完結」で充足できる「収集」「表現」「学習」「発見」「没入」

・「得意」であることは、必ずしも「楽しい」につながるわけではなく、その人が求めていることによって異なる。

・どうぶつの森シリーズが女性に受け入れられ大ヒットしたのは、「自己完結」側の要素が大きい。

・ボードゲームは「勝ち負け」が最終ゴールであるものの、「没入感」を筆頭に、「自己完結」側の要素を中心に添えることで、女性にも楽しんでもらえるものになるだろう。
posted by らりお at 17:18| Comment(0) | 市場分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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