凛七星氏の裁判に対する声明

2014年9月8日 at 9:14 PM

本年8月8日、大阪地方裁判所にて、凛七星氏の「生活保護受給に関する詐欺事件および同事件関係者に対する脅迫事件」について懲役2年(執行猶予4年)の判決が出て、8月22日に確定致しました。私たちは、カウンターの同志である氏に対する、この判決を厳粛に受け止めるとともに、この事件に関連して様々な損害や苦痛を被られた方々に対して謹んでお見舞い申し上げます。また、この事件に関連して、様々なかたちでご支援くださった方々に厚く感謝申し上げます。

本件は、大阪府警公安警備課により異例の対応が見られました。
これは本件が、当局の政治的な目的のために立件するいわゆる公安事件であったことを示唆するものです。起訴状と判決文にあるように、生活保護を受給している期間にあった「友人知人からの借金や創作活動への支援金などの収入を伏せて申告しなかったこと」による不申告、およびそのことを「公表しようとした関係者に対して発した言葉」が脅迫として裁判所によって犯罪に認定されました。これらの点は凛七星氏に、深く受け止めて反省してもらいたいと私たちは考えます。しかし、凛氏がレイシズムに対するカウンター活動をすることがなければ、今回の事件が逮捕・起訴に発展することはなかったでしょう。

まず述べたいのは、今回の件はそもそも事件化されるべきであったのか?ということです。凛七星氏の生活保護受給は2011年6月から始まり、2012年2月に終了しています。これは凛氏がカウンター活動を始める前のことでした。報道されているとおり、この間に支給された金額は医療費を含めて110万円余りで、申告しなかった友人や知人からの支援金額は約70万円です。以上の点が不適切な受給として事件になりましたが、事件になる前に凛氏は市当局による調査・指導を受けたのち、受給額を全額返還していました。また、当該保健局の見解に対する再審請求を大阪市役所本庁に出していましたが、それも取り下げていますので、この問題は当事者間で解決済みでした。類似の案件はきわめて多数であり「凛七星氏のみを告発することは公平性を欠く」との判断から市当局は告発を考えていなかったにもかかわらず、警察は証拠を収集して被害届の提出を促したと当局の担当者は述べています。また生活保護事件に絡んで立件された脅迫の件でも、一般的に慣用句として使用されている文言が関係者に対して身体的な危害を及ぼすことを予想させるために立件したという、首を傾げたくなる見解が裁判で見られました。

これ以外にも、当局の捜査手続きには疑問があります。大阪府警や大阪地検は、凛七星氏本人だけではなく、友人・知人にも家宅捜査や任意の取り調べを行いました。こうした取調べは深夜に及ぶこともあり、担当検事は社会通念上、ごく一般的な金銭の貸し借りを詐欺事件と関連づけて供述させようとして「証言によっては、あなたも共犯とみなすことがある」とか「今の話を録音してないでしょうね?」という趣旨の発言をしたとのことです。警察・検察の関係者からは、「別件逮捕」「私たち権力側の立場からは、今回の件とヘイトスピーチに対する反対運動と関係なく…」等々の発言もありました。逮捕後の取り調べでは、本来の案件ではないはずのカウンター活動や人脈・関係について毎回執拗な尋問が繰り返されています。この検事は後日、男組のメンバー8名が逮捕された際にも担当していて、これも偶然とは思われません。これらの捜査手法や「カウンター団体主宰者」であることを強調したマスコミへの情報提供の仕方からは、この事件はカウンター活動を抑制することが本来の目的であったと考えざるをえません。つまり警察、検察および裁判所は恣意的に犯罪や犯罪者を作り出しうるといえるのではないでしょうか。私たちは、このことを深刻に危惧しています。

さらには捜査中に著しく正当性を欠く処遇がありました。逃亡や証拠隠滅の恐れがないにもかかわらず、大阪地方裁判所の決定で凛七星氏は4月15日から7月9日まで約3ヶ月間にわたって拘束されました。起訴後は速やかに拘置所に移送されるべきですが、6月末まで大阪府警本部の留置場におかれています。裁判所が弁護人以外との接見を禁止した期間も長く、接見交通権が十分に確保されませんでした。保釈を求める準抗告は却下されました。勾留中は、たびたび要望したにもかかわらず充分な医療が受けられず、そのために本人は現在も体調不良な状態にあります。加えて飲食店の営業ができなくなるという状況を作り、経営によって社会の一員としての義務を果たそうとする凛氏の生活を損なう結果となったことは本末転倒であり、公共の利益への奉仕者としての本分にもとる職務態度であるというほかありません。

また今回の事件に関しては、起訴された以外にも凛七星氏が犯罪行為をしていたかのような噂がインターネットなどで流されました。上述するように、当局の捜査は極めて強硬かつ苛烈であり、犯罪行為が見逃されることは考えられません。つまり起訴された2件以外に何某かが存在した可能性はありません。私たちはこのような噂を事実無根として否定するとともに、凛七星氏に対する名誉毀損として強く抗議します。そして、この事件が報道されたのち、凛七星氏以外のカウンター活動の関係者や在日コリアンに対する深刻な誹謗中傷も多く行われました。いうまでもなく本件は凛七星氏個人にかかわるものです。繰り返しますが、問題となった事件は2011年6月~2012年2月にかけてのことで、凛七星氏が代表を務めていた「友だち守る団」結成前のことです(なお、「友だち守る団」は2013年5月に解散しています)。したがって、本件はカウンター活動関係者とは何ら関わりのないものであることは明らかです。それにもかかわらず、事件の責任をカウンター関係者、さらには在日コリアン全体に拡張し、在日コリアンに対するヘイトスピーチを正当化するといった誹謗中傷はまったく不当なものであると考えます。当局や悪意ある発言者らによる一連の件は、日本社会におけるエスニックマイノリティの正当な権利回復運動であるカウンター活動や、在日コリアンへの不当な攻撃であるという点でレイシズムの一種であり、重大な人権侵害です。このような行為は一切許されるべきではないと、私たちは改めて主張します。

私たち男組は今後も法律と公序良俗を尊重しながら、レイシズムと闘ってゆきます。その道のりは、決して平坦なものではないでしょう。時に、悪意にまみれ、屈辱を浴びせられることも覚悟しています。人種差別という醜いものと粘り強く闘うことで、誰もが社会の一員として誇りをもち、お互いを尊重し、共に生きることができる社会を私たちは目指します。


2014年9月8日
男組代表 高橋直輝