社会
大和・米軍機墜落50年 悲劇二度と…慰霊塔建立へ 平和団体「今こそ後世に」集団的自衛権容認
米海軍厚木基地(大和、綾瀬市)を離陸した艦載機が大和市の鉄工所に墜落し5人が死亡した事故から、ことし9月で50年の節目を迎える。ジェット機が低空を飛び部品落下事故が絶えない地元には、集団的自衛権行使容認で日米同盟が強化される中、基地が実際の戦争に巻き込まれるとの懸念も増す。「事故を風化させず、基地の危険性を訴え続ける」-。戦後日本の安全保障政策の歴史的転換点とされる今、市内の平和団体は慰霊塔建立を決め、穏やかな空と恒久平和の実現を願う。
「エンジン音がぱたっと止まり、『ドドド』とすごい音がして、墜落と直感した。現場に駆け付けると、鉄工所からもうもうと白煙が上がり、何やらまったくわからなかった」
事故当時、現場近くの自宅にいた元教員の尾形斉(ひとし)さん(78)が、突然の大惨事を振り返る。基地を離陸直後のジェット機が約1キロ離れた鉄工所に墜落し、爆発。乗員は事前に脱出、鉄工所従業員ら5人の命が奪われた。
あの日から半世紀。近年では2012年2月に艦載機から金属パネルが落下、13年12月にはヘリコプターが不時着に失敗した。墜落には至っていないものの、米軍機の重大事故は県内で毎年のように起きている。
尾形さんは「人間のやることなので、事故は必ず、どこかで起きる。常に危険と隣り合わせの状況は変わらない」と、基地撤去の必要性を訴える。
慰霊塔の建立と慰霊祭の開催を-。大和市内で基地に向き合う「厚木基地爆音防止期成同盟」「市平和委員会」「憲法九条やまとの会」「大和の空を考える市民ネットワーク」の四つの平和団体は、墜落事故の惨状を後世に伝えようと昨年から節目の事業を計画。5日に大和市深見西の生涯学習センターで実行委員会の結成集会を開き、市民ら約100人が集まった。
くしくも憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使を認める閣議決定から4日後。実行委の事務局担当で元藤沢市職員の久保博夫さん(63)は「日本が戦争に巻き込まれる可能性は高まった。厚木基地が他国から攻撃される危険性も増している」と指摘。「新しい市民にも50年前から続く基地の危険性を訴えたい」と慰霊事業の意義を訴えた。
実行委は9月13日、現場で慰霊祭を開き木製の慰霊塔と説明板を設置する。設置場所などは今後検討する考えで、1口500円の賛同金を集めている。
【神奈川新聞】