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Danas je lep dan.

2014-09-07 貴重な日曜夜の間違った使い方

[][]錦織圭の勝利をセルビアメディアはどう伝えたか

 セルビアで最も人気のあるスポーツ選手,ノヴァク・ジョコヴィチを日本の錦織圭が破ったことが話題になっています。母国のヒーローの敗北は,セルビアでどのように伝えられたのでしょうか。夜遅くまで友人宅で碌にルールも知らなかったテニスを見た翌日なので(卓球のルールしか知らなかったので,サーヴが失敗しても1回だけなら失点にならないとか,3セット先取だけど1セットは6ゲーム先取だとか,色々と複雑なルールだと思いました),有名どころの新聞しかチェックできませんでしたが,取り敢えずいくつか訳出してみようかと思います。

 これまでのこのブログでの翻訳と同じく,厳密な直訳ではなく日本語としての読みやすさを優先した意訳をしている箇所がありますが,もしもそれでも説明のつかない誤訳があればご指摘ください。また,セルビア語の記事では,「ジョコヴィチ」「錦織」という名前を何度も繰り返すのは芸がないということなのか,ジョコヴィチであれば「ノヴァク」「セルビア人」「世界ランク1位(の男)」,錦織であれば「圭」「日本人」などの言及をされることがありますが,特段それらの呼称に修辞以上の意味があるというわけではないです。

 まずはセルビアの伝統ある日刊紙『ポリティカ』(紙名は「政治」という意味)の記事「錦織がジョコヴィチを倒した」から。ただし記事の大半は試合の内容を振り返るもので,知らないテニス用語とかも出てきて正直全訳するのがめんどいので,最初の2段落だけ訳しました。

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 世界最高のテニス選手が全米オープンの準決勝で思いがけない敗北を喫した――日本人がセルビア人に6:4, 1:6, 7:6 (7:4), 6:3で勝利し,はじめてグランド・スラムの決勝に進んだ。

 ノヴァク・ジョコヴィチは全米オープン準決勝で歩みを止めた。彼を6:4, 1:6, 7:6 (7:4), 6:3で破ったのは日本人の錦織圭で,キャリアではじめてグランド・スラムのひとつの決勝まで進出した。ラオニチとヴァヴリンカののち,錦織はセルビア人を倒し,また当然だがタイトル獲得の機会に到達した。世界ランク1位の男はニューヨークで行われる試合に5回連続で出場する機会を逃した。

Нишикори срушио Ђоковића : Тенис : Спорт : ПОЛИТИКА

 続いて,『ヴェチェルニェ・ノヴォスティ』(紙名は「夕刊報知」という意味)の短めの記事「錦織はジョコヴィチにショックを与え,彼を全米オープン準決勝に置き去りにした――『自分らしくなかった』」を全訳でお届けします。

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 世界最高のテニス選手ノヴァク・ジョコヴィチは,準決勝で日本人の錦織圭に6:4, 1:6, 7:6 (7:4), 6:3で破れ,USオープンの決勝に進むことができなかった。

 錦織は激戦の果てにニューヨークでのグランド・スラムにおける5回連続の決勝進出への道にいたジョコヴィチを止めた。

 セルビアのテニス選手は,2011年から制してきた大きな大会の準決勝で,世界ランク1位に期待されるようなプレイをすることができなかった。

 ジョコヴィチは際だっておらず,「寒暖」原則にしたがってプレイし,コートでは著しく集中力を欠いた動きをした。

 ネットの向こう側には,意外にも順調に27歳のベオグラードっ子のところまで勝ち進み,そしてほぼ3時間の試合の後にそのキャリアで初のグランド・スラムの決勝に進んだ,特別なモティヴェーションを持つ,成長途上の日本人がいた。

 日本の錦織圭への敗戦後,世界最高のテニス選手ノヴァク・ジョコヴィチは簡潔に,USオープン準決勝では自分らしくなかったと述べた。

「このトーナメントではもう一歩先に行くことができた。しかし,何をやったのかがスポーツだ。対戦相手に祝福を伝えねばならない。わたしは更に続ける。シーズンの終わりまでに昨年出したような結果を出すために頑張るつもりだ。今日はあと1セットあったが,そこに辿り着けなかった。わたしの勝負とはほど遠い。わたしはたくさんのミスをし,短い球を送り,そしてそれは端的に言えばわたしではなかったということだ」とノヴァク・ジョコヴィチは大会公式ホームページで述べた。

 彼は,厳しい気象条件は錦織への敗北の言い訳にはならないと付け加えた。

「ふたりの選手の条件は同じだった。プレイするのは簡単なことではないが,しかし彼はそれまでの試合ではより長い時間をコートで過ごしたのだから,言い訳にはならない。錦織は素晴らしいプレイをした。これまで注いできた努力の上にいる彼に祝福を送る。今日彼はより良くなった」と彼は言付けた。

 マリン・チリチ(クロアチア)vs.ロジャー・フェデラー(スイス)戦の勝者が,錦織の決勝戦での対戦相手となるだろう。

 決勝戦は月曜日,中央ヨーロッパ時間で23時から行われる。

Nišikori šokirao Đokovića i ostavio ga bez finala Ju-Es opena: Nisam ličio na sebe | Tenis | Novosti.rs

 補足しておくと,錦織の決勝の相手はマリン・チリチに決まりました。ちなみにNHKで「シリッチ」と報じられていますが,Čilićなのでこれは間違いです。いい加減,東欧にはcをサ行で発音する言語などまずないということを学習していただきたいなと。全米オープン公式ホームページには彼のインタヴューが英語で掲載されていますが,わたしは基本的にそれを読まず(というか存在に気付かず),セルビア語の解釈に困ったときだけ参照しました。ただおそらくそちらの方が原典なので,詳しく知りたい方はそちらを参照していただければ。また,ハフィントンポスト「錦織圭が日本選手史上初の決勝進出 敗れた世界一位のジョコビッチも賞賛『彼の努力を祝福したい』」という記事を訳出にあたって参照しています。

 関連過去エントリ:

 「日本人は恩を返した」――セルビア水害への支援活動が現地で紹介される - Danas je lep dan.

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