米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設予定地、名護市で7日にあった市議選で、移設反対の現市長派が定数27の過半数14議席を占めた。

 市長派ではないが移設反対の公明も含めると、反対派は16議席。2010年に稲嶺進市長が初当選して以降、市長選、市議選で2回ずつ、移設反対派が勝ち続けており、地元の意思が改めて確認されたと言える。

 市議会は、仲井真弘多(ひろかず)知事の埋め立て承認に抗議する意見書を出すなど、稲嶺市長を支えてきた。今後も市長と市議会が移設に反対する構図が続く。

 これに対し、菅官房長官はきのうさっそく「辺野古移設については、淡々と進めていきたい」と記者会見で述べた。

 辺野古移設が最大の争点となる11月の知事選への影響を避けつつ、地元の意思は無視して移設事業を進める考えのようだ。

 実際、沖縄県議会や那覇市議会が工事中止などの意見書を出しても、海底ボーリング調査は厳重な警備のなか続いている。

 さらに今月に入って防衛省は、埋め立て工事の設計変更を県に届け出た。市との協議が必要な川の切り替えや土砂運搬方法を変更し、協議なしでも工事を進められるようにする狙いがあるとみられている。

 今回の内閣改造で菅官房長官が新設の沖縄基地負担軽減担当を兼務したことについて、稲嶺市長は「沖縄にしっかりと説明して理解してもらうと、耳にたこができるほど聞いてきたが、言っていることとやっていることが全く相反する」と、にべもなかった。

 反対派の説得も説明も飛び越して、菅氏は相変わらず「普天間飛行場の危険性除去や米軍の抑止力を考えたときに、(辺野古移設が)唯一有効な解決策である」と繰り返すだけだ。

 地元では「基地負担軽減担当ではなく、基地押しつけ担当だ」という声さえ聞く。

 辺野古への移設が本当に「唯一有効な解決策」なのか。日米間の約束とはいえ、突き詰めて導き出された結論なのだろうか。政府は立ち止まって再検討する必要がある。

 たとえば、中国などのミサイル技術が向上しているのに、米軍基地を沖縄に集中させて軍事上、問題はないのか。政府が本土移設に真剣に取り組まないのは、政治的な混乱を新たにつくりたくないだけではないのか。

 沖縄だけに過度な基地負担を強いるべきではない。政府が沖縄との対立を深め、地域の恨みを買えば、肝心の安全保障の足元がふらつく。