記事詳細
【主張】
昭和天皇実録 「激動の時代」に学びたい
宮内庁が編纂(へんさん)した「昭和天皇実録」の内容が公表された。昭和天皇の誕生から崩御まで87年余、1世紀近い事跡を記した初の公式記録である。
特に即位後、64年にわたる昭和は、先の大戦を経験し敗戦から復興を遂げた苦難の時代だった。とりわけ終戦の決断は、昭和天皇でなければ望めなかったといわれる。
昭和天皇を中心にまとめられた史料を虚心坦懐(たんかい)に読み、国のあり方を考える契機としたい。
昭和天皇実録は61巻、1万2千ページ余りにのぼり、来春から順次公刊される。3千点以上の資料を基に、その日の昭和天皇の動静などを客観的に記述している。
実録の全体を通して改めて浮き彫りになったのは、平和を希求し国民と苦楽を共にした昭和天皇の姿である。
注目された終戦の「ご聖断」までの経緯では、ソ連軍が満州侵攻を開始したとの報告を受けた直後に木戸幸一内大臣を呼び、鈴木貫太郎首相と話すよう指示を出したことも書かれている。
終戦直後の退位問題にも触れている。木戸内大臣に、自らの退位により戦争責任者を連合国に引き渡さずにすむか聞いたことや、極東軍事裁判の判決を前に退位が取り沙汰された際には、退位せず責任を果たす意向を示したことも記述された。
昭和21年から29年にかけ、戦禍で傷ついた国民を励ます全国巡幸は約3万3千キロに及んだ。天皇は一人一人に生活状況を聞くなど実情に気を配った様子も分かる。国民が一体感を持ち、奇跡ともいわれる復興を遂げた当時のことを多くの人に知ってもらいたい。
幼少期の手紙や作文なども初公開された。これまであまり知られていなかった逸話もある。
昭和天皇をめぐる歴史的資料はこれまでも多く見つかり、研究が行われている。今回、新たな側近の日記なども発見され、さらに研究が進むものと期待されている。24年かけて編纂に当たった関係者の労を多としたい。
平成になって四半世紀余りが過ぎ、激動の時代を身をもって体験した世代も少なくなりつつある。来年は終戦70年の節目を迎えるが、国をいかに守り繁栄させていくかなど、昭和から引き継いだ宿題もなお多い。
貴重な記録が映し出した時代から学び考えていきたい。