(2014年9月6/7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
「制裁に対する当社の対応は何か?」。モスクワの不動産会社によって急遽建てられた広告看板には、こう書いてある。「金利たった9.5%の住宅ローンです!」
ロシア全土でこれと似た看板が続々登場している。レストランは「アンチ制裁」メニューを宣伝している。小売店は「制裁ディスカウント」を提供している。様々な商店は、「ロシアの敵」――つまり、バラク・オバマ米大統領とアンゲラ・メルケル独首相のこと――はお断りと警告し始めた。
皮肉たっぷりのユーモアと国家的なプライドを誇示する行為のメッセージは単純だ。
ロシア企業への資金供給を圧迫し、モスクワのスーパーマーケットの棚からフランス産チーズやポーランド産りんごを締め出したロシア政府と西側諸国の制裁合戦は、ロシア国内で意見の対立を生むどころか、ロシア人を団結させたということだ。
「ロシアはもう長年なかったほど強く結束しているように思える」。モスクワのビジネスマンのドミトリー・ベロブラーギン氏はこう語り、クリミアがウクライナへ返還されるのを目の当たりにするくらいなら、その前に財産の半分を投げ出してもいいと言う。「ロシアは一つになりつつあり、強く団結している。ほとんどのロシア人の思いは私と同じだ」
西側は政府とオリガルヒの間に亀裂が生じることを期待したが・・・
ロシアの大富豪の多くはベロブラーギン氏に同感しているようで、制裁がクレムリンとオリガルヒ(新興財閥)の間に亀裂を生じさせるという西側の期待をくじいている。
「必要なら、明日にも全財産を国に差し出す」。ロシア第6位の富豪で、西側の制裁で最大の標的となった実業家の1人、ゲンナジー・ティムチェンコ氏は先月、イタルタス通信とのインタビューでこう語った。
今夏、ウクライナ東部で政府軍が盛り返したが、その後、再び流れが変わった〔AFPBB News〕
この自信に満ちた決意は、クレムリンでも見て取れる。ウクライナ軍が東部で親ロシア派武装勢力に決定的な勝利を収めるかに思えた夏が終わった後、ここ2週間で流れが変わった。西側の政治家らによると、それは主としてロシア軍の兵士と装備のおかげだ。
だが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、西側が対ロ追加制裁に踏み切る見通しになっても、まるで動じていないようだ。