錦織13歳での米留学支援のソニー元副社長・盛田氏「優勝して」
錦織の原点はソニー? テニス全米オープン男子シングルスで日本人初の決勝進出を決めた錦織圭(24)=日清食品=は、ソニー元副社長の盛田正明氏(87)=日本テニス協会名誉会長=が設立した「盛田正明テニスファンド」(MMTF)の支援を受け、13歳から米国などで経験を積んだ。猛特訓を受け、前人未到の舞台に立つことになった錦織。正明氏は“まな弟子”の活躍を喜ぶとともに、錦織に続く日本人選手の活躍を待ち望んでいる。
「テレビで(錦織)圭の試合を観戦していました。調子は良さそうですし、ここまで来たら、優勝してほしいですね」。13歳から錦織を支えてきた盛田正明氏はこうエールを送った。
「盛田正明テニスファンド(MMTF)」―。錦織は中学1年の時、このファンドの支援を受け、米フロリダ州のニック・ボロテリーテニスアカデミーに留学、世界レベルを10代前半で体感した。正明氏は、ソニーを故・井深大氏とともに創業した故・盛田昭夫氏の実弟。井深氏から「他人のやれないことをやれ」と言われてきたことがファンド設立のきっかけになった。「才能のあるジュニア選手を海外で養成したらどうなるか」。ソニー副社長などを歴任し、経営者から身を引いた後、2003年に私財を投じて設立したのがMMTFだ。
「世界レベルの日本人選手の育成」を目標にしたファンドの予算規模は年間1億円弱。厳しい選考を通過すると、渡航費、アカデミーの授業料、遠征費など1人に年間数百万円が支給される。しかし、毎年のように厳しい目標が課され、目標達成ができない場合は帰国することになる。
現在留学中の2人を除いて過去17人を送り出したが、18歳まで留学をしたのは、錦織と西岡良仁(18)=ヨネックス=の2人だけ。奨学金の返済義務はないが、世界ランク100位に入った場合は年間獲得賞金の1割を寄付するのが約束だ。錦織はその約束をしっかり果たしているという。
この日、MMTFの留学生・中川直樹(17)=福岡・柳川高=が、全米オープンジュニアのダブルスで日本勢初の優勝を決めた。06年の全仏ジュニアのダブルスで優勝した錦織以来の快挙となった。「世界で活躍するのが圭1人じゃダメ。圭に続く選手が出てこないと」。テニス界を支える正明氏だが、常に黒子に徹する。「選手に電話もしないですし、アドバイスを送ることもありません。世界で活躍できる選手を育てるのが目標ですから」