想定よりも内陸にあるロッキー山脈形成の謎を説明する新たな理論が発表された。
山脈は通常、固く密度が高い海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む海岸線付近に形成される。だが、ロッキー山脈は北アメリカ大陸の西海岸から約1000キロ内陸を縦走し、プレートテクトニクスの理論上想定される衝突ポイントよりもはるか東側に位置する。
ロッキー山脈形成の起源については、「スラブの低角沈み込み(flat-slab subduction)」説が有力視されている。スラブとは海洋プレートの沈み込み部分で、太平洋プレートが極めて浅い傾角で北アメリカプレートの下に沈み込む現象を指す。
約7000万年前、太平洋プレートのスラブが何らかの理由で突き上げられ大陸の底面をこすりながら進む。この際に生じた摩擦力によって地殻が押し上げられロッキー山脈が形成されたという。
今回発表された理論は、太平洋プレートの謎の振る舞いを前提としない。スラブ上部の大陸プレートの組成と形状に基づき、ロッキー山脈の急激な隆起に関するまったく新しいメカニズムを提唱している。
「山脈の出現に大陸の底面が最も重要な要素であることを提唱した理論はこれまでなかった」と、研究を率いたコロラド大学ボルダー校の地質学者クレイグ・ジョーンズ氏は言う。
今回の研究では、アメリカ中西部に位置するワイオミング州の下に、リソスフェア(岩石圏)の中でも特に厚みのある硬い陸塊があった可能性が示唆されている。リソスフェアは地殻とマントル最上部から成る地球表層部である。数十億年前から存在するこの陸塊は、厚さ最大300キロもあった可能性があり、海洋プレートの沈み込みを妨げたという。
つまり新説によれば、ワイオミング州の下に沈み込もうとする海洋プレートは、陸塊に押しとどめられて強く圧縮される。これにより海洋・大陸プレート間に吸引力が生じ、流動性が比較的高いマントルの岩石が両プレート間に滞留した。
この結果生じた張力により、一帯の海洋プレートの一部が高い位置に引き上げられ、上盤の大陸プレートは逆に下方向に引っ張られて、ワイオミング州とコロラド州をまたぐ大きな盆地が形成されたという。
このシナリオでは、大陸プレートは“蜂蜜を上に分厚く塗ったゴムのシート”だと考えることができるという。岩石層は長い時間枠で見ると濃度の高い液体のような振る舞いをするからだ。
“ゴムシート”が下に引っ張られると、できたくぼみに地球の“蜂蜜のトッピング”が流れ込む。これにより、岩石の分厚い領域ができる。この領域に圧力が加わると地下深くに断層ができる。断層から岩石層が上方向に突き出ることができるようになり、ロッキー山脈が形成されたという。
約4500万年前までには、北アメリカ大陸の下に沈み込んだ海洋プレート(スラブ)は通常の傾角に戻り、プレートの先端は地球の核(コア)に向かって沈降する。
また、海洋プレートの一部分のみが吸引力によって引き上げられたという考えを基にすれば、ロッキー山脈南部のコロラド高原が沈み込みプレートの上に乗っていたにも関わらず比較的安定した地塊である理由も説明できるという。「コロラド高原の下のリソスフェアはそれほど厚みがなかったため、海洋プレートの進行があまり邪魔されなかった」とジョーンズ氏は推測している。
ただし、今のところワイオミング州の下に古い陸塊があったという確かな証拠はない。
この研究成果は「Geosphere」誌2月号に掲載されている。
Anne Minard for National Geographic News
山脈は通常、固く密度が高い海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む海岸線付近に形成される。だが、ロッキー山脈は北アメリカ大陸の西海岸から約1000キロ内陸を縦走し、プレートテクトニクスの理論上想定される衝突ポイントよりもはるか東側に位置する。
ロッキー山脈形成の起源については、「スラブの低角沈み込み(flat-slab subduction)」説が有力視されている。スラブとは海洋プレートの沈み込み部分で、太平洋プレートが極めて浅い傾角で北アメリカプレートの下に沈み込む現象を指す。
約7000万年前、太平洋プレートのスラブが何らかの理由で突き上げられ大陸の底面をこすりながら進む。この際に生じた摩擦力によって地殻が押し上げられロッキー山脈が形成されたという。
今回発表された理論は、太平洋プレートの謎の振る舞いを前提としない。スラブ上部の大陸プレートの組成と形状に基づき、ロッキー山脈の急激な隆起に関するまったく新しいメカニズムを提唱している。
「山脈の出現に大陸の底面が最も重要な要素であることを提唱した理論はこれまでなかった」と、研究を率いたコロラド大学ボルダー校の地質学者クレイグ・ジョーンズ氏は言う。
今回の研究では、アメリカ中西部に位置するワイオミング州の下に、リソスフェア(岩石圏)の中でも特に厚みのある硬い陸塊があった可能性が示唆されている。リソスフェアは地殻とマントル最上部から成る地球表層部である。数十億年前から存在するこの陸塊は、厚さ最大300キロもあった可能性があり、海洋プレートの沈み込みを妨げたという。
つまり新説によれば、ワイオミング州の下に沈み込もうとする海洋プレートは、陸塊に押しとどめられて強く圧縮される。これにより海洋・大陸プレート間に吸引力が生じ、流動性が比較的高いマントルの岩石が両プレート間に滞留した。
この結果生じた張力により、一帯の海洋プレートの一部が高い位置に引き上げられ、上盤の大陸プレートは逆に下方向に引っ張られて、ワイオミング州とコロラド州をまたぐ大きな盆地が形成されたという。
このシナリオでは、大陸プレートは“蜂蜜を上に分厚く塗ったゴムのシート”だと考えることができるという。岩石層は長い時間枠で見ると濃度の高い液体のような振る舞いをするからだ。
“ゴムシート”が下に引っ張られると、できたくぼみに地球の“蜂蜜のトッピング”が流れ込む。これにより、岩石の分厚い領域ができる。この領域に圧力が加わると地下深くに断層ができる。断層から岩石層が上方向に突き出ることができるようになり、ロッキー山脈が形成されたという。
約4500万年前までには、北アメリカ大陸の下に沈み込んだ海洋プレート(スラブ)は通常の傾角に戻り、プレートの先端は地球の核(コア)に向かって沈降する。
また、海洋プレートの一部分のみが吸引力によって引き上げられたという考えを基にすれば、ロッキー山脈南部のコロラド高原が沈み込みプレートの上に乗っていたにも関わらず比較的安定した地塊である理由も説明できるという。「コロラド高原の下のリソスフェアはそれほど厚みがなかったため、海洋プレートの進行があまり邪魔されなかった」とジョーンズ氏は推測している。
ただし、今のところワイオミング州の下に古い陸塊があったという確かな証拠はない。
この研究成果は「Geosphere」誌2月号に掲載されている。
Anne Minard for National Geographic News