全体表示

[ リスト ]

映画『Finding Vivian Maier』 〜ヴィヴィアン・マイヤーを探して

イメージ 1


『Finding Vivian Maier』(ヴィヴィアン・マイヤーを探して) という映画を見ました。

ヴィヴィアン・マイヤーという女性ストリート・フォトグラファーをめぐるドキュメンタリーです。

2007 年、シカゴの歴史について本を書こうとしていたジョン・マルーフは、オークションで写真のネガのいっぱい詰まった段ボール箱を購入します。オークション会社に聞くと、写真を撮ったのは「ヴィヴィアン・マイヤー」という人だそうです。

ネガをスキャンしてみると、1950 年代頃からのシカゴの街と人々の様子がモノクロで浮かび上がってきます。マルーフはグーグルで彼女の名前を検索しました。最初は、何もヒットしなかったのですが、2 年後の 2009 年になってやっとシカゴ・トリビューン紙の記事をみつけます。それは、彼女が数日前に亡くなったという死亡告知でした。

マイアーは 1925 年にニューヨークで生まれます。その後、フランス人の母親の生家の近くにある、アルプス山中の小さな村などで暮らした後、25 歳のときにアメリカに戻ってきます。

最初は工場に勤めていたのですが、すぐに家政婦として働くようになり、これが彼女の一生の仕事となります。休みの日には、一人で、または働いているお家の子供たちをつれて、ローライフレックス二眼レフカメラ (上の写真で彼女が手にしてるカメラ) を首から下げてシカゴの街を歩き、写真を撮って回りました。

映画は、ジョン・マルーフ自身が監督となって、マイアーが家政婦をしていた家の人たちにインタビューすることで、生前はまったく知られていなかった彼女のことを解き明かそうとする試みです。

若い頃は、ちょっと変わったところのある人だったけど、長く一軒の家に勤めたりしていたので、社会的には完璧に機能していたようです。でも、子供をつれてわざわざ屠殺場にいって写真撮ったり、子供が交通事故にあったのに世話をせずに様子を写真に撮ったりするようなところもありました。インタビューに答えた 1 人は、食事を残そうとすると無理やり食べ物を口に押し込まれたそうで、それをトラウマのように語っていました。

とにかく物をしまい込む癖があって、ネガだけじゃなくて、映像テープ、録音テープ、新聞記事 (グロテスクな事件がお気に入り)、領収書、雑貨 (バッジとか) などをしこたま貯め込み、雇用主に与えられた部屋は足の踏み場もないほどで、他人が部屋に入ってくるのを頑なに拒んでいたそうです。

年を取ってからはさらに気難しくなったようで、人によっては「頭のおかしい人」と思われるぐらいエキセントリックな人になってしまった。それでも、子供の頃に彼女の世話を受けていたある兄弟がアパートを借りてくれて、家賃も払ってくれていたらしい。

彼女の凄いのは、どうも遺産が入ったか、遺産でもらった土地を売ったかでお金が入ったらしいんだけど、そこで世界旅行に出かけちゃうこと。普通、彼女のような境遇で、まとまったお金が入ったら暮らしの質をあげるために使うでしょう。でも、彼女はマニラ、バンコク、中国、シリア、エジプト、南米なんかに出かけて写真を撮っちゃう。それが 1960 年ぐらいの話。その頃に女の人が 1 人でそのあたりを旅行するのは相当勇気が要ったと思う。

彼女の写真は、バストショットぐらいの人物写真もいっぱいあるんですが、ほんとに不躾にシャッターを切るので、映画でインタビューに答えた 1 人は「よく撃たれなかったものだ」と言っていた。でも、彼女のカメラは、胸のところに構えて、上からファインダーを見下ろしてシャッターを切るタイプのやつなんですよね。だから、顔のところで構えるカメラよりも、被写体の人物が身構えずに自然な写真が撮れたのではないかと、映画の中でプロの写真家が解説していました。

彼女の死後、マルーフが作品をブログにアップしたところ、写真のユニークさとクオリティーの高さ、そして彼女が生前、いかに無名で、どのように発見されたか、みたいなストーリーも含めて、瞬く間に注目が集まり始めました。

今ではマルーフをキュレーターとして世界各地で彼女の写真展が開かれ、大盛況だそうです。彼女が暮らしたフランスの小さな村での展覧会の様子が映画に収められているんですが、それはとてもいいシーンです。村の人たちがやってきて、彼女が写真に収めた昔の自分や家族の姿と再会するのです。

先日、日本に帰ったときに世田谷美術館で桑原甲子雄さんの写真展を見にいったんですが、彼女の写真も同じ匂いがします。

ヴィヴィアン・マイアーさんの写真はこちらからどうぞ。


Finding Vivian Maier (2014 年、アメリカ)
7/18 at Light House Cinema
監督: John Maloof, Charlie Siskel

「映画」書庫の記事一覧

閉じる コメント(2)

フィルムを装着して一枚一枚撮って現像する時代と、Googleで一瞬にして世界が
明らかになる現代の対比も面白いと思いました。
まさかマイヤーも、今になって「身ぐるみ剥がれる」とは思ってなかったでしょう 笑

写真家の世界は男女の差がないと思うのと、古い写真って他人が見てもいいものだなと
思います。
各地で昔の写真が起こしているドラマが素敵!
NICE!

2014/7/21(月) 午後 10:27 mo

>>MOさん、
こんにちは。マルーフさんもマイヤーさんの死後に勝手に写真を公開することにちょっと罪悪感を感じたりしてたみたいで、そこのこともインタビューでみなさんに意見をいってもらってるんですね。そしたら、やっぱりみんな「マイヤーさんは望んでなかっただろう」とw
でも、フランスの村を訪れたときに、そこの写真屋のおやじさんと絵葉書にして売り出す話をしてたんだそうです。だから、まったく世に出したくなかったわけではない、とマルーフさんは納得しています。
でも、彼女はいろいろうるさそうですから、そんな見せ方じゃ、いやだ、なんて文句いってそうですが。

写真をフィルムで撮ってた時代とデジカメの時代ではほんとに変わりましたね。デジカメだと気に入らなければ消去すればいいけど、フィルムだと現像含めてお金かかっちゃいますもん。

2014/7/22(火) 午前 7:07 [ たら ]

コメント投稿
名前パスワードブログ
絵文字
×
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

閉じる トラックバック(0)

トラックバックされた記事

トラックバックされている記事がありません。

トラックバック先の記事

  • トラックバック先の記事がありません。
PR

.

人気度

ヘルプ

Yahoo Image

 今日全体
訪問者80118106
ブログリンク021
コメント12766
トラックバック053
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

よしもとブログランキング

  1. 1位
    1位
    小川菜摘
  2. 2位
    2位
    野沢直子
  3. 3位
    3位
    渡辺直美
Yahoo! Choctle
楽しい話題がいっぱい(Y! Suica)
PR

プライバシーポリシー -  利用規約 -  ガイドライン -  順守事項 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2014 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事