蚊を媒介して感染するデング熱。連日のようにデング熱の話題が報道されているため、都内在住の人は恐怖に感じているかもしれません。
でもデング熱って、実はそれほど珍しいものではありません。4年近く滞在していた東南アジアでは「家族がデング出血熱にかかって入院してるよ」なんていう話もちらほら耳にしていました。デング熱はご存知でも、デング出血熱はまだ聞き慣れないかも?
世界を震撼させているエボラ出血熱と違い、デング熱は人を媒介して感染することはありません。デング熱とはメディアが騒ぎ立てるぐらい本当に怖い感染症なのか、どうすれば防げるのか、ということを海外の事例を見ながら考えていきましょう。
デング熱の致死率
まず気になるのが「死に至る病なのか」ということではないでしょうか? 厚生労働省が今月3日に発表した「デング熱診療マニュアル」によれば「デング熱を発症すると通常は1週間前後の経過で回復する」と記されています。通常は発病後2〜7日で熱が下がり、自然に治るそうです。
デング熱にかかった患者のなかにはデング出血熱(重症型デング)の症状が出ることがあり、こうなると命に関わってきます。マニュアルには「重症型デングを放置すれば致命率は10〜20%に達するが、治療を適切に行うことで致命率を1%未満に減少させることができる」とあります。
これらのことを踏まえると、デング熱もデング出血熱も、過剰に恐怖に怯えて騒ぐ必要はないのではないか? と思えてきますよね。
フィリピンの事例
2012年の1月〜10月13日までの約10カ月の間にデング熱及びデング出血熱の発症例が13万件以上に上るフィリピン(※世界保健機関調べ)。このうち701人が亡くなりました。患者の4割は1〜10歳の幼児や子どもたちで、死亡したのもほとんどがこの年代の子たちだったそう。大人もそうですが、子どもたちは特に気をつける必要がありそうですね。
フィリピンの「マニラ日本人会診療所」の菊地宏久医師に、デング熱にかかりやすい環境とフィリピンで行っているデング熱対策を伺ってみました。
デング熱にかかりやすい環境=蚊が好む場所
「ため池、水のよどみ、古タイヤ、工事現場の水たまりなど。特に雨期には蚊の数が増えるため、注意が必要です。対策方法としては、こういった蚊の繁殖しやすい場所を作らないようにすることが大切。また、デング熱を媒介する蚊は昼間に活発になるため、日中の外出時には気をつけたいですね」(菊地医師)
国内でも蚊が好む場所へ足を運ぶのは避けるようにするのも、予防対策のひとつです。
「日本では冬になると、デング熱を媒介する蚊の成虫はいなくなる」とのこと。冬になるまで不安は残りますが、上記のことを踏まえて普段通りの虫除け対策をしてみてはいかがでしょうか。これらのことは、デングウィルスをもった蚊のいる熱帯地域に行く際にも当てはまることを、どうぞ心得ておいてください。
[デング熱診療マニュアル]
[WHO]
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