経営者の二大経典に共通するものとは!?
『ドラッカーと論語』 (安冨歩 著)
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経営学の創始者ドラッカーと古代中国の儒者である孔子、実に2500年もの隔たりがある両者の間にどんな共通点があるのか。大流行したライトノベル『もしドラ』を含め、日本に広まっているドラッカー像に疑問を感じていた安冨歩さんは、本書『ドラッカーと論語』で大胆な試みを行っている。それは『論語』をベースにしてドラッカーの『マネジメント』を読み解くというものだ。
「『マネジメント』とは経営者のためのハウツー本などではなくて、人間が学習し、精神を成長させることにこそ組織運営の本質があると説いた思想書なんです。一方で論語も、人間が自分の過ちを認め学習していく過程を社会秩序の根源と見ており、それを“仁”と呼んでいます。だから両者の間に共通点は多い。孔子の“温故知新”という言葉も、既知のことが組み替えられ、新しくなることを意味しますが、これだってドラッカーが言う“イノベーション”と同じです。それを技術革新などと翻訳するから、最先端の研究か何かと勘違いしてしまう。本来は誰にでもできることなんです」
安冨さんがドラッカーの思想に強く惹かれた理由は彼の予言力にあった。
「冷戦下、ドラッカーは誰も想像できなかったソ連の崩壊を予言したんです。それが私にとっては非常に大きな衝撃でした。ドラッカーのファシズム批判も特徴的で、民主主義や社会主義を対抗軸に据えるのが当たり前であった時代に、彼はマネジメントで対抗しようと考えた。ドラッカーは誰も気づかない新しい現実を認識しているんです」
本書では『マネジメント』の解釈に留まらず、旭山動物園やユニ・チャームといった企業の取り組みや、P2Pなるネット通信と儒教思想との比較など、領域に囚われない多様な話題が紹介される。それもこれもドラッカー同様、新しい現実を認識するためだ。
「当たり前だと思っている事は必ず何かの制約を受けています。端的な例は私のこのファッション。私は男なので男物の服を着るのが当たり前だと思っていました。でも最近、自分が本当に着たいのは女物の服だということに気づいたんです」
そう、この日の安冨さんはスカートにカチューシャという正に女性の出で立ち。見ると胸の膨らみもある。
「この格好で大学の講義もしています。世間の目を気にせず、思い込みを打破し、精神を自由に発展させる、これこそがドラッカーと論語の思想の根幹なんです」