医学部新設 県と東北薬科大で奨学基金規模に隔たり
東北に新設される大学医学部の設置者に選ばれた東北薬科大(仙台市青葉区)と宮城県の間で、奨学金の負担をめぐる認識の隔たりが浮き彫りになっている。薬科大は県に想定の2倍近い規模の基金創設を求めており、卒業生の派遣を受ける代わりに返済の責務が生じる各自治体は気が気でない。卒業生の東北定着の鍵となる制度設計だけに、薬科大と県の綿密な協議が必要になりそうだ。
私立の薬科大は、学生1人当たりの6年間の学費を約3400万円と想定する。入学定員120人のうち、50人を対象に約9割の3000万円を貸し付け、卒業後10年間の東北勤務を義務付ける方針だ。
財源は全て、県が創設する「医学生修学資金制度」に頼る考え。運用に必要な基金の規模を、薬科大は「150億円」と見積もった。
一方、県は拠出の上限を「80億円」とする。文部科学省の構想審査会で選外となった「宮城大医学部」の構想が前提となっているためだ。県立の宮城大医学部は学費自体が私立の半分以下。入学定員も60人と絞り込んだことから、薬科大の希望と大きな開きが生じている。
基金の創設には県費が投じられるが、基金に奨学金を返済するのは卒業生派遣先の自治体だ。基金は公費を原資とするだけに、規模が膨らめば「県民をはじめ、議会や市町村の理解を得るハードルが高くなる」(県医学部設置推進室)との見方が強い。
医学部新設をめぐっては当初、薬科大と東北福祉大(青葉区)の私立2校が名乗りを上げ、福祉大が退いて県が構想を申請した。さらに県が構想を練る中で、県費の持ち出し幅を圧縮させた経緯がある。
村井嘉浩知事によると、構想審査中に文科省から薬科大への支援について問い合わせがあり、基金への拠出限度を7月中にメールで2度回答した。しかし薬科大側には伝えられず採択に至った。
村井知事は「基金を取り回していくのは大変なことだと思う。薬科大に伝えなかった文科省の責任は重く、財政的に支援しなければ無責任だ」と批判する。
文科省の構想審査会は薬科大に対し、医学部の設置認可に必要な7条件を提示。運営協議会(仮称)設立など、県との密接な関わりを求めた。
薬科大の高柳元明理事長は「必要な基金の規模などについて県と話し合いたい」との姿勢を示すが、具体的な協議開始のめどは立っていない。
2014年09月07日日曜日