水俣病:一時金辞退300人弱
毎日新聞 2014年09月07日 20時09分(最終更新 09月07日 23時00分)
水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく未認定患者救済策で、熊本県の判定で一時金210万円の支給対象になった1万9306人のうち、300人弱が受け取りを辞退していたことが県への取材で分かった。一時金を受ける場合、支給する原因企業チッソに氏名などの個人情報を伝える必要があり、申請者本人や家族がチッソや関連企業に関係があるため気兼ねした人もいるとみられる。
県によると、一時金対象者と判定すると、振り込み手続きなどに必要な氏名や住所、電話番号を県からチッソに伝えていいか確認する「個人情報提供承諾書」を送付する。承諾した対象者に対し、チッソは県から伝えられた個人情報を基に請求書などを送って支給手続きを進める。
しかし、今回は支給対象者のうち300人弱が個人情報の提供を望まないと回答し、事実上一時金の受け取りを辞退した。請求書などを受け取った後に辞退を申し出た人もいた。県は「辞退理由は尋ねていない」という。
チッソ水俣病患者連盟の高倉史朗事務局長(63)は「元チッソ社員から辞退の相談を受けたり、関連会社に勤務する人が『仕事で付き合いづらくなる』と辞退した話を聞いたりもした。被害者が受け取るべき償いを自ら放棄せざるを得ない状況を放置するのは行政の怠慢だ」と話した。【松田栄二郎】