【全米テニス】錦織、世界1位ジョコビッチ撃破!日本人初V「絶対いける」
◆テニス4大大会最終戦 全米オープン第13日(6日、ニューヨーク・ナショナル・テニスセンター)
【ニューヨーク=武田泰淳】さあ錦織、4大大会制覇に王手だ。男子シングルス準決勝で第10シードの錦織圭(24)=日清食品=は、第1シードのノバク・ジョコビッチ(27)=セルビア=にストローク戦で優位に立つと快勝。4大大会シングルスでは男女を通じて日本人初のファイナリストになり、世界ランキングでもアジア人最高の8位浮上が確定。テニス界に新たな歴史を刻んだ。決勝は同じく初進出のマリン・チリッチ(25)=クロアチア=と、8日午後5時(日本時間9日午前6時)から行われる。
世界NO1撃破の瞬間を観衆が息をのんで見つめた。第4セット第9ゲームに、錦織がマッチポイントを握った。15本続いたラリーに興奮が高まる。最後はジョコビッチのフォアがベースラインを越えた。ラケットを放り投げ、両手を3度、4度と突き上げた。
「何が起こっているのか分からない。最高のプレーができた」。スタンドの誰もがスタンディングオベーションを始めた中、元NBAのマイケル・ジョーダン氏もいた。バスケットボールの“神様”も認めた快勝で、堂々の日本人初ファイナリストとなった。
4大大会で初めて日本人が第1シードを倒すため、強気のストレートを突き刺した。対角線に打つよりネットにかかるリスクはあるが、距離が短い分、威力がある。第1セット第7ゲーム。3本のストレートをライン際に叩き込み、2度目のブレークに成功した。流れをつかみ、先手を取った。
決勝をかけた一戦は過酷な条件だった。試合が始まった正午過ぎは27度だった気温は上昇した。第3セット途中、コートサイドは35度を超えた。湿度は80%近い。コートチェンジのたびに氷を首筋に当て、シャツを4度着替えた錦織だが「彼の方が疲れているように見えた」と見抜いていた。
この余裕が、終盤のヤマ場を乗り越えさせた。第3セットのタイブレーク。サーブを強くさばいてリターンを相手コート深くに突き刺すと、世界1位はミスを3連発。攻撃的なレシーブを警戒したのか、ダブルフォルトまで犯し自滅した。「あれぐらいの選手があんな簡単なミスをして、誰でもナーバスになるんだと思った」。第4セット第2ゲームで0―40になった場面でも、攻撃的なストロークで5連続ポイント。体力面、精神面でも上回り、一気に勝負を決めた。
試合時間は2時間52分。4回戦、準々決勝は4時間を超えるフルセットだったが、ジョコビッチにはそこまで必要なかった。「体の問題がないのが一番うれしい」。かつて試合中の故障が多かったひ弱さはない。反省と経験を生かした地道なトレーニングが実を結んだ。
「いいテニスができている。このまま調子を落とさずにいけば絶対にいける」。決勝で迎え撃つチリッチとは過去5勝2敗。「最近はサーブがよくて、速い展開のテニスに変えた。しっかりとしたディフェンスが必要」と油断もない。4大大会覇者まであと1勝。小学校の卒業文集に書いた夢が、現実になる。
◆錦織 圭(にしこり・けい)1989年12月29日、島根・松江市生まれ。24歳。5歳からテニスを始め、13歳で米フロリダ州のIMGアカデミーに留学。07年10月にプロ転向し、08年のデルレービーチ国際選手権でツアー初優勝。12年全豪オープンで日本男子80年ぶり8強。ロンドン五輪では日本勢88年ぶりに準々決勝進出。ツアー通算5勝。178センチ、74キロ。家族は両親と姉。