(英エコノミスト誌 2014年9月6日号)
悲しい現実だが、ウクライナではロシアのウラジーミル・プーチン大統領が勝利を収めつつある。欧米は長期戦を覚悟しなければならない。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News〕
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、宣戦布告も正当な理由もないままウクライナで忌まわしい戦争を進めている。この戦いで、大統領はいくつかの有効な強みを持っている。
言い争いが絶えないせいでプーチン大統領の抑え込みに失敗している欧米の指導者たちとは違って、プーチン大統領は自分以外の者に行動を説明する義務を負っていない。
プーチン大統領には本当の意味での同盟者がいない。そして、隣国への主権侵害と同様の無慈悲さで自分への批判の声を抑え込んでいるため、国内の制約もほとんどない。
羞恥心に縛られていないことも明らかだ。その証拠に、ウクライナの戦闘におけるロシアの役割について信じ難いほどの嘘をつき、MH17便が自身の代理人により撃墜された後でさえ、さらなる戦車と部隊を送り込む決定を下した。
何よりもプーチン大統領は、欧米の指導者たち以上に結果を重視している。プーチン大統領の地政学的な被害妄想、冷戦終結時に失った領土への執着、勝利に懸けた個人的な名声を考えれば、そうなるのも当然だ。そして、大統領には、使うことを厭わない現代的な軍隊がある。
ロシアと欧米のこうした姿勢の違いの結果、プーチン大統領は勝利を収めつつある。少なくとも、プーチン大統領の歪んだ論法に沿えば、勝利を収めているように見える。
だが、そうした行動により、プーチン大統領は、ごく最近まで、長すぎるほど握ってきた別の強みを失った。欧米の一部で、プーチン大統領を理性的な対話者、場合によってはパートナーとさえ見なしてきた騙されやすい連中が、そう考えようとしなくなったのだ。今では、どんなに鈍い人でも、プーチン大統領の本性を知っている。政治家というよりは山賊であり、パートナーではなく敵だということを。
それが明らかになるのが遅きに失したとはいえ、欧米はそうした明快な事実を踏まえて、ウクライナを巡る闘いを進めるべきだ。そして、欧米の指導者たちは、ロシアとの長く大がかりな対立が待ち受けていることを覚悟しなければならない。その対立は、ロシア国境全域に広がる可能性がある。
ハイブリッド戦争を覆う霧
9月初旬に生まれたウクライナ停戦の希望は、ロシアは交戦当事国ではないというプーチン大統領のばかげた主張のせいで台無しになった。だが現状では、どのような停戦でも、プーチン大統領の思うような形にできるはずだ。
ロシアの正規軍の支援を受けた寄せ集めの分離派が圧倒的な力でウクライナ軍を押し戻したことから、ウクライナ軍幹部の関心は、反政府勢力の制圧よりも、むしろ全面的なロシアによる侵略の阻止に向けられている。「2週間もあればキエフを落とせる」というプーチン大統領の荒っぽい大言壮語には、恐ろしいほどの説得力がある。