伝説の引退スペシャル | マイケル・チャン - Michael Chang 独占インタビュー
子供のころ、テニスはあなたにとってどんなものでしたか?
大きくなるまでに、様々なスポーツをやりました。小さい時にはサッカーに夢中でした。バスケットボールもしましたし、もちろんテニスもしました。でもテニスに一番関心があった様な気がします。ただ、テニスは自分がいいプレーをすれば、結果はおのずとついてくると分かったのは良かったですね。サッカーやバスケットボールでは、自分がいいプレーをしてもチームが勝てるわけではありませんから。そういう意味では、個人スポーツの方が少しだけ好きなのかもしれません。
中国系アメリカ人として育ったことを、あなたはどう感じていますか?
とても面白いものでした。なぜなら当時は、中国系アメリカ人のテニス選手はほとんどいなかったからです。ジュニアの選手としては4、5人いたうちの1人でしたし、メジャーツアーに参戦しているアジア人選手は私が知る限りいませんでした。
あなたとピート・サンプラス、アンドレ・アガシ、ジム・クーリエを「ファブ・フォー」と呼んでいました。他の3人について教えてもらえますか? 特別な存在でしたか?
彼らのことはみんな、子供の時から知っています。ピートとは彼が8歳の時から、アンドレとは彼が12歳の時から、ジムは確か13歳か、14歳の時だったと思います。実は私が一番年下です。彼らとは引退するまで長年戦ってきましたし、本当に良く知っています。
1番の努力家はジムだと思います。才能はピートが私たちの中で1番あると思いました。アンドレは世界中のスポーツ選手の中でも屈指の反射神経の持ち主だと思います。そして、私たちは優れたテニス選手として、それぞれの才能を兼ね備えていたので、お互いを意識し合う事で、キャリアを通じて多くの成功を収めることが出来たのだと思います。
全米オープンに初出場した時のことを覚えていますか?
覚えていますよ。大変興奮しました。1987年の全米オープンに主催者推薦で15歳の時に出場しました。その前に18歳以下の全国大会で優勝したのですが、実はそこで優勝したら、全米オープンに主催者推薦で出られることになっていました。そして1回戦でポール・マクナミーに勝ちました。キャリアも終盤を迎えていたオーストラリアのいい選手でしたが、第4セットで下しました。
2回戦はナイジェリアのエンドゥカ・オディゾールに接戦の末に敗れました。最初の2セットは確か6-1、6-2だったと思いますが、初めて見るプレースタイルでしたので、あっけなくやられました。その後落ち着きを取り戻し、続く第3、第4セットを奪い変えしました。第5セットも勝てるチャンスはありましたが、一歩及びませんでした。でもそんな若い時に全米オープンでプレーできたのは、素晴らしい経験でした。
1989年の全仏オープンは最年少で優勝しましたが、どんな気持ちでしたか?
おとぎ話のような大会でした。下馬評も低い17歳が、自分より大きくて力強い世界1位のレンドルや、エドバーグといった自分より強い相手と対戦するわけですから、私が勝つなんて思われていませんでした。
グランドスラムタイトルを全仏で獲得した後、取り巻く環境は変わりましたか?
明らかにいろんな事が変わりました。私の周りの人間にあんまり変化は見られませんでしたが、注目度は増し、悪い評判も立ちました。本当に大きく変わりました。インタビューの依頼も増え、サインを求められ、写真もたくさん取られ、自分の時間が奪われるようになりました。でもそれは、世界最高選手の1人になった証で、仕方のない事です。
小柄でも大きな選手を倒せることが出来ると証明できたと思いますか?
良かったのは、自分よりも大きくて力強い相手とはそれまでもずっと戦っていたことです。ジュニアの時は背も高く力の強い兄のカールと、ほぼ毎日練習をしていました。むしろ、自分より小さいか同じくらいの相手と戦う方が、大きくて背の高い選手と戦うよりもやりづらく感じたくらいです。大きな相手と対戦するのは慣れていました。そのおかげで相手が誰であろうと、どんなに有名であろうと、どんなに強かろうと、怖気づいたり恐れたりすることはありませんでした。テニスコートでは誰が対戦相手でも、怖気づくことはなかったです。
日本での試合に何か特別な気持ちはありますか?
日本で楽しく試合をする機会は何年もありました。ジャパンオープンにも出場しましたし、秋にはセイコースーパーテニスにも出場しました。他にもグンゼワールドテニスや大阪でも試合をしましたよ。日本でプレーするのは本当に楽しかったです。とても苦戦した日本人の選手もいました。私が一番多く対戦した日本人選手は、たぶん、松岡修三だと思います。他にも伊達公子や、杉山愛とミックスダブルスで一緒にプレーしたこともあります。本当に楽しかったです。いつだって日本の選手とはみんな仲良かったですし、彼らのプレーや練習熱心さにはとても尊敬しています。
錦織圭にはどんな印象がありますか?
実際に去年の11月にエキシビジョンマッチとして、彼と対戦したことがあります。有明(コロシアム)で満員の観客の前で彼と対戦したのは本当に楽しい体験でした。彼は間違いなくツアーを担うこれからの選手の1人です。名前を売り始めましたし、トップ選手にたくさん勝ち始めています。彼の身体能力やテニス選手としての才能はますます知られるようになっています。彼が自分自身や自分のプレーに本当に自信を持っているかどうかまだ分かりませんが、自信がプレーに表れるようになれば、彼はもう一段レベルアップするはずです。大切なのは自分を信じることです。最高の選手に勝てる、しかも大きな試合でも倒せると信じることです。
彼はアジア最強の選手になれますか?
彼は既に最強のアジア人選手ですよ。いや、それ以上に、彼には世界トップ10に入れるだけのポテンシャルがあります。しかし現段階で彼が世界ランク1位になれるかについて話すのは時期尚早だと思います。もっといい試合をする必要がありますし、グランドスラム大会でもっと上位での試合経験が必要だと思います。
今、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノヴァク・ジョコビッチ、アンディ・マレーの4人は、他の選手よりも群を抜いています。グランドスラムを見れば、それは明らかです。彼らの牙城を切り崩すのは大変です。でもできなくはありません。圭にもその可能性があります。彼がそうするかしないかは、見守るしかありません。今後、彼はとても成長するでしょうから、そうなるのを待ちましょう。期待しましょう。
日本のファンへメッセージを
11月23日に私が出演するドキュメンタリーがWOWOWで放送します。是非、見てください。そして、みなさん、いつも応援ありがとう!
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