[PR]

 家族で代々受け継ぐ石の墓に代わって、さまざまな埋葬のかたちが出てきました。新しい選択をした人たちを通して、それぞれの特徴を取材しました。

■思い出の海へ、駅チカへ

 沖縄の青い海にパウダー状の骨が消えてゆく。それを追うように遺族がバラの花びらを浮かべ、お別れをした。

 東京都武蔵野市の女性(68)は家族や親戚7人で船をチャーターし、早逝した息子の散骨をした。「お墓は暗いイメージがあって。旅行の思い出のある沖縄の海で、自由にしてあげたかった」

 散骨業者が加盟する日本海洋散骨協会によると、散骨には遺族自身によるもののほかに、業者に任せる委託散骨がある。遺族から宅配便で遺骨を受け取った業者は、海に骨をまく。

 ネットで格安の葬儀を受け付ける葬儀会社「小さなお葬式」は、昨年7月から全国一律5万5千円で委託散骨するサービスを始めた。担当者は「継承者がいなくてお墓をもちたくない方や、金銭的負担が少ないということで利用者が増えています」と話す。

 墓石を持たない選択として、ロッカー式の納骨堂も需要がある。東京都の女性(66)は昨年、神奈川県内にあった墓を引き払い、先祖の遺骨を臨済宗実相寺青山霊廟(れいびょう、東京都港区)の納骨堂に移した。魅力は地下鉄外苑前駅から徒歩2分の駅チカ。室内にあり、お参りは天候に左右されない。掃除も不要だ。「無縁墓になる心配がなくなったのもありがたい」

 青山霊廟の納骨堂には個人向けのロッカー式のほか、夫婦2人用や家族全員が入る「家族壇」などがあり、価格は24万~600万円。代々受け継いでいくタイプと、期限がくれば遺骨を合葬墓に移すものがある。

■みんなと入る合葬墓

 血縁に頼らず墓を継承していこうという動きもある。5月、バラが咲き乱れる墓に50人の女性が集まった。みんな同じ墓に入る予定の“墓友”だ。

 女性おひとりさまの“終活”を応援するNPO法人SSS(スリーエス)ネットワークは、2000年に東京都府中市の霊園に合葬墓を設けた。現在、約300人の女性が生前契約し、21人が眠る。

 「1人で生きて来た女性の最後の心配はお墓なんです」と、代表の松原惇子さん(67)。最近はおひとりさまでなくても「夫と同じ墓に入りたくない」「子どもに迷惑をかけたくない」と契約する人もいるという。入会金1万円、年会費1万円で正会員になるなどして、墓友を持つ。