By MAYUMI NEGISH
- Bloomberg News
ソフトバンクの創業者、孫正義氏は14年前、事を成し遂げる途上だと請け合い、あきらめないように励まして、英語教師の馬雲(ジャック・マー)氏のウェブサイトに2000万ドルを投資した。今やその投資が大きな見返りをもたらそうとしている。
馬氏の小さな事業は成長して中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)になった。ソフトバンクが37%出資する同社は現在、米国市場に上場する準備を進めている。アリババはインターネット関連企業のものとして過去最大級の新規株式公開(IPO)案件になりそうだ。前々から予想されていたアリババの上場を手掛かりに、ソフトバンク株は既に1年前の2倍に値上がりしていたが、17日には前週末比4.93%高で取引を終えた。
この件に詳しい複数の筋によると、アリババのIPO調達額は150億ドル(約1兆5300億円)を超える可能性がある。アナリストらの見積もるアリババの企業価値(1000億ドル以上)を適用すると、ソフトバンクはアリババ株を売却して300億ドルを手にすることもできそうだ。ソフトバンクが昨年220億ドルを投じて米通信業界3位のスプリントを買収し、今や米同業4位のTモバイルUSの買収を視野に入れていることを踏まえると、アリババ株の売却は検討に値するだろう。銀行筋は、ソフトバンクがアリババ株を保有し続けた場合でも同社に合併・買収(M&A)資金を提供する意欲が増すと語る。
孫氏は保有するアリババ株の取り扱いについてコメントを避けた。ソフトバンクが過去に保有していた米ヤフー株の大半を段階的に売却したと指摘する向きもある。ソフトバンクはピーク時に37%保有していたヤフー株を1999~2002年にかけて売却し、調達した資金を債務返済と日本でのブロードバンドインターネットサービス参入に充てた。
孫氏に近い複数の関係者によると、同氏は可能であればアリババに対する出資比率の低下を避けたい考え。孫氏はヤフー株を売却したことを今では後悔しているという。アナリストによると、ソフトバンクはアリババが上場しても出資比率の引き下げを求められない。ソフトバンクはアリババとの契約上の合意および保有するアリババ株に関する計画についてのコメントを避けた。
孫氏は、1300社余りの傘下企業を通じてソフトバンクグループ内部にシリコンバレーに匹敵するハイテクのエコシステムを醸成することが自身の最終目標だとしている。この野心的なビジョンを考慮すると、アリババはソフトバンクが失うには貴重過ぎるのかもしれない。
アナリストの間には、拡大する規模と成長性を踏まえるとアリババの価値は1000億ドルより1600億ドル前後の方が正確だとする見方もある。12年には、アリババのショッピングサイト「淘宝網(タオバオ)」と「天猫(Tモール)」の合計取引額は米アマゾン・ドット・コムと米イーベイを上回った。昨年1~9月の利益率はアマゾンの60倍余りだった。
アリババの本格的な成長がまだ始まっていないと言えば、孫氏は同意するに違いない。
孫氏は先月の決算説明会で「これからが本当の利益を出す」とした上で「そういうビジネスモデル、ポジションに会社が進化した」と語っていた。
原文(英語):What Alibaba’s IPO Means for SoftBank
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/03/17/what-alibabas-ipo-means-for-softbank/