孤高を翔ける 葛西紀明【第三の故郷】
1:合宿地フィンランド 少年ら憧れの選手
「葛西の現役生活はまだまだ続く」。今月はじめ、フィンランド・クオピオ市でのチーム合宿中、地元紙のサボン新聞が、ゴルフに興じる葛西紀明(42)=土屋ホーム=の写真を1面とスポーツ面のトップで大きく報じた。オフのショットがメーン記事になるほど、同国で葛西への関心は高い。
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記事は、クオピオ出身のヤンネ・バータイネン(39)が、土屋ホームとコーチ契約を更新したニュースを導入部に、日本では多い時に週4〜5回テレビに出演してきたフィーバーぶりを紹介。そして、あっさり口にした4年後の韓国(平昌)の五輪を目指す意思を、驚きとともに伝えている。
夕刊紙イルタ・サノマット紙のスポーツ記者、ペッカ・ホロパイネン(47)は、同国のマスコミ事情を解説する。「フィンランドでは、冬のスポーツの記事を夏に取り上げるのは、珍しいことではない。特に日本の選手は頻繁にフィンランドに来ている。葛西のことはみんなが知っているし、(五輪で)メダルを取った時も大きなニュースになったよ」
フィンランド合宿で、葛西はシーズンの準備を整えるのが恒例になっている。故郷下川町のように森が多く自然豊かな環境で、人とのつながりも深いことから下川、現在住んでいる札幌に続く「第3の故郷」とまで言う。
今年は、シーズン中の膝(ひざ)のケガの影響と五輪後の取材ラッシュで、調整が遅れぎみだが、「不安はないです。膝も痛かったので、そんなに焦ってやらなくてもいいかなと思っているんです」と、余裕は十分だ。
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シャイな国民性から積極的に声を掛けてはこないが、クオピオのジムで居合わせた中年女性も、葛西を見つけて興味津々なまなざしを向けていた。葛西とは長年の交流があり、ヘルシンキで貿易会社を経営する三島基彦(66)は、「こちらの中高年の女性には憧れですよね。葛西といったら、おばあちゃんでも目を輝かす」と話す。
少年選手の憧れでもある。首都ヘルシンキのジャンプ台で練習するマッチ・コラリ(12)は早速、葛西の空中フォームのまねを始めた。「葛西の20年前と今のビデオを見ているよ。ここにも一度連れてきてよ!」
喧噪(けんそう)を離れた地で、葛西はじっくり体調を整えて帰国。27日、サマー大会初戦(名寄)に臨み、2位に入った。(敬称略)
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42歳にしてなお世界の第一線に立ち続ける葛西の力の源泉を合宿地フィンランド、そしてジャンプの本場欧州から探る。
(スポーツライター・岡崎敏)
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