お望みのティータイムは青い空に白い雲、そして何より君が居る事さジュリア!っと、そんな台詞の一つでも吐いてやればいいだろうに。 (実際言われたらドン引きだが。) 「っ、最低!」 ぱん!と勢い良く振り下ろされた刄を笑顔で受ける酷なト バ ル カ イ ン ! (余談だがトバルカインとはイコォル伊達男である。) (否、この場合マリー・アントワネットの方が似合っているのかも。) (パンがないなら何故お菓子を食べないの?ってな!) 「一護くーん。」 一護は窓から照りつける太陽の熱視線に半ば強制的に屋上へ誘われた。 重い扉の向こうには気持ちがいい微風と絶好の昼寝スポットである日陰がキラキラと輝いて見える。 るんるんとその場に腰掛け、目をつぶった瞬間に聞こえてきたのは女のヒステリックな叫び声。 びくり・と震えた体は実に正しいと言えるだろう。 ガチャリと再び重い扉が開くと共に聞こえてきた耳が痛くなる程の罵倒は一層ヒステリックに響き渡り、物陰からちらりと顔をだした一護は頭を押さえた。 涙を浮かべて一人の男を責め立てる(恐らく)三年生の先輩は、どうやら浮気をされたらしい。 しかし当事者である男は悪怯れなく薄く笑うだけで。 俗に言う修羅場に出くわしてしまったのだ、と二人にばれない様に小さくため息を吐く。 「なァ一護くーん。聞いとるー?」 理由を尋ねる女に男が言ったのはたった一言。「ボク君の事最初っから好きやなかっててん。」。 (お前は至るものをなめとんのか!) そして冒頭の件に戻るのだが、事の始まりから一護は耳を押さえ物音を遮断している。 最も明らかにその効果は皆無であったが。 一護が遮断しようと必死になってるものは一つ。 「1年3組黒崎一護くーん!」 「ばっ近いんだよてめー!」 市丸ギンの声だけであった。 (このマリー・アントワネットが!) 「せやかて一護くんボクの事シカトするんやもん。」 「スイマセン市丸先輩。昔から面倒には関わらない様に育てられたもので。」 そのまま素早く立ち上がり華麗にUターン! という野望は肩にめり込む細い指にあえなく打ち砕かれた。 にこにこと胡散臭そうに笑う市丸が柵に背中を預け、隣に誘う。 その姿を見て、訝しげに目を細めた一護が溜息と共に人一人分の微妙な空間を作って隣へ。 経験上断ったところで市丸が引かない事を知っていたからである。 「ごめんなァ。気、悪くしたのと違う?」 「(お前の台詞にな!)イエ別に。」 「あ、そう?ボクはあんなキィキィ喚かれたらかなわんけどなァ。」 否、全部お前の所為だろ。とは思ったが言わない。 何より誰より一護は市丸に関わりたくなかった。 黙ってたらその内飽きるだろう、と何も言わずに柵に保たれ掛かる。 けれど市丸は何を話すでもなく、ただ一護をじーっと見つめ、隣で笑うだけだ。 真横から感じる視姦に近い視線に居心地の悪さを感じた一護は、何か話題を!と滅多に使わない右脳をフル稼働させる。 「、あーのさ、」 「んー?」 「アンタ…じゃなくて先輩はなんで好きじゃない奴と付き合うんですか?」 「無理に敬語使わんでええよ。」 柵から背中を離し、顔を覗き込む市丸の口元がこれ以上無い程に歪む。 普段細められている眼が開き、赤く、黒い瞳が炎の様に揺れて。 地雷を踏んだ・と思った途端にガシャ、という音と顔の横に現れた華奢な手。 自分より長身の男の顔が同じ高さ、しかも数センチの近さにあり、一護は無意識に体重を柵へとかけた。 にっこり。口元だけが頬笑む市丸。その額が一護の額へぶつかる。 「君が、構ってくれるから。」 優しく目蓋に唇を落とした市丸が低く囁く。 眼を大きく開ける一護の髪を撫でると、ゆっくり体を離した。 つぅ、と一護の頬を一筋の汗が伝い、まるで初めて呼吸したかの様に大きく息を吸い込む。 はぁはぁと荒く、市丸に悟られぬ様小さく繰り返す呼吸。 神の助けか、授業の終わりを告げるチャイムが響き、一護は安堵の溜息を吐き、顔をあげた。 「あらら、もう行ってまうの?」 「次、体育なんで。」 「あァじゃあボク、此処で観察させてもらうわ。」 ひらひらと右手を上げ面白そうに笑う市丸に、ぺこりと頭を下げて歩きだす。 ぐるぐると市丸の言葉が頭を駆け巡り、体を支配する。 何を考えているのか、全く理解出来ない。足元から這い上がる市丸の炎に、舌打ちが漏れた。 「一護、」 焼き尽くされる様な青空。 アリスはウサギを見つけられた。 テーブルから零れそうな甘いお菓子とティータイムは済んで。 そう残すは、 「君が捕まってくれんと沢山の子が泣く、なァ。」 (何時の間にか彼に抱き締められていた。) (囁く声は低く甘く、毒の声だ、と。) 彼の女王に捕まってしまうだけ! 純粋にて有罪 THE END? 20060324 |