前略.黒崎真咲様。 お元気でしょうかお母様。一護は変わりなく、此処何日かの暑い日々に夏の片鱗を感じています。 生前お母様が手入れを欠かさなかった庭は美しい花たちが咲き乱れ、忙しい日々の心を癒してくれます。 是非この花たちを、お母様にもご覧になって頂きたいです。 さてさて本題です。実は一護、 「、こら!ギン!」 息 子 が 出 来 ま し た ! (しかも狐の!) サニー、サニー、レイン。 どうやら何より空腹が辛かったらしく、今では元気に食べ、家中を駆け回れる程に回復した。 そして見るもの全てが珍しいらしく、 見つける→触る→壊す。 を、繰り返して家の物達がギンの被害に悲鳴を上げている。 (本日のギンの戦利品、骨董皿×3、高級和紙製襖×4etc…。) (しゅ…修理費が…!) 最初の二日は体調が心配だった・という事もあり、無理を言って休みを貰ったが今日は仕事へ行かねばならないだろう。 (つーか実は風邪って言ってあるし。) (冬獅郎が看病に来るって言った時は焦った。マジで。) 「ギン。ちょっと来い。」 「何やいちご。」 「苺じゃない。一護、だ。」 「えー苺の方が可愛いやん!」 「黙れ狐!」 「ヒド!」 嗚呼今日も洗濯物が増えていく。 俺はこの数日で洗濯を一体何回したのだろう! 今日は墨をひっくり返したらしいギンは真っ黒だ。 (あの墨…砕蜂さんから貰った高級品だったのに…!) とりあえず慣れた手つきで顔を拭きながら抱きつこうとするギンを片手で止める。 じたじたと抱きつこうと必死に抵抗したが、リーチの差が埋る事は無い。 (と、いうかあったら大惨事だ!) そんな姿で抱き付かれては代えが何枚あっても足りない。 (既に何枚も破かれゴミバコ逝きなのに!) 「あのなギン。俺そろそろ仕事へ行かなきゃなんないんだ。」 「死神の仕事?」 「そうだ。んで、お前は留守」 「じゃあ僕も行くわ!」 「は?」 「ちょお待っててや!直ぐ着替える!」 「ちょ、待てーい!」 「うわ!何や危ないやん。」 「あのなギン、お前は行けないんだ。」 がし!と肩を両手で掴み、目線を合わせて説明する。 そんな内に時間は進み、既に時刻は昼時だ。 嗚呼あの優秀な副官に怒鳴られちくちく嫌味を言われながら苛めに近い執務をやらされる。 (仕様が無いからタイプBで謝るか…。) 不思議そうな顔をして見つめるギンは口を尖らせ、ぶーぶーと文句を垂れる。 「何で?」 「ギンは死神じゃないだろ?」 そういうと目に見えて尻尾と耳がたれる。(様な気がする。) 哀しそうに俯き負のオーラが漂うギンは本当に何かの動物のようだ。 いつもの騒がしいギャップに思わずう・と言葉がつまる。 けれど死神が入り乱れるあの場所に一般人、しかも子供を連れていけば何を言われるか解らない。 (特に日番谷冬獅郎とかいう奴に。) 嫌な思いをさせない為にも心を鬼にして言葉を続ける。 「だから留守番できるか?」 「…うん。」 顔を上げず俯いたままで小さく呟く。 まるで昔の自分を見ているようでずきん・と胸が痛んだ。 小さい頃俺がそうであった様に、広い家に一人で居る寂しさは、誰にも理解できない。 ふ・とギンが顔を上げる。 「仕事、頑張ってな!僕、いい子で待ってる、から。」 必死に笑顔を作る姿が酷く痛々しい。 誰も居ない、広い家。 寂しさを隠せず、一日中時計を見つ続けた。 一人で声を押し殺して、涙を流しながら。 あの時の寂しさも哀しさも、忘れる事は出来ないだろう。 きっと永遠に。 「、ギン着替えろ。」 「え?」 「そんな真っ黒じゃ連れていけないだろ?」 にっこり笑うと、先ほどまでの哀しそうな顔が明るく輝く。 大きな声で返事をすると同時に着替えに走る。 100%冬獅郎には怒られるが、仕方が無いと思う。 この家で一人にさせるよりは。 (やっぱりタイプEで謝るか。) ぱたぱたと着替えを終え走ってくるギン。 そのまましっかりと抱きかかえると、首に抱きついてくる。 子供特有の暖かい体温を感じながら家を後にした。 時刻は既に真昼の1時。 どうしようもないのでゆっくり歩いていく事にする。 −そして俺はこの時腕の中でギンがほくそえんでいる事など知る由も無い。 「一護ー。」 「どうした?」 「僕一護が好きや。」 「、ん、俺も。」 自分で言って照れたのか腕に力が篭る。 思わず笑いだした俺の背中をぽかぽか叩く。 (将来はタラシになる気がする。) 気が付けばもう隊舎前だ。 物珍しそうにキョロキョロするギンを見ながら過ぎる不安。 (あ、この霊圧、) 「重役出勤御苦労様です。黒崎隊・長・様!」 「冬獅郎…おはよう。」 「今日和。」 「(恐!)あ、羊羹食う?」 「休憩はたった今終りました。」 「(やべー)あ、そか…。」 「て、いうか、」 ビシっ!と音が出そうなほど力強く指を向ける冬獅郎。 (何気に失礼な奴。) 片手には大量の書類・書類・書類。 あれは今から俺の机にのるのだ! (嗚呼まるで悪夢のよう!) 今日は恐らく残業なので後からギンにお菓子を買ってこよう。 (つーか休憩貰えなそうだから乱菊さんに頼もう。) 「誰だそのガキはー!?」 「あ、ギンっていうの。」 「名前は聞いてねェ!なんで仕事場にガキ連れてきてんだ!阿呆かお前は!」 「否、これには深―――い理由が」 「一護、」 「ん?」 「なんなん?この煩いミジンコ生物は?」 「!!」 「!!!!!」 (空気が、空気が!) 「この…てめェよりでけェよクソガキ!」 「はんっ!一護に抱かれたら僕の方がでかいわ!」 「ん、だと…!」 「ちょ…やめろって…!」 なんとか二人を止めようとする。 が、火に油を注いだらしく、冬獅郎からは鋭い視線が。 (ヒィ!) ギンからはムカついてます!と解りやすい脚線を向けられ、一人慌てることしか出来ない。 (たっ…助けて乱菊さん!) 「おい一護!この狐誰だ!」 「黙っときミジンコ。僕は一護の将来の旦那や。」 (いつからだ!って、そんな挑発に引っかかる奴なんて、) 「なっ!一護!!説明しろ!!」 「ここに居た!?」 「なー!一護!」 チュ。と可愛く音を立てて頬に柔らかい感触を感じる。 ん?と考えるよりも早く剃刀の如く飛んできた書類を紙一重で避ける。 (書類って凶器になるんだなァオイ!) 視線を落せば般若の如く怒り狂うMY副官。 邪悪な顔で煽る市丸ギン! (うっわ!こいつイイ性格してんな!) 「冬獅郎!馬鹿落ち着けって!」 「そのガキ、降ろせ。」 「えー僕一護と離れたないわ。」 「一護、」 「いやあの、相手は子供だしな?冬獅郎?」 「、一護ォ!!」 遂に実力行使に移った副官から守る様にギンを抱えなおす。 身長的に無理だが、頭に血の上った彼は気が付かないらしい。 怒声と共に必死に手足をバタつかせ、ギンを降ろそうとしている。 (ちまっこいなー。) 何とか落ち着けようと体を屈め、頭一つ小さい副官に視線をあわせる。 「冬獅郎落ち着けって。お前副隊長だろ?」 あやす様に諭せば、大分落ち着いたのかむすっとしながらじっと睨みつける。 (あっタイプAで治まりそう。) すっと指を輝く銀髪に絡め、優しく撫でる。 相変わらず不機嫌そうだったが、その霊圧は柔らかくなってきた。 その証拠に先程よりも眉間の皺が少なくなっている。 (ちょろい、と思ったのは内緒だ。) 「ちゃんと説明するって。お前は俺の大事な副官なんだから。」 ふー。と深い溜息を吐き、頷く冬獅郎。 (こいつ「俺の」って台詞に弱いんだよな。) (乱菊さん情報だけど。) 落ち着いた冬獅郎をそのまま隊首室へと促す。 後は乱菊さんを呼んで、と思った刹那、首に強い力を感じて視線を傾ける。 すると酷く不機嫌なギンがじっと見つめていた。 「どうした?」 「僕は?」 「は?」 「僕は一護の何なん?」 もしかして是はやきもち、なのだろうか。 (わぁ珍しく可愛い!) 口を尖らせぷくーと頬を膨らませて痛いくらいに見つめてくる。 よしよしと優しく頭を撫でると、変わらずの不機嫌だが、幾分機嫌が直ったようだ。 (子供は頭撫でられるのに弱いんだなー。) お前は俺の、未来の副官だろ?」 途端に嬉しそうに笑いながら抱きつき直すギン。 数年後に隣に立つ未来の副官を抱え、隊首室へ。 今日は、気持ちのいい晴れだ。 「俺はお前の副官、やめないぞ。」 「!(聞いてた!)」 「はよ引退し!ミジンコ!」 「んだとこの狐!」 「(乱菊さん助けてー!)」 訂正、今日は晴れのち、ところにて豪雨。 |