写真・図版 9月4日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は金融政策決定会合後の記者会見で、為替レートについて、ドル高・円安が進むのは自然で、さらなる円安進行は日本経済にプラスとの見解を示した。4日撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

 [東京 4日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は4日、金融政策決定会合後の記者会見で、為替レートについて、ドル高・円安が進むのは自然で、さらなる円安進行は日本経済にプラスとの見解を示した。消費の回復の遅れは一時的なものとし、物価が日銀の想定通り2%の目標に向けて上昇していくとの見解を堅持した。

 大量の国債買い入れ継続が累積的に緩和効果を高めると述べ、追加緩和に踏み切らなくても緩和効果は強力だと強調した。

 <ドル高は自然、消費の弱さ一時的>

 黒田総裁は、自身と同じ財務官出身の渡辺博史・国際協力銀行(JBIC)総裁が3日に、さらなる円安はマイナスとの見解を示したことについて問われ、「円安が日本経済に好ましくないとは思っていない」と述べた。円安が進まないと2%の目標達成が難しいためか、との質問には「それは邪推」と答えた。

 適切な為替水準を「数値で言うのは難しい」としつつ、米ドルが、緩和縮小や景気回復を背景に「強くなるのは自然」と述べた。 

 4月の消費増税以降、個人消費が弱めに推移している点については「駆け込み需要の反動、実質所得減の影響、天候」が要因と指摘。「いずれも一時的な要因。増税による実質所得の低下の影響は時間を追って小さくなる」と述べた。一方、雇用・所得状況は改善を続け、消費者のコンフィデンスも改善しており、消費は基本的に底堅く推移し、駆け込みの反動も和らぐ」との見通しを強調した。

 4─6月の国内総生産(GDP)は「やや大きめのマイナス」とし、自動車業界は駆け込み需要の反動減からの「戻りがやや遅れている」と指摘した。もっとも「百貨店は持ち直し傾向、外食は反動減の影響が限定的」とし、「家計・企業ともに前向きな景気の循環メカニズムが維持されている」とし、「全体として反動の影響は徐々に和らぎつつある」との見方を示した。

 <大量の国債購入で、緩和効果・累積的に高まる>

 昨年4月の量的・質的緩和(QQE)導入時と比べ「成長率は下振れているが物価は想定通り」と強調。QQEは所期の効果を発揮しているとの見解を繰り返した。

 その上で「2%の物価目標実現を目指し、安定的に持続できるまで現在の政策を継続する」とし、「毎月、毎月、大量の国債その他を購入し緩和効果が累積的に強くなっていく」と強調。QQEの緩和効果が大きいことをあらためて強調した。

 安倍晋三政権の内閣改造について、「新しい内閣が経済問題など様々な課題を適切に対応するのを期待する」とし、「従来通り、政府と緊密に意思疎通を図る」と述べた。  

 <消費増税、実施しなければ対応できないリスク>

 来年10月に予定されている消費税率の8%から10%への引き上げについて、仮に実施されない場合「政府の財政健全化の意思に疑念がもたれると、確率は低いが、政府・日銀が対応できないリスクがある」として長期金利の急上昇を懸念。一方、増税による景気の下振れは財政・金融政策で対応が可能との持論を改めて強調。政府が予定通りの増税に踏み切るのが望ましいとの見解を示した。

 

 (竹本能文 編集:山川薫)