モンスターハンター
◆
「しかし、なにも正面から戦わず、奇襲による先制攻撃をしかけていたら、もっと楽勝ではあるよなぁ」
戦闘終了直後、俺は苦笑しながら独り言を呟いた。
なにせ、ロック鳥の巣近くで、親鳥たちが帰ってくるのを待った後、奇襲・不意打ちのチャンスだったのにも関わらず、正面から堂々と戦いを挑んだので。
卑怯な事を嫌う鳥人達の意向により。
鳥人達は、奇襲・不意打ち・だまし討ちの類をことのほかに嫌うようなのだ。
「……相手があまりにも強大であり、氏族存亡の危機であれば、策を用いるのもやむなし、だが。
しかし、同等か、それ以下の戦力である相手に対してまで卑劣な行いをするのは、避けたいのだ。
誇りを持つ『戦士』としては。
――『真の戦士』は、卑劣な手による勝利を恥じ、常に、誇りを忘れずに正々堂々と戦うべきもの――
それが、古の大戦士長フェニクレスの教えでもある。
魔法と魔道具を持って戦う『戦士』にしてわが友でもあるエニードよ。
鳥人ではなく、人の子であるお前にも、我らの主義に付き合ってもらって申し訳なくは思うが」
おっと、俺の独り言が聞こえていたようだ。
誇り高き鳥人にして武人である精霊戦士ファルに俺は
「いえ、俺もその考え方は、好きですから」
「フッ……そうか。
エニード、お前も『真の戦士』としての魂に目覚めつつあるようだな」
ニッとファルが笑ってくれた。
……奇襲できる状況でも、あえて正面から戦うこと自体は、非効率だとは思うけれど。
でも、やっぱり、鳥人達の主義は悪くない、思う。
そう言った教えを代々伝え、守っているからこそ、鳥人たちは誇り高いのだろう。
そして、そんな鳥人たちに友と言われ、認められるのは――嬉しい。
彼らに友と認められ、そして、勇敢な『戦士』とも認められるのは―― 自分も誇り高い気分になれるので、とても…………嬉しいのだ。
◆
「今回も、ロック鳥の卵や巣、素材の取れる遺体を全部貰って、本当に良いのですか?」
俺は、一応、鳥人達に確認をとった。
友と認めた者相手には、贈り物をするのが好きな、気前のイイ鳥人達はやはり頷いてくれた。
「ああ、構わない。
それに鳥人である俺達は鳥系モンスターの卵や肉を食べる習慣はないしな」
「儂たちがロック鳥を食べるのは、共食いとまでは言わぬが
人間達がゴリラや猿を食べるのに近いですからのぉ」
ファル、イグルスの両鳥人から許可と協力を得て、俺は『魔法の革袋』にロック鳥の遺体、卵、巣を詰め込んだ。
『魔法の革袋』は縮小や重量軽減の魔法が掛かっている魔道具である。
かなり高価な品なのだが、十二歳の誕生日に、母方の実家(ホークウッド本家)から、プレゼントとして送られてきていた。
有難く、有効活用させてもらっている。
「(しかし、本当に鳥人達は無欲だな)」
命懸けでロック鳥と闘った報酬ともいえる各種素材を、全部、俺にくれるのだから。
卵や肉だって、自分達で食べなくとも、他の種族との交易に使えるはずなのに。
俺は、鳥人達の一種、世捨て人じみた無欲さにも、感動を覚えていた。
俺の祖国や総督府の政治家・役人たちとは大違いだ。
新大陸で、命がけでモンスターや野獣たちを倒しても、素材などの売却益はほとんど祖国や地方政府(総督府)に税金として持って行かれているというのに。
今回も、七割近く持って行かれるだろう。
「(…………まぁ、一年前、古巨鳥の素材売却益を九割持って行かれたのに比べたら、まだマシにはなっているけど)」
税金優遇処置のある『ハンターギルド』に俺は正式登録済みだ。
モンスターを倒して討伐報酬や素材を得るモンスターハンター。
遺跡・迷宮などを探索し、お宝や古代魔法文明時代の魔道具をゲットするトレジャーハンター。
賞金首となった悪党どもを追いつめ、狩る(もしくは捕縛する)バウンティハンター。
未開地の地図や未発掘である遺跡の地図を描き、売るマップハンター。
各種様々な情報を得て、有償でギルドに伝えるインフォメーションハンター。
その他、色々な『ハンター』がこの世界には存在する。
…………秘境に足を運び珍獣を探しだす珍獣ハンターも。
俺は、イーズ帝国・新大陸領土内の町にある『ハンターギルド・新大陸北東支部』に所属している。
約一年前から。
モンスターハンターとして正式登録しておけば、倒したモンスターから剥ぎとった素材の売却益に対する税金が優遇されるので。
税金優遇を受けれない仮免許ならすぐになれる。
しかし、税金を含めて色々と優遇される本免許は、なかなか認められない。
「(もっとも、俺の場合はすぐに認められたけどね)」
ユーシア大陸では伝説上であった『古巨鳥を狩った』という実績と名声のおかげで。
ちなみにだが、
――――――――――――
ハンターギルドに登録に行ったさい、強面の先輩ハンター達に絡まれた。
まるで、なにかの様式美の如く絡まれたのだ。
どうも、ハンターギルドでは、新人相手に先輩ハンターが絡むのは、伝統的によるある話らしい。
新人の実力、気性、性根(根性)、適性、などを調べるために。
だから、俺も絡まれた。
もっとも俺が当時、新大陸で一躍名を広めた『古巨鳥殺し(エンシェントロック・バスター)』と知った途端、先輩ハンターたちは物凄く態度が柔らかくなったけど。
――――――――――――
と、ダイジェストで説明しておく。
また、
――――――――――――
「情報の売買?」「はい、情報の売買です」「……なるほど、つまりはそういった情報を買い取ってもらうことも出来るということですね」「っ……その通りです」
と、いった感じで、俺とギルド受付嬢の会話があった事と、
ギルド先輩冒険者「し、新人のくせに『ソコ』に気付くとは」
ギルド先輩冒険者「こ、こいつ、天才か――」
ギルド先輩冒険者「た……ただもじゃねェ……」
ガタタッ(先輩冒険者達が、動揺して椅子から立ち上がる音)
――――――――――――
的なやり取りがあったことも、ダイジェストで語っておく。
…………各種様々な情報を得て、その情報を有償でギルドに伝えるインフォメーションハンターが職業として存在するのだから、ギルドでの有益情報買取りはむしろ常識の様な気はするのだが…………
それから、
――――――――――――
ハンターギルドと折り合いの悪い冒険者ギルドの連中に喧嘩を売られたけど、俺の溢れる総魔力でフル充電した魔道具でビビらせたら、尻尾蒔いて逃げていきました(まる)
――――――――――――
という、結構どうでも良いイベントもあった。
ダイジェストでだが、ついでに追記しておく。
◆
ロック鳥の遺体などを全て詰終えた後、
「素材詰めの協力、いつもありがとうございます」
と、二人の鳥人に頭を下げて礼を言っておいた。
「気にする事はない。
エニードには、この母なる大地に住む多くの生物にとって、害鳥であるロック鳥狩りに助力してもらっているのだ。
この程度、頭を下げてもらう事ではない」
ファルが柔らかく笑いながら俺に頭を上げるよう言ってきた。
「左様。
わしらこそ、エニード殿には、その合力を感謝しておるぐらいなのでな。
なにせ、ロック鳥が増えすぎれば、大いなる災いを招くのでのぉ」
イグルスの言葉は、真実だと思う。
あれだけ巨大で食欲も旺盛なロック鳥。
あんなのが増えすぎれば、新大陸の生態系に深刻な影響を与えるであろう。
それに雑食であるロック鳥は、野生動物だけでなく、人間や亜人も好んで食べる。
実際、先住民や新大陸入植者は毎年、ロック鳥から、多大な被害を受けていた。
まさに、ロック鳥は害鳥、なのであった。
絶滅させろ――とまでは言わないが、数が増えすぎないよう『駆除(間引く)』のは重要な事だと思う。
だからこそ、俺は鳥人達に協力し、ロック鳥を狩っているのだ。
この地をも護る事こそ、使命だと考え、危険なロック鳥をほとんど無償で狩り続けている、尊敬すべき鳥人達に手を貸し、共闘しているのだ。
◆
「そういえば、エニード殿
以前、精霊魔法にも興味があると言っておったの」
「あ、はい」
風の精霊神を崇める大神官でもあり、精霊使いでもある精霊司教イグルスの問いに、俺は頷いた。
真正魔法と精霊魔法。
二つ、使えたら、凄そうなので興味はあった。
精霊魔法はユーシア大陸では禁忌なので、そうそう習う機会はないけど。
「とりあえず、エニード殿の適性やその身に持っている精霊力の量を計ってみようかと思っての。
大精霊鳥様から、『羽』を一本貰ってきたぞい」
「? なんですかそれ?」
精霊司教イグルスが懐から取り出した『羽』に興味は持った。
非常に巨大で、美しい白羽だ。
魔道具の類――ではなそうだが?
俺が『羽』に注目していたら、精霊戦士ファルが説明してくれた。
「『大精霊鳥の羽』は、念じながら手に持つことで色が変わる。
その色により、どの系統の精霊と相性が良いか分かるのだ
また、どれほどの範囲まで羽の色が変わるかで、その者が持つ精霊力――精霊魔法の強度などにも影響する力――の高さなども、判断できる」
ほほぅ。
精霊力というのは、真正魔法でいえば、総魔力みたいなもの――と、俺は理解しておいた。
そして、精霊司教イグルスから譲ってもらった『大精霊鳥の羽』を握り、試に念じてみる。
教えられたとおり、自分と相性の良い精霊を知りたいとか、精霊力の高さを知りたい、とか念じながら。
結果は――
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