スペイン・バルセロナで建設中の巨大教会「サグラダ・ファミリア」は、以前、完成までに300年くらいはかかると言われていた。ところが今では2026年の完成が見込まれており、1882年の着工から150年弱で完成することになる。この大幅な“工期半減”の裏には、3DプリンターやCNC(コンピューター数値制御)の石材加工機の活用があった。
8月16日、スペイン・バルセロナで建設中の「サグラダ・ファミリア」に立ち寄ってきた。実は約30年前の学生時代にも、バックパッカーとしてここに立ち寄ったことがある。
当時は1882年の着工から既に100年が経過しており、完成まであと200年くらいはかかると言われていた。いずれにしても、自分が生きている間には、完成はしないものとあきらめていたのを覚えている。
ところが現在、サグラダ・ファミリアの完成予定は、12年後の2026年と大幅に前倒しされている。私も生きている間に完成した姿を見られそうな感じになってきたのだ。
つまり、サグラダ・ファミリアは約144年の工期で完成することになる。1980年代に私が訪れたころに見込まれていた300年という建設期間は、この30年間で半減したということだ。図面では表現しきれなかったこの建物の設計・施工に、3DソフトやCNC加工機が使えるようになったことも、150年以上の大幅な工期短縮の大きな力になっているようだ。
逆さ吊り実験で構造解析
1882年に建設が始まったサグラダ・ファミリアは、直線、直角、水平がほとんどない外観に数多くの彫刻が網羅され、建物と一体化されている。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)も、CNC(コンピューター数値制御)の工作機械もなかった19世紀から、よくぞこのような複雑な建物をつくってきたものだと、巨匠・アントニ・ガウディをはじめ、建設プロジェクト関係者には敬意を払いたい気持ちになる。
30年前に訪問したときには、数本の塔があるだけだったが、最近、急ピッチで建設が進み、2010年には大空間を持つ礼拝所が公開された。そこには途中から枝分かれして天井に伸びる複雑な柱が林立していた。
柱は途中から球面の接合部材を介して、上方向に広がっている。しかも柱の断面は連続的に変わっている。
石材に引っ張り応力が作用することは避けなければいけない。コンピューターもない19世紀の時代には、FEM(有限要素法)などで数値解析する代わりに、「逆さ吊り実験」を行って柱の形状などを求めていたのだ。ワイヤを構造体に見立てて上下に180°ひっくり返した模型をつくり、柱の先にはその上からかかる荷重に相当する重りをぶら下げる。
するとワイヤの建物には引っ張り力だけがかかる形で安定する。この形を元に戻すと、柱などには曲げモーメントが発生せず、部材には圧縮力だけが作用するように設計できるという仕組みだ。
このように、サグラダ・ファミリアはワイヤモデルによる逆さ吊り実験で部材の結節点座標を求める「3D構造解析」を行った後、大きいスケールの模型をつくり、それから現場での施工を行うという手間ひまのかかる工程で建設されていたのだ。
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建設作業が、手仕事から機械へ、構造もRCなどへのシフトがすすんでいるとのことで、複雑な気持ちになりました。この教会の公式サイトを覗いてみると、この点についての見解が書かれてありました。その時代の最新の建設技術を用いることや、RCを使うことについては、いずれもガウディの考えに基づいているということではありました。
おそらくガウディとしても、工学的な合理性のある建設をすべきと考えていたことは確かなのかな、と思わされました。
しかし、例えば、仕上げにあたる石工事の加工まで機械化されているのは、はたして建築の持つ命のようなものを、手仕事のそれによるものとは違った形にしてしまうであろうことは確かです。建設にかかわっているチームは、ゴーを出すことが、ガウディの、そして教会を造営するにあたっての、正しい精神にのっとったものであると判断したのでしょう。
示唆に富む記事でした。私の述べたようなことを深堀するのは、またの機会にお願いできればと思っております。
( obanyaki 2014/09/04 16:37 )
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